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2021年5月

2021年4月 物流ニュース | 物流ニュース・物流ラジオ

2021年4月 物流ニュース

2021年4月 物流ニュースを動画で見る どうもこんにちは飯野です。 今回は新しい取り組みとして、最近にあった物流・海運に関するニュースをまとめて私の動画でもっとカジュアルに伝えようと思いました。 物流業界で働く人も、そうでない人も楽しく物流の今に触れて頂ければと思います。 では、いってみましょう。 世界の貿易量、すでにコロナ前に回復 オランダ経済政策分析局によると世界貿易量は2月時点で、すでに新型コロナウイルス禍の前の水準を上回っているとの発表がありました。 コロナ禍でいったん落ち込んだ分の挽回である、「ペントアップ」需要が押し上げており、これをけん引しているのは米国と中国になります。 昨年春にはコロナ禍で世界中で需要が冷え込み、生産調整が進みました。 しかし経済活動の再開とともに、先送りされた消費が戻っただけでなく、在庫を回復させる動きが活発になり、生産や貿易が一気に上向いています。 コロナ禍からの立ち直りが早かったのは中国。1~3月は輸出入ともに過去最高を記録。 また米国も中国などアジアからの輸入を大きく増やしています。日本海事センターによると、アジア18カ国・地域から、米国へのコンテナ輸送は2020年は過去最高とのこと。 このうち、2割強を占めるのが家具・家財道具や、建築用具といった住宅関連です。 米国の住宅市場は低金利環境に加え、コロナ禍による郊外への移転などが重なり活況を呈(てい)しています。 住宅着工が増えるにつれ、米国の関連資材の需要が増え、更に「巣ごもり」による電化製品などの需要拡大も、コンテナ輸送の増加につながっています。 北米西岸港湾、貨物急増でパンク寸前。 アジア発 アメリカ向けコンテナ航路の荷動きが記録的な水準で推移する中、北米港湾や内陸輸送がパンク寸前となっています。 LAやLBなどの港湾ではターミナル内の混雑が悪化して貨物が滞留しており、鉄道への接続も滞るなど、混雑状況は悪化しています。西岸経由の機能不全で東岸サービスの引き合いも急増しており、新規ブッキングはまったく入らないなど、混乱が広がっています。 船社関係者によると、「アジア発を含めて5月中のスポット貨物の新規ブッキングはまず無理」とのこと。 アジア発、北米東岸向けスポット運賃の実勢レートは、40フィートコンテナ1本当たり1万ドルまで上昇しています。 国際海運、「2050年までに温室効果ガスゼロ」。脱炭素化さらに加速へ。 続いてのニュースです。 4月21日に開かれた、気候変動サミットへに向けての特別会合で、10カ国の代表者により国際海運の温暖化対策について、意見交換がありました。 この中でアメリカのジョン・ケリー特使は、国際海運からの温室効果ガス排出量を2050年までにゼロにするという野心的な目標を提言。 IMO(国際海事機関)の温室効果ガス削減戦略を上回る目標が提示されたことで、国際海運における脱炭素化がさらに加速しそうです。 この目標に対して、関係者からは「環境技術の研究開発に弾みがつく可能性もある」との声も上がっています。 アメリカ、ドライバーの需要が急増。賃上げ実施しドライバー確保へ。 ここからはアメリカからのニュースです。 米国のトラック会社は、需要が急増しているドライバーを確保するため、賃金を引き上げました。 米国のトラック運送会社は、消費者の需要が急増し輸送能力が逼迫(ひっぱく)していることから、貨物市場の復活に向けてドライバーの増員に躍起になっています。 実際に賃上げを行った、業界大手のKnight-Swift Transportation Holdings(社) INCは資格を取得したばかりのドライバーの賃金が、ここ数カ月で40%以上も上昇したと報告。 労働統計局によると、昨年の大型トラックおよびトラクター・トレーラのドライバーの給与の中央値は4万7,130ドルでしたが、同社によると免許を取ったばかりの教習後1年目のドライバーでも、年収6万ドル以上を稼げるようになったと伝えています。 TuSmple社 IPO トラックの自動運転にも注目が集まっています。米国と中国に拠点を持つTuSimple社は、4月12日 新規株式公開を行い約3,380万株を販売して10億8,000万ドルを調達しました。 同社の関係者によると、今年、第4四半期にツーソンとフェニックスを結ぶ約100マイルの距離で誰も運転しない「ドライバーアウト」のパイロットプログラムを実施する予定であると述べました。 このパイロットプログラムでは顧客の貨物を輸送する予定で、アリゾナ州の運輸当局と緊密に連携して調整を進めているとのこと。 同社は新技術の開発を進め、最初の商業収益を2024年と予測しています。 解説コーナー それでは本日のニュースの解説のコーナーです。 まず最初のニュースですけれども、アメリカ向けの輸送が本当に伸びていますよね。中国からの輸送も過去最高と、アメリカの人たちの巣ごもりの消費って本当にすごいなと思います。 コロナのワクチン接種も進んでいますし、経済活動はこれからも伸びそうですよね。 これまでは港湾やトラックドライバーもコロナで稼働が制限されていたので、荷役のスピードやドライバー不足などはあったりしましたが、アメリカのトラック会社も賃金アップなどをしてドライバーを確保しようとしています。 私の個人的な予想ですが、インフラの回復より物量の増加の方が多くて まだまだ物流は安定しないかなと思っています。 また将来的にですがトラックの自動運転が一般的に普及されることで今回のコロナで発生したようなドライバー不足は無くなっていくので、今後の技術の進歩にも注目ですよね。 最後にですが、アメリカが主催した気候変動サミットが4月24日に閉幕したのですが、これが関係してか海運業でも温室効果ガス削減への取り組みのニュースを最近多く見かけます。 船の燃料を液化天然ガスにしたり、アンモニアを使ったり、風力も使おうとしたり、スクラバーがデフォルトになっていたりと各関係会社で技術開発が進められています。 これに関しても非常に面白いコンテンツだと思いますので、今後も注目して取り上げていきたいと思います。 今回の物流ニュースはいかがだったでしょうか。一般的には海運のニュースって業界の人しか見ない印象ですが、こんな感じでカジュアルに、ニュースも発信していきたいと思います。 今回 参考にしたニュースのソースは以下にリンクを貼っておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。 現場からは以上でーす!ありがとうございました!! 2021年4月物流ニュース - 参照情報 快走する海運株 世界貿易量、すでにコロナ前回復 北米西岸港湾、貨物急増でパンク寸前。滞留悪化、内陸受託停止も 国際海運、「2050年までにGHGゼロ」。脱炭素化さらに加速へ。ケリー米特使が提言 Trucking Companies Boost Pay in Hunt for Drivers as Demand Surges Autonomous-Truck Developer TuSimple Plans Driverless Road Test This Year ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

貿易の基礎について | 物流コラム

貿易の基礎について

貿易の基礎について動画で解説 どうもこんにちは飯野です。 今回は「貿易」の基本についてお話をしたいと思います。 貿易の基本について! 現代社会では貿易によって経済が支えられています。あなたの身の回りの製品が安い価格で買えたり、いつでもどこでも、買いたい時に買える状態であるのは貿易のおかげです。 もし世の中に貿易がなかったり、全てが地産地消や国内で生産したものしか使ったらダメというルールであったりしたら、天然資源がほとんどない日本の成長は確実に弱まりますし、身の回りの製品も多様性がなく、また値段も高くなるでしょう。 貿易がなかったら? 生産や取引を、特定の地域だけではなく、世界をベースにすることで、多種多様の製品が作られ、また多くの人の手に行きわたるようになっています。 安い製品だけでなく、高価だけれども珍しいもの、希少なものも入手出来るため、貿易により 物質的には豊かな世の中が形成されています。 「正しい知識」の必要性 しかし、貿易をするということは、近所のスーパーでリンゴを買うのとは訳が違い、言葉や文化、商習慣が違う人たちと取引をすることになります。 海外の人たちと取引をして製品を売買するには、正しい知識が必要です。 この正しい知識がないと ・騙されたり ・利益が出るどころか、赤字になってしまったり ・知らずに法律違反をしてしまったり することになってしまいます。 ボランティアではなく、利益を得るためのビジネスとして貿易をする訳ですから、損をしたり、違法行為のようなリスクは絶対に避けなければいけません。 しかし、正しい貿易知識があるとリスクやトラブルを回避して、貿易に慣れていないライバル会社よりもより大きな利益を得る可能性があります。 取引相手への信用のリスク では具体的に、貿易にはどのようなリスクがあるのでしょうか? 一番大きなリスクは「取引相手」の信用です。 製品を売ったり、買ったりする取引の相手が ・ちゃんとお金を払うのか? ・ちゃんと製品を送ってくるのか? という商売の基本的なことをしてこない可能性があります。 海外という物理的に距離がある会社と取引をするのですから、相手のことをよく知らない、状況が随時分からないとなると、 普通に損をする可能性が高いのです。 貿易取引をしたことがない人からしたら、「本当にそんなリスクがあるの!?」と思われるかもしれません。 それは日本という国がビジネスの取引においては本当にちゃんとしているからです。 貿易取引歴が長い私としても、日系企業との取引は 確かに要求などは厳しいけれども、金払いの良さ、商品の安全、納期を遵守する姿勢が抜群に良いと実感しています。 もちろん人や会社にもよりますが、 私たち日本人の感覚や商習慣からすると、海外の会社との取引では ・支払いをわざと遅らせる ・粗悪品を普通に入れてくる ・商品の梱包や包装が不十分 ・納期が平気で1ヶ月以上遅れる ・よく分からない項目を入れて金額を請求してくる など、考えられないことをしてきます。 これは良い悪いではなく、商習慣の違いです。しかし、他の国ではこれらが一般的という国もあります。この商習慣の違いをカバーする為に正しい貿易知識があるのです。 為替のリスク また海外ということで為替のリスクもあります。 為替は日々変動しています。極端な円高や円安に為替が振れてしまうと儲けが大きく減ったりすることもあります。貿易取引においては為替変動も常に意識をしなければいけません。 国際的な規則の理解 他にも貿易には国際的な規制を理解していなければいけません。 この規制を理解せずに「儲かるかも!」と盲目的になってしまい、税関で貨物が止まり 大赤字になってしまうケースはよくあります。本当によくあります。 では、どのような規制があるのでしょうか? ・知的財産の侵害 ・環境問題 ・危険品 ・絶滅危惧種 ・外来種 ・国内産業の保護 ・安全性の遵守 大枠で見たら「当たり前」と思うかもしれませんが、これが実際の商取引になると、知らずに規制を無視して 進めてしまっているケースが本当によくあります。 これらの規制についての解説はまた別の動画を作りたいと思いますので、まずは、ざっくり このようなものがあるとだけ理解してください。 今回のトピックのまとめ! では今回のお話のポイントをまとめましょう。貿易取引がなければ、現代の物質的な豊かさはありえません。 しかし他国の人と取引をする貿易には ・代金支払い(信用リスク) ・製品の発送(ダメージ・納期) ・為替変動 などのリスクがあります。 また「世界の条約」「各国の規制」を理解していないと、送れると思った製品が送れなかったり、税関で止められたりして大赤字になるケースもよくあります。 これらのリスクをカバーするのが正しい貿易知識です。 このチャンネルでは正しい貿易の知識を分かりやすく随時更新をしていきますので、一緒に学んでいきましょう。 今回のお話は以上になります。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

関税の基礎知識について | 輸送・ロジスティクス

関税の基礎知識について

関税の基礎知識について動画で解説 どうもこんにちは。飯野です。 今回は、輸入に関する手続きで欠かせない、「関税の基礎知識」。こちらについて解説をしていきたいと思います。 関税の重要性 フォワーディング業務の中で、お客様から輸入時の関税の問い合わせは非常に多いです。 条約や国の法律に則り、税金として支払うお金に関する部分なので、関税の申告・支払い手続きは輸入において重要な部分となります。 関税とは何か まずはじめに、関税とはどういったものなのでしょうか。 日頃ニュースなどでも、「関税」というワードをよく耳にすることがあるかもしれません。 関税とは一言で表すと、「外国からの輸入品に対して国が課す税金」と定義されます。 個人が収める消費税・所得税、そして企業が収める法人税、これらと同様に国から徴収される税金の一種です。 関税の目的 徴収された関税は国の財源となりますが、関税をかける一番の目的は、自国の産業を保護するためです。 安い外国製品が大量に輸入されてきて市場に出回ると、国内製品が売れなくなり国内産業は廃れてしまいます。 輸入製品に関税をかけると、その分製品にコストがかかり、市場で販売する価格も高く設定されることとなります。 関税によって、輸入品の市場での競争力も調整をすることになるのです。 外交政策としての「報復関税」 ちなみに関税は、外国との通商政策や外交政策にも関わってきます。 例えば、外交問題で「報復関税」という政策が取られることがあります。 相手国への制裁として、相手国からの輸入品に高い関税をかけます。 すると相手国から製品の参入がしづらくなり、相手国の輸出産業に大きな打撃を与えることになります。 関税の制度の取り決め方 次に、関税の制度はどのように取り決めをされているのでしょうか。 輸入時に関税を収める仕組みは、日本を含め世界中の国々で存在します。 その中で、国際機関である世界税関機構(WCO)は、税関や関税に関する手続きの統一化に携わっています。 HS条約 そのWCOが関税の制度を作成し、世界の大半の国が加盟しているHS条約では、HSコードと呼ばれる6桁の番号を用いて、 輸出入対象の製品を種類ごとに分類し、製品ごとに関税率が決められます。 この関税率は、輸入国ごとに数値が異なります。 ちなみに日本では、世界共通のHSコード6桁にさらに3桁の数字を加え、計9桁の数字で輸出入品の統計表を用いています。 この統計表で分類された製品に対し、それぞれの税率を定めたものが、「実行関税率表」と呼ばれます。 また、関税は通常 輸入者に支払いの義務が発生します。 このHSコードによる分類は、正しい関税率を決めるために必要で、輸入者が支払う金額にも直結してくるのです。 日本の関税率の種類 日本の関税率には、いくつかの種類があります。 実行関税率表には、すべての品目に対しての基本税率が記載されています。 その他に、一定期間の間に輸入される品目に対して定められた暫定税率。 途上国の産業を保護するために適用される特恵税率。 EPA、すなわち経済連携協定などの協定を結んだ国同士で適用される、協定税率と呼ばれるものもあります。 関税の金額算出方法 関税は、インボイスのCIF価格に基づいて、その割合で金額が確定されます。 CIF価格とは、製品価格に、国内で運送に掛かった輸送費、そして海上や航空輸送で発生した運賃、保険料込の価格のことです。 また、価格に加えて、対象となる製品の原産国が、関税の金額を確定する上で重要な要素となります。 つまり、製品の原産国によって適用される税率が変わる場合があるためです。 先ほど説明した実行関税率表の中で、特恵受益国と認定されている途上国産の製品であれば、特恵税率で無税となったり、 EPAやFTAで協定を結んでいる国の原産品であれば、優遇された協定税率を輸入製品にかかる関税に適用することができるのです。 そして優遇された関税を適用するために、原産国の証明となるのが原産地証明書です。 関税の納付方法 では、関税を収めるにあたっては、具体的にどういった手続きが行われているのでしょうか。 まず輸入時に、貨物が船や飛行機で輸入国に到着し、その後で保税地域に搬入されています。 そして基本的には輸入申告を税関に行う際に、関税の納付申告も一緒に行うこととなります。 この申告は、日本ではNACCSと呼ばれるシステム上でされます。 関税の支払い義務は輸入者にありますが、輸入国のフォワーダーなどの通関業者に輸入申告を依頼する際に、関税の納付も依頼しているのが通常です。 昨今では通関業者が関税を立て替える金額が大きすぎて問題になっているケースもあります。 DDPなどのタームの場合 ちなみに、DDPなどのタームによっては、関税の支払いの責任範囲が輸出者となるケースもあります。 納税の申告にあたって、貨物の品名・個数などの情報、そして、インボイス、パッキングリスト、船積書類、原産地証明書などの関連書類の提示が必要です。 申告内容に誤りがあったら? CIF価格に基づき、関税の税率で、実際の金額が決定されます。 しかし、申告の内容が誤っていたり、特定の製品を申告しなかった場合は、税関より過少申告加算税や無申告加算税などが請求されることとなります。 申告内容は誤りがあってはいけません。 また意図的に無申告すると、それは密輸行為になります。 関税が減免される場合 逆に、関税が減免されるケースもあります。 例えば、再輸入し性質や形状が変化していないと認められる貨物、修繕のために一度輸出された貨物などは、減免の対象となることがあります。 数千万円のインボイス価格のものであれば、関税の支払いだけで何百万円にものぼります。 特恵関税や協定関税を適用したり、減免の制度を使用すれば、支払う金額が何百万と違ってくることがあります。 関税は適用される税率、また関税の種類は基本税率や特恵税率など、何種類か存在し、法律や制度と関連しています。 該当の申告がどの種類のものに適用されるか、判断することも必要になります。 輸入時の関税の申告も兼ねているため、輸入通関手続きは特に慎重に行う必要があります。 まとめ 最後に話をまとめましょう。 関税とは世界中で導入されている、自国の産業を守るために輸入品に適用される税金となります。 HSコードと呼ばれる共通の製品分類基準を基に、各国が各輸入品の税率を決めています。 関税率には、基本的な税率・製品の原産国を対象を考慮し、優遇された税率が適用される特恵税率、協定税率などがあります。 関税の申告は、輸出入の通関時に税関に行いますが、特に重要なのが輸入国の通関申告です。 申告内容によっては関税の減免がされるケースもありますが、逆に過少申告など誤りがあれば追加で徴収されてしまうこともあります。 特に輸入者さんは、輸入の負担金額にも直結するため、関税については注意をしましょう。 今回のお話は以上になります。ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

スエズ運河の座礁問題 | 物流コラム

スエズ運河の座礁問題

スエズ運河の座礁問題を動画で解説 どうもこんにちは。飯野です。 今回は 現在世界的に話題になっているスエズ運河の座礁の問題についてお話をしていこうと思います。 3月23日にエバーグリーンという船会社のEver Givenという名前の船が、スエズ運河で座礁をしたというニュースが飛び込んできました。 問題なのは、そのEver Givenという船は全長400mもあって、スエズ運河を完全に塞いでしまうほど大きく 他の船が強制的に通行止めを食らっている状態です。 ちなみにですがこの船を所有している会社は正栄汽船という日本の会社です。 スエズ運河について スエズ運河は地中海と紅海を結ぶ運河で、アジアと欧州を最短距離でつないでいて、世界の貿易の約12%がこの運河を経由しています。 一年で約19,000隻の船、1日で約50隻の船が通行する、国際物流にとっては重要な運河です。 なんで今回、船が座礁したかというと、船に電気系のトラブルがあって、更に強風と砂嵐のために視界が悪化してしまい座礁してしまったとのことです。 船が座礁する場合の多くが運航時のナビゲーションミスが原因だと言われています。 スエズ運河は水深が比較的浅い方でして、こういう事故は割と発生しがちな運河です。 実際に今回の座礁が初めてではなく、過去10年に25回の座礁事故がありました。 対処方法 現在では突っ込んだ船首の周りの沿岸部分を削ったり、タグボートで押したりして動かそうとしていますが、 この台本を書いている3月27日時点では、この船のサルベージ(引き上げ)作業は難航していて、現時点で約300隻の船がスエズ運河周辺で待機をしています。 今回 座礁したコンテナ船はコンテナがほぼ満帆な状態で座礁してしまっています。 動かすにはとにかく重たい状態なのです。 もし現在のサルベージ活動がうまくいかないとなると、コンテナを降ろしたり、燃料を抜いたりして、軽量化してから動かすことになり、数週間かかるとも言われています。 もし数週間もスエズ運河が使えない状態だと、船は南アフリカの喜望峰を回らなければいけません。 こうなると追加で10日以上の日数がかかるだけでなく、燃料もかなりの量を消費することになるので、現在 約300隻の船が待機という選択をとっています。 座礁問題による影響 現状は分かったと。ではこの問題がどのように影響するのでしょうか? 離礁作業がすぐに終われば、影響はそれほど大きくはないと思います。 しかし、コンテナを積み下ろしたりして、数週間がかかると、現在のコンテナ不足に更に影響が出て、海上運賃も上がることになります。 先ほどご説明したように、喜望峰を回ることになると、10日以上の日数がかかるわけです。 この追加の10日間というのがかなり大きくて、コンテナの回漕にも時間がかかるし、余計に燃料を使うことにもなるので 船会社もそれを補填する形で値上げをしてきます。 それだけは本当に勘弁して欲しいです。 1956年のスエズブーム ちなみにですが1956年に第二次中東戦争が勃発して、スエズ運河が1年閉鎖されたことがあります。 この時は船が喜望峰回りを強制されることになったり、船の絶対数が足りなくなって、船会社は不定期戦の運賃を2倍にして海運業界は好況を迎えました。 いわゆる「スエズブーム」と呼ばれているものです。 今回の座礁の問題は1年も続くことはないでしょうが、もしサルベージに数週間かかるとなると スポット的な「第二次スエズブーム」が海運業界に訪れるかも知れません。 荷主からしたらたまったものではないので、早い解消を祈るばかりです。 まとめ それでは今回のお話をまとめましょう。 3月23日にエバーグリーンという会社のEver Givenという20,000TEUクラスの大型船がスエズ運河で座礁をして、運河を塞いでしまいました。 これにより3月27日時点では約300隻の船が足止めされている状態です。 現時点では離礁作業は難航しています。 もし、このまま船を動かすことが出来なければ、満杯に積まれているコンテナを下ろしたり、燃料を抜いたりして軽量化をしなければいけません。 そうすると作業として数週間がかかることになり、この期間はスエズ運河が使えなくなります。 もしそうなってしまうと、船は南アフリカの喜望峰をまわることとなって、追加で10日以上の航海をすることになります。 これは現在のコンテナ不足に更に悪影響を及ぼします。 海上運賃もスポット的ですが更に上がることになるでしょう。 私としても1日も早い離礁を祈っています。 今回のお話は以上になります!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

日本の近代海運の歴史と今後の課題 | 物流コラム

日本の近代海運の歴史と今後の課題

日本の近代海運の歴史と今後の課題について動画で解説 どうもこんにちは、飯野です。 今回は日本の近代海運の歴史と今後の課題というテーマでお話をしていきたいと思います。 菅哲賢社長の著書「最適物流の科学」 今回の動画を作るにあたり、参考にした本があります。 それは、ジャパントラスト株式会社 菅 哲賢(てつまさ)社長の著書「最適物流の科学」です。 ジャパントラストさんは弊社の日本の代理店で菅社長は私ととても考えが似ている感じで、この本の内容も共感できるところが多かったです。 この本には日本の国際物流の歴史やフォワーダーとしての在り方、フォワーダーの選び方なども書いてあって 私にとっても非常に勉強になる本だったのでお勧めです。 それでは、本題にいってみましょう! 海運なくして日本の経済なし ご存知の通り日本は島国です。 そして日本は全てを自給自足しているわけではなく、外国との貿易によって生活に必要なものや工業製品などを輸出入しています。 特に天然資源に関しては99%を輸入していて「海運なくして日本の経済なし」と言えるほど 海運とは切っては切れない地理的な特徴があります。 日本の海運を切り拓いた2社 日本の近代海運で有名人、というと誰を思い浮かべますか? 私は「岩崎彌太郎さん」を最初にイメージしてしまいます。 この方が1885年に日本郵船という船会社を設立し、今でもこの会社は世界中に支店があり、日本の海運を支えています。 郵船ロジスティックスというフォワーダーや倉庫など、総合的な物流でも有名ですね。 そしてもう一社 当時の日本の海運を切り拓いた会社がありまして、それが大阪商船会社。今でいう商船三井の最初会社です。 この2社が日本当初の、遠洋定期船を運行して、インド、欧州、北米、南米、豪州、台湾などとの貿易の架け橋となっていました。 近代海運の成長 これらの会社が近代日本史において成長したのは、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦です。 ロジスティックスという言葉は「兵站」と呼ばれる軍事用語です。 戦争による物資の輸送で日本は海運大国になりましたが、第二次世界大戦では軍用船だけでなく商船も戦争に使われ、約2千数百隻という船が失いました。 またゼロからのスタートになったわけです。 スエズブーム 戦後に少しずつ日本の船会社は経営を立て直していき、大きなきっかけとなった要因がスエズ運河です。 1956年にエジプトの当時の大統領がスエズ運河の領有を宣言しました。 この時に利権を巡って、エジプト、イスラエル、イギリス、フランスと対立が激化して、第二次中東戦争が勃発。スエズ運河が閉鎖されました。 これにより、大量の船が南アフリカの喜望峰回りを余儀なくされたんです。 すごい遠回りをしないといけないんですね。 世界中で船舶の絶対数が足りなくなり、海運市況は暴騰しました。 いわゆる、スエズブームです。このブームにより不定期船の運賃は約2倍となり 日本にとっても海運業界は第二次世界大戦後で初めての好況になりました。 しかし、スエズ運河が元通りに開通しますよ、ということで、このブームはたった1年で終わります。 そして更に悪いことにブームの反動もありました。 この時に船舶を作りすぎて供給過多になり海運業界は大不況となります。 海運業界の不況 日本の海運会社も経営悪化し、当時12社あった日本の船会社は、買収や合併を繰り返して、最終的に ・日本郵船 ・川崎汽船 ・大阪商船三井船舶 ・ジャパンライン ・山下新日本汽船 ・昭和海運 の6社に集約されました。 スエズブームの後 海運業界は不況でしたが、日本は歴史でも勉強した通り、戦後の複数の好景気を経て、高度経済成長をしていきます。 当時の為替は1ドル360円もして、輸出に非常に有利な状況でした。 しかし、ここから日本の海運業界にとっては、またも厳しい状況に経済は変わっていきます。 為替による更なる不況 当時の為替は固定相場制でした。1ドルが360円くらいで固定されていたら、日本の輸出にとっては有利な状態が続きます。 しかし1973年に固定為替相場制から変動為替相場制に移行します。 そして第一次オイルショック。燃料費の高騰と世界的な不況となります。 更に1985年の「プラザ合意」でドル高が是正されて、当時240円/ドル から約120円/ドルになり一気に円高になりました。 海上運賃はドル建てがほとんどです。 円高になると円での収入が減ってしまいますし、輸出製品の競争力がなくなって輸出する貨物が減ってしまいます。 1980年代は日本経済はバブルでしたが、日本の海運会社にとっては実は不況だったんです。 このような状況で、生き残るべく日本の各船会社は、撤退や吸収合併をしながら、6社に集約されていたものが 1990年代に日本郵船、川崎汽船、商船三井の3社となりました。 経済的な世界の海運市場 次に経済・経営的な視点から世界の海運市場について説明をしてきます。 海運業界は不景気だったんですが、世界的にコンテナ貨物の輸送量は増加をしています。 グローバル化に伴う国際分業が発展していったからです。 例えばアメリカのAppleのiPhoneの部品は各国で作られいますし、最終的には台湾のホンハイという会社で組み立てられています。 どれくらいコンテナの輸送量が増えていたかというと 2004年〜2014年の10年間で、日本を除くアジアではコンテナ輸送量は約2.2倍増えています。 一方で日本はというと約1.3倍で増えてはいるが、他国に比べるとそれほど大きな伸び率ではありません。 世界的に荷動きの量が増加してるんだったら、何で船会社は不景気なの?と思われる方もいると思います。 それは、船の「巨大化」が原因となっています。 近年の船は巨大化しており、大きい船だと20,000TEUといった、20feetコンテナなら2万個を一度に運ぶことが出来ます。 船会社は船のサイズアップをすることで輸送の合理化を進めていき、コストダウンを図ろうとしたんです。 しかし貨物の実際の輸送量より、運べるスペースの方が多くなり、供給過多になってしまいました。 船会社は船の輸送スペースを在庫することは出来ません。 なので、一度の航海で出来る限り船のスペースをいっぱいにしないと、船会社は赤字の状態で船を運行することになります。 この船の巨大化が要因の一つで、世界の船会社は各国で競争が激化していきます。 現在はコロナによってコンテナ不足が発生して、海上運賃の高騰が激しいんですが、 それよりも以前では、海上運賃はずーっと底値をキープしていました。 日本からタイの輸送でも40feetコンテナで200ドルしない金額でした。 2016年に韓国の大手船会社が倒産したのも、この激しい価格競争による、ずっと長く続いていた低価格運賃が原因でしょう。 この強烈な価格競争に生き残るべく、海運業界では世界的な規模で、船会社の買収が繰り広げられました。 日本の船会社もそれに負けじと、日本郵船、川崎汽船、商船三井の3社でコンテナ事業が1つに統合され 2017年にONE(オーシャンネットワークエクスプレス ホールディングス)として設立されています。 安い日本の海運マーケット そして意外かもしれませんが、近年の日本の海運マーケットは世界一安いとも言われていました。 これは船会社と実荷主の直接契約の歴史が長いのも、原因の一つだと考えられています。 これまでは船会社が荷主に運賃を提示する際に、 ・大手荷主だから ・有名荷主だから ・付き合いが長いから といった非経済的な理由で安売りをしていたケースもあったんです。 コンテナ不足 このような安いマーケットプライスの日本の海運業界ですが、現在、起こっていることは何だと思いますか? 「日本にコンテナが集まらない」です。 他の動画でも解説をしていますが、現在のマーケットではコロナウィルスによる世界的なコンテナ不足が発生しています。 これまでに説明したように、ずっと不況で赤字経営を続けていた船会社は、このタイミングで運賃を上げて一気に黒字に持っていっています。 船会社にしてみると収益性が低い日本にコンテナを集めるより、収益性の高い中国から北米、欧州へのロングホールにコンテナを集める方が儲かります。 多分 多くの方が今回説明したような海運業界のことを知らなかったと思いますし、 これまで不況を経験してきた船会社の状況を考えると、分からなくもない経営判断だと思います。 とはいえ、これは問題です。 現在では日本のコンテナ不足は本当に深刻で、貨物を送りたくても送れないという状況が続いています。 こんな状況なので冒頭でご紹介させてもらった、ジャパントラストの菅社長は「変えたい」と強く思っていらっしゃいます。 ジャパントラストの挑戦 ちょっとここで、ジャパントラストさんの「挑戦」を紹介させてください。 同社は日本→北米向けの貨物取扱量が世界で第6位のフォワーダーです。 グローバルフォワダーでもない社員25人くらいの名古屋の小さなフォワーダーが、世界6位とは本当に凄いことです。 現在、行われている彼らの挑戦は、なんと名古屋からアメリカのLA港まで、在来船を自社でチャーターすることです。 今回説明したように、現在 日本にはコンテナが集まりません。 これをフォワーダー1社で何とかしようというのも無理な話なんですが、ジャパントラストの社長は何か「挑戦する」ことで 日本の海運関係者たちの意識を変えようとされています。 そしてこの在来船のチャーターには3,000万円くらいの費用がかかり、同社のお客様の貨物を集めても2,000万円くらいにしかならず 残り約1,000万円が足りていない状況です。 ここでお知らせなんですが、同社はこの名古屋→LA港までの在来船チャーターの費用で、クラウドファンディングを実施されています。 「赤字になっても必ず運行する!」とのことですが、関係者様の支援を呼びかけています。 クラウドファンディングの詳細については概要欄にリンクを貼っておきます。 ちなみにですが、これは同社からの企業案件ではありません。 それどころか、私個人的にも支援をさせてもらっています^^ 今後の日本の海運市場 もしこのまま日本の海運が変わらなければ、邦船や日本の市場はこれからどうなっていくのでしょうか? もしかしたら外国の企業に買収され、日本に寄港する船が一気に減るなんてことも可能性としてはゼロではありません。 もし、そうなったら島国にある日本の企業は圧倒的に利便性を欠きますし、輸送を他国にコントロールされることにもなるのです。 私としては、今回ご説明させてもらったような日本の海運市場についても知っていましたし、現在コンテナが日本に集まっていないのも知っていました。 でも あまりにも大きな問題だし、自分で出来ることはないと思い傍観していました。 しかし、同社の挑戦を見て、日本のこれからの海運の為に、私自身が何か力になれないかと思い 今回の近代日本の海運の歴史と、課題を皆さんにお伝えしようと思った次第です。 まとめ それでは今回の話をまとめてみましょう。 日本は島国で海運を使った貿易によって経済が成り立っています。 戦後にスエズブームで好況に移った海運市場ですが、この時に船を作り過ぎてしまい、ブーム終了時には反動で一気に不況が訪れます。 日本は好景気を迎える一方で、政治的な要因で円高に向かっていくことになり、生き残りをかけて買収や合併を繰り返し 日本の船会社は日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社だけが残りました。 そしてコンテナ事業はこの3社で合併されONEと2017年になりました。 海運市場は不況ですが、貨物の荷動きはグローバル化が進む中で、右肩あがりに増えていきます。 世界の船会社は海上輸送を合理化するために、船を巨大化させていくのですが、巨大化した船のスペースは、需要より供給が圧倒的に多くなってしまい 船会社同士で競争が激化していきました。 去年までは低価格運賃が続いていて、その中でも日本の海運市場は世界一安いと言われることもありました。 そして現在ではコロナウィルスが起因して発生したコンテナ不足となり、海上運賃は高騰したものの、 日本にコンテナが集まらないという問題が発生しています。 この問題に対して何か変えなければいけないと、ジャパントラストという名古屋の小さなフォワーダーが挑戦をしています。 私たち個人では出来ることは少ないかもしれませんが、私たち海運関係者の多くが歴史や現状を知り、 少しでも意識を変えることが出来れば、日本の海運がより良い未来に向かうかもしれません。 今回のお話がそのきっかけになれば嬉しいです。 今回のお話は以上になります。どうもありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

旧正月明けのコンテナ不足の影響の現状 | 物流コラム

旧正月明けのコンテナ不足の影響の現状

旧正月明けのコンテナ不足の影響の現状について動画で解説 どうもこんにちは飯野です。 今回は中国の旧正月明けの、コンテナ不足の現状についてお話をしていこうと思います。 2月中旬以降に旧正月が明けて、まだ1ヶ月も立っていないので 統計的なデータがまだ出ていません。 なので あくまで私の主観が強い内容になりますが、参考になれば幸いです。 ではいってみましょう! コンテナ不足の現状 昨年の11月頃にコンテナが足りないと、問題になり始めた時ですが その時のコンテナ不足の問題解消は、中国の旧正月明けくらいかもと一部では言われていました。 その理由の一つとしては、中国のコンテナ製造会社に発注していたコンテナが納品されるのが、大体 旧正月明けと言われていたからです。 では実際のところはどうなのでしょうか? 残念ながら現状は全く改善していません。 相変わらずアジアではコンテナが足りない、船のスペースが取れないといった問題が継続して発生しています。 じゃあ、いったいコンテナはどこにあるのよ?と思う人も多いでしょう。 以前の、コンテナ不足に関する動画でも説明をしましたが、コンテナは、アメリカやヨーロッパの内陸、港、そして海の上にあります。 なぜそんな所にあって、コンテナが戻ってこないのかは、以前の動画で詳しく解説していまして概要欄にリンクを貼っておきますので是非みて見てください。 海上輸送の市況 では前回からの進捗はないのか?と思われる方のために、市況をもう少し詳しく解説します。 まず海上運賃ですが、昨年の11月以降からものすごい勢いで上がっていました。 統計がこのように出ているので見ていただきたいのですが、今年の1月時点ではまだ上昇しています。 気になる方は動画を止めてじっくりと見てください。 しかし、中国の旧正月が明けた3月現在。 まだ統計データは出ていなくって、弊社がとっている海上運賃の情報になりますが タイからアメリカの西海岸、東海岸向けは少し下がっております。 一旦はピークを超えたという感じでしょうか。 ではアジア・東南アジアではどうかというと、タイにある弊社の数字ですが、まだ海上運賃は少しずつ上がっています。 これはなぜか?というと、タイに限定的な話になるんですが 3月、4月はドリアンの輸送シーズンなのです。 更に4月中旬はタイの旧正月です。 毎年本当に沢山のドリアンがタイから中国にリーファーコンテナで送られます。 船会社もドリアンの輸送にコンテナや船のスペースを優先させますし、旧正月前という長期連休の駆け込み輸出の増加もあるので タイからの輸出は相変わらずスペースが取りにくい状況です。 ここで改めてなのですが、このコンテナ不足の問題で 、具体的にどのように物流が混乱しているかも説明させてください。 スケジュールの乱れ 現在の問題のポイントは、海上運賃の上昇も、もちろん大きな問題なのですが 「スケジュールが全く読めない」というのも実は大きな問題なのです。 なぜスケジュールが全く読めないのか??この要因はコンテナ船の ・ディレイ ・オミット ・ロールオーバー です。 一つずつ解説していきます。 ディレイについて まずディレイ。これは船が予定しているスケジュールから遅れていることを表します。 なぜ船が遅れるのか?それは港の混雑が影響しています。 現在、各港では沢山の船が貨物を積んだまま、積み降ろす順番を待っている状況です。 この沖待ちの期間はアメリカのロングビーチだと1週間以上であったり、アジアのハブであるシンガポールでも5日以上待つこともあります。 なんで港が混雑しているかは以前の動画で解説しているのでそちらをご確認ください。 この港の混雑が原因で船の2−3日の遅れは当たり前で、1週間近く遅れるケースもあります。 オミットについて では船会社はこの遅れを解消するために何をするのでしょうか? 次のキーワードのオミット。抜港です。 コンテナ船は決められた航路に複数の寄港する港があって、そこでコンテナを積み込み、積み下ろしをして航海をしていきます。 そしてスケジュールを早めるためにこの港には寄らないで、次の港にいこうと抜港がいきなり決定されます。 現場で対応している私たちからすると、抜港の連絡が来て、お客様に「抜港になりました。。次の週の船に乗せることなります」とお伝えしなければいけません。 貨物のローディングの1、2週間前に連絡があればまだマシですが、貨物が積み終わって港に入ってから抜港の連絡もあったりします。 ロールオーバーについて そして最後にロールオーバー。日本語でいうとコンテナの積み残しです。 現在、船会社はオーバーブッキングをしています。 オーバーブッキングというのは100%でフルスペースの状態だけれども、ブッキングを受け付ける時に例えば120%くらいまで予約を受けます。 そこから荷主がキャンセルをしていって、これがもし110%くらいにしかならないと、オーバーした10%分はロールオーバーとして予定していた船に積み込まれません。 翌週の船に回されることになります。 そしてそれは混雑しまくった経由港だと更に大変なことになっています。 現在 どれくらいロールオーバーされているかというと シンガポールやマレーシアのポートクランのような経由港だと40〜50%。 韓国のBusanや中国のShanghai港でも30%くらいです。 このように港によっては、半分から3分の1のコンテナが港に積み残しをされるということです。 このディレイ、オミット、ロールオーバーですが単発で発生する分にはまだマシです。 実際のところはロールオーバーされて、翌週の船がオミットというコンボを受けたりします。 それが経由便であれば、経由地で次の接続船でのロールオーバーも普通にありえます。 こうなると荷主にとっては2週も3週も遅れてしまうわけです。 現場でできる対応 私もたまに「工場が止まってしまうから何とかしてくれ!」と強烈なプレッシャーを受ける時がありますが、出来ることは船会社の営業マンに「頼むからこのコンテナだけはロールオーバーしないで!」と依頼することだけです。 オミット(抜港)は船会社の営業マンがコントロール出来ることではありませんし。 ロールオーバーもどこまでコントロールできるかは船のキャパシティーもありますので、必ず何とかなるというものではありません。 このように海上輸送のスケジュールが正常な状態ではないので、私たちがお客様にお願いしたいことは、可能な限り在庫を持って頂くことです。 もちろん保管スペースや倉庫費用などの問題があるというのは十分に理解しております。 ですがこのようにスケジュールが安定していない、またコントロールすることが難しい状況なので、何を優先するかだと個人的には思います。 コンテナ不足はいつまで? では、イーノさん、状況は分かったと。 そしたら今度はいつになったらこの状況は改善されるの?という質問が飛んでくると思います。 これが分かれば苦労しないのですが、コロナのワクチンが流通して、アメリカやヨーロッパの港が正常に動き始めるのは早くて6月末くらいでしょうか。 地域によってはそれ以上かかる可能性も十分にあります。 ある機関によると今年いっぱいかかるという見方もあります。 例えば、先日 アメリカのバイデン政権で約200兆円の経済対策法案が可決されました。 これにより高所得者以外の国民に約15万円が給付されます。 これがサービスではなく商品の消費につながると、また中国からアメリカに貨物がドーンと渡ることになり、西海岸のロサンゼルスやロングビーチ港にコンテナが滞留する可能性がありますし、更なるコンテナ不足になる可能性もあります。 「本当にどうなるか読めない」というのが私の個人的な感想です。 まとめ では今回のお話をまとめましょう。 中国の旧正月明けにはコンテナ不足の問題は解消するのでは?という見通しは外れて、今もまだ国際物流の混乱は解消していません。 旧正月明けの海上運賃の統計はまだ出ていないのですが、タイにある弊社の数字では、アメリカ向けの運賃は収まってきてピークを超えた感じですが、アジア向けはまだ微妙に上がっています。 タイからだと3月、4月はドリアンやソンクラーン前ということもあり、更にスペースが取りにくい状況が続いております。 アジアでは船のディレイ、オミット、ロールオーバーが多発しており、スケジュールが全く読めない状況が続いています。 私たちフォワーダーや船会社のいち営業マンがコントロール出来ることではないので 出来ることとしたら、お客様に現状を理解してもらうことと、可能であれば在庫を持ってもらうことです。 この状況がいつまで続くかは正直分かりません。早くて6月末かもしれませんし、何か他の要因で今年の年末まで続くかもしれません。 現在 私に出来ることは国際物流の現状をお伝えして、お客様に理解をして頂き、 コントール出来ないことばかりに目を向けるのではなく、自社のコントロール出来ることに注力を注いで頂きたいと思っております。 引き続き情報を更新していきますので、何卒宜しくお願い致します。 今回のお話は以上です。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。