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2021年9月

国際複合輸送 / シーアンドエア、クロスボーダートラックについて | 輸送・ロジスティクス

国際複合輸送 / シーアンドエア、クロスボーダートラックについて

国際複合輸送 / シーアンドエア、クロスボーダートラックについて動画で解説 どうもこんにちは、飯野です。 今回はシー・アンド・エアと、クロスボーダートラックを使った国際複合輸送について解説をしていきたいと思います。 前回の動画では船と鉄道を組み合わせたシー・アンド・レイルという輸送方法と、様々なルートについて解説をしました。概要欄にリンクを貼っておきます。まだ見ていないという方は是非そちらもご覧になってください。 国際物流を担当するポジションであれば、色んな国際複合輸送について理解をしておいた方がいいと思います。それではいってみましょう。 シー・アンド・エアのルート まずシー・アンド・エアの国際複合輸送を見てみましょう。シー・アンド・エアはその名の通り、海上輸送の後に飛行機に乗せ換える輸送方法です。 アジア~ヨーロッパ アジアからヨーロッパのシー・アンド・エアのルートでは、アジアのハブとして、また港から空港までの距離が近い、香港やシンガポールが有名です。 例えば、タイで製造した電子部品を香港まで海上輸送し、そこから仕分けをしてヨーロッパ各地に航空機で輸送することも出来ます。 これについては保税輸送の動画も合わせてご覧になって頂いた方が分かりやすいと思いますので、概要欄にリンクを貼っておきます。 アジア~北米~南米 次にアジアから中南米へのシー・アンド・エアを見てみましょう。 中南米向け貨物は アジアから①アメリカ西海岸までと、②パナマ運河を経由してマイアミまで海上輸送し、その後に航空輸送で中南米の各地に輸送するルートがあります。 どこで積み下すかは価格や船のスペースなども含め、ケースバイケースで選ぶ事が出来ます。 このようにアジアからヨーロッパ、アメリカという長距離輸送において、海上輸送と航空輸送を組み合わせることでのメリットは、輸送日数の短縮とコストパフォーマンスの良さです。 海上輸送のみに比べると早く、航空輸送のみに比べると安くなります。 取り扱う貨物や、状況に応じて使い分けが出来るので物流を最適化することが出来るのです。 クロスボーダートラックのルート 次にクロスボーダートラックを使った輸送について説明をします。 クロスボーダートラックは貨物を陸続きの国境を超えて、トラックやトレーラーで輸送する方法です。この輸送方法の特徴は「早さ」と「安定したスケジュール」です。 海上輸送の場合、荷主から引き取った貨物をターミナルに搬入して船に積み込み、また輸入地で貨物が船から下されるまで港で約2日の待機時間が発生します。 昨今では港の混雑もあり、貨物が港に降ろされるまで船が沖で待機する沖待ちもあります。アメリカだと1週間の沖待ちもザラにあります。 更に船のスペースがなかなか取れず、予約が取れたとしても、船社のオーバーブッキングの為に、コンテナのロールオーバー(積み残し)が発生し、翌週の船に回されるようなイレギュラーもあります。 一方でクロスボーダートラックでは車両に貨物を積み込みさえすれば、あとは国境まで基本的にノンストップです。 海上輸送の沖待ちのように 荷下ろしに数日かかるような問題もありません。また陸続きなので、道路に沿った直線移動が出来るため移動距離も短くなります。 クロスボーダートラックを使った国際複合輸送 またクロスボーダートラックを使った国際複合輸送もあります。 弊社では日本からタイにコンテナで海上輸入をした貨物を、タイからミャンマーまでクロスボーダートラックで輸送する国際複合輸送の手配をしております。 このような複合輸送をするメリットは、既にご説明した安定したスケジュールです。 昨今のミャンマーでは政情不安もあり、ミャンマーのヤンゴン港を使うよりタイのレムチャバン港を使用する方が、スケジュールが安定しています。 国際複合輸送のデメリット シー・アンド・エアやクロスボーダーを使った国際複合輸送のメリットをお話ししましたが、デメリットもお伝えしておきましょう。 国際複合輸送では荷物の積み替えなどの取り扱いが増えるため、貨物ダメージが発生する可能性が上がります。十分な梱包や貨物保険が重要になってきます。 またクロスボーダートラックでは特別なライセンスがないと、国境で車両を変える必要があります。 例えばタイの車両はミャンマー国内を走れないのです。 その為に、貨物を国境で別の車両に積み替える必要があるのですが、もし貨物がバラ積みの場合、また高価なものと分かる場合、盗難のリスクも上がりますのでご注意ください。 まとめ 別の動画も含めて、国際複合輸送には様々な組み合わせの運び方があり、メリットやデメリットもあると分かりました。コストを抑えたい、納期を早くしたいなど、状況に応じた輸送方法を取引のあるフォワーダーに相談しましょう。 この動画では貿易に関する様々な知識をお伝えしているので、是非チャンネル登録よろしくお願いします。今回のお話は以上になります。ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

欧米大手荷主の自社コンテナ輸送について!コンテナ船 vs バルカー船の費用比較。 | 物流ニュース・物流ラジオ

欧米大手荷主の自社コンテナ輸送について!コンテナ船 vs バルカー船の費用比較。

今日のテーマは欧米の大手荷主による自社コンテナ輸送についてです。 現在の海上コンテナ輸送では北米向けでピークシーズンを迎えており、スペースも取りにくく海上運賃も高騰を続けています。 そのような中で、アメリカの大手小売のウォルマートやホームデポ、またスウェーデンのイケアは自社でコンテナ輸送を手配する動きを見せています。 2021年9月8日 イーノさんの物流ラジオ .standfm-embed-iframe { height: 190px; } @media only screen and (max-device-width: 480px) { .standfm-embed-iframe { height: 230px; } }   大手荷主の北米向け輸送量 まず去年のウォルマートとホームデポの北米向けだけの輸送量をご紹介します。 ウォルマート:93万TEU/年 ホームデポ:53万TEU/年 ウォルマートの93万TEUは20フィートコンテナで93万個分を運んだということです。 現在の最も大きいコンテナ船で2万4千TEUのサイズなので、ウォルマートの輸送量がいかに多いかが分かるかと思います。この数字をだけでも自社でコンテナ輸送をした方がメリットがあるように見えますよね。 ウォルマートの自社輸送 そしてウォルマートは2021年8月に2回 自社でのコンテナ輸送をしました。53フィートコンテナを自社で作り、1回目が177本。2回目が247本のコンテナ輸送です。 そして、このときにチャーター手配した船はコンテナ船ではなく、オープンハッチのバルカー船でした。これはバルカー船でもコンテナを輸送出来ると証明した大きな事例になります。 北米向けコンテナ船、バルカー船の費用 ではバルカー船のチャーターと現在のコンテナ輸送の費用はどのようはものでしょうか?かなり大まかにですが費用感覚をお伝えします。 ・現在の海上運賃 上海 - LA: 約USD 6,000/40’ ・バルカー船(サイズ不明) 名古屋 - LA: 約 USD 300,000/ship ※ 弊社の代理店が2021年にバルク船をチャーターした時の参考費用です。 北米向けコンテナ船とバルカー船の費用比較(ラフ) ・ウォルマートが手配したコンテナ輸送(2021年8月):約200本/ship ・船社で輸送した場合(仮定):200本 x USD6,000/40’ = USD 1,200,000/ship ・バルカー船のチャーター費用(仮定):USD 300,000/ship(NGO - LA) 非常にラフな条件ですが、費用感覚としてはこのようになります。 バルカーの船使用にメリットの可能性がある コンテナは購入する必要がありますが、コンテナは何回も使い回しが出来ます。また先日お伝えしたように、海上運賃の高水準は2022年も予想されます。 海上運賃の高騰 2022年まで?理由を解説しました。 コンテナの購入費用を考えたとしても、自社でチャーターをする方が今年、来年はメリットがあると大手荷主は判断をしたと考えられます。 とはいえ全てのコンテナ輸送を自社で手配することはないでしょう。主に海上運賃が上がりスペースが取れなくなるピークシーズンには、このようなバルカー船を使った輸送方法の選択肢が増えると考えられます。 まとめ 今回のウォルマートやホームデポの自社輸送は海運業界にて新しい輸送方法を実現しました。このような大手主の動きは今後のコンテナ船、バルカー船の市場にどのように影響を与えてくのかが注目だと思います。

2020年 世界のコンテナ港湾の取扱量トップ100 | 物流ニュース・物流ラジオ

2020年 世界のコンテナ港湾の取扱量トップ100

今日はイギリスのロイズレポート(Lloy’s List)による、2020年世界のコンテナ港湾取扱量TOP100についてお話しします。 ロイズレポートはロンドンにて1734年から海運ニュースを発信している歴史ある海運ジャーナルです。 2021年9月7日イーノさんの物流ラジオ .standfm-embed-iframe { height: 190px; } @media only screen and (max-device-width: 480px) { .standfm-embed-iframe { height: 230px; } }   コロナ禍でも成長した経済 去年(2020年)はコロナが始まり、そして各国で感染が深刻化していきました。その為に世界の貨物取扱量は減少したのではないか、とこのニュースを見たときに思いました。 しかし、2020年の世界のコンテナ取扱量は2019年比で2.5%アップをしています。 2018年〜2019年比では4.8%の成長だったので、2020年では成長が鈍化しているものの 世界経済はコロナ禍であっても力強く成長したというのが個人的には大きな印象でした。 中国のコンテナ取扱量が鈍化 そして注目は中国です。2020年、中国全体における港の取扱量の成長は3%未満でした。 これはアメリカのトランプ政権にて中国との貿易戦争があり、世界の大国 二国間での貿易取引に鈍化が見られたからです。トランプ政権ではアメリカ第一主義でしたから。 その中国から減少した分の貿易取引を、他の東南アジアの国々にシフトしていったという流れになります。 世界No.1の中国コンテナ取扱量 とはいえ中国の輸送量は、世界のコンテナ取扱量の全体の40%を占めています。やはり世界最大の人口の多さと、世界の工場としての存在感は大きな影響力を持っています。 2020年 世界のコンテナ港湾ランキング それでは2020年のコンテナ港湾 取扱量のランキング発表していきます。 【トップ5】 1位:上海 2位:シンガポール 3位:寧波 4位:深セン 5位:広州 中国の港の影響力 なんとトップ5に中国の港が4つも入ってます。 上海は11年連続不動の1位です。2位のシンガポールは世界のハブとして有名ですよね。シンガポールで生産や消費が多くされたのではなく、ハブとしてコンテナの取り扱い多い港です。 そして3位と4位の寧波と深セン。2021年ではこの2つの港の港湾作業員にコロナ感染者があり、一部のターミナルが閉鎖されて国際物流に大きな乱れがありました。 このように世界でNo.3とNo.4の大きな港の一部が閉鎖されるというのは、非常に大きなインパクトがあり大問題につながると実務においてもよく分かりました。 各地のコンテナ取扱量ランキング 次に個人的に気になった港のランキングを紹介していきます。 【イーノさんが気になるランキング】 ・6位:釜山 ・10位:ロッテルダム ・11位:ドバイ ・12位:ポートクラン ・16位:ロサンゼルス ・20位:レムチャバン ・25位:ホーチミン ・33位:ジャワハーラル・ネイルー ・39位: 東京 コンテナ取扱量から見る経済 釜山、ポートクランはアジアのハブ港で有名です。10位のロッテルダムはヨーロッパのハブ港。11位のドバイは中東・アフリカへのハブ港になります。 20位のレムチャバン港、25位のホーチミン港はハブ港ではありません。生産拠点として東南アジアのタイやベトナムの強さが確認出来ます。 生産国としてのインドの可能性 そして33位のジャワハーラル・ネイルー港はインドで初ランクインした港です。次いで37位にムンドラ港になります。インドの人口は中国に続いて多い国にも関わらず初ランクインが33位というのは、インドがIT大国だというのを表しています。 しかし今後 インドが生産拠点として影響力を持つようになれば港の勢力図は変わってくるかもしれません。 まとめ このようにコンテナ取扱量の流れが分かると、大きい視点での経済の流れが見えて 非常に面白いと個人的には思います。 今回のロイズレポートのリンクを貼っておきますので、是非 見てください。 ロイズレポート(Lloy’s List)による、2020年世界のコンテナ港湾取扱量TOP100

海上運賃の高騰 2022年まで?理由を解説しました。 | 物流ニュース・物流ラジオ

海上運賃の高騰 2022年まで?理由を解説しました。

今日のテーマは海上運賃の高騰はいつまで続くのか?というテーマでお話をしていきたいと思います。 今日のストリート・ジャーナルの物流カテゴリーのニュースではアメリカ港湾関係者が、昨今の海上運賃の高騰は2022年まで続くと予想しているとの記事でした。これについては私も同意見です。 2021年9月6日イーノさんの物流ラジオ .standfm-embed-iframe { height: 190px; } @media only screen and (max-device-width: 480px) { .standfm-embed-iframe { height: 230px; } }   北米向けのピークシーズン〜いつまで? 現在では北米西岸沖に40隻もの船が貨物の積み下ろしの順番を待って沖待ちしています。コロナ前であれば沖待ち自体が珍しい状態だったのにも関わらずです。 2022年2月 中国の旧正月 一般的に9月は確かにピークシーズンなのですが、ピークを終えても2022年2月には中国の旧正月があります。 そして現在 問題になっているコンテナの滞留は1−2ヶ月で解消されるものではありません。旧正月前には中国からの貨物の出荷量が増えます。 その為、北米でのコンテナ滞留が解消しつつあるタイミングでまた貨物量が増えて、港の混雑につながる可能性があるのです。 2022年7月 北米西岸労働協約の改定 そして2022年7月。アメリカの西海岸港湾の労働協約が失効され、改定交渉が始まります。これにより北米西岸港湾の機能が低下することが予想されるのです。前回の2014年の労働協約改定では妥結するまで、なんと9ヶ月の時間を要しました。 この間、西岸港湾は機能低下し、多くの貨物がエアー・カナダの西海岸・北米東岸経由で輸送をされることになったのです。 前回でも北米東岸向けの海上運賃は高騰しましたので、2022年7月においても同様に海上運賃の高騰が考えられます。 2022年9月 クリスマス商戦輸送の開始 そして、そうこうしているうちに2022年9月。来年のクリスマス商戦が始まります。 この時に北米西岸港湾の機能が低い状態であれば、今年と近いような問題が発生するでしょう。 船腹供給過多で価格は下落するか? 上記の理由で2022年末まで、海上運賃が下がる理由がほとんど見当たりません。 現在、船会社は好景気によって新規コンテナ船の発注を進めているので、供給過多による価格下落を予想している人もいるでしょう。 しかし船腹の絶対量が増えて過去のスエズブーム後の不況、価格の下落のようにはならないと私 個人的には予想しています。 激しい価格競争からの教訓 なぜなら船会社も前回の不況を教訓にしているはずだからです。2017年には韓国のHanjin海運は倒産し、日本郵船でも約2,700億円の巨額赤字を計上しています。 そして現在 造船中の船は脱炭素に向けた仕様で、これまでの旧型の船は環境対応に不適切ということで市場の船腹量を調整することも出来ます。その為に海上運賃も調整されるのではと予想をしています。 まとめ 私自身も国際物流業に従事をしている身として、運賃が安すぎるのは問題だと思います。船会社が赤字経営をしなければいけない状態は健全なインフラ機能とは言えません。 とは言え、高すぎる海上運賃も問題なので、いち早く適正価格に戻って欲しいと思います。

2021年8月物流ニュース | 物流ニュース・物流ラジオ

2021年8月物流ニュース

この記事を動画で見る どうもこんにちは飯野です。 今回は2021年8月の物流や海運に関するニュースをお届けします。「物流の今」を知りたい方に、役立つ情報を厳選しましたのでお楽しみ頂ければと思います。 それでは、いってみましょう。 中国・寧波港、感染者発生。一部コンテナターミナル封鎖により物流へ影響か 中国・寧波港で11日新型コロナウイルス感染者1名が確認され、同日より感染者が発生した寧波港梅山島コンテナターミナルは閉鎖になりました。 寧波港は中国港湾のコンテナ取扱量では第2位の規模を誇り、華東地区では上海港と並ぶコンテナ物流の重要拠点です。 そのため、今年5月末にコロナ感染者が発生した塩田港と同様の港湾混雑や物流の混乱が懸念されています。 17日現在寧波港で閉鎖されているコンテナターミナルは、梅山島だけで他の主要ターミナルは通常通り稼働しており、現時点では国際物流への影響は限定的ですが、長期化すると大きな問題につながるでしょう。 オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)の13日発表した文書では、「梅山島コンテナターミナルの停止による衝撃は今のところ大きくない。ただ、梅山島に寄港予定だった一部船舶が他のターミナルへ寄港を変更するために、今後は影響がでてくるだろう」と見解を示しています。 上海空港、コロナ感染者発覚により貨物輸送便に混乱 中国・上海浦東空港の混乱が深刻化しています。8月21日に新型コロナウイルスの感染者が新たに確認され、21日の午前中から航空貨物の取り扱い機能が事実上停止していた模様です。 23日から上屋業務の一部が再開されましたが、貨物便の運休や受託の停止・制限が拡大しています。旅客便のベリーや運航中の貨物便のスペースも逼迫(ひっぱく)しており、航空運賃も上昇しています。 最悪、混乱は数週間続くとの観測もあり、例年9月からは欧米でのクリスマス商戦に向けた荷動きが活発になり、混乱が長期化すれば問題の影響は大きくなるでしょう。 北米西岸、再び沖待ち渋滞悪化 ロサンゼルスとロングビーチ両港には、ここ数日37隻のコンテナ船が停泊しており、2月以降で最も多い数となっています。 これはアメリカの年末商戦や在庫の補充のためもので、荷主がホリデーシーズンの輸入品を前倒ししていることが起因しています。アメリカ中西部の主要なハブでは、西海岸からシカゴへの輸送を制限するほど、コンテナが山積みになっています。 ターミナルでも記録的な量のコンテナがトラックや鉄道のキャパシティを圧迫しているため、コンテナが積み上がっています。 そのため内陸部に移動するまでのコンテナの保管期間がコロナ前では平均2~3日、現在では平均9~10日と状況は悪化しています。 ベトナム港湾混雑が悪化。カトライ港で大型貨物の引き受け制限 新型コロナウイルス感染が再拡大しているベトナムで7月下旬から主要都市でロックダウンが実施され、物流に影響を及ぼしています。 ベトナム港湾では昨年来の物流増加で混雑が続いていましたが、ロックダウンによる移動制限で労働者の確保が難しくなっています。 更に工場の稼働停止で輸入コンテナの引き取りがされず、コンテナが港に溜まり港湾の混雑が深刻化しています。 南部ホーチミンに近いカトライ港を運営するサイゴンニューポートは、大型貨物の引き取りを停止。輸入貨物の早期引き取りを依頼し、混雑解消を呼びかける通知をしました。 日系物流企業の現地駐在員は、「工場の操業停止が長引けば部材輸入も減速し、混雑が緩和する可能性はあるが基本的には輸出が堅調。空バンのピックアップを他のインランドデポにするなどカトライ集中を是正しない限り、荷役停止などもあり得る」と懸念を示しています。 DHL Express 12機の電気航空機を購入 DHLは8月3日、Eviation社から12機の電気航空機を購入し、すべての路線で運航することを発表しました。 声明の中で「クリーンなロジスティクスを実現するためには、あらゆる輸送手段の電気化がゼロエミッションという目標に貢献する。」と述べています。 電気航空機「Alice eCargo plane」の積載量は約1,800kg、航続距離は815km。飛行中の充電に必要な時間は30分以内とのことです。DHLは2023年までにCO2排出量を削減する取り組みに70億ユーロを投資し、2050年までにCO2排出量をゼロにすることを約束しています。 マースク、物流事業者2社買収し、さらなるは買収に乗り出す 世界最大手船会社マースクは約10億ドルに相当する買収を実施しました。 米国ソルトレイクシティを拠点とするVisible Supply Chain Management LLCと、オランダを拠点とするB2C Europeの2社の買収になります。 今回の買収は倉庫業、通関業、トラック輸送技術の分野での買収、投資に関わるもので、マースクの事業拡大が海上貨物から内陸物流へと拡大すること表しています。 マースクは世界的な海運市場の好況も影響し、堅調な収益を報告。主力事業であるマースクラインの輸送量は前年同期比で15%増加し、平均運賃は59%上昇しました。 好調な業績の中、更により大きな買収の可能性も示唆しています。 DSVパナルピナ、アジリティの事業買収完了。世界第3位に 国際物流大手DSVパナルピナは16日、中東物流大手アジリティの一般貨物部門グローバル・インテグレーテッド・ロジステイクス(GIL)の買収が完了したと発表しました。 これにより、DSVパナルピナの売上高は1,600億DKK(約2兆7700億円)となりました。 今回の事業買収により業界では、ドイツポストDHL、キューネ・アンド・ナーゲルに次いで世界第3位となります。 DSVパナルピナはフォワーディング事業の拡充や、中東、アジア太平洋地域で事業拡大を見込みます。アジリティが所有する倉庫約140万平方メートルも活用し、欧州、中東の陸送を強化するとのことです。 解説コーナー それではニュースの解説のコーナーに参りましょう。 8月は物流の混乱につながるような問題が多かったなという印象です。特に中国ですね。中国の寧波港、上海空港での機能停止はサプライチェーンに大きな影響を実際に与えています。 寧波港は世界で第3位のコンテナ取扱量のある巨大港なんです。ここが混雑してしまうと、船は混雑を避けるために寧波港を抜港して上海などで積み込み・積み下ろしをします。 そうなると上海港が混雑する可能性もあり、上海港で本船スペースの確保が難しくなったりして、海上運賃の高騰につながる可能性もあります。 そして上海空港も同様に混乱し始めています。上屋で荷物をハンドリングするマンパワー不足になっていて、通常は2−3時間で終わっていた作業が6-10時間ほどかかるようになり、離職する人たちも増えてきているとのことです。 上屋での作業に時間がかかっているから、輸出では貨物が空の状態で飛ぶ旅客機があったり、輸入では貨物を積んだまま次の空港に向かう飛行機もあるみたいで、非常に混乱をしています。 航空運賃も実際に上がっていて北米向けで約USD1.5-3/kg, 欧州向けでUSD0.7-1.5/kgも上がったりしているそうです。今後どの様になるかが本当に注目です。 そしてアメリカの港の混雑が8月から再発生してきました。通常北米のクリスマス商戦への貨物需要は9月からなんですが、昨今のサプライチェーンの乱れで8月に前倒しになっています。 本当に北米向けのコンテナ輸送はスペース確保が難しくて、タイ初のロングビーチやニューヨーク向けでは弊社でも多くのお問い合わせを頂いております。 幸いスペースが取れるケースも多いのですが、海上運賃が高くて送るだけで赤字になるという荷主さんもいる模様です。 混雑や価格に落ち着きが見え始めるとしたら中国の国慶節が始まる10月以降でしょうか。 更にベトナムのロックダウンも物流に影響を与えています。先日、ベトナムのフォワーダーさんとオンラインで話をしたんですが、工場は稼働し始めているけど通常より生産量が落ちて仕事も減っているとのこと。 とにかくはワクチンが流通して1日でも早い回復を祈るばかりです。 現在、物流は混乱しているのですが大手企業各社は次々に国際的な環境テーマである脱炭素に向けての活動を始めています。その中でDHLの電気航空機には驚きました。 まさか電気で貨物機が飛ぶ時代が既に来ているなんて全く知らなかったので、こういうニュースにも注目をちゃんとしないといけないなと思いました。 この電気航空機の機体ですが未来的でカッコいいんですよね。若い人たちがより物流に興味を持ってもらえればいいなと思います。 そして最後に大手物流企業による買収です。これは先月もお伝えしましたが、昨今の船会社や大手フォワーダーは非常に儲かっています。 これを機に事業拡大のために物流業界でM&Aが日々行われている感じですが、今回は海運会社のマースクが内陸の物流を取りに行ったというのが注目でした。 またDSVパナルピナとアジリティの合併。大手企業同士の合併で更にスケールメリットを活かしてシェアの拡大を目指していくものと思われます。 コロナ以降の物流業界では船会社は限られたスペースを高く売って大きな利益を出し、大手フォワーダーはスケールメリットを活かして船社からのスペースを確保しています。逆に中小のフォワーダーだとスペースが取れない会社も実際にあったりします。 そういう意味で大手企業は得た利益で投資やM&Aを実施し、更に大きくなっていき、スペースが取れない中小フォワーダーは仕事が取れず生き残りが厳しくなるかもしれません。 まさに後期の戦国時代の様な感じでプレイヤーが限定されてきた印象です。 私自身も他人事ではなくしっかりと経営の舵取りをしなければいけないなと思っている今日この頃です。 今回の物流ニュースはいかがだったでしょうか。 今回参考にしたニュースのソースは概要欄にリンクを張っておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。 あと、最近はイーノさんの物流ラジオという企画でYouTubeとスタンドFMで音声配信をしています。 主に日々のニュースや物流に関する雑談を毎日更新していますので、もしよろしければそちらの登録やフォローもよろしくお願いします。概要欄にリンクを貼っておきますね。 それでは、現場からは以上でーす!ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

HMM スト回避!賃金交渉は会社よりで妥結。 | 物流ニュース・物流ラジオ

HMM スト回避!賃金交渉は会社よりで妥結。

どうもこんにちは飯野です。今日もイーノさんの物流ラジオを始めていきたいと思います。 今日のテーマは韓国の船会社HMMの賃金交渉が妥結したというニュースについてのお話です。 韓国のHMMで労働組合が労働環境の改善と賃金アップを訴え、ストライキの賛否投票をしたところ組合員から92%の賛成投票がありました。 もし要求が受け入れられなかったら組合側では船員が釜山港で全員降りてストをするとのことでした。 しかし、9月1日の午後から始まった交渉は18時間もの時間を要し、会社側と労働組合で交渉を妥結することになります。 2021年9月3日イーノさんの物流ラジオ .standfm-embed-iframe { height: 190px; } @media only screen and (max-device-width: 480px) { .standfm-embed-iframe { height: 230px; } }   当初の提案と要求 【会社側の提案】 ・賃金アップ:8% ・激励金+生産報奨金:5ヶ月分 【労働組合側の要求】 ・賃金アップ:25% ・成果金:12ヶ月 【交渉の妥結内容】 ・賃金アップ:7.9% ・成果金:6.5ヶ月 これを見る限りはかなり会社の提案よりな妥結です。 HMM会社の提案に近い妥結 この労働交渉に関連して、MSCというスイスの船会社が労働者側に2.5倍の賃金でオファーをしていて、8月22日時点で317人が離職したという情報がありました。 そういう状況にもあるにも関わらず、会社の当初の提示に近い形でまとめたHMMは凄いなという印象です。とにかくストを回避できたということで、これ以上の物流混乱にならなくて安心をしております。 Kアライアンス発足 そして関連ニュースです。9月1日に韓国の船会社5社で「Kアライアンス」を組むというニュースがありました。この5社の船会社は、HMM、SM商船、チャングム商船、パンオーシャン、フアン海運。全て韓国の船会社です。 アライアンスとは そして船会社のアライアンスとは、簡単にいうと複数の船社による共同配船です。コンテナ船1隻を作るのには莫大な費用がかかり、1社だけで世界各地への航路網を広げるのは非常に困難です。 特に大型船の運行がポイントです。1隻で2万TEUものコンテナを輸送出来る大型船では、複数の船会社がコンテナスペースを共有する方が、効率的にスペースが埋められます。 更に重複航路がある場合、各社での出血競争を避けることが出来きます。 長距離航路でもメリットがあります。中堅船会社では長距離航路に対しては充実したサービスが提供が難しいですが、HMMは世界第8位の船会社です。 HMMと共同運行をすることで、その他の4社も各社顧客に長距離航路への安定サービスが提供出来るというメリットがあるのです。 このKアライアンスの実施日は2022年の第2四半期からになります。 まとめ HMMは労働組合をまとめたり、来年以降の戦略も組み立てました。 船員の補充やアライアンスの調整などはあるかもしれませんが、今後のHMMの躍進が始まるかもしれません。同社の今後の動きに注目です。

USウォルマート、サプライチェーンに20,000人の正規雇用 | 物流ニュース・物流ラジオ

USウォルマート、サプライチェーンに20,000人の正規雇用

.standfm-embed-iframe { height: 190px; } @media only screen and (max-device-width: 480px) { .standfm-embed-iframe { height: 230px; } }   どうもこんにちは飯野です。今日もイーノさんの物流ラジオを始めていきたいと思います。 ウォルマートが北米のサプライチェーンオペレーターに2万人を正規雇用するというニュースがウォール・ストリート・ジャーナルの物流セクションの記事でありました。本日はそれについてお話をしていきたいと思います。 世界最大の小売店 ウォルマート まずアメリカのウォルマートですが、世界最大の小売チェーンで世界27ヶ国に今展開しています。 2021年1月末時点 ・総店舗数が1万1400店舗 ・北米国内:5,339店舗 品揃えが豊富で安い ウォルマートには本当に何でも売っています。 食品、お酒、健康関連商品、日用品、おもちゃ、家電、アウトドア、車関連商品、クラフト品など。ショッピングモールが一社で運営されているような感じです。 だから大量に仕入れることが出来て、価格がとても安い。オーガニック食品・商品であってもお手頃価格で販売されています。 2021年、ウォルマートの採用戦略 なぜ正社員で2万人も雇うのか?それは今年のホリデーシーズンに向けて労働者の獲得競争が過熱していくからです。特にアメリカのネット通販 最大手のAmazon。同社も倉庫業務のスタッフが必要で人材確保に乗り出しているのです。 通常であれば季節労働者の採用になりますが、今年のサプライチェーンでは大きな乱れが予想されます。 なので早めに人材を確保しなければいけません。一般的に急に人材獲得をしようとすると、大きな賃金アップに繋がります。今回の大量採用は「オペレーション」と「賃金の安定」の両方の側面を考慮したものでしょう。 ウォルマートのサプライチェーンオペレーター 今回採用される2万人はウォルマートのディストリビューションセンター、フルフィルメントセンター、輸送オフィス、オーダーピッカー、貨物の受け取り人、フォークリフトのオペレーターなど。オフィス業務や倉庫業務の人たちです。 ウォルマートのサプライチェーンスタッフの平均時給は約20.27ドル。更にコロナの予防接種で150ドルの特別ボーナスが支給され、ホリデーシーズンでのボーナスも支給するとのこと。とても手厚い待遇だと思いました。 ウォルマートのeコマース ウォルマートは店舗というイメージが強いかもしれませんが、コロナの流行以降はeコマースにも力を入れています。去年ではeコマースサプライチェーンの為に季節労働者を2万人採用しました。 しかし今年の第2四半期から成長が鈍化していきます。アメリカではワクチンの接種が早かったので、消費者がネットではなく店舗での買い物に戻っていった模様です。とはいえ、eコマース販売は前年比で5.2%も伸びており、消費者の購買方法の変化には合わせていく必要があるでしょう。 まとめ ウォルマートは今後のアメリカの経済回復が堅調な維持をすると見込んでると考えられます。今年ほどのサプライチェーンの乱れはないにしても、2022年も国際物流やサプライチェーン物流の業界は今年に引き続き好況になるかもしれません。

2021年9月の海運市況の予測。北米向けピークで運賃上昇、スペース逼迫。 | 物流ニュース・物流ラジオ

2021年9月の海運市況の予測。北米向けピークで運賃上昇、スペース逼迫。

どうもこんにちは飯野です。今日も飯野さんの物流ラジオを始めていきたいと思います。 .standfm-embed-iframe { height: 190px; } @media only screen and (max-device-width: 480px) { .standfm-embed-iframe { height: 230px; } }   今日のテーマは9月の海運市況の予測です。上海港運交易所(SSE)が上海からの海上輸送の指標をこの様に発表しています。 9月の上海-北米向け海上運賃 上海 - 北米東海岸:USD 11,138/40’ 上海 - 北米西岸:USD 5,949/40’ 現在は東海岸向けの運賃の値上がりが大きいです。 その理由としては、北米の西海経由での内陸への鉄道輸送がパンク状態にあるからです。その為、海上輸送で東海岸まで海上輸送し、東から内陸には運ぶ流れになっています。 弊社でも8月は北米向けのスペースが割と取れていた方なのですが、9月はスペースが取りにくくなってきました。現在船会社と交渉中ですが、何とか頑張ってスペース確保をしていきたいと思っています。 中国-北米向けピークシーズン 中国から北米向けへの輸送は 通常9月〜10月1日の国慶節前まで、クリスマス商戦物流が本格的になります。 中国のサプライヤーとしても国慶節前に貨物を出し切りたい、クリスマス商戦に間に合わせたいので、9月の物量はとても多く、国際物流もヤマ場を迎えると私は予想しています。 インド - カラチ港向けのスペースがない その他にインドのカラチ向けへの海上輸送に変化が見られました。8月末からカラチ向けの問い合わせが増えてきており、海上運賃やスペースの確認したら、多くの船会社で9月の利用可能なスペースはゼロとのことでした。 普段使っている船会社で何とかスペース確保出来たとしても、海上運賃が倍の価格だったんです。 アフガニスタンの影響か? なぜインドのカラチ向けでスペースがないのか?もしかしたらアフガニスタンが影響があるかもしれません。先日のラジオ放送でもアフガニスタンの物流についてお話をしましたが、インドからの輸送ルートとしては以下になります。 1. インド:カラチ港 2. イラン:Bandar-e ʿAbbās港 3. アフガニスタン:カブール 詳しくはこちらの音声をお聞きください。 今後どうなる!?アフガニスタンの物流について。 アフガニスタンの現状を考えると船会社も、カラチ港にコンテナを集めたくないのかもしれません。 まとめ 北米向けのクリスマス物流が本格化していきますので、9月には中国により多くのコンテナが集まっていくでしょう。その為、各地でコンテナ不足、スペース不足などが懸念されます。 この9月にピークを迎え、その後は混乱の調整をしていくことになると思います。その他、世界情勢も日々変化していきますので常に物流情報をアップデートしていく必要があります。