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【フォワーダー2.0】デジタルフォワーダーの時代、中小企業の今後の戦い方。 | 物流ニュース・物流ラジオ

【フォワーダー2.0】デジタルフォワーダーの時代、中小企業の今後の戦い方。

フォワーダーのデジタル化が日本でもやっと進んできたような気がします。業界ではデジタルフォワーダーという名称のスタートアップがアメリカ、ヨーロッパ、中国で注目されていました。 私個人的に注目していたデジタルフォワーダーのスタートアップはアメリカのFlexport。最近では住友商事のVCが出資したという中国のYunquna。そして日本のデジタルフォワーダーの始祖 Shippioです。 これらのスタートアップの動きを見て、タイにある弊社グループでもデジタルフォワーダー化するべきだ!と2020年1月にグループミーティングで提案しました。現在はペンディング中です。理由は以下にて説明します。 そして、ここ最近日系の大手フォワーダーにデジタル化の動きが見えるようになってきました。 さすが日通。契約した船社のスペース・Booking・価格などの情報が社内にオンタイムで共有される。「確実」にスペース状況が分かるというのは昨今の海運ではマジで必要な要素。この一元管理は今後、通関やトラックにも広がっていくはず。物流業界が面白くなってきたぞ!https://t.co/khegnPiAl7 — イーノさん@物流会社の社長🇹🇭 (@iino_saan) July 20, 2021 予想通り大手フォワーダーから、どんどんデジタル化が進んでいくよね。中小フォワーダーとして生き残り戦略を考えないと。 【コンテナ】三菱商事ロジ、船腹予約の新PF稼働。貨物動静確認まで一元管理 https://t.co/qkuJss4d8M — イーノさん@物流会社の社長🇹🇭 (@iino_saan) July 22, 2021 タイトルで「フォワーダー2.0」と流行りの〇〇2.0を使ってしまいましたが、フォワーダーも遂に新しいステージに行くタイミングだと思ったので考察を書いていこうと思います。 デジタルフォワーダーとは? デジタルフォワーダーという言葉に馴染みがない方の為に簡単にご説明します。デジタルフォワーダーとは、独自のITプラットフォーム(PF)を使い、見積もりの即時提出、荷主からのBooking、貨物のトラッキングを一元管理しているフォワーダーです。 簡単にこれまでのフォワーダーと比較をしてみましょう。 従来のフォワーダー ・見積もり:都度確認、メールや見積書にて提出 ・Booking:メールでBookingを受付 ・トラッキング:営業やカスタマーサービスが調べて連絡 デジタルフォワーダー ・見積もり:PFで表示 ・Booking:PFで受付 ・トラッキング:PFで表示 このようにプラットフォーム(PF)で一元管理され、簡単に必要な情報にアクセス出来る仕様です。 見積もり、Booking、トラッキングは現時点での主要な機能ですが、今後は更にサービスが広がっていくと思います。 その他の機能(一部は未来予測) ・B/Lの間違いチェック*S.I、INV、PKLからAIで間違い探し ・eB/L(制度改正が必要) ・本船の残りスペースの表示 ・各港の混雑状況の表示(沖待ち日数) ・写真をアップロード -> HS Codeの表示 ・HS Codeを入力して必要書類(他法令)の表示 ・HS Codeを入力して配送可能(主にDG)か事前確認 ・輸入関税・消費税金額の自動算出 ・Arrival Noticeの電子送付 ・D/OのQRコード化 ・輸入申告のオンタイム状況の表示 ・フリータイム切れまでのカウントダウン ・デマレージ費用のオンタイム表示 ・配送先の住所を入力してトラック費用の算出 などなど。AIとブロックチェーンなどの技術も使って、技術的には全て出来る内容だと思います。 これまでデジタル化が進まなかった原因 物流のお仕事に従事されている方なら、上記のような便利なツールや機能があったらいいなと思うのではないでしょうか。他の業種では既に使われている技術なのに、なぜ物流業界ではデジタル化が進まなかったのか? これは ・物流業界の人たちの考えが古すぎる(コンサバ) ・業務プロセスが多く、関係各社が分かれている この2つが主要な問題です。 弊社でもプラットフォームを導入するにあたり、全体会議を何度もやりましたが つまづいたのは上記の理由です。 致命的問題:関連業社が多すぎる件 コンサバは時間が解決してくれると信じているのですが、もう一つの問題が厄介です。 私たちフォワーダーは(特に中小企業は)基本的にはアセット(自社の設備)を持たないケースが多いです。なので船・飛行機を含め、通関、トラック、倉庫などを複数の業者に外注しています。 各社で使っているシステムが違う 現在ではそれぞれの業者・会社が自社の都合の良いようにシステムを導入しています。システムがないと膨大な物流手配の情報は取り扱えないのですが、このシステムが足枷となります。 1件の輸送をする為の関係各社のシステムが違うので、フォワーダーのプラットフォームと各社のシステムとの連携が①技術的、②権利的に難しいのです。特に後者②が深刻だと思ってます。 システム業者からしたら、「なんでそんなプラットフォームと連携しないといけないの?」となります。実際に弊社のプラットフォーム開発ではここで止まりました。 IT企業あるある このように各社のシステムが違うのに、現存のデジタルフォワーダーはプラットフォームどのように一元管理をしているのでしょうか? これは私たちもプラットフォームを作ろうとしたので分かりますが、表向きはIT開発をしているけれども、運用は人がやる仕組みになってしまいます。 現在、船会社はBookingを各自社Webサイトで受け付けていて、トラック会社はメール(またはFAX)でのBooking受付が殆どです。 なので ・フォワーダーのプラットフォームでBookingを受ける ->自動で各船会社・航空会社のWebサイトへBookingする ->自動でトラック会社へメールでBookingする このようなシステムは技術的には出来なくないと思いますが、小額投資しか出来ない弊社だとそれは無理でした。自動で出来ないので、人が泥臭くBookingやキャンセル手配をすることになります。 大手企業はトップの鶴の一声か? 私自身が大手フォワーダーの内部にいるわけではないので勝手な想像なのですが、冒頭で紹介した日通や三菱ロジでは、トップが「デジタル化するぞ!」と言ったら、関連会社のシステムも合わせられると思ってます。 大手は自社でアセットも持っているので、それに合わせたプラットフォームも開発がしやすいんですよね。そういう意味で大手企業ほどコンサバかと思っていますが、やるときはパワーを使って変えられる強みだと思います。 大手フォワーダーがデジタル化する脅威 デジタルフォワーダーというスタートアップが出て来て、いきなり市場が取れる程 この国際物流業界は甘くありません。確かにプラットフォームは便利ですし、これからはトレンドがきて、今後は一般化するでしょう。 しかし貨物を海外に運ぶというフォワーダーの仕事においての前提条件は、貨物を運べるスペースをしっかりと持っていることです。取り扱いスペースがなければ、見積もり・Booking・トラッキングをいくら便利にしても、そもそも運べません。 冒頭に紹介した日通は日本No.1フォワーダーの購買力を生かし、複数の船会社とスペースを契約。そのスペース状況をオンタイムで内部に共有しているとあります。 2022年下旬まで購買を制すものが有利 この記事を書いている現在はコロナによるコンテナ不足、本船のスペース不足の為に海上運賃が過去最高に高騰しています。特にアジアからアメリカやヨーロッパ向けなどは、貨物を送りたくても送れない状況が続いています。 こちらの記事でも書きましたが、現在はフォワーダーの二極化が始まっています。 [keni-linkcard url="http://forwarder-university.com/selected-forwarder/?lang=ja" target="_blank"] スペースが取れるフォワーダーはキャリア(船会社・航空会社)と共に収益を上げ、スペースが全く取れない会社は残念ながら仕事が取れません。 このコンテナ不足、スペース不足はいつになったら解消するのか?という話題はよく聞きます。現状からすると年内までは続くという見方が強まって来ました。 また2022年7月1日にアメリカ西海岸の労働組合の労働協約が失効するので、また北米西海岸で一悶着があり、コンテナの目詰まりが発生するでしょう。全くスペースが取れないことはないと思いますが、タイトな状態になる可能性は十分にあります。 中小フォワーダーはどうやって対抗すべきか? このような市場の状態において、中小フォワーダーはこれからどのようになっていくのでしょうか?結論を言いますと、従来のアナログで海上輸送・航空輸送のみを対応するフォワーダー1.0は淘汰されます。 すぐにではないでしょうが、全ての大手フォワーダーがデジタル化を完了させて攻め込まれると、中小のアナログフォワーダーは勝てません。 テクノロジー化が進むにつれてコストは下がります。更に大手は強い購買力でスペースが取れますし、物流管理をデジタル化することで人件費も下げられます。 中小フォワーダーの救世主が現れるか? このように書くと、自社でシステム開発をしなければいけない!莫大なコストがかかる!と心配になったかもしれませんね。大丈夫です、ご安心ください。 上述しましたが弊社でもデジタル化を進めようとしたくらいなので、他の中小フォワーダーでもデジタルプラットフォームを採用することは可能です。 実はフォワーダー用のプラットフォームを開発してくれる会社があります。また今後はサブスク(月額課金)でプラットフォームを使わせてくれる会社も増えてくるとも思います。 世界各地でトータル・ロジスティクスすべし プラットフォームを導入すれば大丈夫か?というと、そうではありません。プラットフォームはこれからの必要最低条件です。 プラットフォームが出来たことで、価格に透明性が生まれます。船会社・航空会社の代理店業としてスペースのみを販売していたフォワーダーは、この価格のガラス張りで「利ざや」が抜けなくなるのです。 デジタル化が進むことで簡単に価格が比較され、多くの場合で選ばれるのが最も安く貨物を運んでくれる会社。または適度な価格でワンストップ・サービスしてくれる会社です。 国際物流は海上・航空輸送だけではありません。その前後の陸送、通関、梱包など、また貨物によって運び方も変える必要があったりします。 海外の代理店との連携を強化する 更にいうと、トータルロジスティクス(ワンストップ)だけでは生き残れません。大手企業ももちろんトータルでサービスを提供して来ますし、ここでポイントになってくるのが 海外の支店・代理店の存在です。 国際物流は2国間で貨物輸送手配をします。そして大手企業は海外に自社の支店を持っていることが多いですが、それが足枷になるケースもあります。 海外に支店があるのと、海外の支店のサービスが良いは全く別の話。 これは大手フォワーダーに勤めていた人から聞いた話ですが、海外の支店のサービスが悪かろうと、そこを使わなければいけない縛りがあるそうです。 中小フォワーダーの場合は各地に支店がなく、ローカルのフォワーダーと代理店契約をしている場合も多いと思います。そして、そのなかで良い代理店を選べるというのが逆に強みだったりします。 まとめ やっとこの国際物流業界でも空気が変わって来ました。技術的には出来そうなのに 構造上の問題でなかなか進まなかったデジタル化。これがDXというトレンドワードによって、このコンサバ業界が動き始めたのです。 ここで変われない会社は間違いなく淘汰されます。弊社グループでもまだ変われていないので、個人的にこのまま行くとヤバいと感じていますが、大切なのは変わろうとする意思と行動。 もしデジタル化に時間がかかったとしても、中小フォワーダーと関連業者による強い連携があれば大手企業とも戦っていけると思っています。 さぁ、フォワーダー2.0に向かって動き出そう。 追伸 変わる必要なんてない!今後フォワーダー業界は安泰だ!と楽観している方のために、こちらの動画をご紹介します。 日本の海運の歴史を解説した動画ですが、かつては日本の船会社は12社ありました。現在の邦船社は3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)。コンテナ事業は1社(ONE)に統一されました。

2021年6月物流ニュース | 物流ニュース・物流ラジオ

2021年6月物流ニュース

どうもこんにちは飯野です。 本日は2021年6月分の物流ニュースをお届けします。6月に報道された物流や海運に関するニュースをまとめてみました。 物流に興味がある方、物流関係者の方に役立つ情報を厳選しておりますので、物流のニュースをご覧になった方も、ご覧になっていない方でも分かるように解説していきたいといます。 それでは、いってみましょう。 「2021年1月から3月期 コンテナ船社、記録的な好決算」 主要コンテナ船各社は最高益を大幅に更新し、記録的な決算内容が発表されました。 例年1-3月期はコンテナ輸送の閑散期にあたり、赤字計上する船会社もありますが、今期はコロナ禍の反動で各社とも異例の過去最高益を記録しました。運賃の値上がりが影響し、売り上げ、利益ともに倍以上という驚異的な数字となりました。 船社最大手マースクは売上が前年同期比31%増となりました。40フィートの平均運賃は35%上昇する一方で燃油価格は3割弱も下落したため、4半期の利益額は過去最高となっています。 その他船社各社も大幅増益し、仏のCMAーCGAも前年同期の倍増、中国のCOSCOシッピングホールディングスも売上高がほぼ倍増。その他これまで赤字決算だった台湾のエバーグリーンや陽明海運、韓国HMMも黒字転換し、最高益となり活況をみせています。 「北米航路の混雑、港湾から内陸へシフト。シャーシ不足が深刻化」 昨年から北米航路が混雑し、貨物滞留を引き起こしていますが、その混雑している場所が北米西岸から内陸部へと変化しています。 これまで、北米航路は西岸港湾で沖待ちコンテナ船が40隻超えと港湾に混雑が集中していました。現在は港湾から内陸部にシフトしており、急増する貨物への対応が悪化しているとのことです。 内陸部の中継地点であるシカゴの各鉄道ターミナルに貨物が滞留しており、引き取りに時間がかかっています。 米国の鉄道ターミナルでは一般的にシャーシにコンテナを載せた状態で平置きで運営しています。この方法だとトラックはヘッドだけで来てその後はすぐに、ピックアップできるなど利点が多いのです。 しかし、コンテナの急増やシャーシ不足からコンテナを直置き・段積みに変更せざるを得ない状況になっています。その結果コンテナを直置きしたものの、最終的にはシャーシに載せての輸送になります。シャーシオペレーションの手間が増えたこともあり、貨物滞留を引きおこしています。 シャーシ不足は深刻で船会社はコンテナとシャーシの早期返却を荷主に呼びかけています。 「北米東岸、欧州のコンテナ運賃高騰。塩田港の影響か」 中国・上海航運交易所が発表した上海発北米向けのコンテナ運賃は西岸向けが40フィートコンテナ当たり4,658ドル、東岸向けが8,554ドルとなりました。 西岸向けは2週間ぶりに下落しましたが東岸向けは最高値を更新しました。また北欧州・地中海向けは20フィートコンテナあたり6,000ドルを突破するなど、値上がりが続いています。 これは中国の塩田港の混雑が運賃上昇に影響を与えているようです。 中国の塩田港では港湾遅延が深刻化しており、周辺港の蛇口、南沙港にも波及しており、輸出コンテナの搬出制限が行われています。2021年6年10日時点で、本船遅延は15日程度となっています。 塩田港は新型コロナウイルスの感染者が発生し、検疫が強化されターミナルの処理能力は通常の約3割に落ちこんでいるといいます。そのため船社各社は塩田港の抜港や寄港地変更で対応しています。 この混雑が主にスエズ運河経由の欧州向けや北米東岸向けのサービスに影響を及ぼしており、需要が逼迫している中で運賃高騰に拍車がかかりそうだとのことです。 「マースク社、脱炭素化に向け新サービス Co2排出量測定ツールを提供」 マースクは顧客のサプライチェーン全体で排出されるCo2を測定できる、排出量ダッシュボードの提供を開始しました。 これは顧客が自社製品の輸送にどれだけCo2が排出されているかを分析する装置で、1つの輸送モードだけではなく、船舶、トラック、飛行機などの輸送モードごとのドアツードア全体の排出量を測定できます。 既にマースクの顧客10社が試験的に利用し、その結果をマースクにフィードバックしたことで、今回の本格的な提供開始となりました。 「アメリカ小売大手 ホームデポ、コンテナ船をチャーター、自社輸送へ」 コンテナ船輸送が逼迫している中、荷主がついにコンテナ船をチャーターする動きがでてきました。 アメリカ小売り大手のホームデポは、7月自社輸送を開始するこのことです。アメリカ アマゾン社が航空輸送網を整備するなど、荷主も自ら輸送手段の確保の動きがありますが、コンテナ船をチャーターするのは極めて珍しいことです。 アメリカ海運専門誌がまとめた2020年のアメリカコンテナ輸入企業ランキングによると、ウォルマート、ターゲットに次いで3位。消費財関連の需要が高いです。 コロナ禍の巣ごもり需要で小売業の需要は急拡大し、消費需要はこれから繁忙期に突入することもあり、ホームデポでは輸送スペース確保に乗り出したようです。 「クリスマス商戦に影響が?中国の港の滞留で出荷ラッシュに混乱」 続いては、アメリカからのニュースです。 中国の塩田港の滞留により、世界のサプライチェーンがさらに混乱すると言われています。 ロサンゼルス港とロングビーチ港は1日平均30隻のコンテナ船が貨物の搬入を待っています。パンデミックによって引き起こされた世界的サプライチェーンの混乱は、消費者にとっては数週間に及ぶ配達の遅れを意味しています。 年末の輸入のピークシーズンは8月となっていますが、今期は需要が過度に多く、船のスペースや空のコンテナの供給が極端に不足しており、7月初旬に本格化すると予想されています。 それでもなお混乱は続きクリスマスの買い物リストに影響を与えるかもしれないと、デンマークの海洋コンサルティング会社のCEOは予想しています。 「利益率の低下や過剰在庫などのブルウィップ効果発生の危険性」 パンデミックからの急回復をめざす会社にとって危険な、ブルウィップ効果が現れる危険性が指摘されています。 このブルウィップ効果とは、企業が需要の急増に対応するために、必要以上の製品を発注して、需要の継続的な増加に備えたり、在庫切れを回避したりする現象のことです。 その需要の歪みはサプライチェーンの各段階を経るごとに増幅されていき、その結果、消費者の現実的な需要とはかけ離れ、過剰在庫を引き起こし、利益率を下げることになり、せっかくの経済回復の足を引っ張ることなります。 3月の企業在庫の売上高に対する比率は全体で1.23で、1992年から考えると最も低い数字になっています。そのため大量発注をしてブルウィップ効果の犠牲にならないようにと、警鐘を鳴らしています。 まとめ それでは今回のニュースの解説のコーナーです。 6月では中国の塩田港の混雑が話題になりました。ニュースで解説したようにコロナによる感染対策で港の処理能力が大幅に落ちたことが原因でした。 現在 先進国の各国でワクチン摂取が進んできていますが、まだまだ逼迫した状況で、一つの港でこのように問題が発生するとサプライチェーン全体に影響する状態です。 それは港湾だけでなく、アメリカの内陸はシャーシ不足という問題で物流の目詰まりが発生してきました。更にクリスマス商戦の為のアメリカ輸入が7月初旬に早まるとも予想されています。 今後のワクチン接種の状況やクリスマス需要を考えると、コンテナ不足問題は年末まで解消しない恐れもあります。 それに伴い、ホームデポがコンテナ船をチャーターするという動きをとりました。ここまで海上運賃が上がりスペースが取りにくい状況ですので、超大手荷主ならではの力技です。 Amazonも航空輸送を整備しているとのことで、これからは荷主が自らアセットを持つ時代が来るかもしれません。非常に興味深いニュースでした。 そしてマースクのCO2排出量測定ツールの提供。現在、世界で進められようとしている脱炭素の動きに燃料だけでなく、こういう形で差別化を図ろうとしてくるのは、流石コンテナ業界のNo.1だと思いました。 海上輸送だけでは差別化が非常に難しい業態です。アセットを持つ船会社がこのような動きを取ったのは良い傾向だと思いますし、貨物を運ぶ周辺でこのようなサービス提供が出来ると私自身も非常に勉強になりました。 今回の物流ニュースはいかがだったでしょうか。物流の今が理解できたのではと思います。今回参考にしたニュースのソースは概要欄にリンクを張っておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。 現場からは以上です!ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

2021年5月物流ニュース | 物流ニュース・物流ラジオ

2021年5月物流ニュース

2021年5月物流ニュースを動画で見る どうもこんにちは飯野です。 今回は2021年5月の物流ニュースをお届けします。前回に引き続き、最近の物流や海運に関するニュースをまとめてみました。「物流の今」が分かるように解説していきたいと思います。 それでは、いってみましょう。 コンテナ不足、長期化も。9月までか? 世界的な海上コンテナ不足に収束の兆しが見えていません。 昨年秋から悪化に拍車が掛かったコンテナ不足ですが、当初の今年2月まで、遅くとも5月までには落ち着くという予想が外れ、状況には変化がなく長引く気配が続いています。 海外主要港湾の混雑解消は目処がたたず、最近では9月ごろまで混乱が続くという見方が広がっているようです。 コンテナ船業界にとって重要な米国西岸ロサンゼルス(LA)、ロングビーチ(LB)では沖待ちが減少したものの、混雑の解消のために他の港に 多くのコンテナ船が向け地をシフトしておりカナダのバンクーバー港や北米東岸のサバンナ港でも沖待ちする状況になっています。 コンテナ不足はコロナ禍による巣ごもり需要で、荷動きが配給を上回ったことに加え、港湾やトラックの労働者不足が影響しています。 それによりコンテナ貨物の滞留を引き起こし、コンテナのターンタイム(返却されるまでの所要日数)が通常により長期化しているのが原因となっています。 米国のコンテナ船社関係者によると、「収束にはあと3~4ヶ月」「正常化には3~6ヶ月」との声があがっています。 北米西海岸 輸入コンテナ、2ヶ月連続100万TEU超え 次のニュースです。「北米西海岸 輸入コンテナ、2ヶ月連続100万TEU超え。コンテナ運賃上昇に歯止めかからず」 国際海運団体BIMCO(ボルチック国際海運協議会)によると、北米西岸港湾の輸入コンテナ取扱量は110万TEUで、2ヶ月連続100万TEUを突破。 過去10ヶ月では今年の2月を除き、9ヶ月で100万TEUを超えています。1月〜4月は前年同期から4割増で、5月以降も堅調が予測されます。 米政府は追加景気対策として3月に1人当たり1,400ドルの給付をしており、小売業の売り上げを押し上げ、それに比例してコンテナ輸入量も高水準となっています。 BIMCOの分析によると、小売りの販売が好調で在庫の補充も必要となるため、去年のサプライチェーンの混乱対策として通常より前倒しで輸入を行う可能性があり、5月以降の物流を押し上げるとのことです。 コンテナ運賃上昇に歯止めかからず コンテナ運賃に関しては高騰が止まりません。 5月14日付の上海発 北米東岸向けコンテナのスポット運賃は40フィートコンテナ当たり7,378ドルとなり、この1ヶ月あまりで2,000ドルも値上がりしてます。 北米西岸向けは4月末に5,000ドル超え。また北欧州・地中海向けも20フィートコンテナが5,000ドルを初めて突破するなど、最高値を更新しています。 IMO, 自動運航船のルール策定へ IMO(国際海事機関)は自動運航船の国際ルールを策定のために、SOLAS条約の改定する方針であることを発表しました。 自動運航船の国際ルールを決めるために、今後条約の改正や解釈を変更する必要があり、その中でも無線通信、航海の安全と海上保安の章に自動化システムの定義を取り入れることになるそうです。 また、船舶自動識別装置の互換装置として開発が進められている 衛星VDESについて、これもSOLAS条約の航海機器と扱われるように検討されることが決められました。 VDESは洋上における通信情報ネットワークで高い通信能力があり、将来的には画像の送受信ができ 船舶のより安全な運行に貢献することになりそうです。 新造船発注数、前年比43%増 造船マーケットも活気づいています。 ベッセルズ・バリューマーケット・リポートでは新規造船の発注が増え、2021年1~4月の新造発注隻数は352隻で前年同期比の43%増と伝えています。 また同期間の総発注金額は169億6,000万ドルで、前年同期の2.1倍と活況の数字を示しています。 コンテナ船輸送時間の大幅増により、景気回復の足かせに ここからは、アメリカからのニュースです。 今年に入ってから貨物船の荷役時間が大幅に増加しコンテナ船の遅延を引き起こし、輸送能力と在庫を圧迫しサプライチェーンの混乱を招いています。 デンマークのSea-Intelligence ApS社の分析によると、3月に世界の港に到着したコンテナ船のうち、時間通りに到着したのは約40%に過ぎず、平均で6日以上の遅れが発生しています。 過去2年間では70%以上の船が定刻に到着していました。 マースク社のVincent Clerc氏は、「上海からロサンゼルスまでの航海には通常14日かかるが、現在では33日かかっている。運行時間は同じだが、荷降ろしを待つ時間は2倍になっている。」と語っています。 脱炭素化、一部 懐疑的な意見も 米国が推進する脱炭素化船舶について、業界内で意見が分かれています。 バイデン政権は船舶のCO2排出量を大幅に削減することを求めていますが、非化石燃料を使うことにより輸出コストの上昇を恐れるアジアや南米の国から反発を受けることになりそうです。 今年4月、米国のジョン・ケリー特使は、IMO(国際海事機関)は2050年の温室効果ガス排出量をゼロにするというより厳しい目標を推進すべきだと述べましたが、日本や一部の北欧諸国のメンバーは米国の要求に加わることが予想されます。 一方でブラジル、アルゼンチン、アフリカ諸国などでは、目標を支持する条件として、補償を求める国もあるようです。 IMOの審議に詳しい関係者によると、中国は発展途上国とともに、新燃料への移行を容易にするため、新たな要件の例外を求めたり、資金援助や技術移転を求めたりする可能性が高いと予想しています。 2050年までに温室効果ガスゼロを達成できるかどうかについては、業界内でも懐疑的な意見が多く、脱炭素化船舶への取り組みはまだ初期段階と言えるようです。 解説コーナー はい、それでは今回ご紹介した、ニュースの解説のコーナーです。 昨年の10月から続いているコンテナ不足の解消見込みですが、やはり後ろ倒しになっていますね。3月末にエバーグリーンの船が約1週間、スエズ運河を封鎖した影響もありピンと張り詰めていたコンテナの流動性が崩れ落ちたのも影響していると思います。 それに伴い、アメリカ向けで本当にスペースが取れず、海上運賃の高騰も 現場で働いている私としても、凄く実感しています。私のYouTubeを見て頂いた荷主さんから、アメリカ向けのスペースを取って下さいという問い合わせは本当に多いです。 弊社でも出来る限りのことをしていますが、流石にお約束できるという状況ではありません。 またIMOがSOLAS条約を改定する方向で動いていますね。 SOLAS条約とは船舶の安全確保を目的とする国際条約で、最近の改訂だとコンテナの重量を規制するVGMがありました。今回の条約改定のきっかけはスエズ運河の座礁問題も影響しているのではないかと思います。 テクノロジーが発達し、船舶の自動運航も進んでおり、車の自動運転でも法律の整備が行われるのと同じように、船舶の自動運航システムのルール作りがこれからも重要になってくるでしょう。 造船マーケットも盛り上がっています。 発表されている船会社の決算結果を見れば分かるように、現在の海運マーケットは好況を迎えています。 それに伴い、造船や新しいコンテナの発注も増えているんですけども、これって別の動画でも解説した1956年のスエズブームの時と同じで、この後で高い確率で過剰供給になると思うんですよね。 そうなるとまた値下げ合戦が始まることになりますが、船会社も過去数年続いた不況期の経験を元にどのようにするかが注目ポイントだと思います。 そしてアメリカからのニュースの脱炭素船舶。今はニュースを見ると脱炭素、脱炭素と注目を集めているこのテーマですが、やはり反対勢力もあるんですよね。 インフラを整えるにも多額の資金がが必要になりますし世界No.1のアメリカとしては先陣を切って進めていけるでしょうが、一方で途上国の場合は財源の問題もありますし、ガラッと変えるのは抵抗があるでしょう。 とはいえ、この脱炭素の課題は地球規模の対策なので、今後の進展にも注目です。 今回の物流ニュースはいかがだったでしょうか。 物流関係者もそうでない人にもわかるように物流ニュースをまとめてみました。今回参考にしたニュースのソースは概要欄にリンクを張っておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。 現場からは以上でーす!ありがとうございました。 2021年5月物流ニュース - 参照情報 ★コンテナ不足長期化も。「9月まで」見方広がる。港湾混雑 解消見えず★ ★北米西岸港、2カ月連続100万TEU超え。輸入、5月以降も高水準★ ★コンテナ運賃、北米東岸FEU当たり7000ドル超。上昇歯止めかからず★ ★IMO、SOLAS条約の一部改正。海上安全委、自動運航船ルール策定へ★ ★ベッセルズ・バリュー・マーケット・リポート★ ★Shipments Delayed: Ocean Carrier Shipping Times Surge in Supply-Chain Crunch★ ★U.S. Push for Carbon-Neutral Ships Expected to Reveal Industry Divisions★ ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

2021年4月 物流ニュース | 物流ニュース・物流ラジオ

2021年4月 物流ニュース

2021年4月 物流ニュースを動画で見る どうもこんにちは飯野です。 今回は新しい取り組みとして、最近にあった物流・海運に関するニュースをまとめて私の動画でもっとカジュアルに伝えようと思いました。 物流業界で働く人も、そうでない人も楽しく物流の今に触れて頂ければと思います。 では、いってみましょう。 世界の貿易量、すでにコロナ前に回復 オランダ経済政策分析局によると世界貿易量は2月時点で、すでに新型コロナウイルス禍の前の水準を上回っているとの発表がありました。 コロナ禍でいったん落ち込んだ分の挽回である、「ペントアップ」需要が押し上げており、これをけん引しているのは米国と中国になります。 昨年春にはコロナ禍で世界中で需要が冷え込み、生産調整が進みました。 しかし経済活動の再開とともに、先送りされた消費が戻っただけでなく、在庫を回復させる動きが活発になり、生産や貿易が一気に上向いています。 コロナ禍からの立ち直りが早かったのは中国。1~3月は輸出入ともに過去最高を記録。 また米国も中国などアジアからの輸入を大きく増やしています。日本海事センターによると、アジア18カ国・地域から、米国へのコンテナ輸送は2020年は過去最高とのこと。 このうち、2割強を占めるのが家具・家財道具や、建築用具といった住宅関連です。 米国の住宅市場は低金利環境に加え、コロナ禍による郊外への移転などが重なり活況を呈(てい)しています。 住宅着工が増えるにつれ、米国の関連資材の需要が増え、更に「巣ごもり」による電化製品などの需要拡大も、コンテナ輸送の増加につながっています。 北米西岸港湾、貨物急増でパンク寸前。 アジア発 アメリカ向けコンテナ航路の荷動きが記録的な水準で推移する中、北米港湾や内陸輸送がパンク寸前となっています。 LAやLBなどの港湾ではターミナル内の混雑が悪化して貨物が滞留しており、鉄道への接続も滞るなど、混雑状況は悪化しています。西岸経由の機能不全で東岸サービスの引き合いも急増しており、新規ブッキングはまったく入らないなど、混乱が広がっています。 船社関係者によると、「アジア発を含めて5月中のスポット貨物の新規ブッキングはまず無理」とのこと。 アジア発、北米東岸向けスポット運賃の実勢レートは、40フィートコンテナ1本当たり1万ドルまで上昇しています。 国際海運、「2050年までに温室効果ガスゼロ」。脱炭素化さらに加速へ。 続いてのニュースです。 4月21日に開かれた、気候変動サミットへに向けての特別会合で、10カ国の代表者により国際海運の温暖化対策について、意見交換がありました。 この中でアメリカのジョン・ケリー特使は、国際海運からの温室効果ガス排出量を2050年までにゼロにするという野心的な目標を提言。 IMO(国際海事機関)の温室効果ガス削減戦略を上回る目標が提示されたことで、国際海運における脱炭素化がさらに加速しそうです。 この目標に対して、関係者からは「環境技術の研究開発に弾みがつく可能性もある」との声も上がっています。 アメリカ、ドライバーの需要が急増。賃上げ実施しドライバー確保へ。 ここからはアメリカからのニュースです。 米国のトラック会社は、需要が急増しているドライバーを確保するため、賃金を引き上げました。 米国のトラック運送会社は、消費者の需要が急増し輸送能力が逼迫(ひっぱく)していることから、貨物市場の復活に向けてドライバーの増員に躍起になっています。 実際に賃上げを行った、業界大手のKnight-Swift Transportation Holdings(社) INCは資格を取得したばかりのドライバーの賃金が、ここ数カ月で40%以上も上昇したと報告。 労働統計局によると、昨年の大型トラックおよびトラクター・トレーラのドライバーの給与の中央値は4万7,130ドルでしたが、同社によると免許を取ったばかりの教習後1年目のドライバーでも、年収6万ドル以上を稼げるようになったと伝えています。 TuSmple社 IPO トラックの自動運転にも注目が集まっています。米国と中国に拠点を持つTuSimple社は、4月12日 新規株式公開を行い約3,380万株を販売して10億8,000万ドルを調達しました。 同社の関係者によると、今年、第4四半期にツーソンとフェニックスを結ぶ約100マイルの距離で誰も運転しない「ドライバーアウト」のパイロットプログラムを実施する予定であると述べました。 このパイロットプログラムでは顧客の貨物を輸送する予定で、アリゾナ州の運輸当局と緊密に連携して調整を進めているとのこと。 同社は新技術の開発を進め、最初の商業収益を2024年と予測しています。 解説コーナー それでは本日のニュースの解説のコーナーです。 まず最初のニュースですけれども、アメリカ向けの輸送が本当に伸びていますよね。中国からの輸送も過去最高と、アメリカの人たちの巣ごもりの消費って本当にすごいなと思います。 コロナのワクチン接種も進んでいますし、経済活動はこれからも伸びそうですよね。 これまでは港湾やトラックドライバーもコロナで稼働が制限されていたので、荷役のスピードやドライバー不足などはあったりしましたが、アメリカのトラック会社も賃金アップなどをしてドライバーを確保しようとしています。 私の個人的な予想ですが、インフラの回復より物量の増加の方が多くて まだまだ物流は安定しないかなと思っています。 また将来的にですがトラックの自動運転が一般的に普及されることで今回のコロナで発生したようなドライバー不足は無くなっていくので、今後の技術の進歩にも注目ですよね。 最後にですが、アメリカが主催した気候変動サミットが4月24日に閉幕したのですが、これが関係してか海運業でも温室効果ガス削減への取り組みのニュースを最近多く見かけます。 船の燃料を液化天然ガスにしたり、アンモニアを使ったり、風力も使おうとしたり、スクラバーがデフォルトになっていたりと各関係会社で技術開発が進められています。 これに関しても非常に面白いコンテンツだと思いますので、今後も注目して取り上げていきたいと思います。 今回の物流ニュースはいかがだったでしょうか。一般的には海運のニュースって業界の人しか見ない印象ですが、こんな感じでカジュアルに、ニュースも発信していきたいと思います。 今回 参考にしたニュースのソースは以下にリンクを貼っておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。 現場からは以上でーす!ありがとうございました!! 2021年4月物流ニュース - 参照情報 快走する海運株 世界貿易量、すでにコロナ前回復 北米西岸港湾、貨物急増でパンク寸前。滞留悪化、内陸受託停止も 国際海運、「2050年までにGHGゼロ」。脱炭素化さらに加速へ。ケリー米特使が提言 Trucking Companies Boost Pay in Hunt for Drivers as Demand Surges Autonomous-Truck Developer TuSimple Plans Driverless Road Test This Year ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

何故なんだ!?トールのフォワーディング事業の赤字を検証してみた。 | 物流ニュース・物流ラジオ

何故なんだ!?トールのフォワーディング事業の赤字を検証してみた。

日本郵政はオーストラリアの物流子会社のエクスプレス事業を7億円で売却。6年前に購入した時は何と6,200億円だったという衝撃のニュースがありました。 6,200億円で買ったのに、6年後に7億円で売却だとっ!?https://t.co/SbSpqAz4NO — イーノさん@物流会社の社長🇹🇭 (@iino_saan) April 21, 2021 このトールという会社は国際物流事業もしていて、タイでもトールのコンテナを見る機会があります。 私も物流関係者として今回の売却劇には興味を持ちましたので、もう少し詳しく調べてみようと思いました。すると、フォワーダーとしてのトールの弱さが見えてしまいました。 トールの事業の赤字はどれくらい? 日本郵政によると、ロジスティクス事業とフォワーディング事業は継続させ、赤字が大きいエクスプレス事業を売却するとのこと。 赤字といっているけれども、どのくらい赤字なんでしょうか?日本郵政の財務諸表を覗きに行ったらこのような数字が確認できました。 2020年第1四半期〜2021年第3四半期の国際物流事業の決算の概要をピックアップしております。 2019年4月〜6月(Q1) 2019年4月〜9月(Q2) 2019年4月〜12月(Q3) 決算 - 2019年4月〜2020年3月 2020年4月〜6月(Q1) 2020年4月〜9月(Q2) 2020年4月〜12月(Q3) 凄い赤字続きのエクスプレス事業 注目すべきポイントは今回の赤字の焦点となっているエクスプレス事業。途中でサイバー攻撃などもあったらしく赤字がドーンと膨らんでいる時もあります。対策を打って赤字幅は狭まったもののずっと赤字です。 コロナ特需を得たロジスティクス事業 もう一つの点はロジスティクス事業。これはこの期間はずっと黒字を継続をしていて、コロナが流行ってから予防対策品などの取り扱いで、直近では大きく利益を出しています。 世界中に拠点があるので、コロナに対しての予防対策品の取扱、配送などをしていたと考えられます。 こんな赤字企業をなぜ買った!? トール売却における経緯や、高すぎた買い物などについては、NewsPicksとかで優秀な人たちがコメントしているのでそちらを参照して下さい。 【3分解説】まだあった。日本郵政、巨額買収失敗の「不発弾」 記事も参考になりますが、賢い人たちのコメントも参考になります。 トールのフォワーディング事業はどうなんだ? このブログは「フォワーダー大学」と名乗っているくらいなので、トールのフォワーディング事業に注目をしたいと思います。 トールのフォワーディング事業のサービスと領域をご紹介します。同社のサイトに載っている情報です。 Toll Global Forwarding 【提供サービス】 空運、海運、通関、フォワーディング 【地域】 ・アジア ・オーストラリア&ニュージーランド ・アメリカ ・アフリカ ・ヨーロッパ&ミドルイースト TollのHP参照 https://www.tollexpressjapan.com/tgf.html 財務の概要を見ると、エクスプレス事業が大きく赤字になっているのが目立っていますが、このフォワーディング事業もこの期間はずっと赤字です。そして私が特に注目した期間は2021年度第3四半期。 これは2020年4月〜12月の実績のことです。大手企業にも関わらず2020年12月の時点で赤字になっているのは、フォワーダーとしての弱さが見えてしまいます。 イーノさんの分析 なぜ2020年12月の時点で赤字になっているとフォワーディングが弱いのか? 私の動画でも話していますが、2020年の9、10月頃からコロナによるコンテナ不足が深刻になり始めました。 このコンテナ不足により、海上運賃は全ての船会社で急上昇。多くの船会社が年末には一気に黒字になったと発表していましたよね。 海運3社がそろって2021年3月期の業績予想を上方修正した。日本郵船は5日、経常利益予想を従来の200億円から700億円に引き上げ、川崎汽船も同日、赤字とみていた経常損益をゼロに修正した。新型コロナウイルスの影響で春先に低迷した荷動きが持ち直し、コンテナ船の収益が急拡大した。3社で設立したコンテナ船の統合会社が想定外の「親孝行」をしている。 引用元:日本経済新聞  海運3社そろって上方修正 今期経常 コンテナ船が「親孝行」 業績を伸ばす日系のフォワーダー 更にざっと調べた感じですが、船会社や航空会社が伸びているのと同時に、大手物流会社のフォワーディング事業も伸びています。 近鉄エクスプレス 近鉄エクスプレスは11日、2021年3月期の連結純利益が前期比3倍の140億円になりそうだと発表した。従来予想から40億円の上方修正となり、最高益を更新する見通しだ。航空貨物の運賃が高騰して上期の業績が上振れしたほか、下期に海外子会社の損益改善を見込む。 引用元:日本経済新聞 近鉄エクスプレスの今期 航空貨物好調で最高益 SGホールディングス ロジスティクス事業におきましては、上期に海外における個人用防護具の緊急国際輸送を継続的に受託したことに加え、下期以降、既存顧客の物量回復と、コンテナの需給がひっ迫する中で航空および海上コンテナのスペースを確保できたことにより、フレイトフォワーディングの収益が増加し、営業収益は1,448億46百万円(前年同四半期比41.5%増)、営業利益は100億67百万円(同386.4%増)となりました。 引用元:SGホールディングス【SGホールディングス】2021年3月期第3四半期決算について(2021/01/29) 日立物流 セグメント利益は、減収影響はあったものの、中国フォワーディング事業の収益性向上や、各地域における生産 性改善・総コスト抑制効果等の影響により、前年同期に比べ31%増加し、70億82百万円となりました。 引用元:日立物流 日立物流-2021年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結) コンテナ不足が発生する以前 昨今の海上運賃は高値をずっと維持していますが、それは2020年9月、10月くらいからです。それより前の海上運賃は5年以上ずっと安値を継続していました。 運賃価格が少ないのでその時の利幅も大きくありません。もし高い利益を乗せようものなら、簡単に安売りをしてくる他社に切り替えられるような時期でした。 運賃が高くなってからの市場は? 2020年10月頃から、上述したように船会社は高い価格で運賃を提示してきます。そしたらフォワーダーの仕入れ金額が増えて、利益率をある程度調整したとしても利益額は上がっていきます。 また荷主もスペースを確保するために仮予約をして、Bookingをキャンセルをしまくってきます。こうなると私たちフォワーダーの手間も恐ろしく増えます。 また船会社にもスペース確保のガチ交渉やとにかく空いているスペースを探します。その分、フォワーダーの手数料としての利益も多くなるのが一般的です。 こちらの記事で、フォワーダーも生き残れる会社と そうでない会社で二極化すると書きました。 [keni-linkcard url="http://forwarder-university.com/selected-forwarder/?lang=ja" target="_blank"] トール、日本郵政の経営陣に危機感はあったのか? 他社が業績を伸ばしている中でも赤字ということは、トールはコンテナがスペースが取れなかったのかもしれません。もしくは他社の価格やサービスに勝てなかったのかもしれません。また決算資料にもあるように人件費が高すぎたのかもしれません。 小さな会社であればコンテナ・スペースが取れないというのは理解できます。しかしトールのような大きな会社が取れないことはないと思うのですが、危機感をもって仕事をしていたか?というとどうなんでしょう。 人件費という固定費をどのようにコントロールしていたのか。コロナ禍で新規は取りにくいのは分かりますが、ずっと危機感や、コスト意識は低かったのではないかと思ってしまいます。 まとめ トール社はコロナの前からフォワーディング事業も赤字でした。大手企業で、かつフォワーディングで利益が出しやすいタイミングだったにも関わらずずっと赤字だというのは危機感をもった経営が出来ていなかったと思わざるを得ません。 今回の損失はあまりにも大きく、親会社の日本郵政にとっても姿勢を直すきっかけとしては十分な出来事だったと思います。

「格安の国、ニッポン」で将来の物流はどのように変わるのか? | 物流ニュース・物流ラジオ

「格安の国、ニッポン」で将来の物流はどのように変わるのか?

最近、書籍などでよく見かける悲しいフレーズがあります。「日本は30年間、負け続けてきた」、「格安の国、ニッポン」。 一時期はGDPが世界で第2位という国だったにも関わらず、このような事になっていると知ると少し寂しい気持ちになります。 日本だけで生活をしていると、「そんなことはない!」と思うかもしれません。信じたくないかもしれません。 しかし、タイに住んでいるとこれは事実だと実感する場面が多くあります。一応、当ブログは物流に関する情報を発信していくブログなので、物流にも絡めてお話をしていきたいと思います。 タイのお寿司事情 最近タイにスシローが出来ました。オープン前からもの凄い注目を集め、連日満員御礼。休日の昼の時点でその日はもう入れないと看板が立っているほどです。 なぜこんなにも多くの人がどっと押し寄せるのか? 確かにスシローのお寿司は価格を見る限り日本と同じくらい。そして逆説的にいうと、他のタイの寿司屋が高すぎるんです。 確か日本の高くないお店だったら、2,000円で そこそこ満足出来るくらい食べられたと記憶しています。 日本は安い国になった!? 冒頭に説明したように、これは色んな書籍やネット記事などで最近よく見かけるテーマです。一昔前に中国人の爆買いというのが話題になりましたよね。 あれを単に、沢山売れて嬉しい!日本経済に貢献してくれる!と楽観的になっているのは周りが見えていない状態。 「やっぱり日本製だよね。」と思われるかもしれませんが、それもあるかもだけど、中国人にとって「日本で買う日本製は安い」から爆買いしていくんです。 他にもこのニュースピックスの特集にもっと詳しく書いています。 一部参考に抜粋をさせて頂きます。 一風堂のラーメン(白丸元味の価格 2021)。 アメリカ:1,739円 フランス:1,692円 香港:1,147円 マレーシア:921円 日本:790円 By NewsPicks編集部 日本は物価が上がっていない 日本は1999年から続くデフレの影響で物価が上がっていません。 先進国にも関わらず、物価が安い。 しかも、それが2021年の今の日本人の消費者マインドでも「安いが当たり前」になっています。 タイの物価はどうだろう? 一方で私が住んでいるタイの物価は継続的に上がっています。 タイのローカルのお店や屋台で食事をする分には安いですが、日本食、韓国料理、イタリアン、スパニッシュとかの普通の店になると結構な金額になります。 もっと高価格帯のお店も沢山あり、タイは以前のような安い国ではないと実感します。 日本の物流はどのように関係している? デフレの話は詳しい経済学者さんにお任せをして、この物価が上がっていない状況、または日本が安い国になっている状況を海運関係者の視点から考えをお話しします。 実は日本発の海上運賃は世界でも安い方なんですね。こちらの動画でも解説をしましたが、日本の船会社は長らく大手荷主との取引において安売りを続けていました。 このように大手荷主の立場が強かったんです。海上輸送というのは特徴を出したり、差別化するのが簡単ではありません。その為、価格が高かったり、ひどい場合は荷主に気に入られないと簡単に切り替えられてしまいます。 もちろんこの安い物流価格も、安い製品価格に貢献しています。消費者にとっては嬉しいことかもしれませんが、マクロな視点から見るとこれは良いことなのでしょうか? やっぱり製造大国!中国の物流はどうなの? 今回のコンテナ不足の問題によって感じたのは、中国の荷主の金払いの良さです。 中国から北米向けは3倍、4倍の価格に跳ね上がっているにも関わらずコンテナが中国に集まるということは、中国の荷主はそれを普通に受け入れています。 すると船会社は金払いの悪い日本にコンテナをまわすより、金払いの良い中国にコンテナをまわす方が儲かります。だから日本のコンテナ不足は深刻でした。 日本の荷主さん、読んで。 >日本の荷主はこれまで、運送コストに厳しすぎました。しかし、今回のコンテナ不足を機にある程度までの値上げを適正価格として受け入れなければ、より高い運賃を提示する海外勢に買い負ける事態が起こります。これによって日本にモノが入りづらくなることも考えられます。 https://t.co/MS8xyOzfxI — イーノさん@物流会社の社長🇹🇭 (@iino_saan) April 18, 2021 コンテナ不足が半年以上続いていて、さすがに日本の荷主も貨物が出せないと問題になるので、高い運賃でも条件を飲まざるを得ない状況です。 ONEですら他のマーケットに注目をしている そして日本の船会社であるONEであっても、日本以外のマーケットに目を向け始めています。 ONE、アジア―東アフリカ 新サービス今月末開始 オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は15日、3月末からアジアとアフリカ東岸を結ぶ直航サービス「EAF」を開設すると発表した。ONEにとって東アフリカ向けサービスは「EA1」「EA2」に続き3ループ目。ケニアやタンザニア向けサービスを強化することで、アフリカ市場への展開をさらに進めていく。 ルーローテーションは次の通り 上海▽寧波▽南沙▽シンガポール▽ポートクラン▽モンバサ▽ダルエスサラーム▽ポートクラン▽シンガポール▽上海 引用元:日本海事新聞 ONE、アジア―東アフリカ 新サービス今月末開始 日本の物流の傾向はこのように変わるかも 物価を上げるための議論は専門ではないので控えますが、この状況が続くと日本の物流・国際物流においてだとこんなことが起きるような気がします。 日本のマーケットの今後の予想 今後の日本の物流の変化(予想) ・海外から日本に行くインバウンド旅行のは需要は延びる(安いから)。 ・日本国内の製造業としては減少・衰退が進んでいく(他国で作る方が安いから)。 ・高度な製造技術が必要なものは日本で作られる(多分)。 ・他の国で作れるようなものは海外で安く作る。 ・最終製品にまで作りあげて日本に輸入する。 ・3Dプリンターで作れる物は国内で作って国内配送する。 ・これまで材料を輸入していた分の国際物流が減少する。 ・製造を海外に軸足をおくことになるので、日本からの輸出も減少する。 ・先進国として利便性を追求。お届けまでの最後の物流(ラストマイルの物流)に注目が集まる。 ・物流センターとかドローンとかが重要になってくる。 やはり製造という側面が弱くなり、原材料の輸入、製品の輸出が減っていくでしょう。しかし、製品の消費は人が生きる上では必要だし、海外で安く作られるので安い商品が輸入されてきます。 まとめ 日本は他の国に比べて相対的に物価が上がらず、安い国になってしまいました。長期的に続いたデフレマインドもありますが、物流という観点から見ると、それは大手荷主さんの厳しい物流コスト基準が問題もあります。 現在のコンテナ不足ではそれが原因で、船会社も日本以外の国に注目をしています。今後 日本の製造業は減少傾向にあり、日本の国際物流・国内物流も形が変わっていくでしょう。 しかし、これがダメとか悲しいとかではなく、日本は「きめ細やかなサービス」、「おもてなしの心」のような"サービス"の方が海外より圧倒的に優れています。 だから、戦後の復興→高度経済成長→モノづくりで急成長→バブル&崩壊→そこから平成は負けまくったけれども、令和の時代以降は新しい形で更に価値のある国になっていって欲しいと願っています。

スエズ運河 座礁の問題から、コンテナ船の巨大化のリスクについて考える。 | 物流ニュース・物流ラジオ

スエズ運河 座礁の問題から、コンテナ船の巨大化のリスクについて考える。

スエズ運河で座礁した船は過去10年に25回あります。しかし今回は20,000TEUクラスのコンテナ船で過去最大のサイズ、その為に運河が完全にブロッックされたことが問題になりました。 単に船が座礁しただけならここまで世界的に注目されるような問題にはならなかったと思います。しかし、絵面としても巨大なコンテナ船が運河を塞ぐというのはとてもインパクトのあるものでした。 今回はこの船の巨大化についてもう少し掘り下げて考えていきたいと思います。 なぜこんなにもコンテナ船は巨大なのか? 最初に質問ですが、なぜこんなに巨大なコンテナ船があるのでしょうか? 答えは簡単で輸送効率を上げるためです。 小さな船で何度も運ぶよりも、大きな船で一回でドーンと輸送する方が燃料費、人件費、その他の諸経費も下がります。 コンテナ船誕生時との比較 コンテナ船が世の中に初めて登場したのが1956年4月。その時は約58個のコンテナが輸送をされました。 そして今回スエズ運河で座礁した船は20,000TEUクラス。20フィートコンテナなら2万個が一度に運べるサイズです。 近年に造船されるコンテナ船は明らかに巨大化傾向にあります。 しかし、この船の巨大化のために、需要より供給の方が大きくなり 多くの船会社が統合したり、韓国系の大手の船会社は倒産までしてしまっています。 利便性より実利の資本主義 この資本主義の現在においては、やはりコストを出来るだけ安くしようとするのがビジネスでの基本です。中型の船を複数運行すると、やはりそれなりにコストとして反映されてきます。 分かりやすく例えるなら、ある町で。。 ・小さなバスが1日3本運行するのか ・大きなバスが1日1本運行するのか という感じでしょうか。 バス会社からしたら1本のバスで乗客を一回で沢山乗せる方が輸送効率は上がります。ですが一方で、町の住人からしたら1日3本バスが運行してくれる方が、自分の予定を立てやすくて便利なはずです。 これと同じことが海運業界にも起こっています。船が巨大化する一方で、船の便数は減ってくるのです。 コンテナ不足・スペース不足で肯定された巨大船 コロナが原因のコンテナ・スペース不足では、この巨大なコンテナ船のスペースが足りていない状況です。船会社は船のスペースを在庫できないし、出来る限り船をフルスペースで運行させたいもの。 現在では、このコンテナ不足・スペース不足で巨大なコンテナ船が満船になっている。これは儲かりますよね。 船の巨大化は止まらないのか? 今回のスエズ運河の事故が影響するかは分かりませんが、これ以上の大型化には少しブレーキになったかもしれません。 とはいえ現在、世界最大級のコンテナ船では2.3万TEUを運べます。これが3万TEU運べる船が出てくると世界各地の港も改築をしないといけません。 スエズ運河や他の運河も改築が必要になったりするでしょう。 中型船メインのサービス 上述したように、大型ではなく 少し小さなサイズのコンテナ船で、複数のスケジュールのサービスがある方が荷主にとっては助かるものです。 去年の11月以前では海上運賃は底値がずっと続いていたのですが、妥当で適切な海上運賃で中型船を頻繁に運行する!というポリシーで経営してくれる船社があってもよいのかなと思います。 少し高くてもよいから安定スケジュールのサービスを理解する、運賃を受け入れてくれる。でも、私たち海運業で海上運賃の見積もりを出した時に「他社の方が10ドル安い!」と普通に言われます。 このような荷主さんばっかりだと、この構想は実現しないでしょう。 まとめ コンテナ船の巨大化はコロナ前までは赤字の原因と捉えられていましたが、コロナ後のコンテナ・スペース不足で一気に肯定されたような気がします。 しかし、今回のスエズ運河の座礁の問題が発生して「巨大すぎるコンテナ船は安全運行リスクがある!となって、中型船にシフトしていくか?」というと資本主義の世の中では、そうはいかないでしょう。 荷主からしたら船の大きさは全く関係なく、安定的でフレキシブルなスケジュールが求められるのですが、船のスペースを在庫することができない船会社にとっては利益、リスクを考えると単なる私の妄想に終わる話なのかなと書いていて思いました。

スエズ運河で離礁!まだ問題は解決されず、運賃の値上げにつながるか? | 物流ニュース・物流ラジオ

スエズ運河で離礁!まだ問題は解決されず、運賃の値上げにつながるか?

3月29日にスエズ運河で座礁していたエバーグリーンの船首が、離礁したという喜ばしいニュースが入って来ました。 私としては26日に動画の台本を作成して、29日の朝に動画をリリースした後くらいにこのニュースが飛び込んで来たので、内心は発信をやめようと迷ったという裏話があります。 [keni-linkcard url="http://forwarder-university.com/2nd-suez-boom/?lang=ja" target="_blank"] とはいえ、離礁したからといってすぐに輸送再開!となるかというと、そうではありません。動画でも解説をした通り、現在 約300隻以上の船がスエズ運河周辺で待機をしています。 また今朝(3月30日)のニュースで、一部の船会社が南アフリカの喜望峰回りを決定したとの進捗がありました。 なぜ離礁したのに、問題は解決されないのでしょうか? 物流の目詰まりはすぐに解消されない スエズ運河は通常時で約50隻/日の船が運航する運河です。またEver Givenは離礁したとはいえ、完全に運河の通り道を開けたわけではありません。まだ作業は残っています。 小さい船は通れるかもしれませんが、大きなコンテナ船が通れるようになるかは まだ不明です。 また約300隻以上の船が待機しているのだから、この順番待ちをしなければいけないわけです。 だからマースクやCMA CGMといった船会社は追加で10日くらいかかっても、確実に見えているスケジュールを優先しました。 まだ目が離せない問題 座礁したのが23日で、離礁したのが30日。まだ完全に解消をしていない状態で既に7日間が経過しています。 一部の船は追加で10日くらいをかけた喜望峰回りを選択しました。この船会社の場合は既に2週間以上スケジュールが遅れることになります。 スケジュールが遅れるとどうなるのか? ご存知の通り、現在 コンテナ不足で貨物が出したくても予定通りに出しにくい状態が続いています。このスエズ運河の問題がなかったら、使えたはずのコンテナがまだ海の上にある状態なので使えません。 となると、輸出側でまたコンテナが足りない!という状態になります。 そして上述したような目詰まりが輸出地でも発生することになります。輸出したいけれども、輸出が出来ない会社が増えるのです。 その間の在庫は溜まっていき(もちろん生産調整をするでしょうが)、出したい量と出せる量のバランスが取れておらず、ここでも目詰まり・滞留が発生することになります。 値上げのタイミングについて 実際に値上げがあるのかどうかは、まだ分かりません。船会社のヘッドクオーター次第という感じです。 ですが参考までにですが、弊社ではコンテナ不足で値上がりが激しかった昨年の11月以降、船会社の価格改定は2週間に一回ありました。 ヘッドクオーターのプライシングチームが決めて、各国の営業マンに値上げの指令がいくのでしょうが、私たちフォワダーにももちろん影響します。 上述したように待機している船で1週間以上、喜望峰を回る船会社にとったら2週間以上のスケジュールの遅れがあるわけです。 この遅れ分のコンテナ不足分の値上げは、どこかで発生するかと私個人的に思っております。 まとめ 3月29日に船が離礁したという喜ばしいニュースがあったのですが、まだ完全に復旧したという状態ではありません。物流での目詰まりが解消されるのは時間がかかるものです。 そして一部の船会社は喜望峰回りを選択しました。これによりこの船会社のスケジュールの遅れは予定より2週間以上となります。 これは輸出側でのコンテナ確保にももちろん影響します。海上運賃の値上げにもつながる可能性は十分にあるので、まだまだこの問題は目が離せません。

なぜスエズ運河で巨大コンテナ船が座礁したのか?国際物流への影響も考える。 | 物流ニュース・物流ラジオ

なぜスエズ運河で巨大コンテナ船が座礁したのか?国際物流への影響も考える。

どうもこんにちは。飯野です。 今回は 現在世界的に話題になっているスエズ運河の座礁の問題についてお話をしていこうと思います。 YouTubeの動画でも解説をしております。 スエズ運河でコンテナ船が座礁!? 3月23日にエバーグリーンという船会社のEver Givenという名前の船がスエズ運河で座礁をしたというニュースが飛び込んできました。 問題なのは、そのEver Givenという船は全長400mもあってスエズ運河を完全に塞いでしまうほど大きく、他の船が強制的に通行止めを食らっている状態です。 ちなみにですがこの船を所有している会社は正栄汽船という日本の会社です。 スエズ運河ってどんな運河? スエズ運河は地中海と紅海を結ぶ運河で、アジアと欧州を最短距離でつないでいて、世界の貿易の約12%がこの運河を経由しています。 一年で約19,000隻の船、1日で約50隻の船が通行する、国際物流にとっては重要な運河です。 なんで今回、船が座礁したかというと、船に電気系のトラブルがあって、更に強風と砂嵐のために視界が悪化してしまい座礁してしまったとのことです。 船が座礁する場合の多くが運航時のナビゲーションミスが原因だと言われています。スエズ運河は水深が比較的浅い方でして、こういう事故は割と発生しがちな運河です。 実際に今回の座礁が初めてではなく、過去10年に25回の座礁事故がありました。 現在はどのようになっているのか? 現在では突っ込んだ船首の周りの沿岸部分を削ったり、タグボートで押したりして動かそうとしていますが、3月27日時点ではこの船のサルベージ(引き上げ)作業は難航していて、現時点で約300隻の船がスエズ運河周辺で待機をしています。 今回 座礁したコンテナ船はコンテナがほぼ満杯な状態で座礁してしまっています。動かすにはとにかく重たい状態なのです。 もし現在のサルベージ活動がうまくいかないとなると、コンテナを降ろしたり燃料を抜いたりして、軽量化してから動かすことになり、数週間かかるとも言われています。 スエズ運河が使えないとどうなるのか? もし数週間もスエズ運河が使えない状態だと、船は南アフリカの喜望峰を回らなければいけません。 こうなると追加で10日以上の日数がかかるだけでなく、燃料もかなりの量を消費することになるので現在 約300隻の船が待機という選択をとっています。 この座礁の問題がもたらす影響とは? 現状は分かったと。ではこの問題がどのように影響するのでしょうか? 離礁作業がすぐに終われば、影響はそれほど多くはないと思います。しかし、コンテナを積み下ろしたりして、数週間がかかると現在のコンテナ不足に更に影響が出て、海上運賃も上がることになります。 先ほどご説明したように、喜望峰を回ることになると、10日以上の日数がかかるわけです。 この追加の10日間というのがかなり大きくてコンテナの回漕にも時間がかかるし、余計に燃料を使うことにもなるので船会社もそれを補填する形で値上げをしてきます。 過去にスエズブームというのがあった ちなみにですが1956年に第二次中東戦争が勃発してスエズ運河が1年閉鎖されたことがあります。 この時は船が喜望峰回りを強制されることになったり、船の絶対数が足りなくなって、船会社は不定期戦の運賃を2倍にして海運業界は好況を迎えました。 いわゆるスエズブームと呼ばれているものです。 第二次スエズブーム!? 今回の座礁の問題は1年も続くことはないでしょうがもしサルベージに数週間かかるとなるとスポット的な第二次スエズブームが海運業界に訪れるかも知れません。 荷主からしたらたまったものではないので、早い解消を祈るばかりです。 [keni-linkcard url="http://forwarder-university.com/suez-refloat/?lang=ja" target="_blank"]

2020年、深刻なコンテナ不足の原因を解説しました。コロナの影響によるアメリカでの荷役の停滞と中国の勢い。 | 物流ニュース・物流ラジオ

2020年、深刻なコンテナ不足の原因を解説しました。コロナの影響によるアメリカでの荷役の停滞と中国の勢い。

今日は現在発生しているコンテナ不足の原因についてお話していきたいと思います。 昨今ではこの物流業界で「コンテナがとにかく無い」と、コンテナショーテージが非常に深刻な問題になっています。この問題は物流業界だけの問題ではありません。それにより製造業や商社業、そして小売業にも影響していきます。 このコンテナが足りない、更に言えば船のスペースがなかなか取れないという状況においてこの原因は何なのか? 今回は私が知っている範囲内で分かりやすいように、考えられる要因をご説明していきたいと思います。 動画での解説はこちら どうしてコンテナ不足が発生しているのか? コロナによる影響その① 荷役の停滞 なぜこのようなコンテナ不足が起こっている原因はやはりコロナが影響しています。2020年の初頭からコロナウイルスが世界で猛威をふるっています。そして今年の3月、4月から各国の都市でロックダウンが始まりました。 ロックダウンが始まると経済活動が制限されますし、外で仕事をする人も制限されます。その時には港の港湾作業員の人数が減った為、荷役のスピードが落ちる原因になりました。 また運営をストップする工場もあり、そのため港に大量のコンテナが滞留していきました。 コロナによる影響その② 船会社の便数減 そうして貨物の動かない状況で船会社は価格を安定させる為に、船の便数を減らしていきました。 貨物がないのに船を動かしていると船会社は赤字になってしまうので、船の便数を減らして価格の安定を維持しています。 コロナによる影響その③ 中国からの輸出急増 中国の工場の早い回復 そして4月から6月は各国の経済活動の自粛が多い時期でした。しかし7月くらいから世界中でも経済活動が少しずつ回復に向かいました。 そうした中、コロナ発祥の中国では早い段階からコロナ対策をしており、今ではコロナの抑え込みが出来ています。 中国は日本よりも一日の感染者数は抑えられていて、中国の工場の稼働については、政府の補助金とかもあり早い段階で回復していきました。中国の工場が稼働すると、それに伴い輸出の活動が再開していき中国からの輸出が増えていきます。 そして、他の国よりコロナが抑えられている中国では工場は早くから稼働しています。その為に他国ではなく中国で生産しようとする商売が増えていき、中国からの輸出は更に伸びていきました。 クリスマス商戦 そして、9月頃くらいから通常では北米向けにクリスマス商戦の貨物が大量に送られます。特に中国から北米の貨物が本当に多いです。 1ヶ月で20フィートコンテナだったら、約90万個が中国から北米に送られる計算になります。 国慶節前の駆け込み需要 さらに10月では中国では国慶節という長期の休みがあります。その長期の休み前の駆け込み需要でどんどん中国から輸出が進んでいきました。 コロナによる影響その④ 空コンテナの回漕が間に合わない また、船会社は便数を減らしているので、空コンテナを十分に回漕することが出来ません。タイにある弊社でも、タイから中国向けの輸出は船会社から少し制限されていまして、ボリュームの多い輸出はブッキングを拒否されていました。 中国向けのコンテナの輸出を船会社がコントロールしていたのでしょう。 そのコンテナ不足を少しでも解消する為に船会社もフリータイムとディテンションを短くしてきています。 例えば、日本向けで通常14日間あるフリータイムが7日間にしている船会社もあります。早くコンテナを港から取り出して、貨物をおろして、コンテナを返却しなくてはいけないという仕組みを作っています。 コロナによる影響その⑤ アメリカでのドライバー不足、シャーシ不足 これはアメリカから入手した情報ですが、現在のアメリカではコロナの影響で人で不足、シャーシ不足というのが発生しています。 港からコンテナを取り出して、アメリカの内陸の方までコンテナを運んでいきますが、そのコンテナがなかなか戻ってきません。 その原因としては荷受人の方でも人手が足りていないので、バンニングやデバンニングがスケジュール通りに進んでいないことが挙げられます。 またドライバー不足もありますので、内陸に行ったコンテナを戻すことが出来ないということも起きています。 そのため港からコンテナを取り出すための十分なシャーシが足りなくなっていきます。そういった理由で港にコンテナが溜まっていくことになります。 通常だったら1日〜2日とかで戻ってきた空コンテナとかシャーシが1週間以上戻ってこなかったりします。こういったことが繰り返し発生しているので、どんどん悪循環になっているのです。 このドライバー不足、シャーシ不足に原因があるので、船が港に到着してから2週間ぐらいかかってやっとコンテナを引き取れたという事例もあります。 コロナによる影響その⑥ 海上運賃の高騰 北米の海上運賃が過去最高に高騰しています。 アジアの玄関といわれるロサンゼルス港向けでは、海上運賃が通常では40フィートで2,000ドルはしません。それが4,000ドル近くにまで上がっている船会社があります。 これは別の動画でも解説しましたが、船会社はこれまでかなり熾烈な価格競争をしてきています。 2016年には大手の韓国系の船会社が倒産してしまうほど、今まで価格競争が激しかったんですね。 こういうコンテナが不足している状況で、船会社が海上運賃を値上げするのは市場原理から見ると普通に理解できる事だと思います。 コンテナ不足はいつ解消される? これがいつぐらいに解消されるかというと来年の2月とか3月ぐらいに解消するのではないかと予想はしていますが、実際のところはまだ分からないと思っています。 コロナの影響次第ではさらに荷役が遅くなるかもしれないし、このようなパンデミックのような状態でのコンテナ輸送の影響は初めてのことなので、はっきりと予想するのが大変難しいです。 まとめ 今回の話をまとめます。コンテナ不足の影響はやっぱりコロナが影響しています。 ・4月から6月は経済活動の自粛 ・7月以降は日用品とかの需要が回復して輸出が増えてくる ・中国はコロナの影響を抑えられて、工場の生産が他国よりも回復したため中国からの輸出増 ・船会社が便数を減らしているので空コンテナの回漕が十分でない ・アメリカのクリスマス需要ということで、中国からアメリカ向けにコンテナが使用されている ・アメリカでは深刻なドライバー不足やシャーシ不足が発生してるため、内陸に行ったコンテナが戻ってこない、港にあるコンテナが取り出せない ・アメリカの荷役も人材不足のためにスピードが遅くなっている これらの一つ一つの要因が重なりあって、このような深刻なコンテナ不足が発生しています。 これが回復するのは来年の2月とか3月とか言われていますが、実際のところはコロナの影響によってはまだまだ先が見えないという私の感想ではあります。 現在コンテナ不足によって直前のブッキングはなかなかコンテナがとれない状態になっているので、貨物輸送のブッキングはとにかく早めで宜しくお願い致します。 企業様の貿易・新人研修にお勧めの無料コンテンツ