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ATAカルネについて | 輸送・ロジスティクス

ATAカルネについて

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。 本日はATAカルネについて解説していきたいと思います。 ATAカルネとは 通関業者の方はカルネと言う言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、一般的にあまり馴染みのない単語かもしれません。 ATAカルネについてどのようなものか知っておくと、これは普通の輸出入をするのではなく、カルネを使ってみてはどうかとか思いつくチャンスがあると思います。 それでは行ってみましょう。 まず、ATAカルネとは何でしょうか。 ATAとは、「一時輸入」を意味するフランス語と英語の頭文字を組み合わせたものです。 ATA条約という一時輸入のための通関条約があり、カルネとはフランス語で手帳を意味します。 つまり、手帳に記載された品物を有効期限内に再輸出することを条件とした、一時輸入するための通関手帳のことです。 ATAカルネの一時輸入は、職業用具、商品見本などの物品を外国へ一時的に持ち込む場合に、外国の税関で免税の一時輸入通関が簡単にできることを指します。 例えば、検査に使う高額な機械をハンドキャリーで、他の国に持って行くとします。 この場合、自社の機械なのに、持って帰る時に高い税金がかかっては困る時に、ATAカルネを使用すれば税金はかからず、スムーズに輸入できるようになります。 一般的に、輸入の手続きには関税や輸入消費税が発生します。 その通関手続きを簡略化出来る書類がATAカルネなのです。 日本から他国に輸出し、その品物が戻ってくる時のように一往復で使用する場合もありますが、日本からA国に行き、次にB国へ輸出され、またC国に輸出されるように、品物が転々としていくときにも使用が可能です。 カルネの種類 カルネには、ATAカルネとSCCカルネがあります。 ATAカルネは世界主要国約100カ国が加盟しており、加盟国の間で一時輸入をする際に使用します。 SCCカルネは台湾と日本の2カ国間で使用できます。 ATAカルネの使用 ATAカルネを利用する場合は、「日本商事仲裁協会」という輸入税を保証してくれる社団法人にATAカルネを発給してもらいます。 この協会に品物を登録し、ATAカルネの申請・発給がされれば、税関にこのATAカルネを提出することで輸出入の申告ができ、期間内の輸出入であれば免税されます。 ATAカルネの発行手数料 ATAカルネの申請には、発行手数料がかかります。それ以外にも担保の提供や担保措置料の支払いが必要です。 担保を提供することで免税を受けることができるので、期限内に再輸出が出来ず、輸入税が掛かる場合はこの協会が代わりに支払いをしてくれます。 ATAカルネの使用 一時輸入に便利なATAカルネですが、カルネが認められる用途というのは決まっています。 ・展示会、国際的な催し、国際会議 ・職業用具 ・商品見本市 ・1年以内に日本に品物が戻ってくること ・持ち込もうとする国がATA条約に加盟していること また、使えない条件もあります。       ・日本へ持ち帰らないもの ・輸出時と形状・性質が変化するもの ・消耗品や食品、価格が0円のもの ・修理や加工を施すもの ・各国の法律で輸出入不可のもの ・大型掘削機など自然破壊に通じるもの 利用するためには基準を満たしているか、使えない条件に入っていないかを確認しましょう。 カルネ申請の流れ それでは、カルネ申請の流れを見ていきましょう。 まずは、カルネを使用できる国なのか、使用できる品物なのかを「日本商事仲裁協会」に連絡をして確認します。 次に「日本商事仲裁協会」のホームページから申請します。 1.会員の仮登録をします。登録申請書と印鑑証明などを協会へ送るとカルネ電子申請システムの通知書が簡易書留で送られていきます。 2.オンラインでカルネの申請をします。 3.審査が完了すると発給予定日と発給料金の連絡があります。 4.料金を振り込めばカルネが発給されて送付されてきます。 カルネ発行手数料 ここで発行手数料についてご案内しておきます。 発行手数料は¥14,000からで、それに加え担保提供が求められます。担保料または担保措置料とよばれるものです。 担保料は品物代の30%ぐらいが多いですが、品物が高額な場合は担保措置料として品物1,000万円につき約3,0000円となっており国や物品表の総額によって料金が違います。 カルネの提出 実際使う時はATAカルネを税関に提出し、税関から輸入許可の記載をもらいます。 職業用具などを携帯して持っていくときはカルネ使用者の方が税関に提出し、別に品物を送る場合は通関業者が税関にATAカルネを提出し、通関手続きをします。 ATAカルネを使い終えたらそのカルネを日本商事仲裁協会へ返納すると、担保料のみが返還されます。 まとめ いかがでしたか?今回はATAカルネについて解説してきました。 ATAカルネは再輸出することを前提に、一時輸入の時に免税できる制度のことです。 カルネは輸出入をする前に申請・準備をしなければなりませんが、実際の輸出入の際には通関書類の準備が必要なく、輸入税がかかりません。 簡単に免税できる制度なので、上手く活用していきましょう。 日本商事仲裁協会のホームページでも申請方法や活用方法の動画を公開していますので、概要欄にリンクを貼っておきます。 JCAA / 日本商事仲裁協会 | カルネセミナー第2弾「オンライン申請利用登録方法と申請手順」 JCAA / 日本商事仲裁協会 | 輸入税等が免税となるATAカルネ(通関手帳)をぜひご活用ください! 今回の動画がためになったという方は、チャンネル登録、いいね、SNSでシェアをお願いいたします。 今回は以上になります。どうも、ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

関税率の適用順位について | 輸送・ロジスティクス

関税率の適用順位について

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。 今回は、例を用いて「関税率の適用順位」について解説をしていきたいと思います。 関税とは まず関税とは、簡単に説明すると「外国からの輸入商品に対して支払う税金」です。 税金なので、支払う相手は「国」ですね。つまり、最終的に関税は「国の収入」になります。関税は、消費税や法人税と同じように国の財源となり、徴収された税金は私たちの生活に必要な公共サービスなどに充てられます。 また、海外から輸入された商品に税金をかけることで、国内の商品価格との差が大きく出ないように調整されます。 関税は、国内の産業を守るために必要な政策でもあるのです。 通常、関税は輸入者あるいは輸入通関を依頼されたフォワーダーが輸入申告時に税関へ支払います。これを納税申告と言い、申告額に相当する金額を納税しないと、原則として輸入許可は下りません。 関税率について ここで、輸入商品にかかる「関税率」について説明をします。実は、消費税のように全て一律10%(一部商品は8%)ではありません。 関税率は、大きく6つの種類に分けられています。 ざっくりと下記の種類があります。 ・基本税率 ・暫定税率 ・協定税率 ・特恵税率 ・特別特恵税率 ・経済連携協定(EPA)税率 関税率の種類について詳しくは、別動画でも解説しているので、概要欄にリンクを貼っておきます。 興味のある方はぜひご覧ください。 関税の基礎知識について 関税率の適応順位 原則として、関税率の適用順位は次のとおりです。 ①特別特恵税率、経済連携協定(EPA)税率 ②特恵税率 ③暫定税率 ※④協定税率 ⑤基本税率 協定税率は基本税率・暫定税率より低い場合に適用され、基本税率・暫定税率は協定税率と同じか低い場合に適用されます。 基本税率・暫定税率>協定税率 → 協定税率が適用 基本税率・暫定税率≦協定税率 → 基本税率・暫定税率が適用 特別特恵税率、経済連携協定税率、または特恵税率の場合は、「無税」または「一般の税率より低い税率」が適用されます。 輸入者側としては、できるだけ低い関税を適用されたいですよね。 しかし、これらの優遇された関税率を適用させるためには、対象国の原産品であることを証明した「原産地証明書」が必要となります。 原産地証明書の発行には、輸出者の手続きが必要となるので、必ず輸入申告時までに送付してもらうようにしましょう。 原産地証明書を提出するのとしないとでは、関税率が大きく異なります。貿易取引で損をしないよう、気をつけましょう。 例1:乳児用手袋を日本へ輸入 では、インドネシアから乳児用の手袋(編み方はメリヤス編み)を輸入したときの関税率を例として、紹介します。 今回、編み方を「メリヤス編み」と指定しているのには理由があります。 輸入品が衣類の場合、HSコードは次の3つのカテゴリーに分けられます。 ・61類:メリヤス編み、クロセ編み ・62類:メリヤス編み、クロセ編み以外 ・63類:新品ではない中古の衣類品 HSコードについて HSコードとは、Harmonized Commodity Description and Coding Systemの略称で、貿易取引で扱われる商品に充てられる分類番号のことです。 その商品がどういうものなのかを世界共通で理解できるように統一されたシステムで、輸出入をスムーズに行うために重要な役割を果たしています。 HSコードについては別動画で詳しく紹介しているので、興味のある方は概要欄のリンクをぜひご覧ください。 HS Codeについて HSコードの確認 商品を輸入するためには、「HSコード」と「適用される関税率」を事前に調べましょう。 今回の例の乳児用の手袋のHSコードをウェブタリフで調べてみると、次のコード番号であることが確認できます。 6111.20-1504 分類番号は、輸入する商品の材質や構成、男性向けまたは女性向けか、などから決められます。品目の分類が難しい場合は、個人で判断せずに税関やフォワーダーへ相談するようにしましょう。 関税率の確認 乳児用の手袋、HSコード「6111.20-1504」の関税率は次のとおりです。 ・基本税率:9% ・暫定税率:7.4% ・協定税率:- ・特恵税率:- ・特別特恵税率:無税 ・経済連携協定(EPA)税率:無税 今回はインドネシアから輸入しているので、経済連携協定税率が適用されます。 このとき、商品がインドネシア原産品であるかがポイントです。 ①インドネシアの原産品であり、 ②輸出者側から原産地証明書が発行され、 ②税関で受理される。 上記に当てはまると、「経済連携協定税率が適用された」となり、関税は「無税」になります。 もしここで、輸入者が、経済連携協定税率が適用されることを知らなければ、暫定税率の7.4%が適用されてしまい、本来無税のはずが大きな損を受けてしまうことになります。 しかし、このような場合には、輸入申告時に、税関あるいはフォワーダーから指摘が入ることが多いです。 例2:革靴を日本へ輸入 それではもう一つ、「革靴」の輸入を例に挙げて紹介します。 革靴は、さまざまな輸入商品の中でも関税が高いことで知られています。 基本的に、革靴の関税率は「一足あたり4,300円、または、商品価格の30%のどちらか高い方」です。 関税割当制度 革靴の輸入は関税割当制度の対象商品となりますが、今回の解説では割愛しています。 関税割当制度とは、特定の品目を対象に、一定の輸入数量の枠内に限り無税または低い税率の関税(一次税率)を適用させるというものです。 この一定の輸入数量を超える分については、一次税率より高い税率の関税(二次税率)を適用することで、国内生産物を保護します。 革靴の関税率 今回はマレーシアから、マレーシア原産品である革靴を輸入することにします。 商品である「革靴」のHSコード「6403.59-019」の関税率は、次のとおりです。 ・基本税率:- ・暫定税率:- ・協定税率:30%又は4,300円/足のうちいずれか高い税率 ・特恵税率:- ・特別特恵税率:- ・経済連携協定(EPA)税率:無税(協定国によっては関税率あり) マレーシアから輸入する場合は、経済連携協定税率が適用されるため無税となります。 しかし、原産地証明書を申告時に提出しなければ、協定税率が適用され、商品の30%又は4,300円/足のうちいずれか高い税率で支払わなければなりません。 革靴はさまざまな品目の中でも特に高い関税率ですので、革靴を輸入する際は、関税率についてあらかじめ理解しておくとよいでしょう。 まとめ 今回は、関税率の適用順位と2つの品目を例に関税率についてご紹介しました。 関税率は一見難しそうに思われがちですが、覚えておくのは今回紹介した6つの関税率のみです。 ややこしいHSコードは、私たちフォワーダーや税関に任せておけば大丈夫です。この動画でざっくりでも関税率の基本ルールを理解してもらえれば、幸いです。 今回の動画が役に立ったという方は、チャンネル登録、いいね、SNSでのシェアをどうぞ宜しくお願い致します。 今回は以上です。どうも、ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

貿易取引における決済方法 1 – L/C, D/A, D/P | 輸送・ロジスティクス

貿易取引における決済方法 1 – L/C, D/A, D/P

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。 今回は貿易取引における決済方法について、解説していきたいと思います。 荷為替手形決済 貿易における決済方法は、大きく2つに分かれます。 銀行が輸出者と輸入者との間に入って代金の立替えをするかしないかによって、「荷為替手形決済」と「外国為替送金決済」に分かれます。 今回の動画は「荷為替手形決済」を中心に解説をし、「外国為替送金決済」は別の動画で解説することにします。 荷為替手形とは 荷為替手形とは、為替手形という輸出者が輸入者に商品代金を支払うよう指示した手形に船荷証券(B/L)や輸入国での通関に必要なInvoice, Packing Listなどの船積書類を添付したものです。 そして荷為替手形には、「信用状付手形」と「信用状なし手形」があります。 海外とのビジネスのリスク 海外の企業とビジネスを行う貿易取引には、さまざまなリスクがつきものです。 例えば ・国の違いによる、言語・法制度・経済状況などによるリスク ・貨物の損害リスク ・為替変動のリスク ・信用性のリスク ・代金回収のリスク ・商品入手のリスク ・資金負担のリスク 今回のテーマ「決済方法」に焦点を当てる場合、「信用性のリスク」と「資金負担のリスク」に注意をしなければいけません。 なお、為替変動のリスクも大きいのですが、為替予約を行うことでリスクを回避できるので、今回は割愛しますね。 信用性のリスク まず「信用性のリスク」です。 信用性のリスクは相手先の経済状況などの情報が把握しにくいことから信用上の不安を持ち、契約を進めても問題ないかの確証が持てないことです。 もし相手側の信用状態を把握しないまま契約を結んでしまうと、資金繰りの都合で決済が遅れる、などのトラブルが起こる可能性があります。 確実に代金回収を行うためには、ビジネスを始める段階から信用調査機関などを利用して相手先の信用状態を把握することが大切です。 資金負担のリスク 次に「資金負担のリスク」とは、前払い・後払いかの決済方法により、輸出者または輸入者が代金を立て替えることで、どちらかが一方的に資金を負担するリスクのことです。 輸出者と輸入者ともに、資金運用を滞りなく回すために双方が交渉をしてなるべくリスクを負わない決済方法で契約します。 リスク回避の決済方法 貿易取引において、これらの2つのリスクを回避できるのは、「信用状付荷為替手形決済」- 通称 L/C決済です。 信用状と荷為替手形を組み合わせることで、輸出者・輸入者双方の負担を軽減させることができます。 貿易取引における決済方法 次に貿易取引で利用される代表的な決済方法についてご紹介していきます。 ・信用状付荷為替手形決済(L/C決済) ・信用状なし荷為替手形決済(D/A、D/P決済) そして、これらに加えて「外国為替送金決済(T/T決済)」もあるのですが、別の動画で解説しますね。 それでは、それぞれのメリット・デメリットを含めてみていきましょう。 信用状付荷為替手形決済 まず「信用状付荷為替手形決済」です。これは一般的にL/C決済と呼ばれています。 輸出者が信用状条件に記載されている書類を銀行へ呈示することを条件に、銀行が輸入者に代わって商品代金の支払いを確約する決済方法です。 銀行へ提出する書類が信用状の内容と相違があれば、支払いが行われない場合があります。 L/C決済のメリット メリットは、信頼性の高い銀行が輸入者に代わって代金を支払ってくれるため、輸出者は安心して取引ができます。 ここで注目すべきは、輸出者は輸入者からの代金決済を待たずに、輸出地で荷為替手形を呈示すると代金を回収できるということ。 輸出者は少しでも早く商品代金を受け取りたいので、L/C決済は輸出者側にとって安心な決済方法と言えます。 L/C決済のデメリット デメリットは、銀行が間に入ることで高い手数料が発生すること。 また、書類に不備(ディスクレ)があれば、決済に時間がかかり、同時に輸入者も船積書類を受け取るのが遅くなってしまうことも難点です。 信用状なし荷為替手形決済 次に「信用状なし荷為替手形決済」です。 これには D/A決済(引受時書類渡し:Documents against Acceptance) D/P決済(支払時書類渡しDocuments against Payment) の2種類の決済方法があります。 輸入者に手形を引き受けてもらう(Acceptance)か、決済してもらう (Payment)か、いずれかの方法で輸出者は代金を回収します。 D/A決済 D/A決済は、輸入者が手形期日までに支払いを引き受けることを条件に船積書類を引き取ることができる条件のことです。 輸入者は手形に記載されている期日まで支払いが猶予(期限)されていることから、期限付手形(ユーザンス手形)とも言われています。 そして支払日の記載には、次の2種類があります。 D/A決済の記載 D/A決済の支払い日の記載の一つは ・一覧後定期払い 「At ○○ days after sight」と記載されていて、輸出者が○○の日数を設定します。 輸入者は手形を引き受けた日から○○日後に支払う義務がある、ということが明記されています。 D/A決済の支払い日の記載のもう一つは ・確定日後定期払い 「At ○○ days after ×× days」と記載されていて、××にはB/L dateなどの確定日が設定されていることが多いです。 輸入者は××に表記された確定日以降の○○日後に支払う義務がある、ということが明記されています。 D/A決済のメリット・デメリット D/A決済のメリットは、輸入者にあります。 なぜなら、輸入者は決済前に船積書類を入手し商品を受け取ることができるからです。 一方で、輸出者からすると、輸入者が手形を引き受けた時点で商品所有の権利が移ってしまうので、輸入者の信用度だけがよりどころとなるリスクの高い決済方法です。 D/P決済 次にD/P決済について説明をします。 D/P決済は、荷為替手形の決済をすれば輸入者は船積書類を引き取ることができる条件のことです。 手形を決済(一覧)しないと書類を受け取れないことから、一覧払手形(At Sight手形)とも言われています。 D/P決済のメリット・デメリット D/P決済のメリットは、輸出者にあります。 なぜなら、輸入者が決済を行わない限り書類が渡されることがないので、代金回収リスクを避けることができ、商品も輸出者側の所有となるからです。 逆に、輸入者は商品を受け取る前に支払う必要があるので資金を負担することになります。 決済方法の選び方 D/A決済とD/P決済は、L/C決済と異なり、輸出者が荷為替手形を銀行へ提出しても、すぐには代金を回収することができません。 そのため、輸出者の立場からすると輸入者によほどの信頼がない限り避けたほうがいいかもしれません。 特に初めての取引ではリスクを考慮してL/C決済を利用するケースが多いです。D/AとD/P決済を行う場合は、包括保険への加入を検討するようにしましょう。 もし「コストを少しでも抑えたい」、「取引相手との信頼関係がまだ築けていない」、「書類の取引はややこしいから避けたい」という場合は、L/C決済やD/A・D/P決済ではなく、外国為替送金(T/T決済)の方がスムーズです。 外国為替送金についてはまた別の動画で解説させて頂きますね。 まとめ いかがでしたでしょうか。 今回は海外と取引を行う上で重要視すべき決済方法について解説しました。 初めての取引で不安のある場合はL/C決済、また取引になれた企業間ではD/A、D/P決済をするというように取引に合わせた決済方法を上手く選択することが大切です。 今回ご紹介した決済方法のメリット・デメリットを理解し、ビジネスが有利に働くように心がけましょう。 もし今回の動画が為になったという方はチャンネル登録、いいね、SNSでのシェアをよろしくお願いします! 今回の内容は以上になります!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

L/Cの内容を解説 | 輸送・ロジスティクス

L/Cの内容を解説

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。今回は貿易取引の決済に使われる「L/C」について、解説していきたいと思います。 L/Cとは L/CとはLetter of Creditの略で、銀行が輸入者に代わって貨物代金の支払いを確約する、いわば保証状のことです。 輸出者は、L/Cに記載されている書類を準備し、銀行へ提示することが条件とされています。 L/Cは、全て英語で記載されています。そのため、英語が苦手な方は少し気後れしてしまうかもしれません。 貿易実務の中で「L/Cの確認」は単なる書類チェックだと思われがちです。しかし、英語で明記された信用状L/C条件の理解が求められるので、個人的には難しい業務だと思っています。 L/C決済のメリット L/C決済は、貿易取引における次の3つのリスクを回避するメリットがあります。 ・商品入手のリスク ・代金回収のリスク ・資金負担のリスク 特に初めての取引相手の場合、この3つのリスクが高くなります。 例えば、決済条件が後払いの場合、輸出者は「商品を発送したけど、本当に輸入者は代金を支払ってくれるのだろうか?」と、代金の回収に不安が残ります。 一方、前払いの場合だと、輸入者は「先にお金を支払ったけど、輸出者は商品を本当に送るのだろうか?」と、商品が手元に届くまで不安な日々を送ることになります。 このように、後払いでも前払いでも双方に資金負担が発生してしまいますよね。 しかしL/C決済だと、信用のある銀行が間に入ることで、輸入者は確実に商品の入手・輸出者は代金の回収が行えます。 輸出者・輸入者ともにお互いの不安を解消するメリットのある決済方法のため、貿易取引で利用されています。 L/Cの内容 それでは、L/Cの内容を見てきましょう。 なお、項目全てを説明していくと物凄い量になってしまうので、今回は私が特に重要だと思う項目・名称をピックアップして解説していきます。 銀行 まずは発行銀行です。これはL/Cを発行する輸入地側の銀行のこと。 英語ではOpening BankまたはIssuing Bankと呼ばれます。 発行銀行は、輸出者にとって輸入者に代わり支払いを行ってくれる「拠り所」。取引を行う前に信用条件を十分に満たしている銀行であるかどうか、十分に確認をする必要があります。 次に買取銀行です。これは輸出者がL/Cの基に作成した書類と為替手形を買取る輸出地側の銀行です。 英語ではNegotiation Bankと呼ばれています。輸出者から提出を受けた書類に誤りがあれば、買取りを拒否することができます。 そして通知銀行。通知銀行は輸出者へL/Cを通知する輸出地側の銀行です。 場合によっては、手形の買取を行う買取銀行にもなります。輸出者からの通知銀行の指定が無ければ、発行銀行の支店または輸出者の所在地近くのコルレス銀行にされることが多いです。 コルレス銀行とは、外国為替取引を円滑に行うために、国境を跨った銀行同士がお互いに必要な諸条件を契約として結んでいる銀行を指します。 輸入者、輸出者 どんどんいきましょう。 発行依頼人(Applicant)、通常は、輸入者を指します。 会社名と住所が記載されています。 受益者(Beneficiary)、通常は、輸出者を指します。 発行依頼人同様にスペルミスが目立つ項目なので、特に注意して確認します。 金額 信用状金額(Currency Code, Amount) 通貨とL/C発行金額が明記されています。 金額の前に「about」を付けることで、10%の範囲内で増減が認められます。ただし、船積書類に記載されているインボイス金額が、この信用状金額を超えるとディスクレとなります。 ちなみにディスクレとは、Discrepancyの略です。信用状条件と船積書類の内容が一致していないことを指します。 ディスクレとなると、買取銀行は代金の買取を拒否することができるので、輸出者はディスクレにならないように注意しなければなりません。 期限 船積期限(Latest Date for Shipment) 積出し日の最終日です。この船積期限までに船積みできない場合は、ディスクレとなります。 L/Cの有効期限(Date and Place of Expiry) 支払いが保証されている有効期間のことです。 記載されている期限内に買取銀行へ「為替手形」と「L/Cで要求されている船積書類」をセットにして提出しなければなりません。 1日でも期限を過ぎてしまうと、ディスクレとなってしまいます。 分割積み、積み替え可否 分割積みの可否(Partial Shipments) 商品の分割積み込みの許容について記載されています。 許容する場合は「ALLOWED」「PERMIT」、禁止する場合は「NOT ALLOWED」「PROHIBITED」と明記されます。 積替えの可否(Transshipment) 積荷港から荷卸港まで、他の船舶や他の運送手段に積み替えることを許容するかについて記載されています。 分割と同じく、許容する場合は「ALLOWED」「PERMIT」、禁止する場合は「NOT ALLOWED」「PROHIBITED」と明記されます。 必要書類 買取に必要な船積書類の種類・通数(Documents Required) 必要な船積書類や部数についての条件が記載されています。 主に次の書類の提出指示がされることが多いです。 ・商業インボイス ・パッキングリスト ・B/L ・保険証券 ・原産地証明書 追加条件 追加条件(Additional Conditions) その他の条件が記載されています。例えば、次のような条件の記載があります。 「すべての書類に署名が必要である」 「信用状番号はインボイスを除くすべての書類に含めなければならない」 船積書類提出期限 船積書類提出期限(Period for Presentation) 船積日から、いつまでに船積書類を買取銀行に持ち込まなければならないかが指定されています。 通常は、5〜10日以内です。提出期限の明示がない場合は、船積日から21日を過ぎた書類の買取は銀行が拒否しますので、この日にちにも注意が必要です。 今回紹介した項目は、L/Cの一部です。実際に仕事でL/C内容チェックをする際は全文に目を通す必要があります。 L/Cに関わるトラブル ここで、実際に発生するL/Cに関わるトラブルの例を紹介します。 決済に関わる重要な書類なので「間違えないように」と、何度も確認を重ね、買取銀行へ荷為替手形(為替手形と船積書類のセット)を提出。 すると、銀行から電話がかかってきて・・・「いただいた書類はディスクレのため、買取できません」と伝えられます。 急いで書類を見直すと、商品名のスペルミスが発覚。 すぐさま、輸入者側へ商品名のアメンド(=Amendment(変更))依頼をしたため、代金の回収をすることができました。 このように、たった1字のスペルミスでも、銀行から指摘されれば買取を拒否されてしまいます。 このような失敗を経験されている貿易関係者は少なくないと思います。 まとめ いかがでしたでしょうか。 貿易取引のリスクを回避するために、日本国内では使われないL/Cという決済が使われています。 L/Cとは何か、輸出者・輸入者にとってどういうメリットがあるのか、どういう内容が記載されているのかを理解することが大事です。 そして一方で、L/Cにもデメリットがありますので、それについてはまた別の動画でお話をさせて頂きます。 もし、今回の内容が為になったという方は、チャンネル登録・いいね!あとSNSでシェアをよろしくお願いします! 今回の内容は以上になります。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

海上輸送におけるアメリカ24時間ルールについて | 輸送・ロジスティクス

海上輸送におけるアメリカ24時間ルールについて

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。今回は海上輸送における「北米の24時間ルール」について解説をしていきたいと思います。 今回の内容に関連する「海上輸送のマニフェスト」を解説する動画を概要欄にリンクを貼っておきます。 あせて見て頂けると理解がより深まると思います。 海上輸送におけるマニフェストとは? 「24時間ルール」とは まず、「24時間ルール」とは、一体なんのことでしょう。 これは、税関へのマニフェストを提出する期限のことです。マニフェストは、陸、海、空ともに税関へ提出するよう義務付けられています。 マニフェストについて 簡単に、海上輸送におけるマニフェストについて触れておきましょう。 マニフェストは船に積まれた貨物の情報が記載された明細書のことです。揚地側の税関にどんな貨物が運ばれてくるのか事前に知らせるという役割があります。 税関は、国民生活の安全・安心を守る為、水際での取締りを行うことで、その名の通り「関所」としての役割を担っています。 その税関がテロ行為に使用される疑いのある貨物を事前に特定し、それらの貨物が輸入されないよう、マニフェストの情報を確認しています。 尚、マニフェストの内容はBLの内容が基となります。 「24時間ルール」導入背景 それではまず、24時間ルールが導入された背景について説明しましょう。世界で最初に24時間ルールを導入・実施したのはアメリカです。 導入・実施となった背景には2001年9月に起きたアメリカ同時多発テロが切っ掛けでした。 テロ以降、アメリカではテロを未然に防ぐために海上貨物に関するセキュリティ規則を強化。 アメリカ税関国境警備局CBP(U.S. Customs and Boarder Protection)より、テロ対策の一環としてセキュリティ規則の一つに「24時間ルール」が導入されました。 「24時間ルール」について 次に、海上輸送におけるアメリカ24時間ルールについてご説明していきましょう。 既にお伝えした通り、「24時間ルール」とはマニフェストの提出期限のことで、外国の港で貨物が本船に積まれる24時間前までに船会社からマニフェストをCBPへ送信しなければならないというルールです。 House BLがある場合、House BLを作成したNVOCCまたはForwarderがマニフェストを作成・送信することがあります。 マニフェストの送信元 CBPへのマニフェストの送信元についてですが、貨物を載せた本船が揚港へ直行する船か、または輸送途中で別の本船に積み替えられた場合では、マニフェストの送信元が変わります。 アメリカ24時間ルールの場合、積地から貨物を載せた船がアメリカへ直行する船であれば、積地側の船社、NVOCCまたはForwarderが直接CBPへマニフェストを送信します。 一方、貨物がアメリカに到着する前に、他国の港で別の本船に積み替えられた場合、本船がアメリカの港に入港する前に最後に寄港した国の船会社代理店がマニフェストをCBPへ送信します。 尚、CBPへの申告対象には、アメリカで荷卸しされる貨物のほかに、アメリカの港を経由して他国に輸入される貨物も含まれます。 AMS送信 CBPへマニフェストを送信する際、船会社はAMS (Automated Manifest System)というシステムを使用します。 そのため、マニフェストを送ることを「AMS送信」と言うこともあります。 「10+2ルール」 尚、CBPでは、テロ行為に使用せれる疑いのある貨物の選別の制度を高めるために、輸入者に10項目、船会社に2項目の貨物の情報を提出するよう義務付けています。 これをISF (Importer Security Filing)「10+2ルール」といいます。 B/L No.報告 また、輸入者はISFの情報に加えて、CBPから提出必須情報としてBL Noの報告も求められます。 CBPはマニフェストによる貨物の情報と、輸入者からのISFによる貨物の情報をBL Noで結びつけ照合し、識別します。 「24時間ルール」の注意点 次に24時間前ルールにおける注意点をご説明します。 まずCUT日は必ず確認しましょう。CUT日とは、コンテナ貨物をコンテナ・ヤードに搬入する、またBLの基となるD/RまたはACLを船社に提出する、両者の期限のことです。 上記で述べた通り、輸出の場合、貨物を積んだ本船がアメリカへ直行する場合、積地の船社から直接CBPへマニフェストを送らなければなりません。 そのため、船社は通常のCUT日より2日から3日程早く設定しています。これは、CBPへマニフェストを確実にコンテナ貨物が本船に積まれる24時間前までに送信するためです。 船社は膨大なD/RやACLの情報を扱わなければなりません。そのため、もし不正確な情報をCBPへ提出した場合、CBPから罰金が科せられる場合があります。 早めにCUT日を設定することで、D/RやACLに不備あった場合に、荷主と確認を取る時間を設けることができます。 貨物が滞りなく積載されるためにもCUT日までにD/RやACLを船社へ提出できるよう、本船が決まったら随時CUT日を確認しておきましょう。 B/L No.を輸入者へ連絡 他にはMaster BL No & House BL Noが発番されたら、速やかに輸入者へ連絡をしましょう。 前述でもお伝えした通り、輸入者はISF情報をCBPへ報告する際に、BL Noを適切なタイミングでCBPへ報告しなければなりません。 House BLがある場合は、Master BL Noと共にHouse BL Noも提出する必要があります。 もし、ISFの情報に不備があったり、不適切なタイミングでCBPへ送信された場合、1件につきUSD5,000のペナルティーが課せられます。 輸入者側で不要な追加費用が発生しないためにも、荷主は両者のBL Noを入手次第、速やかに輸入者へ連絡をするようにしましょう。 まとめ それでは、本日の内容をまとめます。 海上輸送におけるアメリカ24時間ルールは、テロ対策の一環として導入されました。 また、テロ行為に使用せれる疑いのある貨物の選別の制度を高めるために、輸出者側からの貨物の情報と輸入者側からの情報を照合し識別するISFも導入されました。 アメリカではテロ以降、輸入または経由される貨物のセキュリティが非常に厳しくなり、貨物を輸出・輸入する際の手配に細心の注意を払う必要があります。 また、近年、アメリカ24時間ルールを皮切りに、カナダ、欧州、中国、イスラエル、エジプト、日本などでもテロ対策として、その国独自の24時間ルールを導入しています。 ですので、ご自身の担当する国の24時間ルールの有無を事前に確認しておくことをお勧めします。 今回の内容はいかがだったでしょうか?もし、よく分かったなという方は、チャンネル登録やいいね!あとSNSでのシェアをよろしくお願いします。 どうも、ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

船会社の紹介について | 輸送・ロジスティクス

船会社の紹介について

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。 今回は私たちフォワーダーにとって、とても身近な存在である「船会社」について説明していきたいと思います。 「船会社」と聞いても、仕事で海上輸送に関わりがない限り、あまり馴染みがないかもしれません。しかし、輸出入で経済成長を遂げてきた日本において船会社の存在はとても大きなものです。 船会社ランキング 輸出者に代わって毎日スペースブッキングを行う私たちフォワーダーは、さまざまな船会社を利用します。 2022年現在のTEUに基づいた海運業界の世界ランキングは次のとおりです。 ちなみにTEUとは「Twenty-foot Equivalent Unit」の略で、20FTコンテナ1本を表す単位です。 1位:MSC Group 2位:A.P Moller - Maersk 3位:CMA CGM 4位:Cosco Shipping Line 5位:EverGreen Marine 6位:Hapag Lloyd 7位:Ocean Network Express 今回は、このランキングから3社をピックアップしてご紹介したいと思います。 MSCについて 最初に紹介するのは、2022年1月時点で世界ランキング一位となったMSC (Mediterranean Shipping Company) グループ。 イタリアから本拠地を移し、現在はスイスに本社があります。 1970年に創始者であるジャンルイージ・アポンテ会長は貨物船1隻から事業を始めました。 2022年現在では、世界155カ国以上に営業拠点がある世界最大規模の船会社へと成長しており、1月にMearskを抜いて29年ぶりの首位交代となりました。 MSCは同族経営としても有名な会社です。グループ会社には、世界第3位を誇るクルージング会社「MSCクルーズ」があります。 インター・モーダルサービス提供 また、MSCはインター・モーダルサービスを提供しています。 インターモーダルサービスとは、船舶のみならず鉄道、トレーラートラック、航空機などの異なる輸送サービスを組み合わせて最終納品先へ貨物を運ぶ複合輸送サービスです。 MSCは世界最大級の人員と設備、そして50年もの長きにわたる実績を誇っているので、全世界のあらゆる場所へ安全かつ効率的に貨物を配達することが出来るのです。 ドアツードアでの配送の場合、輸送時間が長くなることで、さまざまなトラブルが懸念されます。 そうしたケースでもMSCは全世界にネットワークが構築された信頼ある船会社として、フォワーダーから選ばれやすいように思います。 CMA CGMについて 次に紹介する船会社は、世界ランキング第3位の「CMA CGM」。 本社はフランスにあり、1996年に大手海運会社のCMAとCGMが経営統合したことで設立されました。 大手海運会社「バルマス」や「APL」を次々と買収し、その規模はどんどん大きく成長しています。 MaerskやMSCと共に「海運ビッグ3」と呼ばれています。 港湾混雑緩和の対策プロジェクト CMA CGMは2021年11月に、コロナ禍による港湾混雑緩和の対策としてサプライチェーンの流れを改善するプロジェクトを立ち上げたことが大きなニュースとなりました。 プロジェクトの内容は、ロサンゼルスとロングビーチの港でコンテナの早期ピックアップに協力すると最大200ドルのインセンティブを支援するというもの。 米国への物流を途絶えさせないようにしたこの施策は、米国民の消費活動を守り抜いただけでなく、物流業界全体を支えた大きな取り組みだと高く評価されています。 ONEについて 最後に紹介するのは、シンガポールに本社のあるOcean Network Expressです。通称「ONE(オー・エヌ・イーやワン)」と呼ばれています。 2017年7月に日本の大手3社の日本郵船、商船三井、川崎汽船がコンテナ船事業を統合し「ONE」を設立したことは記憶に新しいですね。 その翌年の4月よりサービスが開始され、世界120ヵ国以上を超える広範囲な海上ネットワークを構築しています。 当時は、日本の海運業界を代表する3大船社が統括されると聞いてとても驚いたものです。 分かりやすく例えるなら、国内3大ECモールの「Yahoo!」「楽天」「Amazon」が統合するようなもの。普段からネットショッピングで利用している大手サイトが1つに統合されると、消費者にとってはかなりの衝撃です。 ONEの誕生は海運業界で働く私たちにとって、それくらい大きなニュースだったのです。 日本の船社 しかし日本の3大船会社が統合されたONEでさえも世界上位3位にはランクインすることが出来ません。 かつては世界3大海運国のひとつとされていた日本でしたが、今や貨物の取り扱いは年々減って、生き残りに賭けるということでしょうか。 経営統合が進む欧州や、グローバル化の勢いが凄まじいアジア圏の国々との差は今後も広がっていきそうです。 まとめ いかがでしたでしょうか。 今回は、私の独断と偏見で選んだ主要な船会社3社を紹介しました。 コロナ禍で大企業の倒産やコンテナ不足による物流の停滞が続いていますが、貿易業界の要(かなめ)である船会社を身近に感じていただけたでしょうか。 今回の動画が船会社に興味を持つきっかけとなれば嬉しく思います。 もし今回の内容が面白かったという方は、チャンネル登録やいいね!SNSでシェアをして頂けると非常に嬉しいです。何卒よろしくお願いします。 それでは今回は以上になります。また次の動画でお会いしましょう。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

海上輸送におけるマニフェストとは? | 輸送・ロジスティクス

海上輸送におけるマニフェストとは?

この記事を動画で見る どうもこんにちは。飯野です。 今回は海上輸送の実務で登場してくるキーワード、「マニュフェスト」について解説をしていきたいと思います。 マニフェストとは 貿易事務・実務を経験されている方なら、海上輸送で「マニフェスト」という言葉を耳にする機会があるかと思います。 マニフェストとは、船にどんな貨物が積まれているかが記載されている明細書のことです。 飛行機でいうと、どんな人がその飛行機に乗っているのかが記載されている乗客名簿のようなものです。 マニフェストの役割 海上輸送におけるマニフェストには、揚地側(輸入側)の税関にどんな貨物が運ばれてくるのかを事前に知らせるという役割があるのです。 特に、2001年に起きたアメリカ同時多発テロにより、アメリカが「船積24時間前のマニフェスト提出ルール」を義務付けるようになったことから、マニフェストは各国でもテロを未然に防ぐために重要視されるようになりました。 マニフェストの活用 税関は輸出入貨物の許認可の可否を判定する国の機関であり、その名の通り「関所」としての役割を担っています。 その税関がテロ行為に使用される疑いのある貨物を事前に特定し、それらの貨物が輸入されないよう、マニフェストを活用しています。 マニフェストの記載内容 ここで、海上輸送におけるマニフェストにはどのような情報が記載されているのか、確認していきましょう。 マニフェストには、大きく分けて2つの情報が記載されています。 本船の情報 まず、1つ目に「本船の情報」です。 この本船の情報として記載されている内容は次の2つです。 ・貨物を積んでいる本船名 ・貨物を積んでいる本船の国籍 「本船の国籍」とは、私たちに国籍があるように、船にもどの国に所属しているかの「船籍」があります。 貨物の情報 2つ目には、「貨物の情報」で、最も重要です。 貨物の情報は主に以下の内容が記載されています。 ・コンテナの種類 (Container type) ・コンテナ番号.とシール番号. (Container No & Seal No) ・船荷証券番号 (Bill of Lading No) ・シッピングマーク (Marks & Nos) ・品名 (Description of Goods) ・梱包の種類 (Kind of Packages) ・貨物の数量 (Number of Packages) ・総重量 (Gross Weight) ・容積 (Measurement) ・仕出地 (Place of Shipment) ・仕向地 (Place of Destination) ・荷送人 (Shipper) ・荷受人 (Consignee) などです。 これらの貨物の情報は、B/Lに記載されている内容です。つまり、マニフェストはB/Lの内容を基に作成されています。 マニフェストの流れ さて、海上輸送におけるマニフェストは誰が作り、どのようにして揚地の税関に送られるのでしょうか。 ここで、マニフェストの流れをご説明します。揚地によって異なることもあるので、ご注意ください。 船会社がマニュアル作成 先ほどでもお伝えした通り、マニフェストはB/Lの内容を基に作成されます。B/Lは貨物を積んだ船の船会社が発行します。 つまり、B/Lの情報を管理している「積地側の船会社」がマニフェストを作成するのです。 積地側船会社~揚地側船会社代理店~税関 作成されたマニフェストは、積地側の船会社から揚地側の船会社代理店に送られます。そして、揚地側の船会社代理店から税関へと送られます。 尚、積地側の船会社から直接揚地側の税関にマニフェストを提出する場合もあります。 24時間ルール マニフェストには、冒頭でお話しした通り、「24時間ルール」というマニフェストの提出期限があります。 これは、貨物が本船に積まれる前、または貨物を積んだ本船が港を出港する24時間前までに揚地側の税関にマニフェストを提出するよう、アメリカをはじめ、カナダや欧州などの税関がテロ対策の一環として義務付けたルールです。 マニュフェストの注意点 マニフェストの注意点もお伝えしておきましょう。 マニフェストはB/Lの内容を基に作成されるので、もしB/Lの内容が実際の貨物の情報と違いがあった場合、マニフェストも実際の貨物の情報と異なってしまいます。 このようなことが起きると、揚地側での輸入通関の際に税関から輸入者へ確認が入り、通関がスムーズに行われない場合があります。 このようなことが起きぬよう、B/Lの基データを作成するのは荷主(SHIPPER)ですので、早めにACLやD/Rに必要な情報を送っていただけるよう、また内容に間違いのないよう、荷主への協力を仰ぐことが一番大切です。 また輸入通関用のI/V、P/L、その他現地で必要なライセンスやC/Oなどにもマニフェストと相違がないか、荷受人と荷主とで確認する必要もあります。 マニフェストの訂正 B/Lとマニフェストの内容に訂正が必要になった場合、時間と費用がかかります。 「B/Lが発行された」 = 「マニフェストが揚地の船社代理店へ送信が完了された」ということになります。 マニフェストは通常、港から本船が出港するとロックされます。ロックされるというのは、揚地側の船会社代理店でマニフェストの情報が取り込まれ手配が進むと、船会社代理店の許可なしでは貨物の情報を訂正することが出来ないということです。 そのためロック解除に時間を要することがあります。 その為「B/Lの内容を訂正する」=「マニフェストの内容も訂正が必要」ということになります。 両者の内容を訂正するには、訂正料が発生します。 マニフェストの訂正料 B/Lとマニフェストの訂正料は船社によって料金が異なります。また、マニフェストの訂正に掛かる費用は積地側だけではなく、揚地側でも発生する場合があります。 その場合、予定していなかった揚地でのマニフェストの訂正料を誰がもつのかと輸入者ともめることも少なくありません。 このような問題が起きないよう、B/Lの内容の訂正が必要となった際は、船社へ事前にB/L訂正料と併せて積地と揚地の両方のマニフェスト訂正料についても確認しておいた方がよいでしょう。 B/Lの内容に注意 揚地が韓国や中国といった近海の場合は、B/Lやマニフェストを訂正している間に船が到着してしまうことがあります。 貨物は到着しているのに、輸入者の手元にB/Lがなく輸入通関の手配が出来ない、マニフェストの訂正に時間を要し輸入許可がおりないといったことで、輸入者がなかなか貨物を引き取れないという事態になり兼ねません。 荷主は、正確にマニフェストの情報が税関へ送られるためにも、B/Lの内容に細心の注意を払って作成することが重要になります。 まとめ これまでの海上輸送におけるマニフェストの内容のポイントをまとめておきましょう。 マニフェストは、 1.国の安全対策に活用されている 2.B/Lの内容がマニフェストの情報となる これまでの説明の通り、マニフェストの内容に不備があると、後々、船会社、税関、場合によっては輸入者といった色々な関係者に追加の作業・時間・費用などが発生し、貨物の流れ・国の安全対策に影響をきたします。 マニフェストの情報は重要なだけに、マニフェストの基となるB/Lの内容の取扱いに気を付けながら、業務を進めていきましょう。 今回の内容はいかがだったでしょうか。このチャンネルでは貿易のお仕事で使える知識や実践的なノウハウをお伝えしています。 もし今回の内容が勉強になった!という場合、いいね!チャンネル登録、あとSNSでのシェアをして頂けると非常に嬉しいです。今回の内容は以上になります。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

貿易事務の1日の流れ | 輸送・ロジスティクス

貿易事務の1日の流れ

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。 今回は、フォワーダーで働く貿易事務の1日の流れについてご紹介していきたいと思います。 会社によって業務プロセスは違うかもしれませんが、あくまで参考の一つとしてご視聴頂ければと思います。 貿易事務とは 「貿易事務」と聞いて、みなさんが思う仕事内容はどのようなものでしょうか? 英語を使って海外とやり取りをしたり、英語で商談や会議を進めたり、海外出張に同行したり、来日したお客様のアテンドを行う、そんな華やかな世界で最前線で働く姿を想像されるかもしれません。 しかし私が知る限りでは、フォワーダーの貿易事務のお仕事では英文メールでやり取りすることはあっても、電話や対面で英語を話す機会はそれ程多くはありません。 貿易事務は業種や業界によって仕事内容が全く異なります。 必要なスキル 商社やメーカー勤務だと、英語の使用頻度は多く高度な英会話スキルが求められることもあるでしょう。 しかしフォワーダーで働く場合は、海外とのやり取りは9割がメールのため中学生レベルの英文法スキルさえ持っていれば海外の人たちとコミュニケーションを取ることができます。 フォワーダーで貿易事務として働くために必要なスキルは、「英語」よりも「正確かつスピーディーに業務を遂行する能力」だと実感しています。 貿易事務の業務内容 さて前置きが長くなりましたが、ここからは日本のフォワーダーの会社で貿易事務として活動されていた、弊社の協力者のリアルな1日の流れを紹介します。 輸出の場合 主に輸出業務では ・コレポン ・船積書類の作成、確認 ・貨物搬入までのスケジューリング ・輸出通関業務 ・L/Cチェック などを行います。 輸入の場合 そして輸入業務では ・コレポン ・国内配送指示、納期調整 ・輸入通関業務 ・関税・消費税の納付 などを毎日ルーティンで処理するイメージです。 コレポンとは ちなみにコレポンとは、Correspondence(コレスポンデンス)の略で英語を用いて海外とメールのやり取りを行うことを指します。 フォワーダーでの貿易事務が英語力必要とされる理由は、扱う書類が全て英語表記であるためです。 それでは順を追って紹介していきますね。 AM9:00~:メールの仕分け まずはパソコンを開いてメールのチェックから1日が始まります。 貿易事務は海外とのやり取りが多いため、時差の影響で夜中にメールが届いていることが多いです。 そのため、朝一は海外から届く大量のメールを仕分けしていく作業で時間を取られます。 輸出の場合は、輸出先の船会社へ商品情報を伝えたり、事前に書類を送付したりします。 一方輸入の際は、輸出者へ書類や商品情報を取り寄せるために催促のメールを送ったりします。 一般的に、輸出業務の方が高度な英語スキルを求められることが多いです。 海外とのメール このときにメールの返信があれば良いのですが、海外は連絡にルーズなところがあるので何日かほったらかしにされてしまうこともあります。 1日に3〜5回催促メールをして、やっと返信してくれるということも少なくはありません。 最近では、業務の効率を高めるためにSkypeやTeamsなどのチャット機能を取り入れている企業が多いです。 AM10:00~:スケジューリング 輸出者から船積み依頼があれば、船会社へBOOKING手配をします。最近はコンテナ不足が多発しているため、出航までに余裕があっても希望のスケジュールでスペースが取れないことが多いです。 そうした場合は、輸出者へ積載可能な本船候補を伝えてスケジュールを調整してもらいます。 AM10:30~:支払処理 船会社からFAXまたはメールでアライバルノーティスが届いていれば、輸入者に代わって海上運賃やCYでの諸費用の支払処理を行います。 当日ピックを要する際は、支払い処理を当日の午前中に済ませる必要があるため社内の経理部と連携を取りながら早急に進めます。 入金確認 処理を終えたら、船会社へ入金が無事にされたか電話で確認をします。 過去に船会社側で決済が混み合い支払い確認がされない、というアクシデントが起こったことがあります。 そのときは、コンテナヤードでコンテナの引き取りが行えず、船会社へ確認して事なきを得たのですが、当日引き取りの場合は支払処理後、船会社へ入金確認が取れたかの電話をした方がよいでしょう。 AM11:00~:国内配送手配 国内納品を急ぐ輸入貨物があれば配送会社へ依頼します。 昨今のドライバー不足が原因で、「当日ピック翌日納品」の手配が難しい状況が続いています。 即納を要する場合は、高速代や手数料としての追加料金が発生することがあるので、輸入者・配送会社・フォワーダー間で迅速にコミュニケーションを図りながら手配を進めなければなりません。 PM13:00~:船積書類作成 お昼休憩が明けると、午後の仕事を始めます。 急ぎの仕事が無ければ、船積書類の作成・確認を行います。 作成する書類は、Wordソフトを使ってインボイスやパッキングリストなど。金額や数量など間違いのないように注意して入力します。 またD/R(ドックレシート)の作成も併せて行います。 D/RはB/Lの情報元になるので1字のミスも無いように入念にダブルチェックをします。 L/C確認作業 そして、L/Cの確認作業も行います。 品名や買取・発行銀行のスペルミスがないかどうか、何度も確認をします。 書類の確認作業 貿易事務は書類に誤りがないか、不備がないかを確認する作業が業務の5割を占めていると言っても過言ではありません。 正直なところ、書類の作成や内容確認は集中力を要する業務のため午前中に済ませたいところです。 ただ、午前はメールチェックや支払処理、急ぎの配送手配など緊急性の高い仕事を優先するので、どうしても後回しになってしまいます。 PM14:00~:通関の書類作成 輸出・輸入通関の書類作成を仕上げていきます。 商品説明書(MSDS)を取引先から取り寄せたり、他法令に該当する場合は他法令の許可書が準備されているかを確認します。 初めて輸出入する製品は、税関から用途などの質問が入ることが多いので、あらかじめ取引先へ確認しておくことも時間の効率化につながります。 PM15:00~:B/L差し入れ B/Lを船会社へ差し入れに行きます。 また、D/O(デリバリーオーダー)レスでない場合は、原本が必要なので引き取りに行きます。 PM16:00~:スケジューリング 納期調整・配送指示を行います。 本船が予定通りに入港することはめったにありません。入港日が近づいたらスケジュールをなるべくこまめに輸入者へ伝えるようにします。 輸入者が納品を急ぐ場合は、納品場所が変更されることもあるので本船の動静は注意深く確認する必要があります。 PM17:00~:コレポン ヨーロッパ圏の人たちが出社をする時間帯なので、メールのやり取りを行います。 この時間帯に返信が来なければ、明日の朝の確認となってしまうので、緊急を要する際は何度もメールで催促をしたり、電話で確認をすることもあります。 PM17:30~:翌日の準備 翌日朝一に処理したい書類を整理していきます。 メモまたは手帳に明日すべき業務を優先順に羅列して、効率的に業務が行えるように事前準備をしておきます。 PM18:00:終業 業務が終われば、退勤です。 ただし海外からの連絡待ちなどで残業になることが多いです。 まとめ 以上、いかがでしたでしょうか。 貿易事務の仕事は、ほかの事務職と同じく基本的にデスクワークです。 しかし輸出入に関する高度な知識やメールでコミュニケーションが取れるレベルの語学力を要する、とても専門性の高い仕事だと思います。 トラブルやイレギュラー対応はほぼ毎日のように発生します。抱える責任も重く残業は多い職場もありますが、やりがいを強く感じられる職種だと思います。 この動画を見て、少しでも貿易事務の仕事に興味を持っていただければ嬉しいです。 今回の内容は以上になります!いいね!チャンネル登録、SNSでのシェア、どうぞよろしくお願いします!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

アライバルノーティスの役割と貨物引き取りの流れ | 輸送・ロジスティクス

アライバルノーティスの役割と貨物引き取りの流れ

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。 今回は貨物の輸入の際に登場する書類、アライバルノーティスについて解説したいと思います。この書類は貨物を引き取る際に必要なとても大事な書類です。 この動画では、アライバルノーティスの役割と、貨物を引き取るまでの流れを解説していきます。 アライバルノーティスとは アライバルノーティスとは、輸入国に貨物が到着する前に船会社から発行される「貨物到着案内」を指します。 英語ではArrival Noticeと記載し、「A/N」と略されることが多いです。 輸入者は、アライバルノーティスを受け取ると貨物を引き取る準備を進めることができます。基本的には、フォワーダーが輸入者に代わって引き取り作業を行います。 フォワーダーは少しでも早く輸入者に貨物を届けられるように、この引き取り作業を迅速かつミスがないように処理しなければなりません。 アライバルノーティスの内容をよく理解していないと、貨物を引き取る工程でトラブルを引き起こしてしまう可能性があります。 アライバルノーティスの役割 アライバルノーティスの役割は主に次の3つです。 ・船社からの請求明細書 ・入港スケジュール・搬入先の通知 ・フリータイムの確認 フォワーダーは上記3点を確認し、引き取り準備にかかります。 それぞれ詳しく解説していきましょう。 船社からの請求明細書 まず請求明細書としての役割について解説します。 明細は海上運賃と共に、アライバルノーティスの下部に記載されていることが多いです。 主な費用項目を紹介します。 ・Ocean Freight(O/F) ・Terminal Handling Charge(THC) ・Delivery Order Fee(D/O fee) ・Documentation Fee(Doc Fee) ・Bunker Adjustment Factor(BAF) ・Currency Adjustment Factor(CAF) Ocean Freightとは、その名の通り海上運賃です。 輸入者側が海上費用を負担するインコタームズ(EXW/FAS/FCA/FOB)、あるいは慣例として輸入者が支払う場合に記載されます。 THCは、荷揚げや保税地域での作業を含んだコンテナの取り扱い料金です。貨物がLCLの場合は、さらにCFS Chargeが発生します。 D/O Feeは、輸入貨物を引き取る際に必要なD/Oを船会社から発行してもらうための手数料のことです。 Doc Feeは、船会社にB/Lなどの船積書類を発行してもらう費用です。 そのほかにも、BAFやCAFといった燃料や為替状況によって変動する割増料金などがあります。 こうした割増料金が発生する際は事前に船会社から通知される事が多いですが、連絡なく費用に含まれている場合は、念のため船会社へ確認するようにしましょう。 入港情報の通知 次に、入港情報の通知としての役割について説明します。 アライバルノーティスが手元に届いたということは、近日中に貨物船が港に到着するということです。引き取り作業を速やかに行うためにも、搬入先(CY/CFS)は要チェックです。 東京港や大阪港といった規模の大きい港だと保税地域が複数あるため、誤って違う搬入先を配送会社に伝えてしまう可能性があります。 搬入先に向かう配送業者に迷惑をかけるだけでなく、遠回りした分の配送料が加算されたり、最悪の場合、当日の間に引き取れないこともあります。 フリータイムの確認 最後に、フリータイムの確認について説明します。 フリータイムとは、輸入貨物を港の保税地域に無料で保管できる期間を指します。一般的にコンテナの無料の保管期間は1週間前後ですが、船会社ごとに期間は異なるので確認するようにしましょう。 この無料期間を過ぎてしまうと、デマレージ(超過保管料)が発生してしまいます。 アライバルノーティス発行からの流れ さて、ここからはアライバルノーティスが発行されてからの流れを説明します。 アライバルノーティスは、B/Lのノーティファイパーティ欄に記載された企業(買主又はforwarderなど)に通知されます。 通知先が輸入者のこともありますが、今回はフォワーダー宛として説明していきます。 フォワーダーから輸入者へスケジュール連絡 アライバルノーティスがフォワーダー宛にメールまたはFAXで送付されます。 入港スケジュールと搬入先を確認し、輸入者へお知らせします。急ぎの貨物の場合、輸入者は到着の連絡を待っているので速やかに連絡するようにしましょう。 船会社への支払い フォワーダーが請求内容を確認して、船会社へ支払います。 ここで注意すべきポイントは、「海上運賃」の記載の有無です。 まれに運賃前払い(Freight Prepaid)にも関わらず、費用項目に海上運賃が記載されていることがあります。そのときは船会社へ連絡をして訂正してもらうか、一旦支払い、次回振込時に相殺処理を行ったりします。 支払い方法 また、支払方法はアライバルノーティスに記載されています。多くが指定口座への振り込みですが、カード決済も最近では導入されています。 オリジナルB/Lの提出 オリジナルB/Lの場合は、B/L原本も船会社へ提出する必要があります。 オリジナルB/Lは有価証券の役割も持ち 取り扱いが難しいため、SEA WAYBILLを使用する場合もあります。 D/O発行 船会社は、支払いを確認するとD/Oを発行します。 D/OとはDelivery Orderの略で、船会社がCYオペレーター、または、CFSオペレーター宛てに発行した荷渡し指示書のことです。CYやCFSの保税地域で貨物を引き取る際に必要な書類です。 D/Oレスの確認 最近はほとんどの船会社がD/Oレスという形で、D/Oの書類発行をしていないため、支払いが完了すればリリースできることが多いです。 しかしD/Oレスだと勘違いをして、D/O原本が必要だった!というケースもあるので、しっかり確認するようにしましょう。 輸入許可、納品 あとは、税関から輸入許可が下りれば完了です。フォワーダーは、「D/O」を配送業者へ渡します。 そして、配送業者は保税地域へ貨物を引き取りに行き輸入者の指定する納品先へお届けします。 以上が、アライバルノーティスを使った貨物の引き取りの流れです。押さえるべき点を理解していれば、そこまで難しいことはありません。 まとめ 最後に、アライバルノーティスの役割3つと、注意すべき2つのポイントを確認して、今回の説明を終えたいと思います。 【役割】 ・船社からの請求明細書 ・入港スケジュール・搬入先の通知 ・フリータイムの確認 【注意すべきポイント】 ・海上運賃の支払い責任は誰なのか ・D/Oレスになっているのか これらが重要なポイントでした。 いかがだったでしょうか。 今回はアライバルノーティスの役割と、貨物のリリースの工程を紹介しました。 アライバルノーティスは、輸入地側の船会社が発行する重要な到着通知です。手元に届いたら、速やかに処理を行うように心がけましょう。 今回の動画がお役に立てましたら、チャンネル登録やいいねボタンを宜しくお願いします! ではまた次の動画でお会いしましょう!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

海上輸送のモノ・カミ・カネの流れについて | 輸送・ロジスティクス

海上輸送のモノ・カミ・カネの流れについて

この記事を動画で見る 今回は輸出業務について解説したいと思います。国際輸送において、「モノ」「カミ」「カネ」の流れを理解することは必須です。 流れをざっくり説明すると、契約書や船積関連の『カミ』でのやり取りがはじめにあり、『モノ』を出荷し、『カネ』を受け取る、というもの。 ですがこれだと分かりにくいかもしれませんので、今回の動画で、わかりやすく説明していきます。 なお、今回の「カネ」の流れは「L/C決済」としています。L/C決済についての詳しい動画は以前に制作しましたので概要欄にリンクを貼っておきます。 L/C (Letter of Credit)について 「モノ」の流れ 最初に、「モノ」すなわち「商品」の流れを解説します。 輸送方法は海上と航空がありますが、一般的に国際輸送の9割が海上輸送です。 海上輸送のメリットとして、「コストが安い」「大型荷物や大量の商品を出荷する際に便利」という2点が挙げられています。 一方で、「時間がかかる」「申告書類のチェックが厳しい」といったデメリットもあります。 そのため、輸送方法を海上にするか航空にするかは、出荷する商品内容やコスト面などを輸出者と輸入者で話し合って決められます。 今回は、海上輸送について説明していきますね。 工場~保税地域~輸出 商品が輸出者の工場で生産・梱包後、コンテナやトラックに荷積みされCYやCFSなどの保税地域へ運ばれていきます。 運ぶ際の責任の所在や運賃は、契約時のインコタームズで決められます。 インコタームズとは、貿易を行う上で輸出者と輸入者との間の責任範囲と費用範囲を定める貿易条件のこと。 2021年現在は「インコタームズ 2020」が使われています。 例えば貿易条件がEXWの場合、輸出者が自社工場で荷物を輸入者に引き渡した時点で、全ての責任は輸入者側に移ります。そのため、工場から保税地域までの間に商品に損傷が発生すると、責任は輸入者側の負担になります。 保税地域へ運ばれた商品は、税関から輸出許可が下りた後に搬出され船積み手続きが進められます。 保税地域について 輸出に関する保税地域について簡単に説明します。 商品がFCL貨物の場合は、CY(コンテナ・ヤード)から搬出され、ガントリークレーンにて本船に積み込まれます。 LCL貨物(コンテナ1単位に満たない小口貨物)の場合は、CFS(コンテナ・フレイト・ステーション)でほかのLCL貨物と混載後、CYに運ばれFCL同様本船に積み込まれます。 本船出港後、「モノ」は輸入国へ渡り輸出完了です。 「カミ」の流れ 次に、「カミ」すなわち「船積書類」の流れを解説します。 フォワーダーや通関業者が毎日のように目を通す「船積書類」。主な書類は次の通りです。 ・インボイス ・B/L(船荷証券) ・保険証券 ・パッキングリスト ・原産地証明書(EPAを適用したい場合など) 一般的に書類は輸出者が作成します。 商品名や金額、数値などの記載は間違いが起こりやすく、誤りや商品との相違があれば輸出できない可能性もあります。 海上輸送の場合は、航空輸送よりその判断が厳しい傾向にあるので注意しましょう。 そのため輸出側は、書類ミスのないようダブルチェックもしくはトリプルチェックをして万全の状態で申告するように心がけています。 輸出者からフォワーダー/通関業者へS/I送付 輸出者は、フォワーダーや通関業者へS/I(船積み依頼書)を送付します。 S/Iに記載されている内容は、依頼する作業内容や貨物の情報、船積書類、Booking情報(ETD, vessel, voyなど)に関するもの。輸出者によって書式はさまざまです。 船の出港後発行されるB/Lは、このS/Iに記載されている情報をベースとしています。 S/Iに基づく輸出申告 フォワーダー又は通関業者は、S/I(船積依頼書)に基づいて税関に輸出申告を行います。 現在は多くの輸出貨物が「NACCS(ナックス・輸出入港湾情報処理システム)」を利用しての申告が行われています。NACCSに申告情報を入力し税関へ送信することで申告は完了です。 申告後、次の3つの区分が出力されます。 ・区分1:簡易審査扱い(申告をした後、すぐに輸出許可が下りる) ・区分2:書類審査扱い(書類の提出が必要) ・区分3:検査扱い(税関員が保税地域へ現物検査を行う) ほとんどが区分1となりますが、税関の判断で区分2もしくは3となった場合は許可までに時間がかかるため、急ぎの貨物の場合は税関の指示に従い速やかに許可が下りるようにしましょう。 船会社へ船積書類提出 フォワーダーや通関業者は、船積書類(D/R、CLPなど)を作成し船会社へ提出します。 D/R(ドックレシート)は、船社のフォーマットに合わせてS/Iを元に作成されます。提出後、船会社はコンテナ貨物の受領証として一部を通関業者に返却します。 またCLP(Container Load Plan)は荷主が作成し、コンテナのどの位置に何が入っているのかを明確にします。 船会社発行B/Lをフォワーダー/通関業者へ提出 船会社はB/Lを発行し、フォワーダーと通関業者へ渡します。 インコタームズがCIPやCPT、DAPといった輸出者が海上運賃を負担する条件の場合は、船会社に運賃を先に支払うことでB/Lを受け取ることができます。しかし一般的にはフォワーダーが運賃を立替、後日請求書にて荷主へ請求されます。 このとき、B/LがS/Iの情報通りに発行されているかを再度確認します。 また今回はコンテナ船ですので、B/L下の欄にある『On Board Notation(船積証明)』に日付と船会社(あるいは代理店)の署名があることも忘れずに確認しましょう。 L/C決済の場合は、この『On Board Notation(船積証明)』があることで、『きちんと本船に載せられた状態で輸入港に向かった』という担保としての価値を持つことになりますので、意識して確認することが大切です。 船積書類、S/Aの送付 フォワーダーや通関業者は輸出許可書・B/Lなどの船積書類を輸出者へ渡します。 輸出者は輸入者へ船積書類とS/A(シッピングアドバイス)を送付して、船積みが完了したことを伝えます。S/Aはメールでスケジュールが決定した時と船が出港した時の2回連絡するだけでOKです。 輸入者はS/Aと書類を受け取り、引き取り準備を進めます。 荷為替手形を銀行に提示 輸出者は為替手形に船積書類を添えた「荷為替手形」を銀行に提示し、買取を依頼します。 荷為替手形とL/Cの内容が照合されれば、決済が行われます。そして商品が輸入者に届けば、無事輸出完了となります。 「カネ」の流れ 最後に、「カネ」すなわち「代金」について解説します。 今回はL/C決済での代金の流れを説明します。L/CとはLetter of Creditの略で、信用状のことを言います。 L/C決済の利点 L/C決済を行うことで輸出者は、商品を出荷すれば代金を受け取れるため、商品を送ったにもかかわらずお金がもらえない!という事態を避けることができます。 反対に輸入者は、商品を受け取る前に代金を支払う必要がなくなるので、支払い損になるリスクをなくせます。 L/C決済は、双方に大きなメリットのある決済方法なのです。 買取銀行と発行銀行 L/C決済の場合、船積みが完了してから代金が登場します。 輸出者が船積み後に買取銀行へ、B/Lなどの諸々の船積書類である「荷為替手形」の買取を依頼します。 ちなみに輸出者側の銀行は荷為替手形を買い取る銀行なので「買取銀行」、輸入者側の銀行はL/Cを発行する銀行なので「発行銀行」と呼びます。 この時に書類(荷為替手形)の内容がL/Cと一致すれば、決済されます。 発行銀行から買取銀行へ送金 その後、輸出側の銀行である買取銀行は、輸入者側の銀行へ荷為替手形(船積書類)を発送し、輸入側の銀行から代金の送金を受けます。 輸入者側の銀行は輸入者へ船積書類の到着通知と代金請求を行い、輸入者は発行銀行へ代金を支払います。 発行銀行から買取銀行へ代金が送金されて完了となります。 まとめ いかがだったでしょうか。 輸出を行う上で、「モノ」「カミ」「カネ」は複雑に絡み合って、それぞれの役割を果たしていきます。 はじめのうちは、少しややこしく感じてしまうかもしれませんが、実務を何度か経験することで理解が深まり、輸出業務の楽しさを感じてくると思います。 今回の内容は以上になります!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。