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輸送・ロジスティクス

CO2の回収について | 輸送・ロジスティクス

CO2の回収について

この記事を動画で見る どうもこんにちは。飯野です。 今回は海運業界だけでなく、一般的な環境対策である「CO2の回収」についての解説をしていきたいと思います。 このチャンネルでも頻繁にお話をしている海運業界の脱炭素ですが、CO2を出さない為の目標や施策が日々更新されています。 最近ではイギリスのグラスゴーで開催されている、気候変動に関する国際会議 COP26があり、各国の温室効果ガス排出量の削減目標が注目されていますよね。 CO2の回収について このように温室効果ガスをそもそも出さないのが重要なのですが、それでは今現在で排出されているものはどうなっているのでしょうか?大気中に出しっぱなしなのでしょうか? 実は現在排出されているCO2は全てではありませんが、しっかりと回収されているのです。 そして2021年10月のニュースでは、日本の川崎汽船と三菱造船は日本海事協会(NK)と共同で、世界初の「船上でのCO2の分離・回収の実証試験に成功した」と発表がありました。 このCO2の回収は陸上では多くの所で導入されています。 日本では三菱重工がCO2の分離・回収設備で有名で、世界14カ所で回収装置を設置、7割超のシェアを占めているんです。 CO2の分離と回収の技術 ではCO2の分離と回収をどのようにしているかというと、アミンという特殊な液体に排ガスを入れて加熱し、CO 2だけ分離・回収したり、最近では白くて小さな球状の固体吸収剤にCO2を閉じ込める技術も出来ています。 CCSとCCUS またこのCO2の分離・回収をする活動において、CCSまたはCCUSという名称で注目が集まっています。 CCSはCarbon dioxide, Capture, StorageでCO2の「回収と貯留」のことです。 CCUSはCarbon dioxide, Capture, Utilization and StorageでCO2の「回収、有効活用、貯留」を表します。 CO2の有効活用 特に近年ではCCUSの”U”=Utilizationである”有効活用”が、技術的にも発達していったのでより注目されているようです。 では、どのようなものにCO2が有効活用されているかというと… 例えば、ビニールハウス内で育成している野菜や植物に適量のCO2を散布したり、CO2を基礎化学品のメタン、メタノール、オレフィンに転用することが出来ます。 CO2の貯留 次にCCSやCCUSの”S” = Storage、貯留についても説明しましょう。 回収したCO2をどこに貯留しているのでしょうか? 実は海底などにパイプラインを使って送り込み、地中に圧入して閉じ込めています。 「石油や地下水を長期間封じ込めていたような安定した地層であればCO2の隔離も長期間可能なはずだ」という考えの元に地中に閉じ込めているのです。 しかし、貯留出来る量にも限りがあります。 現在のCO2排出量だと世界で100年分のCO2が貯留可能と言われていますが、もしかしたら もっと少ないかもしれませんよね。 液化CO2船の開発 CO2を貯留する地域(地層)も限られています。その為、CO2の回収場所と貯留地点が近いとは限りません。 もし回収地点から貯留地が100〜200km程 離れるとパイプラインより海上輸送の方がコストが安くなるようです。 現在、液化CO2船は世界で5隻しかありません。全てノルウェーの海運会社ラルビック・シッピングが船舶管理しています。 もともと飲料ガスなど向けに運航されていたものですが、CCSの事業化が進む中で世界的に注目が集まっているようです。 そして日本の商船三井はラルビックに出資し、液化CO2輸送事業に参入し、国内でも液化CO2船の開発を進めています。 まとめ EUは2030年のEUのCO2排出削減量を、従来の1990年比40%減から55%減に引き上げる法律を承認しました。 この大きな目標を達成するため、企業やベンチャーキャピタルなどの投資家はCCUSを手掛ける企業への出資や提携に乗り出しており、2021年のCCUS企業の資金調達額は前年比3倍の11億ドルに達する見通しとのことです。 現在 世界中で気候変動に対しての対策が講じられています。 脱炭素という、そもそもCO2の排出を出さないということがやはり大切なのですが、今回説明した特にCCUSのCO2の有効活用にも注目です。 技術開発が進みCO2はメタノールにも転用できると紹介をしましたがこのメタノールを燃料として動く船もあり、海運最大手のマースクも採用をしています。 CO2排出量が実質ゼロになり、非常に面白いなと個人的には思っています。 海運業界においても脱炭素や、CO2の回収と有効活用についてこれからも情報を発信していきたいと思いますので、チャンネル登録やSNSでシェアをして頂けると非常に嬉しいです。 今回は以上になります。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

中国電力不足による海運市況への考察 | 輸送・ロジスティクス

中国電力不足による海運市況への考察

この記事を動画で見る どうもこんにちは飯野です。 今回は昨今の中国の電力不足から、今後の海運市況を考察してみるというテーマでお話をしていきたいと思います。 2021年は中国発北米向けの海上運賃は過去最高の値上がりを見せていましたが、10月の国慶節を前にして、突然スポット運賃が急落しました。 これには中国の電力不足が関係していると言われています。 この中国の電力不足の原因や、これが引き起こす今後の影響について詳しく知ることによって、これからの海運マーケットの動きを考えてみたいと思います。 アメリカの最新の物流状況も合わせて見ていきます。それではいってみましょう。 中国発北米向けスポット運賃急落 まずは、中国発の運賃の急落についてです。2021年9月下旬に中国から北米向けのスポット運賃に大きな変化が現れました。 40footコンテナあたり、USD 15,000 から USD 8,000と約半額の値下がりがあったのです。 値下がりの原因は理由としては日本でも大きく報じられた中国の電力不足から引き起こされています。 電力不足による停電が起こることで工場の生産に影響が出ることになり、10月1日からの国慶節前に生産を終えることが出来なかった多くの工場が本船予約をキャンセルしました。 ニュースではスペースを在庫することが出来ないフォワーダーが投げ売りのような形でスペースを販売したと報じられています。 今回の出来事は国慶節という休み前というタイミングもあり、生産量を減らしたことに繋がっているかもしれません。 中国電力不足の原因 今回は電力不足から運賃急落が引き起こされたのですが、それではなぜ中国で電力不足が起こったのでしょうか。 そこから今後のマーケットの動きが見えるかもしれません。もう少し見ていきましょう。 中国は政府が電力を管理しています。胡錦濤国家主席の代から、一定の水準までに消費電力を抑制するという政策がありました。 しかし2021年8月、中国国家発展改革委員会は2021年上期の目標達成状況を発表したところ、目標からは大きく離れていたのです。 そのため中国政府が目標達成に向けて発電量を抑えたのではないかとの推測されているようです。 これが影響して2021年9月27日までに、中国本土の23社の上場企業が生産停止・減産をしていました。 また現在の習近平国家主席の環境対策も影響していると考えられます。習氏は2060年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにするという目標を発表しています。 また2022年2月に行われる北京冬季オリンピックも関係しているでしょう。大気汚染を抑制し青空で冬季オリンピックを開催したいという目論見もあると思います。 中国の主な電源力:石炭 現在の中国の主な電力源は石炭です。2020年の中国国内の発電における 石炭火力発電の割合は6−7割と、中国が発電を石炭に依存していることが分かります。 そしてその石炭の価格が今年から高騰していることも電力不足の要因の一つです。今年9月中旬での石炭価格は前年同期比の約2倍となっています。 これにより中国国内で採算が合わない発電所が火力発電を控えており、石炭の仕入れ自体も買い控えています。9月時点では中国の6つの主要発電所の石炭の在庫は約15日分程度と過去最低水準で、在庫がありません。 中国においてはオーストラリアとの関係悪化により、石炭の輸入をインドネシアに変更したことも影響しているかもしれません。 このような様々な理由から電力不足が引き起こされたとされています。政府の消費電力抑制のための政策、環境対策、石炭価格の高騰と供給先の変更などの理由が考えられます。 電力不足と海上運賃 電力不足が起きたことで、海上運賃に影響が出ましたが、今後どうなっていくのでしょうか? 中国政府は消費電力抑制をしましたが、多くの工場が止まる状況になり、脱炭素の厳しい石炭の使用を抑制する従来の方針を撤回。発電用燃料の生産を復活させ、輸入も緩和するという新たな政策を打ち出しました。 輸入はインドネシアからだけでなく、アメリカ、コロンビア、南アフリカにも及んでいます。 石炭の供給が回復し電力不足が回復すると、製造業も通常通り稼働することが出来ます。そうなると本船スペースが埋まっていくようになるでしょう。 LA港、24時間稼働へ ここで、今後の海運市場を見ていくのにアメリカの状況を確認していきましょう。 アメリカのバイデン大統領は10月13日LA港、ロングビーチ港にて港湾を週7日、24時間稼働にすると発表しました。 それに伴い、計6社、ウォールマート、FedEx、UPS、ホームデポ、サムスン、ターゲットは夜間シフトを増やし、協力していく姿勢を見せています。 しかしワシントンポストによると、ロングビーチの港湾関係者は、24時間稼働するターミナルの数はどうなるかわからない、と発言しています。 LA港やロングビーチ港など大きな港湾には複数のターミナルがあり、今回の24時間稼働に対応するターミナル数は未定ということです。 更に、ホワイトハウスは同6社の対策強化によって、年末までのコンテナ輸送量が週当たり3,500個増えると予想していますが、正直な感想としましては全く足りないと思います。 というのも、10/14時点の沖待ちコンテナ船は62隻。船のサイズにもよりますが、大きい船だとコンテナを1-2万本積んでいます。 LA港、ロングビーチ港で予想されているコンテナ取扱量は9月で90万TEU、10月 92万TEU、11月 90万TEUです。混雑解消にはほど遠い数です。 実際、バイデン政権としても、来月すぐに始まるクリスマスシーズンの物流混乱回避は保証できないと発言しています。 まとめ これまで、2021年国慶節前後の中国、今後のアメリカについての状況を確認してきました。 中国の電力不足で海上運賃の下落となりましたが、電力不足対策で石炭の輸入を強化し、北米では港湾が24時間稼働を始めます。 北米西岸の24時間稼働は現在の混乱を早急に回復させるものではなく、時間をかけながら貨物の目詰まりを解消していくものになるでしょう。 このことから国慶節前の運賃が下がったのはやはり一時的なものであり、来年までスペース不足は続くのではないかと思います。一旦発生した目詰まりは、そう簡単には解消しないと個人的には感じています。 混乱しているサプライチェーンの状況について引き続き情報発信をしていきたいと思います。 今回の内容は以上です。ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

海上運賃の高騰はいつまで続くのか? | 輸送・ロジスティクス

海上運賃の高騰はいつまで続くのか?

この記事を動画で見る どうもこんにちは飯野です。 今回は、現在高騰している海上運賃の市況がいつまで続くのか?というテーマでお話をしていきたいと思います。 先日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルを読んでいたら北米の港湾関係者の間では現在のような市況は2022年まで続く見通しであるという見出しの記事がありました。 また日本の海運メディアでも同様の内容の情報をよく見かけます。 現在の海運業界の市況 それでは、まず現在の市況がどのようになっているのかをご説明します。 上海航運交易所が発表している北米向けの海上運賃は、上海からロサンゼルスまでがUSD6,000/40’、東海岸のニューヨークまでだとUSD 10,000/40’を超えています。これはコロナ前の4倍以上の価格です。 そして、通常9月から北米向けのクリスマス商戦に向けたピークシーズンが始まるのですが、今年は8月に前倒しになっています。 2021年のクリスマス商戦 今年の北米のクリスマス商戦は例年とは違います。世界最大の小売アメリカのウォルマートが11月にブラック・フライデーセールを3回行うと発表したのです。 ブラック・フライデーのセールは毎年11月第4週の木曜日 Thanks Giving Dayの翌日の金曜日に開催され、アメリカでは最も活気のあるセールの一つです。 それが今年はコロナのデルタ株の影響で、密を避けるために3回に分けて行われます。ウォルマートがこのようなセールをするので他の小売も何らかの形でセール期間を増やしたり、伸ばすことが予想されます。 当初は北米向けの需要の伸びは、バイデン政権の給付金によるアメリカ経済の回復、ステイホームによる在宅ワーク用の需要からのものだと思っていました。 しかしクリスマス商戦を更に勢いづける刺激が小売側からもあったのです。 沖待ち多数、内陸の鉄道もパンク寸前 こうなると各小売では在庫を確保する必要があり、その為に通常よりも多くの発注・国際輸送が発生することになります。 その為、現在では多くのコンテナが中国に集まっていて、日本やタイにある弊社でも北米向けのコンテナやスペースが非常に取りにくい状態が続いているのです。 このクリスマス商戦に向けた輸送は通常 10月1日の中国の国慶節の前には落ち着きます。しかし国慶節後もスペース不足で送れなかった発注分の輸送があるかもしれません。 そして、現時点でロサンゼルス港での船の沖待ちは約40隻あると言われています。貨物を積んだコンテナ船が積み下ろし待ちで40隻も順番を待っているのです。 更に中国から出るコンテナが10月に落ち着いたとしてもアメリカ側でこれを捌くのに時間がかかります。現在は海上だけでなく、内陸の鉄道もパンク寸前になっている状態です。 このように北米の至る所で目詰まりが発生している状態なので、これが解消されるには数ヶ月の期間が必要になるでしょう。 2022年2月の中国旧正月 そして次のピークが2022年2月の中国の旧正月です。一般的にこの旧正月前にまた貨物出荷が集中します。 北米向けは目詰まりがこれまでに解消できていなければ、またサプライチェーンに乱れが発生することになるでしょう。 北米西岸港湾の労働協定の失効 その次のイベントが2022年7月。北米西岸港湾の労働協定の失効、改定交渉です。 前回の2014年の労働協約改定では妥結するまで、なんと9ヶ月の時間を要しました。この交渉期間は実際に港の機能が低下して、多くの貨物がエアー・カナダの西海岸・北米東岸経由で輸送をされることになったのです。 今回の労働協約のテーマの一つに「港の自動化」があります。港の自動化が導入されれば港湾労働者の仕事が減ります。 そういう意味でこの改定交渉は荒れるなと予想できるのではないでしょうか。 前回でも北米東岸向けの海上運賃は高騰しましたので、2022年7月においても同様に海上運賃の高騰が考えられます。 2022年のクリスマス商戦 そうこうしているうちに2022年9月。クリスマス商戦の輸送が始まります。 来年のこの時期にコロナの影響がどうなっているかは分かりませんが、北米西岸港湾の機能は正常でない可能性があります。もしコロナの別の変異株などが影響していたら更なる混乱が予想されます。 流石に今年のスエズ運河封鎖のような事故はないかもしれませんが、引き続き何かの問題が発生するとサプライチェーンが乱れるほど緊張した状況は続くと思われます。 このように考えると2022年いっぱいにおいても、海上運賃は上がる要素はあっても、下がる要素が少ないと個人的には思います。 海上運賃とスペースの交渉スタート 実際に日本では荷主・フォワーダー・船会社とで2022年の海上運賃、スペースの交渉が早くも始まりました。通常では11月や12月ですが今年は9月からという異例の早さです。 この交渉では運賃交渉というより、スペースの安定供給の交渉が重要視されているようです。 まとめ 今回ご説明した内容をご自身でも改めてご確認頂き、来年以降のサプライチェーンにおいて自分で出来ることの準備を進めることが適切なのかなと思います。 このチャンネルでは物流に関することを出来るだけ分かりやすく解説をしています。チャンネル登録がまだという方は是非ともこの動画の終了時に登録をして頂けると嬉しいです。 またコメントや動画のシェアもして頂けると動画更新の励みになります。 それではまた次の動画でお会いしましょう。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

海上輸送トランシップについて | 輸送・ロジスティクス

海上輸送トランシップについて

この記事を動画で見る どうもこんにちは飯野です。 今回は海上輸送のトランシップについてお話していきたいと思います。 2021年はコンテナ不足が発生し、コンテナや本船スペースの取り合いが激化。そして物流のスケジュールが全く安定していません。何とかコンテナを確保し、輸出手配が出来たものの、輸入地に貨物がなかなか到着しないケースがあります。 その貨物が到着しない理由の一つにはトランシップの問題もあります。今回は海上輸送の現状を含めたトランシップについての解説です。 それではいってみましょう。 直行便と経由便 まず最初に海上輸送では直行便と経由便があります。直行便は貨物を輸出地から載せた船が、そのまま輸入地まで同じ船でいく便のことです。 一方で経由便は輸出地から載せた貨物を、途中で別の港にて違う船に積み替えて輸送する便のことです。 トランシップとは 経由便での積み替えのことをトランシップと言います。海上輸送の航路によっては直行便がないことがあり、トランシップが必要になるケースがよくあります。 ここで直行便と経由便についてのメリット・デメリットを確認していきましょう。 直行便・経由便のメリットとデメリット 直行便のメリット・デメリット 直行便は経由便に比べて、輸送に掛かる日数が短く、海上運賃が高めなのが特徴です。貨物を載せた船にトラブルなどが無い限り、船が着けば貨物は到着します。 経由便のメリット・デメリット その逆で経由便は直行便に比べて、輸送に掛かる日数が長くなり、その為か海上運賃は安い傾向にあります。 しかし経由地で混雑などの問題があると予定の船に繋ぐことが出来ず、トランシップ待ちという状態になる可能性があるのです。 トランシップ待ちになると納品スケジュールに大きな遅れが生じてしまいます。 また経由地でのコンテナの上げ下ろしの作業が増えるため、ダメージ発生の可能性も上がるのが、経由便を使った際のデメリットです。 「ハブ港」について このように聞くと毎回 直行便を使った方がメリットが大きいじゃないかと思うかもしれません。しかし直行便と経由便をいつも自由に選べるわけではないのです。 次にトランシップに関する「ハブ港」というキーワードについて解説しましょう。 海上のコンテナ輸送で多くの船が積み替えられる港をハブ港とよびます。ハブ港は大型船が寄港しやすいように設備を整えた港です。 トランシップがしやすいよう税金が免除になったり、24時間稼働していたりとベースポートとして貨物を集約するので船の運航がしやすいようになっています。 アジアの主要港はこうしたハブ港としての整備を進めています。日本では京浜港、神戸港をハブ港として整備をしてきていますが、まだトランシップ貨物が増えている状況ではないようです。 現在コンテナ船は大型化が進んでいます。しかし日本の港は水深が浅い為、昨今の船の大型化に適合できていません。その為、日本に寄港しない船が増えてきています。 そうなると、アジアの別のハブ港で貨物を集約したあとトランシップをし、日本の各港に別の船で輸送されることになるのです。 グローバルハブのシンガポール トランシップが行われるのは世界のグローバルハブと呼ばれているシンガポールが有名です。トランシップ貨物の取扱量はシンガポールが世界1位と推定されています。 アジアでは他には香港、台湾の高雄、韓国の釜山がトランシップでよく使われます。 例えば、日本から東南アジア各国に輸出するとシンガポール経由だったりします。他にも日本の地方港向けの貨物の場合、よく釜山でトランシップされます。 またタイからアフリカ向けの貨物はシンガポールトランシップが多いです。 トランシップの現状 そしてトランシップの現状ですが、ハブ港の混雑がひどくなっていることにより、トランシップの接続が上手くいかないことがあります。 昨今ではハブ港の作業員がコロナ感染により港湾作業に制限がかかることもあります。 またトラックドライバーも不足していることでコンテナの滞留を引き起こし、本船が入港しても予定通り貨物を降ろすことが出来ないこともあるからです。 接続船が週一便にも関わらずコンテナの積み卸しに混乱が出て予定の接続船に載せられないことがあります。そうなると翌週、最近だと翌々週の接続船まで待機することもあります。 世界のハブ港であるシンガポールであっても、混雑がひどく船のスケジュールが遅れてしまう為に、シンガポールを抜港するというニュースもありました。 トランシップにおけるB/Lの変更対応 ちなみに余談ですが、トランシップの場合 出港の段階で載せられる予定の船はB/Lに記載されています。ですがその予定の船に載せられないということも現状起こっています。 B/Lの表記は一字一句間違いなく記載するのが基本ですが、船名に関してはトランシップがうまくいかず本船が変更になった場合はB/Lの変更の必要はありません。 税関に輸入通関書類としてB/Lなどの書類を提出しますが、本船名の表記が違い問題になる場合は、船会社から積み替え通知を送ってもらい対応できますので、覚えておいた方が良いかもしれません。 まとめ 今回はトランシップについて詳しく解説しました。船には直行便と経由便があります。経由便を使用する場合は船は途中でトランシップします。 遅れが出る可能性があることを頭において、貨物のスケジュール管理をすすめていきましょう。 このチャンネルでは物流に関する情報を出来るだけ詳しく解説をしていますので、チャンネル登録がまだという方は、動画の終了時に是非ともよろしくお願い致します。 それではまた次の動画でお会いしましょう。ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

国際複合輸送 / シーアンドエア、クロスボーダートラックについて | 輸送・ロジスティクス

国際複合輸送 / シーアンドエア、クロスボーダートラックについて

国際複合輸送 / シーアンドエア、クロスボーダートラックについて動画で解説 どうもこんにちは、飯野です。 今回はシー・アンド・エアと、クロスボーダートラックを使った国際複合輸送について解説をしていきたいと思います。 前回の動画では船と鉄道を組み合わせたシー・アンド・レイルという輸送方法と、様々なルートについて解説をしました。概要欄にリンクを貼っておきます。まだ見ていないという方は是非そちらもご覧になってください。 国際物流を担当するポジションであれば、色んな国際複合輸送について理解をしておいた方がいいと思います。それではいってみましょう。 シー・アンド・エアのルート まずシー・アンド・エアの国際複合輸送を見てみましょう。シー・アンド・エアはその名の通り、海上輸送の後に飛行機に乗せ換える輸送方法です。 アジア~ヨーロッパ アジアからヨーロッパのシー・アンド・エアのルートでは、アジアのハブとして、また港から空港までの距離が近い、香港やシンガポールが有名です。 例えば、タイで製造した電子部品を香港まで海上輸送し、そこから仕分けをしてヨーロッパ各地に航空機で輸送することも出来ます。 これについては保税輸送の動画も合わせてご覧になって頂いた方が分かりやすいと思いますので、概要欄にリンクを貼っておきます。 アジア~北米~南米 次にアジアから中南米へのシー・アンド・エアを見てみましょう。 中南米向け貨物は アジアから①アメリカ西海岸までと、②パナマ運河を経由してマイアミまで海上輸送し、その後に航空輸送で中南米の各地に輸送するルートがあります。 どこで積み下すかは価格や船のスペースなども含め、ケースバイケースで選ぶ事が出来ます。 このようにアジアからヨーロッパ、アメリカという長距離輸送において、海上輸送と航空輸送を組み合わせることでのメリットは、輸送日数の短縮とコストパフォーマンスの良さです。 海上輸送のみに比べると早く、航空輸送のみに比べると安くなります。 取り扱う貨物や、状況に応じて使い分けが出来るので物流を最適化することが出来るのです。 クロスボーダートラックのルート 次にクロスボーダートラックを使った輸送について説明をします。 クロスボーダートラックは貨物を陸続きの国境を超えて、トラックやトレーラーで輸送する方法です。この輸送方法の特徴は「早さ」と「安定したスケジュール」です。 海上輸送の場合、荷主から引き取った貨物をターミナルに搬入して船に積み込み、また輸入地で貨物が船から下されるまで港で約2日の待機時間が発生します。 昨今では港の混雑もあり、貨物が港に降ろされるまで船が沖で待機する沖待ちもあります。アメリカだと1週間の沖待ちもザラにあります。 更に船のスペースがなかなか取れず、予約が取れたとしても、船社のオーバーブッキングの為に、コンテナのロールオーバー(積み残し)が発生し、翌週の船に回されるようなイレギュラーもあります。 一方でクロスボーダートラックでは車両に貨物を積み込みさえすれば、あとは国境まで基本的にノンストップです。 海上輸送の沖待ちのように 荷下ろしに数日かかるような問題もありません。また陸続きなので、道路に沿った直線移動が出来るため移動距離も短くなります。 クロスボーダートラックを使った国際複合輸送 またクロスボーダートラックを使った国際複合輸送もあります。 弊社では日本からタイにコンテナで海上輸入をした貨物を、タイからミャンマーまでクロスボーダートラックで輸送する国際複合輸送の手配をしております。 このような複合輸送をするメリットは、既にご説明した安定したスケジュールです。 昨今のミャンマーでは政情不安もあり、ミャンマーのヤンゴン港を使うよりタイのレムチャバン港を使用する方が、スケジュールが安定しています。 国際複合輸送のデメリット シー・アンド・エアやクロスボーダーを使った国際複合輸送のメリットをお話ししましたが、デメリットもお伝えしておきましょう。 国際複合輸送では荷物の積み替えなどの取り扱いが増えるため、貨物ダメージが発生する可能性が上がります。十分な梱包や貨物保険が重要になってきます。 またクロスボーダートラックでは特別なライセンスがないと、国境で車両を変える必要があります。 例えばタイの車両はミャンマー国内を走れないのです。 その為に、貨物を国境で別の車両に積み替える必要があるのですが、もし貨物がバラ積みの場合、また高価なものと分かる場合、盗難のリスクも上がりますのでご注意ください。 まとめ 別の動画も含めて、国際複合輸送には様々な組み合わせの運び方があり、メリットやデメリットもあると分かりました。コストを抑えたい、納期を早くしたいなど、状況に応じた輸送方法を取引のあるフォワーダーに相談しましょう。 この動画では貿易に関する様々な知識をお伝えしているので、是非チャンネル登録よろしくお願いします。今回のお話は以上になります。ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

貨物保険の基礎!貨物保険を申し込みするタイミングは? | 輸送・ロジスティクス

貨物保険の基礎!貨物保険を申し込みするタイミングは?

貨物保険の基礎!貨物保険を申し込みするタイミングについて動画で解説 どうもこんにちは飯野です。 前回に引き続いて今回も貨物保険について解説をしていきます。前回は貨物保険の用語説明や保険料の計算について解説をしました。 まだ見ていないという方の為に概要欄にリンクを貼っておきますので、是非ご覧になってください。 動画で見る:貨物保険の基礎について解説!保険金額や保険料の計算方法 記事を読む:貨物保険の基礎について解説!保険金額や保険料の計算方法 第二回! 貨物保険の基礎知識 今回は ・保険の種類 ・申し込みのタイミング ・貨物事故が起こった時の対処法 について詳しく解説をしていきます。それではいってみましょう。 貨物保険の種類 貨物保険には個別保険と包括保険の2種類があります。 個別保険では船積みの度に個別に付保するものです。船積みをしたら毎回、保険会社に申し込みをする保険です。そのためかけ忘れに注意しなければなりません。 一方で包括保険は、年間の船積み予定の貨物の種類、輸送手段、輸送区間を最初に保険会社に伝え、実際の輸送分に月単位でまとめて保険をかけるものです。 まとめて保険をかけるものの、輸送後には個別の輸送内容を保険会社に連絡する必要があります。この包括保険はかけ忘れが防げるので、継続的に輸送がある場合はこちらが便利です。 インコタームズの確認 保険の手配をする前にインコタームズを確認しなければいけません。 インコタームズによって、既に保険が含まれている契約か、含まれていない契約かを確認する必要があるのです。 例えば、輸入の貨物でFOB契約であれば、輸入者が保険を掛ける必要があります。しかしCIFであれば既に保険は輸出者がかけている契約なので、保険を申し込む必要はありません。 CIFの場合は輸入地に到着してから配送先までの国内貨物保険は、輸入者が申し込む必要があります。 しかし、これがDDPなどでは輸出者が保険手配をしてくれる場合もありますので、事前にしっかりと確認をしておく方が良いでしょう。 保険を申し込みするタイミング 保険の申し込みの時期は輸出であれば、船積み予定の本船が決まれば付保することが出来ます。 輸出は船積み前に付保の手続きをする ということを覚えておきましょう。 輸入の時は船積みされる前に連絡が来て付保出来ればいいのですが、船積みした後にB/Lなどの書類が送られてきて本船が確認できることが殆どです。 遅くても輸入地での本船入港前に付保しておきましょう。 貨物保険の適用を依頼する方法 もし事故が発生したらどうしたらいいのでしょうか? まずは、保険会社に連絡をします。それから保険証券、保険請求書、B/Lのコピー、インボイス、ダメージが記載されているデバンニングレポート、事故通知書(クレームノーティス)を揃えましょう。 事故の際の写真なども必要になることがあります。フォワーダーにこれらの書類を頼めば揃えてくれるので相談してみましょう。 まとめ これまで2回にわたり貨物保険について解説してきました。貨物保険は国際輸送のリスクを考えると、掛ける方が良いと私は思います。 今回ご紹介した貨物保険を申し込むにあたり、申し込みのタイミングは重要です。 付保するタイミングは、輸出だと貨物が本船に積み込まれる前。輸入だと本船が港に到着する前になります。忘れずに手続きをしておきましょう。 これまでの貨物保険の基礎知識の内容を理解すれば、ご自身で保険を手配することが難しくないことがご理解出来たのではないでしょうか。 この動画では国際物流に関する情報を随時発信していますので、チャンネル登録がまだの方は、動画終了後に是非とも登録をお願いします。 また次の動画でお会いしましょう!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

貨物保険の基礎について解説!保険金額や保険料の計算方法 | 輸送・ロジスティクス

貨物保険の基礎について解説!保険金額や保険料の計算方法

貨物保険の基礎について動画で解説 どうもこんにちは、飯野です。 今回は貨物保険の基礎知識について解説をしていきたいと思います。 貨物保険は貨物が全く問題なく輸送されれば必要ないかもしれませんが、国際輸送では予想がつかないことが起こる可能性があり、保険はかけておくことをお勧めしています。 貨物保険をかけることを日本語では付保といい、貨物保険の基礎知識を学べるように2回にわたって説明していきます。 第一回 貨物保険の基礎知識 1回目は ・貨物保険とは ・貨物保険の用語 ・保険料について について詳しく解説していきます。 この付保のポイントを理解することで、貨物保険の手配がスムーズに出来るようになります。それでは、いってみましょう。 貨物保険とは? 貨物保険は輸出入貨物を対象にして、その輸送中に起こる様々な不測の事故や危険をカバーするためにかける保険です。 国際輸送では、国内輸送よりも輸送距離が長く積み替えなどもあるので、輸送中に貨物のダメージやトラブルが起こる可能性が高くなります。 それでは貨物保険では、どのような問題において適用されるのでしょうか? 船の上でのコンテナの水濡れはもちろん、コンテナからトラックに積み替えるときの人為的なミスであっても保険のカバーの対象になります。 保険会社に申請する 保険契約をするには保険会社の所定の申込書に記載をして、申し込みします。保険の申込書に記載する為に必要な、貨物保険の基本的な用語を確認していきましょう。 保険金額 まず保険金額(Insured Amount)です。 これは万が一の事故の時に保険金として支払われる最高限度の金額です。保険金額は通常インボイスに記載されているCIF価格の110%の金額となります。 保険料 次に保険料 (Insurance Premium)。 これが保険会社に支払う金額です。保険料は保険金額に保険料率(約0.3%〜0.5%)を掛けて計算します。 保険料率は航路、品物などによって変わります。また1件あたりの最低金額は約3,000円(USD30)程度です。 地域によっては加算事項として、戦争中における戦争危険料率やストライキ危険料率などがあります。 保険範囲 保険の範囲も忘れてはいけません。保険の対象貨物の損害が全部にわたる全損、貨物の一部分に損害が認められる分損に分けられます。 全損や分損のすべての損害に対して補償される全危険担保の保険や、全損のみに補償されるものなど、どこまでのリスクをカバーするかによって保険の種類が異なります。 カバーされる対象が多いほど保険料が高くなる仕組みになっています。 その他の必要事項 これらは保険会社に申請する時に必要な用語ですので覚えておきましょう。 その他には、貨物の向け地、輸送方法、インコタームズ、インボイス金額、品名なども必要になります。 貨物保険の計算方法 ここで一緒に貨物保険を計算してみましょう。 例としてタイから東京まで機械を輸送するとします。輸送の条件は次の通りと仮定します。 ・ 機械自体の金額がUSD 10,000 ・ 工場からバンコク港までの輸送費用や通関などの諸経費がUSD500 ・ バンコク港から東京港までの海上運賃をUSD1,000とします 保険金額はCIF価格×110%でしたね。 CIF価格の計算方法は、製品代金に輸入地までの全ての輸送費用を足したものです。 そうすると、このような計算式になります。 製品価格 USD 10,000 + タイ国内費用 USD 500 + 海上運賃 USD 1,000 x 110% = USD 12,650 万が一事故が起こった場合で、機械が全く使用できない全損と認定された場合はUSD12,650が保険会社から支払われることになります。 保険料の計算方法 次に保険会社に支払う保険料を計算してみます。 保険料 = 保険対象金額 × 保険料率です。 この場合はUSD12,650 × 保険料率(0.3%~0.5%)となります。 保険料率が0.3%だとすると、USD37.95になります。最低金額のUSD30より多いので、こちらを保険料として保険会社に支払うことになります。 まとめ 今回は貨物保険の基礎知識について解説しました。貨物保険は万が一のリスクに備えるためのもので、国際物流では必要なものです。 この動画で貨物保険の基礎知識を身につけて、正しく貨物保険の手配を出来るようになりましょう。 この動画では国際物流に関する情報を随時発信していますので、チャンネル登録がまだの方は、動画終了後に是非とも登録をお願いします。 また次の動画でお会いしましょう!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

海運業界の脱炭素!LNG/水素/アンモニア/メタノール船舶燃料の特徴について | 輸送・ロジスティクス

海運業界の脱炭素!LNG/水素/アンモニア/メタノール船舶燃料の特徴について

海運業界の脱炭素!LNG/水素/アンモニア/メタノール船舶燃料の特徴について動画で解説 どうもこんにちは飯野です。 今回は海運業界における脱炭素燃料の現状についてお話していきたいと思います。 脱炭素という言葉は昨今のニュースで毎日出てくる、各業界でのホットなキーワードです。世界中の各企業によって、地球環境の為に CO2を始めとする温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けて様々な取り組みが日々行われています。 海運業界の脱炭素 それは海運業界においても同じです。国際海事機関(IMO)は2050年までに船舶から排出される温室効果ガスを50%以上削減すると目標に掲げました。 その目標を達成する為に海運業界では船舶燃料の見直しが始まっています。 今回は海運業界の脱炭素に向けた次世代燃料を紹介し、それぞれの現状や課題について解説していきたいと思います。 それでは言ってみましょう。 IMOが掲げる脱炭素の目標 まずIMOが掲げる脱炭素への移行には、3段階あるとご理解ください。 1.2030年までにGHG排出量を40%以上削減する 2.2050年までにGHG排出量を50%以上削減する 3.今世紀中にゼロにする このように段階的に目標が分かれているので、 2021年の現在から 短期目標として2030年までに実行する施作 中期目標として2050年までに実行する施作があります。 現在の船舶燃料の課題 現在、船舶燃料には重油が使用されています。 物流・海運業界で働いている方なら2020年1月より義務化された、低硫黄重油のことは聞いたことがあると思います。LSSというサーチャージとして日頃の実務で身近なものですよね。 低硫黄重油はPM2.5の大気汚染対への対策だったのですが、今回のテーマは地球温暖化に繋がる温室効果ガスです。低硫黄であろうと重油であればCO2が排出されてしまうので、別の燃料に変えましょうという流れが起きています。 注目の次世代燃料 その次世代燃料として特に注目されているのがLNG(液化天然ガス)、アンモニア、水素、そして最近ではメタノールも挙げられています。 変えるのは燃料だけではありません。これらの燃料への切り替えにあたり、エンジン、燃料タンク、燃料供給インフラも一緒に変えていかなければいけないのです。 これらを交えて各燃料について解説していきます。 LNG(液化天然ガス) まずLNG(液化天然ガス)です。LNG燃料は船舶燃料として既に実用化されています。 CO2削減効果は重油と比べ約26%削減、Sox(硫黄酸化物)はゼロに、Nox(窒素酸化物)は約30%削減できると言われています。 しかし、LNGをエンジンで燃焼した時に、未燃焼メタン(メタンスリップ)が漏出するとされています。メタンスリップはCO2の約25倍の温室効果があります。家畜としての牛がメタンを出すので、同じく問題とされていますよね。 まだメタンスリップ抑制に対する規制がないので、今後IMOがメタンスリップに関わる国際基準を作っていくことが想定されます。 アンモニア 次にアンモニアです。アンモニアはこれまで主に肥料として使われて来ましたが、近年になって燃料への用途が注目されています。肥料用としてアンモニアは一般的に流通しているので、輸送と貯蔵のノウハウが確立されているのが特徴です。 アンモニアを使うとCO2排出量はゼロになりますが、アンモニアを燃料として使う燃料エンジンがまだ開発されていません。 アンモニアは燃えにくいため、効率よく燃焼させる為の技術が必要なことと、CO2の約300倍の温室効果があるN2O(亜酸化窒素)の発生対策が必要になります。 また体積が重油に比べると2.7倍と大きく 、燃料タンクが大きくなってしまい 輸送スペースが減ってしまいます。貨物輸送では効率化が非常に重要なので、ここも見逃せないポイントです。 またアンモニア自体が毒性、腐食性の危険物なので取り扱いの安全性にも注意しなければいけません。 水素 そして水素です。水素燃料は自動車でも注目をされていますよね。水素を燃焼してもCO2、Soxは排出されませんが、Noxが発生する為これを抑える技術が必要です。 水素もアンモニアと同様で船舶用の燃料エンジンがまだ開発されていません。水素を液体として保管・貯蔵するには-253度に冷却する必要があり、また更に体積も大きく重油の4.5倍もあります。その為 燃料タンクが必然的に大きくなります。 そしてアンモニアとは逆で、水素は非常に燃えやすいので燃焼速度が速く、高い燃焼抑制技術が必要になります。それに加え、輸送や燃料供給のインフラ設備もまだまだな状態です。 メタノール そして最後にメタノールです。メタノールは天然ガスや石炭、再生可能エネルギーなどから生産可能で、燃焼した場合 CO2は10%削減、Soxはゼロ、Noxは30%削減されると言われております。 CO2削減については天然ガスなどを原料にした場合はそれほど効果が見込めませんが、再生可能エネルギーから作ったものであれば、大幅にCO2が削減されるとのことです。 既に船会社大手のマースクが業界初のメタノール使用のコンテナフィーダー船を発注したと先日ニュースになっていました。そういう意味でアンモニアや水素に比べて早く導入が進んでいく可能性があります。 各燃料の特徴まとめ それぞれの燃料の特徴をまとめるとこのようになります。 ・LNG 利点:CO2削減約26%、導入実績あり 課題:メタンスリップ(温室効果:CO2の25倍)が発生 ・アンモニア 利点:CO2発生ゼロ、肥料用として輸送・貯蔵ノウハウあり 課題:難燃性、N2Oの発生(温室効果:CO2の300倍)、体積2.7倍、毒性 ・水素 利点:CO2発生ゼロ 課題:高い燃焼抑制技術が必要、体積4.5倍、貯蔵技術・インフラが未整備 ・メタノール 利点:CO2大幅削減(再エネ生産時)、導入実績あり 課題:体積2.4倍、LNGと比べると割高 それぞれの燃料に特徴があり、また今後の技術開発も大きなポイントとなっています。 船会社による脱炭素に向けての動き まず短期目標である2030年のGHG40%削減に向けて、現在 各船会社はLNG船を発注しています。 コロナによるコンテナ不足・スペース不足の問題で 昨今大きく利益を上げていると話題の各船会社ですが、次々に設備投資をしている印象です。 アンモニアや水素はこれからの技術開発が注目のポイントになります。水素は今のところ水素燃料電池を使った旅客船の開発に成功していますが、貨物船への採用には まだまらこれからというのが現状です。 次世代燃料の主役はどれだ!? 国土交通省のまとめによりますと、2050年における海運の消費エネルギーの内訳はLNGが42%、水素・アンモニアが45%となっています。 短期・中期的にはLNGは主力燃料であることが想定されていますが、最近では大手企業が原料のアンモニアやメタノールを生産する会社を設立したり、出資も始めたりしています。 これからも各社の動きに注目ですね。 まとめ 今回の内容はいかがだったでしょうか。 海運業においての脱炭素の取り組みの基礎についてお話をさせて頂きました。次世代エネルギーの主役争いが、これからどのようになっていくのか、非常に面白い展開だなと個人的には思っています。 このチャンネルでは貿易・国際物流に関する情報を分かりやすく配信していますので、チャンネル登録がまだという方はこの動画の終わりに是非とも宜しくお願いします。 今回は以上です!ありがとうございましたー! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

国際複合輸送 ~シー・アンド・レイル~ | 輸送・ロジスティクス

国際複合輸送 ~シー・アンド・レイル~

国際複合輸送 ~シー・アンド・レイル~について動画で解説 どうもこんにちは、飯野です。 今回は国際複合輸送について解説をしていきたいと思います。 国際複合輸送とは? 国際複合輸送というとなんだか難しく聞こえるかもしれませんが、国をまたいで船や飛行機、鉄道、トラック、トレーラーなどで輸送を組み合わせたものを国際複合輸送といいます。 そういう意味で、実は一般的に馴染みのある海上輸送は 船とトラックの国際複合輸送にあたりますし、同じく一般的な航空輸送も飛行機とトラックの国際複合輸送になります。 今回の動画では 日本や東南アジアではあまり馴染みのない、海上輸送と鉄道輸送を合わせた国際複合輸送(シー・アンド・レイル)、についてご紹介をしていきます。 実際にどのようなルートで輸送されているのかについて理解しておくと、貨物の輸送手段の選択肢が広がりますので抑えておいた方が良いと思います。 それではいってみましょう。 シー・アンド・レイルのルート まずアメリカの鉄道を利用した輸送をご紹介します。 アメリカは国土が非常に広いので港から鉄道を使った輸送が非常に重要になり、複数の国際複合輸送のルートが存在しています。 IPI - 北米の内陸拠点・ルート まずIPI(Interior Point Intermodal)についてご紹介しましょう。IPIとは鉄道でコンテナを輸送する時の内陸の拠点です。 各地にあるIPIが鉄道で結ばれていて、アメリカ西海岸の港まで海上輸送されたコンテナを内陸へと列車で運んでいきます。このルートもIPIと呼んだりします。このIPIだけが「内陸拠点」と「ルート」の2つの意味を持つので、少しだけややこしいかもしれません。 MLB - 北米横断ルート 次にMLB(Mini Land Bridge)です。MLBは西海岸に到着したコンテナを、鉄道を使って大陸横断して、アメリカ東海岸やメキシコ湾岸まで輸送するルートのことです。 IPIは内陸、MLBは大陸横断と覚えておくと良いでしょう。 ALB - 北米横断 & 欧州ルート そしてALB(American Land Bridge)というルートもあります。 ALBでは西海岸に海上輸送で到着したコンテナが、アメリカを西から東に鉄道で横断し、更に東海岸から海上輸送でヨーロッパまで輸送される国際複合輸送になります。 オールウォーター 最後に、複合輸送ではないのですが、アジアからパナマ運河経由でアメリカ・カナダ東岸へ海上輸送するルートを、オールウォーターと呼びます。 合わせて覚えておくと良いでしょう。 ロシア・中国でのシー・アンド・レイル その他、大陸が広いロシアや中国でも鉄道を使った輸送を多く利用しています。 SLB (Siberian Land Bridge) ロシアではシベリア鉄道を輸送に利用した、SLB(Siberian Land Bridge)というルートがあります。 まず海上輸送でロシアのボストチヌイ港まで輸送し、その後シベリア鉄道でモスクワまで送ります。そしてモスクワから鉄道、またはトラックで中東やヨーロッパ各国へ輸送するルートです。 CLB(China Land Bridge) 続いてCLB(China Land Bridge)という中国のルートを紹介しましょう。 日本から連雲の港まで海上輸送し、そこから鉄道でカザフスタン、ウズベキスタンさらにヨーロッパ各国へ輸送するというルートです。 今、シー・アンド・レイルが注目される理由 2019年の年末から続いているコンテナ不足、船のスペース不足の問題で 昨今では鉄道を使った輸送に注目が集まっています。特にアジアからアメリカ、ヨーロッパへの海上運賃は過去最高に高騰していて、更にスペースも非常に取りづらい状況です。 今回ご紹介した国際複合輸送のルートを知っていると、船のスペースがなくても対応出来る可能性が上がるかもしれませんね。 このチャンネルでは貿易や国際物流に関する情報を随時発信していますので、チャンネル登録がまだという方は是非ともお願い致します。 今回は以上です!ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

保税輸送について | 輸送・ロジスティクス

保税輸送について

保税輸送について動画で解説 どうもこんにちは。飯野です。 今回は保税輸送について解説をしていきたいと思います。 これまで保税の基礎、保税地域、貿易における保税の重要性と 数回にわたり保税に関して説明をしてきましたが、今回説明する保税輸送もこれらの全てに関連することなので、抑えておかなければいけない知識です。 それではいってみましょう。 保税輸送とは 保税輸送とは 指定保税地域から保税蔵置場などへ輸送する時に、外国貨物のまま運送することです。これだとちょっと分かりにくいですよね。もう少し詳しく解説します。 外国貨物とは通関で輸出許可得たあとで船や飛行機にまだ積みこんでいないもの、そして輸入地の港や空港に到着して、まだ輸入申告の許可を受けていないものを指します。 貨物自体は国内にあるけれども、外国の貨物という保税状態の扱いとなります。またこの外国貨物は保税地域に置く必要があります。 この保税地域には港(指定保税地域)、保税倉庫(保税蔵置場)などがあります。輸入の場合ですが、まだ輸入通関が完了していない外国貨物を、港から指定の保税倉庫に輸送する場合は、保税の状態のまま移動させる保税輸送が必要になります。 OLT(OVER LAND TRANSPORT)とは 保税輸送は専門用語ではOLT(OVER LAND TRANSPORT)と呼ばれます。これは陸送による保税輸送を指していて、トラックやドレージによる輸送です。 ILT(INTER CORST TRANSPORT)とは また内航船などを使い船による保税輸送をILT(INTER CORST TRANSPORT)といいます。コンテナのフィーダーや原料の輸送などに使われます。 タイのOLT輸送 タイの場合だと、ラッカバンというICD(内陸のコンテナデポ)に貨物を積んだ輸出コンテナを搬入し、OLTでレムチャバン港に運んでから船に乗せたり、 タイのILT輸送 輸入ではレムチャバン港に本船が到着し、コンテナを積み下ろしてバンコク港にフィーダー船でコンテナを輸送するILTがあります。 フォワーダーにとっての保税輸送 保税輸送はフォワーダーにとっては非常に身近なものです。例えば時間がかかる税関検査の場合。港に貨物を長期間置いておくとフリータイムが切れて、デマレージという超過保管料金が発生します。 このデマレージを避けるために、近くの保税倉庫に貨物を保税状態で移動させて、検査が完了してから輸入通関をすることになります。 またLCL(混載貨物)の場合は、CFS(コンテナ・フレート・ステーション)という保税蔵置場に貨物を搬入し、コンテナに詰め込んでから港(指定保税地域)に保税輸送します。 タイ・ミャンマー・第三国の国際複合輸送 タイで活動している私として 最近多く対応しているのが、ミャンマーが絡んだ保税輸送です。タイとミャンマーは隣同士の国で、タイをハブとした輸送が可能です。 昨今のミャンマーでは政情不安や、世界的なコンテナ不足という問題も重なり、ミャンマーのヤンゴン港を使用するより タイのレムチャバン港を使用する方が安定して貨物の輸出入が出来ます。 そのため輸出の場合だと、ミャンマーのMyawaddy、タイのMaesortという国境をトラックの保税輸送(OLT)で超えて レムチャバン港まで外国貨物として輸送し、レムチャバン港からアメリカや日本に海上輸送するケースが最近は増えています。 こういった複合輸送を手配できるのがフォワーダーの仕事の醍醐味だなとも思いますし、保税の知識は貿易・国際物流に携わる人であれば必ず抑えておきたいところです。 まとめ 今回の保税輸送について、ご理解頂けましたでしょうか。これまで制作した保税に関する動画のリンクを全て概要欄に貼っておきますので、合わせてみて下さい。 チャンネル登録がまだという方は是非ともよろしくお願いします。 今回のお話は以上になります。また次の動画でお会いしましょう。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。