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貿易実務の基本

海上保険・保険条件について解説しました。海上損害の種類やリスクカバーの範囲・料率の計算方法について。 | 貿易実務の基本

海上保険・保険条件について解説しました。海上損害の種類やリスクカバーの範囲・料率の計算方法について。

海上保険は、貿易において欠かすことのできないリスク対策の1つです。 民間企業による保険には、大きく分けて損害保険と生命保険がありますが、貿易において利用するのは損害保険のなかでも「マリン」と呼ばれる海上保険です。 今回は、海上保険のうち取引において特に知識を必要とする貨物保険について見ていきたいと思います。 貨物保険に関わる当事者 保険金を支払う保険会社のことを保険者(Insurer/Assurer)といいます。 また、保険金を受け取る事ができる者を被保険者(Insured/Assured)といいます。 保険期間 自動車保険や火災保険といった保険は、通常一年単位で契約されます。しかし、貨物保険の保険期間はこうした時間としての期間(期間建)ではなく、ある地点から別の地点まで(場所建)の間で定められます。 協会貨物約款(ICC)によれば、貨物保険の保険期間は原則として仕出地の倉庫から仕向地の倉庫までをカバーする倉庫間約款(Warehouse to Warehouse Clause)が原則とされています。 保険金額と保険価額 損害が生じた場合に支払われる保険金の額は、どのようにして決まるのでしょうか。 これは、貨物の評価額である保険価額をもとにして決められます。保険価額は現在、保険会社と被保険者との協定によりCIF価格の110%とされています。 [keni-linkcard url="http://forwarder-university.com/cargo-insurance/?lang=ja" target="_blank"] 支払われ得る保険金の最高金額のことを、保険金額と呼びます。保険金額は、保険価額の範囲内で定められます。 海上損害の種類 海上輸送に伴う損害を、海上損害と呼びます。海上損害には大きく分けて、貨物に及ぶ物的損害と、救助費用などの費用損害があります。 物的損害は、さらに貨物の全てに被害が及ぶ全損と、貨物の一部が被害を受ける分損に分かれます。 ここでは、海上損害の種類についてそれぞれ見てみましょう。 全損 全損とは、貨物全体が価値を失った状態になることを言います。海上輸送の場合、例えば穀物が浸水のために変質してしまった場合や、船の沈没により引き上げが不可能となった場合なども全損にあたります。 現実全損 損害により貨物の価値が全くなくなってしまうことで、この場合保険金額は全額支払われます。 推定全損 現実分損には当たらなくても、例えば貨物が沈没してそのサルベージ(引き揚げ)費用が貨物の価格を超える場合などは、保険会社の鑑定により全損と見なされることがあります。こうした場合を推定全損と呼びます。 分損 貨物の一部が損害を受けることを分損と呼びます。分損は、損害の費用を誰が負担するかによって単独海損と共同海損に分かれます。 単独海損 単独海損とは、保険契約者である荷主が単独で費用を負担する海損を指します。WA条件ではこの単独海損がカバーされ、FPA条件ではその一部が補償されます(詳細は後述)。 共同海損 共同海損とは、差し迫った、船舶と積荷との共同の危険(例:高波や座礁など)に瀕した場合に、船長の負担によりその状態から逃れるためにとられた処分(例:投荷など)により生じた損害および費用を船主と荷主等が共同で負担することを言います。 各自の費用負担については、共同海損清算人(General Average Adjuster)により計算され、その負担金は共同海損宣言書により各荷主に通知されます。 共同海損についての国際的統一規則としては、ヨーク・アントワープ規制(York-Antwerp Rules of General Average) があります。 保険条件 海上保険の保険条件としては、カバーされる範囲などによって次のような種類があります。 FPA(Free from Particular Average) FPA(分損不担保)条件は、本来は文字通り分損を担保せず、全損、共同海損、費用損害(海水濡れ危険を除く)をてん補する条件でした。 しかし現在では保険会社の競争などにより、実際には分損であっても特定分損についてはてん補されるようになっています。 特定分損とは、座礁、沈没、大火災、火災、爆発、他船との衝突・接触が原因で生じた分損(SSBC Sinking, Stranding, Burning, Collision)のことを言います。 WA(With Average/With Particular Average) WA条件とは、特定分損に加えて不特定分損がてん補される条件です。 不特定分損とは、海水による濡れ危険(潮濡)のことを指します。ですから、WA条件はバラ荷の中でも海水濡れに弱い穀物類や豆類の貨物に使用されます。 A/R(All Risks)オール・リスクス A/R条件(オール・リスクス)とは、FPA条件やWA条件でてん補されない危険も含めて包括的に補償される条件です。 但し、保険免責事由はあるためどのようなリスクでも全てカバーするというわけではないので、当然ながら契約時には注意が必要です。 まとめ 今回は海上保険と保険条件について見てきました。保険は貿易に欠かせない重要な要素です。 海上保険は必須ですが、適切な条件は貨物の種類や貿易条件等によって変わります。自分の取引に合った無駄のない保険を選んで、効率よく安全な取引を行いましょう。

貿易における海上・貨物保険の計算方法についてご説明します。 | 貿易実務の基本

貿易における海上・貨物保険の計算方法についてご説明します。

その貨物、保険に入ってますか?国際輸送ではあらゆる所に危険が隠されています。もしあなたの貨物がちゃんと保険に入っていなかったら、貨物に破損などが発生した場合は保障してもらえません。 国際物流に慣れていない人はこの保障の問題を軽視しがちなところがあったりします。普通にものが届いて当たり前。これは日本国内での輸送であれば商品は割と安全に運ばれてくるのですが、国をまたいでの国際輸送の場合はそう簡単にはいかないのが事実なのです。 特に食品やガラスなどの割れ物、高額な貨物を運ぶ時には、ちゃんとリスクを理解しておかなければいけません。 そうなんです。機材トラブルだけでなく、船上で揺れたり、陸送中に事故にあったり、また国にもよりますが作業員の雑な荷扱いなどが危険なのです。 今回はこの万が一のアクシデントに備えての保険のかけ方とその海上保険の計算方法についてご説明していきます。 海上保険の掛け方と計算方法について動画で解説 貨物保険・海上保険とは 海上保険とは主に外国へ貨物を輸送する時に発生したダメージの費用をカバーしてくれる保険のこと。海上保険というので「海上輸送のみ」で適応される保険と思われてしまうかもしれませんが、空路や陸路でも保険対象とされる包括的な保険もあります。海上の貨物保険を掛けるにはフォワーダーに「保険をお願いします」と一方入れればOKです。どこからどこまでを保険適応対象とするかはフォワーダーさんにご相談下さい。 全ての貨物に保険をかける必要はあるのか? 保険をかけるにはもちろんコストが発生します。貨物の内容や梱包状態にもよりますが、必ずしも保険に入らなければいけないと言うことはありません。 海上保険の金額はいくら? 海上保険の金額は保険会社や掛ける保険の内容にもよるのですが一般的なものでInvoice Value ×110% ×0.2%〜0.3%となります。※最低金額 約USD28/time 海上保険の計算方法 保険の利率は分かりました。では具体的な計算方法をご紹介していく事にしましょう。 例:冷凍マンゴー 保険会社:A海上保険会社保険利率:0.3%Invlice Value: USD 10,000保障適応割合:Invoice Valueの110%保障適応金額:USD 10,000 × 110% = USD 11,000保険金額:USD 11,000 ×0.3% = USD 33 海上保険には入った方がいいのか? 私たちは国際物流業者として毎月2,500本以上のコンテナの輸出入をしているのですが、やはり貨物ダメージによるトラブルは絶えません。この時に一番問題になるのが保険に入っていなかった場合。貨物ダメージの保障は船会社はしてくれませんし、トラック業者はタイではTHB100万〜THB300万(約350万円〜約1,050万円)までを保障する保険を入っている所が多いです。※タイの場合はトラック会社が既に保険に入っているので特別に保険をかける必要はありません。 海上保険には出来る限り入るべき 上述したようにコントロールが出来ることが少なく、不慮の事故・問題の可能性もあります。保険金額自体は一般的なものは0.2%〜0.3%ほどで、最低金額がUSD28くらいです。あくまで保険なので万が一に備えてのコストとなりますが、可能な限りリスクを理解し、コントロールするのが大切ではないでしょうか。 まとめ トラックに載せたら終わりの国内輸送とはことなり、国際物流では貨物がお客様に到着するまでに様々な貨物のダメージリスクが存在します。そのような状態で全てのリスクをコントロールするのは容易無ことではありません。万が一の貨物ダメージによるトラブル、またそれを対処する労力と時間を考えた時に、安心を持っているのは全く違います。