column

2025年12月

プレミア・アライアンス、2026年新体制でハブ&スポークを加速 寄港地削減で定時性改善へ | 物流ニュース・物流ラジオ

プレミア・アライアンス、2026年新体制でハブ&スポークを加速 寄港地削減で定時性改善へ

本日は、プレミア・アライアンスが発表した2026年の新ネットワークと、そこから見えてくる海運業界全体の構造変化について解説します。 2025年も終盤に差しかかる中、船社各社はすでに来年を見据えたネットワーク再編を本格化させています。 今回注目するのは、ONE、HMM、Yang Mingで構成されるプレミア・アライアンスの動きです。 動画視聴はこちらから 2026年ネットワークの最大の特徴は「寄港地削減」 12月18日付のJournal of Commerceによると、プレミア・アライアンスは2026年の改訂ネットワークにおいて、アジア―欧州航路の寄港地を大幅に削減する方針を明らかにしました。 一部のループでは、寄港地をわずか5港にまで絞るという、非常に大胆な設計が採用されています。 アルファライナーの分析では、この新ネットワークは2026年4月から順次導入される予定とされています。 特に注目されるのは、アジア側でのダイレクト・コールの削減です。 これまで本船が直接寄港していた港の一部は抜港され、韓国の釜山港をハブとしたトランシップ型の運用へと移行します。 釜山ハブ化が前提となる新ネットワーク 新体制では、釜山港を主要ハブとし、そこから高雄、アモイ、そして日本の東京、神戸、名古屋などへフィーダー船で接続する構造が強化されます。 例えば、アジア―北欧州航路のFE1ループでは、レムチャバン、カイメップ、シンガポール、ロッテルダム、ハンブルクの5港のみに寄港する計画です。 また、FE4ループでは、アジア側の寄港地を上海と釜山の2港に限定する構成となっています。 本船の寄港地を極限まで絞り、ハブ港で効率的に積み替えるモデルが鮮明になっています。 狙いは定時性の回復 では、なぜここまで寄港地を削減するのでしょうか。 最大の理由はスケジュールの定時性(信頼性)の回復です。 Xenetaのデータによると、プレミア・アライアンスの定時運航率は2025年第1四半期の36%から、第3四半期には22%まで低下しました。 平均遅延日数も、年初の2.7日から第4四半期には5.2日へと拡大しています。 荷主から見れば、決して満足できる水準とは言えない状況です。 競合はすでに「答え」を出している 一方、競合となるマースクとハパックロイドのジェミニ体制を見てみると状況は対照的です。 彼らは徹底したハブ&スポーク戦略を採用しており、Sea-Intelligenceのデータでは、9月と10月の定時性が88.6%という非常に高い数値を記録しています。 寄港地を減らし、主要ハブに集約することで、遅延リスクを抑え、リカバリーもしやすい体制を構築しているのです。 プレミア・アライアンスとしても、同様の戦略に舵を切らざるを得ない背景があります。 日本の荷主に求められる視点 この変更により、定時性は改善する可能性が高いと考えられます。 一方で、日本の荷主にとっては新たな課題も生じます。 東京や神戸への直接寄港が減少し、釜山経由のフィーダー輸送が増えることで、リードタイム管理や接続リスクへの対応がより重要になります。 今後は、直行便の有無だけでなく、ハブ港の処理能力やフィーダー接続の信頼性まで含めた判断が必要になるでしょう。

【2025年物流市況】香港空港、11月貨物量が過去最高を更新 米国向け減速を補った欧州・インドシフトの実像 | 物流ニュース・物流ラジオ

【2025年物流市況】香港空港、11月貨物量が過去最高を更新 米国向け減速を補った欧州・インドシフトの実像

本日は、香港空港における11月の貨物取扱量が過去最高を更新したというニュースについて解説します。 数字だけを見ると好調そのものですが、詳しく見ていくと、世界の物流構造が大きく変わりつつあることが分かります。 動画視聴はこちらから 香港空港、11月の貨物量は6%増で過去最高 香港空港管理局が発表したデータによると、2025年11月の貨物取扱量は前年同月比6%増の48万6,000トンとなりました。 これは2か月連続の前年超えであり、単月としては過去最高の水準です。 これまでの最高記録は、コロナ禍で航空貨物需要が急増していた2021年11月の47万8,000トンでした。 今回の結果は、それを明確に上回るものです。 内訳を見ると、輸出にあたる積み込みが5%増、輸入にあたる取り降ろしが8%増となっており、輸出入ともに堅調に推移しています。 北米向けは減少、それでも過去最高になった理由 注目すべきは仕向け地の変化です。 従来、主要マーケットであった北米向け貨物は減少しています。 背景にあるのは、2025年以降に強化された米国の関税政策です。 2月には越境ECなど小口輸入品への課税が開始され、5月には中国発貨物を対象とした少額輸入免除制度、いわゆるデミニミスルールが撤廃されました。 これにより、中国系ECプラットフォームを中心とした北米向け航空貨物は大きく減少しています。 欧州・中国本土・インドへのシフトが鮮明に それにもかかわらず、11月に過去最高を更新できた理由は明確です。 北米以外へのシフトが一気に進んだからです。 欧州、中国本土、インド発着の貨物が大きく伸び、北米向け減少分を補って余りある結果となりました。 特に越境EC事業者が、規制の厳しい米国から欧州など別市場へ販売先を切り替えた動きが顕著です。 インド向けについても、製造拠点の分散化や消費市場の拡大が追い風となっています。 香港空港は、北米依存から脱却し、多極化する物流の中核ハブへと進化しています。 航空運賃は引き続き上昇基調 貨物量の増加は、航空運賃にも影響を与えています。 運賃データを見ると、香港発米国向けの航空運賃は9月以降、上昇基調が続いています。 12月中旬には、香港発シカゴ向けがキロあたり6.69ドルと年内最高値を更新しました。 ロサンゼルス向けも同様に高水準で推移しています。 2026年に向けた見通し 短期的には、この活況は2026年春節前まで続く可能性があります。 一方で、中長期的には欧州側での規制強化や、さらなるサプライチェーン再編にも注意が必要です。 総量は増えていても、ルートは大きく変化しています。 特定レーンに依存しない、柔軟な物流戦略がより重要になるでしょう。

【最新】北米コンテナ運賃が20%急騰 船社の供給絞りと欧州12月需要の正体 | 物流ニュース・物流ラジオ

【最新】北米コンテナ運賃が20%急騰 船社の供給絞りと欧州12月需要の正体

本日は、アジア発北米向けコンテナ運賃が、ここにきて一気に急反発した動きについて解説します。 正直、年末にこの数字が出てくるとは思っていなかった方も多いのではないでしょうか。 動画視聴はこちらから 北米向け運賃が1週間で2割上昇 先週まで下落基調が続いていた北米向けのスポット運賃ですが、ここにきて状況が一変しました。 12月18日に発表された世界コンテナ運賃指標によると、上海発のスポット運賃はニューヨーク向けが前週比19%高の3,293ドルとなりました。 ロサンゼルス向けも前週比18%高の2,474ドルまで上昇しています。 わずか1週間で2割近い上昇です。 ただし、冷静に水準を見ると、11月中旬と同程度であり、急騰というより急落からの持ち直しと捉えるのが妥当でしょう。 動画視聴はこちらから 最大の要因は船社の供給調整 では、なぜ需要が特別強くないこの時期に、ここまで運賃が動いたのでしょうか。 最大の要因は、主要船社による供給調整です。 具体的には、ブランクセーリングと呼ばれる欠便の実施です。 ドゥルーリーのデータによると、太平洋航路では来週も10便の欠便が予定されています。 11月で年末商戦向けの出荷は一巡し、荷動き自体は落ち着いています。 それでも、船社が意図的にスペースを絞ることで、運賃の底割れを防ぐことに成功した形です。 需要が弱くても、供給を絞れば市況は動くという典型例です。 欧州航路はさらに堅調 一方で、欧州向けは北米以上に安定した上昇が続いています。 上海発ロッテルダム向けは8%高、ジェノバ向けは10%高となり、こちらは3週連続の上昇です。 運賃水準はすでに8月並みまで戻っています。 欧州で定着する「12月需要」という新常識 ここで興味深いのが、欧州航路における新しい季節パターンです。 従来、旧正月前の駆け込み需要は1月から本格化するのが一般的でした。 しかし近年は、供給不安や紅海情勢の影響を背景に、物流混乱を避けるための前倒し出荷が常態化しています。 その結果、12月に一つの需要ピークが形成される流れが定着しつつあります。 別ソースから見える市況の裏側 上海航運交易所が発表するSCFIを見ても、北米と欧州の双方で底打ち感が鮮明になっています。 業界では、今回の運賃上昇には二つの背景があると見られています。 2026年旧正月を見据えた在庫積み増しの前倒し 船社による戦略的な需給コントロール 特に北米では、関税政策を巡る不透明感が続いており、早めに在庫を確保したいという荷主心理が働いています。 今後の見通し ドゥルーリーは、来週も小幅な上昇が続く可能性があるとしています。 今後の焦点は、この運賃上昇が一時的な供給絞りによるものなのか、それとも実需回復を伴うものなのかという点です。 足元では明らかに船社側のコントロールが効いています。 1月に入れば旧正月前のラストスパートが始まるため、しばらくは底堅い市況を前提にした物流計画が求められそうです。

マースクが紅海通航へ大きな一歩 スエズ回帰と荷主と保険が阻む物流正常化 | 物流ニュース・物流ラジオ

マースクが紅海通航へ大きな一歩 スエズ回帰と荷主と保険が阻む物流正常化

本日は、マースクが紅海およびスエズ運河ルートの通航再開に向けて、象徴的な一歩を踏み出したというニュースについて解説します。 結論から言えば、船社側の準備は進みつつある一方で、物流の正常化にはなお高い壁が残っている状況です。 動画視聴はこちらから マースクが2年ぶりに紅海を通航 今週、業界の注目を集めたのがマースクの試験的な紅海通航です。 シンガポール船籍のマースク・セバロックが、フーシ派の影響下にあるバブ・エル・マンデブ海峡を無事に通過しました。 この船はインドから米国東海岸へ向かうサービスに従事しており、12月18日から19日にかけて紅海の難所を抜け、現在はニューヨーク・ニュージャージー港へと航行しています。 マースクはこれを非常に重要な前進と位置付けています。 ただし同社は、これが全面復旧を意味するものではないと明言しています。 あくまで安全基準が満たされることを前提とした段階的プロセスの第一歩であり、次の航海スケジュールはまだ確定していません。 主要船社で進むスエズ回帰の動き 紅海通航に向けた動きは、マースクだけに限られません。 ここ数週間で、複数の主要船社がスエズ運河回帰を具体化させています。 CMA CGMは、2026年第2四半期までにインド・米国東海岸サービスでスエズ経由を定着させる計画を発表しました。 RCLは、すでに紅海と中国を結ぶサービスを再開しています。 ONEやエバーグリーンも、スロットチャーターを通じて慎重に関与を拡大しています。 これらの背景には、10月初旬に成立したイスラエルとハマスの停戦合意以降、商船への攻撃が止まっているという事実があります。 一部の船社は、海上のセキュリティ環境が許容可能な水準まで改善したと判断し始めています。 下がる戦争保険料と残る大きな壁 セキュリティ状況の改善に伴い、船舶に課される追加戦争保険料も低下しています。 一時は船体価格の0.7%から1.0%に達していた保険料は、現在では約0.2%と、攻撃が始まった2023年末以来の最低水準となりました。 しかし、ここで物流の難しさを象徴する問題が浮かび上がります。 それが荷主の同意が得られないという壁です。 荷主がスエズ回帰に慎重な理由 ドイツのハパックロイドは、インド・米国東海岸サービスをスエズ経由に戻すことについて顧客の意向を確認しました。 その結果、多くの荷主が反対姿勢を示しました。 理由は主に二つあります。 貨物保険の空白として、南部紅海をカバー対象外とする保険が依然として多い点です。 コストの不透明性として、地政学リスク再燃時の追加負担に納得できない点です。 このため、ハパックロイドは60日から90日の移行期間が必要とし、当面はアフリカ迂回を継続する慎重な姿勢を示しています。 船社が動いても、荷主と保険が動かなければ物流ルートは変わらないという現実が浮き彫りになっています。 2026年に向けた物流の分岐点 今回のマースクやCMA CGMの動きは、物流正常化に向けた試金石と言えます。 船社はアフリカ迂回による燃料費や船隊維持費を削減したい一方で、荷主は2年間かけて構築した迂回前提のサプライチェーンを簡単には戻せません。 今後の焦点は、安全に通航できる実績をどれだけ積み上げられるかです。 その実績が保険会社の判断を変え、貨物保険の制限が解除されれば、業界全体の安心感が広がる可能性があります。 2026年前半は、まさにこの安心の証明が問われる重要な局面になりそうです。

物流統括責任者(CLO)義務化まで1年 特定荷主4割が選任意識なしという現実 | 物流ニュース・物流ラジオ

物流統括責任者(CLO)義務化まで1年 特定荷主4割が選任意識なしという現実

本日は、特定荷主におけるCLO(物流統括責任者)の選任状況と、いよいよ目前に迫った法的義務化について整理していきます。 結論から申し上げると、制度の理解と対応が極めて遅れている企業が想像以上に多いという状況です。 特定荷主の4割超が選任予定なしという衝撃 2024年5月に成立した改正物流効率化法により、一定規模以上の貨物を扱う特定荷主には、2026年4月1日からCLOの選任が義務付けられます。 ところが、2025年12月18日に船井総研ロジが公表した最新調査では、深刻な実態が明らかになりました。 CLOが任命されることはないと回答した企業が42% すでに任命済みと回答した企業は15% 今後任命される可能性があるとした企業は28% 施行まで残り1年余りというタイミングにもかかわらず、約4割の企業が選任の意識すら持っていないという結果です。 これは物流が依然として経営課題として認識されていない企業が多いことを示しています。 CLOとは何か 物流部長との決定的な違い ここで改めて、CLOとは何かを整理しておきましょう。 CLOはChief Logistics Officerの略称です。 従来の物流部長との最大の違いは、経営判断への関与度と他部門への強制力にあります。 従来の物流部長は現場改善やコスト削減が主業務であり、営業や製造の要望を受け入れる立場になりがちでした。 CLOは役員級として経営に参画し、物流効率を損なう施策に対して是正を求めたり、大規模な投資判断を行う権限を持ちます。 国がCLO設置を義務化した背景には、現場任せでは解決できない物流課題を経営主導で解決させるという明確な狙いがあります。 特定荷主の定義と見逃せない罰則 国土交通省と経済産業省のガイドラインによると、特定荷主の基準は年間貨物取扱量が9万トン以上とされています。 この基準に該当する企業は、国内でおよそ3,000社から3,200社に上ると見込まれています。 重要なのは、この制度には明確な法的強制力がある点です。 CLOを選任しなかった場合は最大100万円の罰金 選任の届け出を怠った場合は20万円以下の過料 さらに企業が最も警戒すべきなのが、社名公表というレピュテーションリスクです。 法令違反として勧告を受け、社名が公表されれば、投資家や取引先からの信頼に深刻な影響を及ぼします。 国がCLOに求める二つの数値目標 CLOの役割は名義上の配置ではありません。 国は、以下の具体的な数値目標の達成を求めています。 荷待ちおよび荷役時間を1運行あたり1時間以内に短縮すること 積載率を50%以上に引き上げ、輸送能力を約16%向上させること CLOは、これらを達成するための中長期計画を策定し、毎年国へ報告する義務を負います。 これはドライバー不足が深刻化する中で、日本の物流を止めないための待ったなしの施策です。 飯野の視点 CLO設置は守りではなく攻めの経営 今回の調査では、義務の対象外である非特定荷主の中でも、5%がCLO任命を検討しているという前向きな動きが見られました。 物流を単なるコストとして外部に委ねる時代は終わりつつあります。 これからは物流を戦略的に管理できる企業だけが、安定的に商品を届け続けることができます。 物流を制する者が市場を制するという時代に入ったと言えるでしょう。 「任命されることはない」と回答した42%の企業には、この制度が罰金の問題ではなく、経営インフラの再構築であることを改めて認識していただきたいところです。 動画視聴はこちらから

2025年コンテナ荷動きは過去最多へ 米関税と新興国シフトが映す物流構造の変化 | 物流ニュース・物流ラジオ

2025年コンテナ荷動きは過去最多へ 米関税と新興国シフトが映す物流構造の変化

本日は、2025年の世界のコンテナ荷動きが過去最多を更新する見通しであるという最新リポートについて解説します。 世界経済の先行き不透明感が強まる中でも、モノの流れそのものは衰えていません。 その一方で、荷動きの中身を見ると、物流の重心が確実に変化していることが分かります。 2025年のコンテナ荷動きは過去最多を更新 日本郵船の調査グループが公表した「世界のコンテナ輸送と就航状況2025年版」によると、2025年の世界コンテナ荷動きは前年に続き過去最多を更新する見通しです。 2025年1月から10月までの累計取扱量は、前年同期比4%増の約1億5,900万TEUとなりました。 景気減速や地政学リスクが指摘される中でも、世界の物流需要は依然として底堅いことが示されています。 北米の失速と新興国・欧州の台頭 しかし、この成長を地域別に見ると、大きな変化が浮かび上がります。 これまで世界の荷動きを牽引してきた北米向けは減速しています。 アジア発北米向けのコンテナ輸送量は、前年同期比で4%減少しました。 これは、米国による対中関税引き上げを見越した駆け込み需要が春先で一巡し、9月以降は反動減が続いているためです。 一方で、その落ち込みを補って余りある成長を見せているのが欧州と新興国市場です。 欧州向けは前年同期比9%増 中南米 中東 インド亜大陸向けは15%増 アフリカ向けは26%増 特にアフリカ向けの荷動きは、中南米に迫る規模まで拡大しています。 世界の消費と生産は、もはやアメリカ一極集中ではなく、多極化が進んでいます。 関税が変える「世界の工場」の位置 今回のデータで見逃せないのが、関税政策が物流の出発地そのものを変えている点です。 5月の米中関税合意以降、中国発の荷動きは減少傾向にあります。 その一方で、ASEAN発のコンテナ輸送量は10月まで前年を上回る水準で推移しています。 これは、関税回避を目的とした生産拠点の移転や経由地変更が着実に進んでいる証拠です。 喜望峰迂回が支える船腹需要 次に、船の供給サイドを見てみましょう。 2025年末までに、世界のコンテナ船の総船腹量は前年比6%増の約3,235万TEUに達する見込みです。 通常であれば、これだけ船が増えれば供給過剰が懸念されます。 しかし現状では、深刻な船余りは起きていません。 最大の理由は、紅海情勢の悪化による喜望峰迂回の長期化です。 航海距離が延びることで、同じ量の貨物を運ぶのにより多くの船が必要となり、供給増が吸収されています。 さらに港湾混雑の常態化も、船の稼働効率を押し下げ、需給を引き締める要因となっています。 Drewryが見る2026年のリスク ここで、別の視点として、英国の海事コンサルタントであるDrewryの見解も確認しておきましょう。 Drewryは、2025年の荷動き成長については堅調としつつも、2026年以降の供給過剰リスクを警告しています。 現在、新造船の発注残は1,000万TEUを超えています。 もし紅海情勢が沈静化し、船がスエズ運河ルートに戻れば、一気に船腹が余り、運賃市況が崩れる可能性があります。 さらに2026年には米国の中間選挙も控えており、物価対策や補助金政策の行方次第で荷動きの方向性が変わる可能性もあります。 経営層と物流担当者が見るべき視点 2025年の好調な荷動きは、決して安心材料だけではありません。 地政学リスクの解消が需給バランスを一変させる可能性を常に意識する必要があります。 短期の好調に目を奪われるのではなく、中長期で物流網と在庫戦略を見直す視点が求められています。 動画視聴はこちらから

FP1改変の衝撃と、日本の港が突きつけられた4つの課題 | 物流ニュース・物流ラジオ

FP1改変の衝撃と、日本の港が突きつけられた4つの課題

本日のテーマは、ONEが運航する基幹サービスであるFP1の改変についてです。 今回の発表を一言でまとめると、日本発欧州向け直行便の事実上の終了と、釜山トランシップへの完全移行という二つの大きな転換点に集約されます。 この動きは単なる航路改編ではなく、日本の港湾が置かれている現実を浮き彫りにする出来事だと言えるでしょう。 動画視聴はこちらから FP1とはどのような航路だったのか FP1は正式名称をFP1 Pendulum Serviceといい、欧州とアジア、さらに北米西岸を結ぶ超長距離のペンデュラム型航路として運航されてきました。 日本の荷主にとって、この航路は極めて利便性が高く、東京や神戸といった主要港に欧州向けの本船が直接寄港することで、積み替えなしで貨物をヨーロッパまで輸送できる点が大きな強みでした。 リードタイムが安定し、積み替え作業がないことで貨物ダメージのリスクも抑えられるため、日本輸出を支える大動脈のような存在だったのです。 FP1改変によって何が変わったのか しかし今回、ONEはこのペンデュラム配船を分断する決断を下しました。 新しいFP1は欧州とアジア間の往復に縮小され、その寄港地リストから日本の港が外れる形となりました。 これにより、日本発欧州向けの貨物は、原則として釜山港でのトランシップを前提とした輸送へと切り替わります。 日本各港からはフィーダー船で釜山港へ輸送され、そこで欧州向けの大型本船へ積み替えられる流れになります。 ONEが示す表向きの理由 ONEが公式に挙げている理由は、大きく二つあります。 スケジュール定時性の回復 地政学的リスクへの対応 従来の欧州・アジア・北米を結ぶ長大な航路では、どこか一か所で遅延が発生すると、その影響が地球の裏側まで波及する構造的な問題を抱えていました。 航路を分断することで、この遅延の連鎖を断ち切り、定時性を改善したいという狙いがあります。 また、紅海情勢の悪化により喜望峰回りが常態化し、航海日数と必要船腹が増える中で、効率の悪い寄港地を削減せざるを得なくなった点も無視できません。 日本の港が直面する四つの構造的課題 ただし、これだけで今回の決断を説明することはできません。 なぜ日本発着ではなく釜山経由なのか。 なぜ日本の船社であるONEが、日本を抜港する判断を下したのか。 その背景には、日本の港が抱える四つの構造的課題があります。 課題① 荷物量の低下 日本から欧州へ向かう輸出貨物の絶対量は、長期的に見て減少傾向が続いています。 生産拠点の海外移転が進み、かつてのようなボリュームを日本単独で確保することが難しくなっています。 2万TEU級の超大型船にとって、荷物が十分に集まらない港へ寄港するメリットは、年々小さくなっています。 課題② 港の分散 日本の港湾は、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸と広く分散しています。 一方、釜山港は国策として機能を集約し、効率的なスーパーハブとして整備されてきました。 巨大船が日本の複数港を回って貨物を集める運用は、現在の市況では各駅停車のような非効率な形になっています。 課題③ コストと使い勝手 釜山港は24時間稼働を前提とした運用体制を整え、トランシップコストも低く抑えられています。 日本の港も改善は進んでいるものの、グローバル競争の中では依然として差があります。 船社の立場から見れば、日本各港で集荷するよりも、釜山一か所に集めてもらう方が、コスト面でも運用面でも合理的なのです。 課題④ 地理的なロス 日本はアジア航路の最奥に位置しており、欧州側から見れば行き止まりに近い場所にあります。 中国や韓国で折り返せば短縮できる航海日数が、日本まで寄港することでさらに数日延びてしまいます。 特に喜望峰回りが続く現状では、この数日のロスが船社にとって看過できない負担となっています。 FP1改変は、日本の港湾競争力の低下を象徴する出来事だと言えるでしょう。 物流担当者が考えるべき次の一手 今回のFP1改変は、単なる不便さの問題ではありません。 リードタイムの延長や積み替えリスクを前提に、物流戦略そのものを見直す必要があります。 他社欧州サービスとの比較検討 航空便との併用によるリスク分散 海外在庫拠点の活用 2025年以降は、日本パッシングという現実を前提にしたドライで実務的なサプライチェーン再構築が求められます。 物流が変われば、ビジネスの形も変わります。 今回のニュースを、単なる制約ではなく、次の一手を考えるきっかけとして捉えていただければと思います。

欧州・地中海向け運賃が上昇局面へ 旧正月前の市況を読む | 物流ニュース・物流ラジオ

欧州・地中海向け運賃が上昇局面へ 旧正月前の市況を読む

本日は、欧州および地中海向けのコンテナ運賃が上昇している背景と今後の焦点について整理します。 ここ最近、アジア発欧州向けの海運市況は再び動きが慌ただしくなっています。 結論から言うと、欧州・地中海向け運賃は明確な上昇トレンドに入っています。 SCFIが示す欧州・地中海向けの上昇 上海航運交易所が発表した12月12日付のSCFIを見ると、その傾向ははっきりしています。 上海発北欧州向けの短期運賃は、前週比で約10%上昇し、1,538ドル/TEUとなりました。 さらに地中海向けは、約19%上昇し、2,737ドル/TEUまで伸びています。 地中海向けはこれで4週連続の上昇となっています。 運賃上昇の背景にある二つの要因 このタイミングで運賃が上がっている理由は大きく二つあります。 年末に向けた輸送需要が想定以上に安定していること 12月から実施されているGRIの効果が表面化してきたこと 来年の長期契約交渉を見据え、船社側が運賃水準の底上げを狙っている意図が読み取れます。 WCIでも確認される欧州向けの強さ ドゥルーリーが公表するWCIを見ても、欧州向けの上昇は共通しています。 上海発ロッテルダム向けは5%増、ジェノバ向けは13%増となっています。 特に地中海航路では、北欧州向けよりも船腹需給が引き締まった状態が続いています。 北米向けは指標によって温度差 一方で、北米向け市況はやや慎重に見る必要があります。 SCFIでは西岸向け、東岸向けともに前週比で約15%上昇しています。 しかしNYFIでは、中国発北米向けが微減となるケースも確認されています。 これは、市場全体が一気に強気へ転じたわけではなく、スポット契約の条件やタイミングによるばらつきを示しています。 先物市場が示す慎重な見方 中国の運賃先物市場INEでは、実勢運賃が上昇する一方で、先物価格が一時下落しました。 これは、投資家が今回の運賃上昇を短期的な動きと見ている可能性を示しています。 今後の最大の焦点は旧正月 今後の市況を左右する最大のポイントは旧正月です。 来年の旧正月は2月中旬に始まり、例年よりやや遅めの日程となります。 ドゥルーリーの予測では、12月の欠便率は約9%とされています。 特に太平洋航路では欠航が目立ち、供給調整が続いています。 旧正月前の駆け込み出荷のピーク時期 再編後の4大グループによる新サービス体制 これらが今後の運賃動向を左右することになりそうです。 荷主や物流担当者は、足元の運賃上昇を受け入れつつ、旧正月明けの反動減とスケジュール混乱にも備える必要があります。 動画視聴はこちらから

マースク、新CFOにフォワーディングの重鎮を起用 | 物流ニュース・物流ラジオ

マースク、新CFOにフォワーディングの重鎮を起用

本日は、海運大手マースクの「組織と人」に関する大きな動きについてお話しします。 12月12日、マースクはCFO(最高財務責任者)の交代と、主要リージョンにおけるトップ人事の配置転換を発表しました。 このニュースは、単なる人事異動ではありません。 マースクが掲げてきた「インテグレーター戦略」が、いよいよ完成形に近づいていることを示す重要なシグナルと捉えるべき動きです。 新CFOにロバート・アーニ氏を指名 Journal of Commerce(JOC)の12月12日付報道によると、マースクは新たなCFOとしてロバート・アーニ(Robert Erni)氏を指名しました。 正式な就任は、2025年度決算発表後となる2026年2月5日以降の予定です。 あわせて、北米・アジア太平洋・欧州といった主要リージョンの責任者についても、2026年初頭から大規模な配置転換を行うことが発表されました。 なぜこのCFO人事が重要なのか 今回の人事で最も注目すべき点は、新CFOの経歴にあります。 アーニ氏は、従来の海運会社の財務畑の人材ではありません。 JOCによると、彼は約30年にわたり、フォワーディング(利用運送)業界でキャリアを築いてきました。 キューネ・アンド・ナーゲルで約20年間、世界各地の拠点運営を統括 パナルピナでCFOを務め、グローバル経営を経験 直近ではドイツ大手3PLであるダッサーのCFOを歴任 この経歴は、マースクの今後の経営軸を明確に示しています。 「船の会社」から「物流の会社」へ マースクは長年、海運会社から陸・海・空を統合する総合物流インテグレーターへの転換を進めてきました。 今回のCFO起用は、その戦略を財務・経営管理の中枢から加速させる狙いがあると考えられます。 重視されているのは、船の運航効率ではありません。 エンド・ツー・エンドのサプライチェーン管理 M&A後の組織統合と収益改善 フォワーディング・ロジスティクス事業の利益率向上 こうした領域に、明確に舵を切っていることが読み取れます。 ヴィンセント・クラークCEOは「彼の国際経験とリーダーシップはマースクにとって最適だ」とコメントしていますが、これは単なる社交辞令ではなく、フォワーダー型の収益構造への転換を急ぐ強い意思を示していると見るべきでしょう。 市場の評価と背景 ShippingWatchや金融市場のアナリストレポートによると、この人事に対する市場の反応は概ね好意的です。 特に評価されているのが、以下の点です。 パナルピナ時代にDSVによる買収プロセスを経験していること ダッサーでの堅実なコスト管理と財務運営の実績 現在、海運市況は調整局面にあります。 運賃収入だけに依存するモデルが限界を迎える中、物流サービス全体で利益を生み出す経営能力が、これまで以上に重要になっています。 リージョン・トップのクロス配置が意味するもの 今回の発表では、リージョン責任者の配置転換も見逃せません。 特に注目されるのが、アジアのトップを北米へ、北米のトップをインドへというクロスオーバー人事です。 生産地であるアジアの知見を消費地である北米に持ち込み、北米のロジスティクス経験を次の成長市場であるインドに移植する。 これは、変化するグローバル貿易構造に対応するための戦略的な知見の移動と考えられます。 まとめ 今回のマースクの人事は、2026年に向けた「完全なインテグレーター化」への布石です。 CFOにフォワーディング出身者を据え、地域トップを意図的にクロス配置する。 これにより、マースクは単なる船会社ではなく、包括的なサプライチェーン・パートナーとしての存在感をさらに強めていくでしょう。 2月5日の決算発表で、新CFOがどのような数値目標と戦略を示すのか。 引き続き注目していく必要があります。 動画視聴はこちらから

【30年ぶり】国際物流コスト崩壊の始まりか? | 物流ニュース・物流ラジオ

【30年ぶり】国際物流コスト崩壊の始まりか?

今回は、日本通運による通関業務料金の大幅改定について解説します。 NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)傘下の日本通運は、12月11日、2026年1月1日より通関関連料金を平均約25%引き上げると発表しました。 対象は、各種通関申告業務および保税関連申請で、少額貨物の簡易通関扱いも含まれます。 この改定は、事実上およそ30年ぶりという、極めて異例の動きです。 価格据え置きの呪縛と、構造的な限界 この「30年ぶり」という期間は、何を意味しているのでしょうか。 今回の改定は、単なる値上げではありません。 価格の正常化と捉える必要があります。 通関業界では、1995年に設定された旧上限金額が、法的根拠を失った後も、事実上の価格拘束として残り続けてきました。 さらに、荷主側に定着した「通関料は安いもの」という固定観念も、価格転嫁を妨げてきました。 この二重構造が、30年もの価格据え置きを生んできたのです。 労務コスト上昇と業務高度化の現実 一方で、この30年間に通関業務の負荷は大きく変化しました。 最大の要因は、人件費を中心とした労務コストの上昇です。 通関業務は人への依存度が高く、原価の大半を人件費が占めます。 特に中小通関業者では、事業継続そのものに影響が出かねない水準に達していました。 加えて、業務内容も高度化・複雑化しています。 EPA拡大による原産地規則判断 安全保障貿易管理・他法令該否確認の厳格化 AEO制度維持とコンプライアンス対応 システム投資・DX対応 これらに対応するため、専門人材と継続的な投資が不可欠となっています。 今回の改定は、こうした構造的歪みが限界に達したことを示しています。 業界への波及と、経営層・投資家への示唆 今回の動きは、日本通運一社にとどまらない可能性があります。 業界では、この改定が価格是正の呼び水となり、他の大手フォワーダーにも波及するとの見方が出ています。 経営層・投資家が注目すべきポイントは次の二点です。 ① 国際競争力を維持するためのコスト 高度な専門性とコンプライアンス体制は、日本の国際物流の強みです。 適正な対価が確保されなければ、その基盤は維持できません。 ② サプライチェーン全体のコスト再評価 輸送運賃だけでなく、見えにくい通関費用も含めた総コスト管理が求められます。 NXHDは、今回の改定により、法令順守と品質向上を徹底し、国際物流の円滑化を支えるとしています。 国際物流を支えるコスト構造は、今後も重要な経営課題であり続けます。 ロジラジでは、この価格正常化の動きが、日本の国際貿易にどのような影響をもたらすのか、引き続き注視していきます。 動画視聴はこちらから