2026.02.03
MSCが日本航路を強化する理由とは?欧州直行消滅時代に進む「完全トランシップ戦略」
本日のテーマは、コンテナ船世界最大手であるMSC(メディタレーニアン・シッピング・カンパニー)の日本戦略です。 2月3日の海事プレスに掲載された、エムエスシー日本の甲斐社長インタビューが非常に示唆に富んでおり、日本発着物流が今後どう変わっていくのかを読み解く重要な材料になっています。 動画視聴はこちらから まずニュースのポイントを整理します。 MSC日本法人は、現状のサービス体制では増加する日本貨物を捌ききれなくなっていると明言し、日本寄港サービスの強化を検討していることを明らかにしました。 具体的な論点は次の3点です。 日本発着サービスのキャパシティ不足への対応 欧州向け完全トランシップ時代への自信 成長市場である南北航路への注力 「日本貨物が増えている」という意外な現実 近年は「ジャパン・パッシング」という言葉が象徴するように、日本市場の存在感低下が語られることが増えてきました。 しかし今回、世界最大の船腹量を持つMSCが「日本貨物が増えている」と公式に言及した点は、業界にとって大きな意味を持ちます。 MSCは2Mアライアンス解消後、単独運航へ移行し、日本発着では「ORIGAMI」サービスを中心に、シンガポールや東アフリカへ直結する独自ネットワークを構築してきました。 さらに、釜山ハブを活用した「KAGUYA」「SUNRISE」など、日本市場を意識したサービス設計により、着実に貨物を集荷してきた背景があります。 欧州航路は「完全トランシップ」が前提になる 今回のインタビューで特に重要なのが、欧州航路の構造変化です。 今春以降、ONEを含むプレミアアライアンスなどが、日本から欧州への直行寄港を終了する予定です。 これにより、日本発欧州貨物は、事実上すべてが海外ハブ港でのトランシップ前提となります。 直行便の有無で船社を選ぶ時代は終わり、今後は「どこで・どれだけ正確につなげるか」という接続品質が最大の競争軸になります。 MSCは25年以上にわたり、釜山・シンガポールなどのハブ港を軸としたトランシップ運用を磨き上げてきました。 甲斐社長が「この変化はMSCにとってプラス」と語る背景には、直行便神話が崩れた後の世界を見据えた自信があります。 成長の主戦場は「南北航路」へ MSCがもう一つ強調しているのが、南北航路への注力です。 これまで主役だった東西航路に対し、今後はアフリカ・南米といった成長市場が物流の主戦場になるとMSCは見ています。 日本からケニアやタンザニアへの直行体制に加え、グループ内にアフリカ・グローバル・ロジスティクス(AGL)を擁することで、港から内陸まで一貫対応できる点は大きな差別化要因です。 日本発着物流は「フィーダー品質」で選ばれる時代へ 今後、日本の港は基幹航路の起点ではなく、巨大ハブ港へのフィーダー拠点としての役割を強めていきます。 重要なのは、どの船社が安定した接続・柔軟な対応・現場目線のサポートを提供できるかです。 MSCが掲げる今年のスローガン「心」は、遅延やトラブル時の対応力を含めた、サービス品質競争の本質を示していると言えるでしょう。
