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マースクはなぜ海運以外で稼ぐのか。L&Sとターミナルで挑む多角化戦略と2026年問題 | 物流ニュース・物流ラジオ

マースクはなぜ海運以外で稼ぐのか。L&Sとターミナルで挑む多角化戦略と2026年問題

本日は、海運大手マースクの最新の経営戦略、特に「事業の多角化による安定成長」について解説していきます。 参照するのは、海事プレスおよび日本海事新聞に掲載されたマースクの2025年通期決算と中期戦略に関する報道です。 加えて、海運市況データを踏まえ、なぜ今マースクが「海運以外」に注力しているのか、その背景と今後を整理します。 動画視聴はこちらから マースク決算の全体像とL&S事業 マースクは2016年以降、単なるコンテナ船社から「コンテナ物流のインテグレーター」

日本郵船、通期経常1,950億円へ上方修正。自動車船が支える一方、物流事業は減速 | 物流ニュース・物流ラジオ

日本郵船、通期経常1,950億円へ上方修正。自動車船が支える一方、物流事業は減速

本日は、2月5日付の海事新聞に掲載された「日本郵船、通期経常1,950億円。上方修正、自動車堅調・入港料延期」および「郵船・物流事業、通期経常予想を下方修正」という2本の記事をもとに、日本郵船の2026年3月期の最新業績見通しと、そこから見えてくる海運・物流市況の現状について解説します。 大手海運3社の決算が出揃う中で、今回は特に自動車船事業と物流事業の明暗に焦点を当てて見ていきます。 動画視聴はこちらから 日本郵船の業績修正の概要 日本郵船は2月4日、2026年3月期の連結業績予想を修正し、経常利益を前回11月予想から50億円引き上げ、1,950億円とする上方修正を発表しました。 前期比では約60%の減益となりますが、直近予想からは上振れした形です。 一方、当期純利益は2,100億円で据え置きとなりました。 これは、船舶売却益の計上時期を後ろ倒ししたことなどにより、特別利益の見通しを見直したためです。 追い風となった自動車船事業 今回の上方修正の最大の要因は、自動車船事業の好調です。 PCTC(自動車専用船)部門の通期経常利益予想は、前回から100億円引き上げられ、980億円となりました。 要因は大きく二つあります。 自動車輸送需要が堅調に推移したこと 米国で予定されていた追加入港料の徴収が延期されたこと 輸送台数は前回予想から4万台増え、通期で444万台を見込んでいます。 特に注目すべきは、米国の追加入港料問題です。 USTR(米通商代表部)は、米国建造以外の自動車船に対して追加の入港料を課す方針を示していましたが、その開始時期が1年延期、あるいは徴収期間が短縮されました。 これにより、日本郵船が想定していたコスト負担が軽減され、利益を押し上げる結果となりました。 向かい風を受けた物流事業 一方で、物流事業は厳しい状況が続いています。 こちらは40億円の下方修正となり、通期の経常利益予想は80億円に引き下げられました。 郵船ロジスティクスを中心とする物流事業では、2025年10〜12月期にかけて、海上貨物運賃が想定以上に軟化したことが直撃しました。 さらに、米国の関税政策の影響により、消費財を中心とした荷動きが鈍化し、主要顧客の取扱量が減少したことも収益を圧迫しています。 他社比較で見える市況の実態 今回の発表により、日本の大手海運3社の業績見通しが出揃いました。 商船三井も先日、経常利益を280億円上方修正しています。 全体を俯瞰すると、円安効果と実需のばらつきが鮮明です。 下期の為替前提は1ドル147円から154.1円へと大きく円安に振れており、ドル建て収入の多い海運各社にとっては追い風となっています。 しかし為替効果を除いて見ると、自動車船は強く、フォワーディングを含む物流事業は弱いという構図がはっきりしています。 自動車船:需給タイト継続 物流事業:運賃下落と荷動き減速 地政学リスクと今後の注目点 地政学リスクについても確認しておきましょう。 日本郵船は、スエズ運河の航行について「年度末までは再開しない」という前提を維持しています。 紅海情勢は依然として不透明で、喜望峰回りの長距離航路が続く見通しです。 これは船腹需給を引き締め、運賃の下支え要因にはなっていますが、物流事業の収益を押し上げるほどの市況回復には至っていません。 今後の最大の変数は、やはり米国の通商・関税政策です。 自動車船は入港料延期で助かりましたが、物流事業は関税の影響を直接受けています。 2026年度に向けて、米国の政策動向が海運・物流全体にどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視が必要でしょう。

自動車船の需給はなぜ緩まないのか。輸出入ギャップ拡大が生む構造問題 | 物流ニュース・物流ラジオ

自動車船の需給はなぜ緩まないのか。輸出入ギャップ拡大が生む構造問題

本日は2月3日の海事新聞「自動車船、輸出入ギャップ拡大。需給タイト 継続か」という記事と、1月20日に行われた日本郵船のIR説明会での発表内容をもとに、海運市況の中でも特に自動車船(PCTC)の最新動向について整理していきます。 ここ数年、自動車船のスペース不足、いわゆる「スペース・タイト」の状況が続いていますが、2026年に入った現在も、この問題は簡単には解消しない可能性が高まっています。 動画視聴はこちらから 自動車船市況の現状整理 まず、現在の市況について整理します。 日本郵船の調査グループによる分析では、自動車や建設機械を運ぶ自動車船の需給は、引き続き引き締まった状態が続くと予測されています。 もともと市場では、2024年から2025年にかけて新造船の竣工が相次ぐことで、2026年には需給が緩和し、スペースが取りやすくなると見られていました。 実際に2025年時点では、世界の自動車船の船腹量は約900隻規模まで増加しています。 しかし、実態としては、船の数が増えているにもかかわらず、需給は緩んでいません。 その背景には、単なる船腹量の増減では説明できない、構造的な要因が存在しています。 原因① 輸出入アンバランスの急拡大 最も重要な要因の一つが、アジア地域における輸出入アンバランスの拡大です。 日本郵船の説明によると、従来、日本・韓国・中国といった東アジア地域では、自動車の輸出量は輸入量の3倍から4倍程度でした。 それでも輸出超過ではありましたが、市場としては一定のバランスが保たれていました。 ところが、中国からの自動車輸出が急拡大したことで、2025年にはこの比率が5倍超にまで広がったと見られています。 物流の世界では、片道だけ貨物を積み、復路が空船となる「片荷」は、最も効率の悪い状態です。 輸出が輸入の5倍という状況は、多くの船がアジアへ空船で戻らざるを得ないことを意味します。 その結果、船全体の稼働効率が大きく低下し、名目上の船腹量以上に実質的な輸送能力が削られているのです。 原因② 輸送距離の長距離化 二つ目の要因は、輸送距離の長距離化です。 中国からの自動車輸出は、アジア近隣国にとどまらず、欧州や中南米といった遠隔地へ広がっています。 さらに、2024年以降続いている紅海情勢の緊迫化により、スエズ運河を回避し、喜望峰経由で航行するケースが常態化しています。 記事によると、喜望峰回りによる距離増は6〜7%程度とされていますが、もともと中国から欧州への航路自体が長距離であるため、1隻あたりの船の拘束時間は確実に伸びています。 結果として、船は増えているものの、市場に供給される実質的なスペースは思うように増えない状況が続いています。 原因③ 老齢船比率の上昇 三つ目の要因が、自動車船の老齢化です。 現在、世界の自動車船の平均船齢は15年超と、過去最高水準に達しています。 特に船齢16年以上の船が、全体の約6割を占めている点は見逃せません。 仮に新造船の竣工が進んだとしても、老齢船がスクラップされることで供給増が相殺され、需給が大きく緩和しにくい構造になっています。 これは、将来的にもスペース不足が解消しにくい要因の一つと言えます。 別ソースから見る中国輸出の圧力 ここで、別のソースからの情報も補足します。 中国自動車工業協会などのデータによると、中国の自動車輸出台数は2023年以降、世界トップクラスとなり、2025年には700万台超に達しています。 BYDをはじめとする中国EVメーカーは、自社で自動車船を保有・運航する動きを加速させていますが、それでも生産過剰による押し出し輸出の勢いは収まっていません。 また、欧州や米国による中国製EVへの追加関税は、短期的には駆け込み輸出を誘発する側面もあり、荷動きを底支えしています。 今後の見通しと物流実務への影響 今後についてですが、結論として、自動車船市場は当面、荷主にとって厳しい売り手市場が続く可能性が高いと考えられます。 緩和要因として挙げられるスエズ運河の本格再開や、欧米での現地生産シフトは、即効性のある解決策にはなりにくいでしょう。 中国国内の過剰生産が続く限り、輸出圧力は継続するからです。 仮にスペースが増えた場合でも、これまでコンテナ船で輸送されていた完成車が自動車船へ戻る回帰需要が発生するため、需給が一気に緩む可能性は低いと見られます。 自動車産業のサプライチェーンにおいては、部材調達だけでなく、完成車を運ぶ物流キャパシティそのものが制約要因になっている点を、改めて認識する必要があります。 中古車輸出を手がける企業にとっても、船枠確保が成長のボトルネックとなる状況は、2026年も続くと考えておくべきでしょう。

MSCが日本航路を強化する理由とは?欧州直行消滅時代に進む「完全トランシップ戦略」 | 物流ニュース・物流ラジオ

MSCが日本航路を強化する理由とは?欧州直行消滅時代に進む「完全トランシップ戦略」

本日のテーマは、コンテナ船世界最大手であるMSC(メディタレーニアン・シッピング・カンパニー)の日本戦略です。 2月3日の海事プレスに掲載された、エムエスシー日本の甲斐社長インタビューが非常に示唆に富んでおり、日本発着物流が今後どう変わっていくのかを読み解く重要な材料になっています。 動画視聴はこちらから まずニュースのポイントを整理します。 MSC日本法人は、現状のサービス体制では増加する日本貨物を捌ききれなくなっていると明言し、日本寄港サービスの強化を検討していることを明らかにしました。 具体的な論点は次の3点です。 日本発着サービスのキャパシティ不足への対応 欧州向け完全トランシップ時代への自信 成長市場である南北航路への注力 「日本貨物が増えている」という意外な現実 近年は「ジャパン・パッシング」という言葉が象徴するように、日本市場の存在感低下が語られることが増えてきました。 しかし今回、世界最大の船腹量を持つMSCが「日本貨物が増えている」と公式に言及した点は、業界にとって大きな意味を持ちます。 MSCは2Mアライアンス解消後、単独運航へ移行し、日本発着では「ORIGAMI」サービスを中心に、シンガポールや東アフリカへ直結する独自ネットワークを構築してきました。 さらに、釜山ハブを活用した「KAGUYA」「SUNRISE」など、日本市場を意識したサービス設計により、着実に貨物を集荷してきた背景があります。 欧州航路は「完全トランシップ」が前提になる 今回のインタビューで特に重要なのが、欧州航路の構造変化です。 今春以降、ONEを含むプレミアアライアンスなどが、日本から欧州への直行寄港を終了する予定です。 これにより、日本発欧州貨物は、事実上すべてが海外ハブ港でのトランシップ前提となります。 直行便の有無で船社を選ぶ時代は終わり、今後は「どこで・どれだけ正確につなげるか」という接続品質が最大の競争軸になります。 MSCは25年以上にわたり、釜山・シンガポールなどのハブ港を軸としたトランシップ運用を磨き上げてきました。 甲斐社長が「この変化はMSCにとってプラス」と語る背景には、直行便神話が崩れた後の世界を見据えた自信があります。 成長の主戦場は「南北航路」へ MSCがもう一つ強調しているのが、南北航路への注力です。 これまで主役だった東西航路に対し、今後はアフリカ・南米といった成長市場が物流の主戦場になるとMSCは見ています。 日本からケニアやタンザニアへの直行体制に加え、グループ内にアフリカ・グローバル・ロジスティクス(AGL)を擁することで、港から内陸まで一貫対応できる点は大きな差別化要因です。 日本発着物流は「フィーダー品質」で選ばれる時代へ 今後、日本の港は基幹航路の起点ではなく、巨大ハブ港へのフィーダー拠点としての役割を強めていきます。 重要なのは、どの船社が安定した接続・柔軟な対応・現場目線のサポートを提供できるかです。 MSCが掲げる今年のスローガン「心」は、遅延やトラブル時の対応力を含めた、サービス品質競争の本質を示していると言えるでしょう。

【決算解説】商船三井、通期経常利益1800億円へ上方修正。自動車・エネルギーが牽引する多角化経営の強さ | 物流ニュース・物流ラジオ

【決算解説】商船三井、通期経常利益1800億円へ上方修正。自動車・エネルギーが牽引する多角化経営の強さ

本日は、2月2日の海事新聞に掲載された「商船三井、通期経常1800億円に上方修正」というニュースをもとに、同社の最新決算と、その背景にある事業構造の変化について整理していきます。 動画視聴はこちらから ニュースの概要 まず、今回発表された数字の要点から確認します。 商船三井は1月30日、2026年3月期の連結経常利益予想を、前回予想から280億円上積みし1800億円に修正すると発表しました。 前期(2025年3月期)との比較では57%の減益となりますが、それでも直近予想を明確に上回る着地見通しとなっています。 売上高は1兆8300億円、純利益は2000億円を見込んでいます。 前提条件としては、為替レートを1ドル=150円とし、紅海情勢の不安定化による喜望峰経由の迂回運航は年度末まで継続する想定です。 なぜ上方修正できたのか では、なぜ今回これだけ大きな上方修正が可能だったのでしょうか。 結論から言うと、自動車船とエネルギー・海洋事業の好調が、コンテナ事業の不透明感を補ったという構図です。 要因は大きく三つあります。 ① 自動車船事業のコスト抑制と堅調な荷動き ② エネルギー・海洋事業の高収益構造 ③ ドライバルク市況の回復 自動車船:政策延期が利益を押し上げ まず注目すべきは自動車船事業です。 当初、米国の通商政策変更、特に関税強化などの保護主義的な動きにより、輸送ルートの再構築やコスト増加が懸念されていました。 しかし、政策実施が延期されたことで、従来の効率的な輸送パターンを維持することが可能となりました。 その結果、想定していた運航コストが発生せず、利益を押し上げる形となっています。 荷動き自体も堅調で、通期の輸送台数は289万台を見込んでいます。 エネルギー・海洋:安定収益の柱に成長 二つ目の要因が、エネルギー・オフショア分野です。 原油タンカー市況の改善に加え、特に大きく寄与しているのが海洋事業です。 三井海洋開発(MODEC)が手掛けるFPSO(浮体式石油生産・貯蔵・積み出し設備)は高い稼働率を維持しており、安定的に利益を生み出しています。 海運市況の変動に左右されにくいインフラ型ビジネスが、同社の収益構造を下支えしている点は重要です。 ドライバルク:市況回復が追い風 三つ目はドライバルク事業です。 大型船であるケープサイズ市況が堅調だったことに加え、子会社ギアバルクにおいて、ブラジルから北米向けのパルプ輸送が回復しました。 これが、全体の利益改善に寄与しています。 コンテナ専業との対比 ここで、別のニュースと比較してみましょう。 同時期の報道では、ONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)が2025年10〜12月期に税引き後利益で赤字に転落したことが伝えられています。 商船三井の決算資料でも、コンテナ船事業の経常利益予想は250億円で据え置きとなっており、新造船供給過多による運賃下落圧力が依然として強いことが読み取れます。 コンテナ一本足の事業構造は、いま明確なリスクになりつつある 一方で、商船三井は自動車、エネルギー、海洋、不動産と収益源を分散させたコングロマリット型経営を築いてきました。 今回の上方修正は、その戦略が機能していることを示す結果と言えるでしょう。 今後の展望と注意点 今回の利益押し上げ要因の一つである米国通商政策の延期は、あくまで延期であり、撤回ではありません。 2026年度以降、政策が実行に移されれば、自動車輸送におけるトレードパターン変更によるコスト増が現実化する可能性があります。 一方で、足元では円安基調と紅海迂回による船腹需給の引き締まりが下支えとなり、急激な悪化は想定しにくい状況です。 物流実務者としては、北米向けの関税リスクや荷動きの変化を継続的に注視していく必要があるでしょう。

世界は自動化、日本は足踏み。港湾DXが進まない本当の理由 | 物流ニュース・物流ラジオ

世界は自動化、日本は足踏み。港湾DXが進まない本当の理由

世界では港湾の自動化が急速に進んでいます。 一方で、日本の港湾はその流れから大きく遅れつつあるのが現実です。 本日は海事プレスの特集記事をもとに、世界で進む港湾自動化の実態と、日本が抱える構造的な課題について整理していきます。 動画視聴はこちらから 世界では港湾自動化がスタンダードになりつつある まず、世界の現状を確認しましょう。 国土交通省のデータによると、2023年時点で世界のコンテナ取扱量上位20港のうち17港で、すでに自動化技術が導入されています。 特に新設されるターミナルでは、自動化を前提とした設計が当たり前になっています。 なぜ世界は自動化を選ぶのか 理由は大きく二つあります。 一つ目は安定稼働です。 自動化されたクレーンや搬送設備は、24時間365日、休まずに稼働できます。 人間のように疲労やシフト制約がなく、一定の生産性を維持し続けられる点は、サプライチェーン管理において極めて重要です。 二つ目は労働環境の改善です。 港湾作業は酷暑や極寒といった過酷な環境下で行われます。 遠隔操作を導入すれば、作業員は空調の効いた屋内から安全に作業できます。 これにより、女性や高齢者、現場経験豊富なベテラン人材も働き続けられる環境が整います。 日本で自動化が進まない理由 日本では一部ターミナルで遠隔操作が導入されていますが、完全自動化には至っていません。 背景には三つの大きな壁があります。 労働組合との合意形成 高騰するコストとROIの問題 既存インフラの制約 労組・コスト・インフラという三重苦 港湾自動化は雇用に直結します。 世界では自動化に反対する港湾労組の動きが活発化しており、日本でも慎重な調整が不可欠です。 さらに、日本の港湾労働者は技能水準が非常に高く、自動化しても生産性が劇的に向上しないケースもあります。 結果として、多額の投資をしても回収が難しいという現実があります。 日本港湾が進むべき現実的な道 短期的に日本で完全無人港が一気に広がる可能性は低いでしょう。 しかし、労働人口が減少する中で現状維持は不可能です。 今後は人を置き換える自動化ではなく、人を支える自動化が現実解になります。 技術論以上に重要なのは、コストを誰がどう負担するかという合意形成です。 船社、港湾事業者、荷主を含めたサプライチェーン全体での議論が、日本の物流を止めない鍵になるでしょう。

紅海危機、再燃か?フーシ派が攻撃再開を示唆、スエズ運河復帰に暗雲 | 物流ニュース・物流ラジオ

紅海危機、再燃か?フーシ派が攻撃再開を示唆、スエズ運河復帰に暗雲

紅海情勢は一度落ち着きを見せたかに見えましたが、ここに来て再び緊張が高まっています。 本日は、フーシ派による攻撃再開示唆と、それに伴うスエズ運河復帰見送りの動きを整理し、今後の海運市況への影響を読み解きます。 動画視聴はこちらから フーシ派が「攻撃再開」を示唆、再び高まる紅海リスク イエメンの親イラン武装組織であるフーシ派が、紅海を航行する商船への攻撃再開を強く示唆しました。 背景にあるのは、米国によるイランへの軍事的圧力の強まりです。 フーシ派は先週末、YouTubeなどの動画プラットフォームに挑発的な映像を投稿しました。 その動画には「Soon(間もなく)」という文言とともに、商船が炎上する映像が含まれていたとされています。 さらに声明では、米国がイランを攻撃した場合、報復を行うと明言しました。 紅海は世界のコンテナ物流における最重要ルートの一つであり、ここでの緊張再燃は即座に海運判断へ影響します。 米国とイランの緊張がフーシ派を刺激 海外メディアの報道を総合すると、米国はイランの核開発問題や地域武装組織への関与を警戒し、紅海およびペルシャ湾周辺で軍事プレゼンスを強化しています。 これに対し、イランの後ろ盾を持つフーシ派は、紅海を事実上の交渉カードとして利用する構えを見せています。 紅海という物流の要衝を不安定化させることで、米国とその同盟国に圧力をかける狙いです。 スエズ運河復帰に急ブレーキ、船社の判断は分かれる この緊張の高まりは、直ちに船社の運航判断に影響しています。 一部船社では「スエズ運河へ段階的に戻れるのではないか」という見方が出ていました。 しかし、今回のフーシ派の警告により、その動きは一気に後退しました。 フランスの大手船社CMA-CGMは、欧州航路の一部で計画していたスエズ復帰を取りやめ、引き続き喜望峰経由での運航を継続すると発表しました。 安全を最優先する判断です。 一方、マースクはインド―米国東岸を結ぶMECLサービスについて、紅海・スエズ経由への変更を発表していました。 しかし現状では、この決定が再び見直される可能性が極めて高いと見られています。 今後の影響、運賃とサプライチェーンはどうなるか 結論として、スエズ運河への全面復帰は当面遠のいたと見るべきでしょう。 喜望峰経由の長期化により、リードタイム短縮は期待しづらい状況が続きます。 燃料費や用船料の高止まりも避けられません。 一方で、足元では旧正月前の需要一巡により運賃には下落圧力がかかっていました。 しかし紅海情勢の再悪化により、供給スペースが再び引き締まる可能性があります。 運賃下落が止まり底堅く推移するシナリオ 地政学リスクを背景にスポット運賃が反発するシナリオ さらに、米国とイランの直接衝突に発展すれば、ホルムズ海峡封鎖リスクが浮上します。 その場合、原油価格の高騰とバンカーサーチャージ急騰が物流コストを直撃するでしょう。 荷主企業にとっては、長めのリードタイム設定や代替ルート、航空輸送への切り替え準備など、BCPの再確認が不可欠な局面です。 地政学リスクが市況を左右する状況は、まだしばらく続きそうです。

【市況解説】SCFI 3週続落、1500ポイント割れ。春節前の需要減と今後の運賃動向 | 物流ニュース・物流ラジオ

【市況解説】SCFI 3週続落、1500ポイント割れ。春節前の需要減と今後の運賃動向

足元のコンテナ運賃市況に、はっきりとした下落シグナルが出てきました。 2026年に向けた市況を占う上で、今回のSCFI下落は重要な転換点になりそうです。 動画視聴はこちらから SCFIが3週続落、1,500ポイントを割り込む 1月23日、上海航運交易所が発表したSCFIは、総合指数が前週比7%安の1,458ポイントとなりました。 これで3週連続の下落となり、約1か月半ぶりに1,500ポイントを割り込んでいます。 これまで底堅さを見せていた中東航路や地中海航路も含め、主要航路がほぼ全面安となった点が今回の特徴です。 SCFIは短期需給を最も敏感に反映する指数であり、連続下落は実需の弱さを示します。 主要航路別に見る運賃下落の実態 北米西岸向けは40フィート当たり2,084ドルと、前週比5%下落しました。 東岸向けも9%安の2,896ドルとなり、6週ぶりに下落へ転じています。 欧州向けも弱含みで、北欧州は20フィート当たり1,595ドル、地中海向けは2,756ドルまで下落しました。 特に目立つのが中東向けで、24%安の1,288ドルと急落しています。 南米西岸向けも939ドルまで下がり、昨年以来初めて1,000ドルを割り込みました。 北米:年始の値上げ分がほぼ解消 欧州:需要回復の鈍さが鮮明 中東:供給過多が顕在化 下落要因は「春節前需要の早期収束」 今回の最大の要因は、中華圏の春節前需要が想定より早く息切れした点です。 例年であれば1月下旬まで駆け込み需要が続きますが、今年は1月中旬以降、出荷量が急速に鈍化しました。 船会社は減便やブランク・セーリングで供給調整を行ってきましたが、それでも需要を下支えできなかった形です。 構造問題としての「供給過剰」は依然解消されず 別の視点として見逃せないのが、新造船の竣工ラッシュによる供給増です。 Drewryなどの分析でも、2026年にかけて船腹供給は需要成長を上回る見通しが示されています。 特に中東航路の急落は、配船調整が追いついていないことを象徴しています。 今後の市況見通しと注意点 短期的には、春節期間から2月後半にかけて閑散期入りが確実視されます。 このため、運賃の反発材料は乏しく、弱含みから横ばいの展開が基本シナリオです。 一方で、船会社はさらなる欠便強化やサービス再編で市況防衛を図る可能性があります。 運賃は安いがスペースが取れないという局面が、春節明けに突発的に発生するリスクには注意が必要です。 物流担当者にとっては、単なる運賃水準だけでなく、供給戦略とスペース確保を含めた判断が求められる局面に入っています。

【物流DX】海コン陸送に特化した新マッチングサービスが登場。多重下請け構造の解消と「2024年問題」への新たな一手となるか? | 物流ニュース・物流ラジオ

【物流DX】海コン陸送に特化した新マッチングサービスが登場。多重下請け構造の解消と「2024年問題」への新たな一手となるか?

日本の港湾物流、とくに海上コンテナの陸送を巡る構造的な課題に対して、ひとつ注目すべき新サービスが登場しました。 本日は、1月27日の海事プレスで報じられた「海コン陸送マッチングを開始。ロジテクノサービス/Xグラビティ」というニュースをもとに、物流DXの観点からその意味と可能性を読み解いていきます。 動画視聴はこちらから 新サービス「海コンマッチング」とは何か 今回発表されたのは、荷主・フォワーダーとドレージ会社を直接つなぐ海上コンテナ輸送に特化したマッチングプラットフォームです。 開発したのはロジテクノサービスとXグラビティの2社で、2026年2月から本格展開が予定されています。 仕組みは非常にシンプルです。 荷主やフォワーダーが、輸送したいコンテナ案件を登録します。 ドレージ会社が、対応可能な日程や空車情報を登録します。 条件が合致した場合にマッチングが成立します。 ここで最大の特徴となるのが、マッチング成立まで両者が匿名であるという点です。 条件が合致し、実際に取引が成立する段階で初めて会社名が開示され、その後はプラットフォームを介さずに直接交渉へ移行する設計になっています。 利用料金は1アカウントあたり月額6,600円で、初期費用は無料です。 さらに、2月中の登録であれば3か月間無料というキャンペーンも予定されています。 なぜ今、このサービスが必要とされているのか このサービスが登場した背景には、日本の海コン陸送を取り巻く二つの深刻な構造問題があります。 ① ドライバー不足と「2024年問題」 まず一つ目は、慢性的なドライバー不足です。 これに加えて、時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」が本格的に影響し始めています。 長距離輸送や無理なスケジュールが組めなくなり、ドレージの供給力そのものが低下しています。 さらに、本船スケジュールの遅延や港湾混雑が常態化していることで、直前の再配車が極めて難しくなっています。 ② 多重下請け構造による利益圧迫 もう一つの問題が、日本の運送業界に根深く残る多重下請け構造です。 元請けから二次、三次へと仕事が流れる中で、実際に走るドレージ会社の取り分は年々圧縮されています。 記事でも触れられていますが、「もらい仕事」だけでは利益が残らないという声は現場で非常に多く聞かれます。 一方で、中小のドレージ会社が自力で荷主を開拓するには、営業リソースや情報が不足しているのが実情です。 「匿名性」という日本的課題への解答 このサービスで特に興味深いのが、匿名性を前提に設計されている点です。 既存の協力会社との関係を考えると、「他社を探している」と表立って動くことは、日本の商習慣では心理的ハードルが高いのが現実です。 匿名であれば、しがらみを気にせず、条件だけでフェアに取引先を探すことができます。 これは、単なるITサービスではなく、現場の空気を理解した実務設計だと言えるでしょう。 匿名で需給を可視化し、成立後は直接取引へ移行するという設計は、多重下請け構造を崩すための現実的なアプローチです。 将来像:コンテナ・ラウンドユースへの可能性 記事によると、将来的には輸出と輸入のコンテナをマッチングする機能も視野に入れているとのことです。 これは、いわゆるコンテナのラウンドユースを促進する仕組みにつながります。 輸入後に空で返却されているコンテナを、そのまま輸出バンニングに活用できれば、コスト削減とCO₂削減の両立が可能になります。 これまで調整が難しかったこの分野も、データが集積されれば実現性は一気に高まります。 まとめ:DXは「現場の詰まり」を解消できるか 今回の海コンマッチングは、単なる配車効率化ツールではありません。 ドライバー不足、多重下請け、2024年問題という日本物流の構造課題に、DXで正面から切り込む試みです。 このサービスがどこまで広がるかは、登録企業数と実利用の積み重ねにかかっています。 ドレージ不足というピンチを、構造改革のチャンスに変えられるのか。 今後の展開を、継続的に追っていきたいと思います。

土日・夜間は荷役しません!日本港湾で広がる不稼働の波と抜港リスク | 物流ニュース・物流ラジオ

土日・夜間は荷役しません!日本港湾で広がる不稼働の波と抜港リスク

日本の港湾で、これまで「当たり前」とされてきた24時間稼働体制が、静かに崩れ始めています。 特に地方港を中心に、人手不足を理由として土日や夜間の荷役作業をあえて止める 動きが全国規模で広がっています。 これは一時的な対応ではなく、日本の港湾物流の構造そのものが転換点に差し掛かっていることを示しています。 動画視聴はこちらから 全国に広がる「港が止まる」現実 現在、日本各地の港で以下のような対応が進んでいます。 博多港では深夜帯の荷役不稼働を試験的に導入 北九州港 太刀浦地区では日曜荷役休止と土曜ゲートクローズを実施 苫小牧港ではRTG稼働数を減らし同時荷役能力を縮小 小樽港では土曜日のコンテナヤードを終日クローズ 九州から北海道まで、地域を問わず「稼働時間を削る」という判断が連鎖しています。 港が動かないのではなく、人を守るために動かさないという判断です。 背景① 人手不足と働き方改革の板挟み 最大の要因は、慢性的な港湾労働者不足です。 少子高齢化により担い手は減少し、これまで残業で支えてきた現場も、働き方改革による時間外労働規制で限界を迎えています。 「人がいないなら無理をしない」 という判断は、もはや避けられない現実です。 背景② 船の大型化と遅延の連鎖 コンテナ船の大型化により、一度の寄港で扱う貨物量は急増しました。 さらに海外港の混雑や天候不順で遅延した船が一気に到着することで、限られた時間帯に業務が集中します。 結果として、人員と処理能力のミスマッチ が慢性化しています。 背景③ 若年層確保のための苦渋の選択 夜間や休日勤務が多い職場は、若年層から敬遠されやすくなっています。 港運事業者にとって、稼働時間の制限は離職防止と採用強化のための現実的な選択肢です。 最大の懸念 日本パッシング 最大のリスクは、船会社による 日本港の抜港 です。 利便性が低いと判断されれば、釜山港や中国港湾へのシフトが進む可能性があります。 一度失った寄港地の地位を取り戻すのは容易ではありません。 港を止める判断は、生き残るための賭けでもあります。 今後の二極化シナリオ 今後、日本の港湾は次の二極化が進むと考えられます。 地方港は稼働時間を絞りDXと省人化で生産性を高める 主要港は24時間体制維持を目指すが自動化投資が鍵 日本の港湾物流は「いつでも動く」時代から「計画的に動かす」時代へ移行しています。 荷主側も前提条件を見直し、余裕あるサプライチェーン設計が求められます。