次世代船開発の標準設計スキームとは

次世代船開発の標準設計スキームとは | 物流ニュース・物流ラジオ

日本の造船業が国際競争力を取り戻すために始動した標準設計スキーム

今回は、その中心となるMILES(マイルズ)と、海運・造船7社が結集したオールジャパン体制の取り組みについて解説します。

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プロジェクトの中核 MILES とは

MILES は、海事産業全体の共同デザインセンターとなる組織です。

もともとは三菱重工と今治造船の合弁会社でしたが、今回新たに以下の4社が参加しました。

  • 日本郵船
  • 商船三井
  • 川崎汽船
  • ジャパンマリンユナイテッド(JMU)
  • 日本シップヤード(NSY)

これにより、ユーザー(海運)とメーカー(造船)が一体となった基本設計体制が整備されました。

なぜ今、連携が必要なのか

背景には、日本の造船業が抱える深刻な課題があります。

・LCO2船、アンモニア燃料船などの設計が複雑化 ・設計項目が膨大で工数が急増 ・国内の設計リソースが不足

個社ごとの分散設計では限界が見え始めていました。

そこで参考にしたのが、中国・SDARIの成功モデルです。

SDARI は設計リソースを一箇所に集約し、共通基本設計で効率化を実現。
MILES もこの方式を取り入れ、競争から協調へと舵を切りました。

7社が担う具体的な役割分担

この新体制では、各社の役割が明確に整理されています。

  • 海運3社:船の仕様・要求性能を提示
  • MILES:技術を集約し、標準基本設計を一元化
  • 造船4社:標準図面を自社向けに最適化して建造

これにより、これまでにない強固なサプライチェーンが形成されます。

標準設計スキームの開発フロー

開発プロセスは次の3段階に整理されています。

  • ① 開発・基本設計(MILES) 標準仕様を確定し、標準図面を作成。
  • ② 機能・生産設計(造船所) 標準図面を自社向けに最適化。
  • ③ 建造・完成 効率的なプロセスで次世代船を建造。

これにより設計工数を大幅に削減ロードマップ:LCO2船から標準化を開始

最初の対象は脱炭素の要となるLCO2船

標準船型を確立したのち、アンモニア燃料船などへ展開し、国内の他造船所へも連携を広げる計画です。

2030年・2035年の目標

本プロジェクトでは次の巨大な目標が設定されています。

  • 2030年:次世代船で世界トップシェア奪還
  • 2035年:建造量1,800万総トンへ

官民あわせて1兆円超の投資を伴う国家級プロジェクトであり、MILES が中心的役割を担います。

まとめ

日本の造船業は、協調と標準化によって再び世界の舞台へ挑みます。
MILES を軸にした新しい設計スキームは、国際競争力の再獲得に向けた大きな一歩となるでしょう。

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