2025年コンテナ荷動きは過去最多へ 米関税と新興国シフトが映す物流構造の変化

2025年コンテナ荷動きは過去最多へ 米関税と新興国シフトが映す物流構造の変化 | 物流ニュース・物流ラジオ

本日は、2025年の世界のコンテナ荷動きが過去最多を更新する見通しであるという最新リポートについて解説します。

世界経済の先行き不透明感が強まる中でも、モノの流れそのものは衰えていません。

その一方で、荷動きの中身を見ると、物流の重心が確実に変化していることが分かります。

この記事を書いた人
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)

2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!

2025年のコンテナ荷動きは過去最多を更新

日本郵船の調査グループが公表した「世界のコンテナ輸送と就航状況2025年版」によると、2025年の世界コンテナ荷動きは前年に続き過去最多を更新する見通しです。

2025年1月から10月までの累計取扱量は、前年同期比4%増の約1億5,900万TEUとなりました。

景気減速や地政学リスクが指摘される中でも、世界の物流需要は依然として底堅いことが示されています。

北米の失速と新興国・欧州の台頭

しかし、この成長を地域別に見ると、大きな変化が浮かび上がります。

これまで世界の荷動きを牽引してきた北米向けは減速しています。

アジア発北米向けのコンテナ輸送量は、前年同期比で4%減少しました。

これは、米国による対中関税引き上げを見越した駆け込み需要が春先で一巡し、9月以降は反動減が続いているためです。

一方で、その落ち込みを補って余りある成長を見せているのが欧州と新興国市場です。

  • 欧州向けは前年同期比9%増
  • 中南米 中東 インド亜大陸向けは15%増
  • アフリカ向けは26%増

特にアフリカ向けの荷動きは、中南米に迫る規模まで拡大しています。

世界の消費と生産は、もはやアメリカ一極集中ではなく、多極化が進んでいます。

関税が変える「世界の工場」の位置

今回のデータで見逃せないのが、関税政策が物流の出発地そのものを変えている点です。

5月の米中関税合意以降、中国発の荷動きは減少傾向にあります。

その一方で、ASEAN発のコンテナ輸送量は10月まで前年を上回る水準で推移しています。

これは、関税回避を目的とした生産拠点の移転や経由地変更が着実に進んでいる証拠です。

喜望峰迂回が支える船腹需要

次に、船の供給サイドを見てみましょう。

2025年末までに、世界のコンテナ船の総船腹量は前年比6%増の約3,235万TEUに達する見込みです。

通常であれば、これだけ船が増えれば供給過剰が懸念されます。

しかし現状では、深刻な船余りは起きていません。

最大の理由は、紅海情勢の悪化による喜望峰迂回の長期化です。

航海距離が延びることで、同じ量の貨物を運ぶのにより多くの船が必要となり、供給増が吸収されています。

さらに港湾混雑の常態化も、船の稼働効率を押し下げ、需給を引き締める要因となっています。

Drewryが見る2026年のリスク

ここで、別の視点として、英国の海事コンサルタントであるDrewryの見解も確認しておきましょう。

Drewryは、2025年の荷動き成長については堅調としつつも、2026年以降の供給過剰リスクを警告しています。

現在、新造船の発注残は1,000万TEUを超えています。

もし紅海情勢が沈静化し、船がスエズ運河ルートに戻れば、一気に船腹が余り、運賃市況が崩れる可能性があります。

さらに2026年には米国の中間選挙も控えており、物価対策や補助金政策の行方次第で荷動きの方向性が変わる可能性もあります。

経営層と物流担当者が見るべき視点

2025年の好調な荷動きは、決して安心材料だけではありません。

地政学リスクの解消が需給バランスを一変させる可能性を常に意識する必要があります。

短期の好調に目を奪われるのではなく、中長期で物流網と在庫戦略を見直す視点が求められています。

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