物流統括責任者(CLO)義務化まで1年 特定荷主4割が選任意識なしという現実

物流統括責任者(CLO)義務化まで1年 特定荷主4割が選任意識なしという現実 | 物流ニュース・物流ラジオ

本日は、特定荷主におけるCLO(物流統括責任者)の選任状況と、いよいよ目前に迫った法的義務化について整理していきます。

結論から申し上げると、制度の理解と対応が極めて遅れている企業が想像以上に多いという状況です。

この記事を書いた人
HPS CONNECT

特定荷主の4割超が選任予定なしという衝撃

2024年5月に成立した改正物流効率化法により、一定規模以上の貨物を扱う特定荷主には、2026年4月1日からCLOの選任が義務付けられます。

ところが、2025年12月18日に船井総研ロジが公表した最新調査では、深刻な実態が明らかになりました。

  • CLOが任命されることはないと回答した企業が42%
  • すでに任命済みと回答した企業は15%
  • 今後任命される可能性があるとした企業は28%

施行まで残り1年余りというタイミングにもかかわらず、約4割の企業が選任の意識すら持っていないという結果です。

これは物流が依然として経営課題として認識されていない企業が多いことを示しています。

CLOとは何か 物流部長との決定的な違い

ここで改めて、CLOとは何かを整理しておきましょう。

CLOはChief Logistics Officerの略称です。

従来の物流部長との最大の違いは、経営判断への関与度と他部門への強制力にあります。

  • 従来の物流部長は現場改善やコスト削減が主業務であり、営業や製造の要望を受け入れる立場になりがちでした。
  • CLOは役員級として経営に参画し、物流効率を損なう施策に対して是正を求めたり、大規模な投資判断を行う権限を持ちます。

国がCLO設置を義務化した背景には、現場任せでは解決できない物流課題を経営主導で解決させるという明確な狙いがあります。

特定荷主の定義と見逃せない罰則

国土交通省と経済産業省のガイドラインによると、特定荷主の基準は年間貨物取扱量が9万トン以上とされています。

この基準に該当する企業は、国内でおよそ3,000社から3,200社に上ると見込まれています。

重要なのは、この制度には明確な法的強制力がある点です。

  • CLOを選任しなかった場合は最大100万円の罰金
  • 選任の届け出を怠った場合は20万円以下の過料

さらに企業が最も警戒すべきなのが、社名公表というレピュテーションリスクです。

法令違反として勧告を受け、社名が公表されれば、投資家や取引先からの信頼に深刻な影響を及ぼします。

国がCLOに求める二つの数値目標

CLOの役割は名義上の配置ではありません。

国は、以下の具体的な数値目標の達成を求めています。

  • 荷待ちおよび荷役時間を1運行あたり1時間以内に短縮すること
  • 積載率を50%以上に引き上げ、輸送能力を約16%向上させること

CLOは、これらを達成するための中長期計画を策定し、毎年国へ報告する義務を負います。

これはドライバー不足が深刻化する中で、日本の物流を止めないための待ったなしの施策です。

飯野の視点 CLO設置は守りではなく攻めの経営

今回の調査では、義務の対象外である非特定荷主の中でも、5%がCLO任命を検討しているという前向きな動きが見られました。

物流を単なるコストとして外部に委ねる時代は終わりつつあります。

これからは物流を戦略的に管理できる企業だけが、安定的に商品を届け続けることができます。

物流を制する者が市場を制するという時代に入ったと言えるでしょう。

「任命されることはない」と回答した42%の企業には、この制度が罰金の問題ではなく、経営インフラの再構築であることを改めて認識していただきたいところです。

動画視聴はこちらから

関連記事