【2026年海運市況】船会社、100億ドルの赤字転落か 需給バランス崩壊のシナリオを解説

【2026年海運市況】船会社、100億ドルの赤字転落か 需給バランス崩壊のシナリオを解説 | 物流ニュース・物流ラジオ

本日は、2026年にコンテナ船社が直面すると予測されている巨額赤字シナリオと、その背景にある需給バランスの崩れについて解説します。

新年早々、海運業界にとってはややショッキングな見通しが出てきました。

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Drewry予測 2026年に100億ドル規模の赤字

Journal of Commerceに掲載された記事およびDrewryの最新レポートによると、2026年のコンテナ海運業界は、全体で約100億ドル、日本円にして1兆円を大きく超える規模の赤字に転落する可能性があるとされています。

これまでの5年間、コンテナ船社は歴史的な高収益を享受してきました。

しかし、その好調局面は2026年で終わりを迎える可能性が高いと見られています。

早ければ2026年第1四半期、つまり1月から3月の間にも、赤字に転落する船社が出てくると予測されています。

最大の原因は深刻な需給バランスの崩れ

なぜ、ここまで急激に市況が悪化すると見られているのでしょうか。

最大の要因は需給の深刻な不均衡です。

簡単に言えば、荷物の量に対して船のスペースが余りすぎている状態です。

この構造は、2025年の動きを振り返るとよく見えてきます。

2025年は「異常な条件」が利益を支えていた

実は2025年も、第4四半期には荷動きの減速が見られていました。

それにもかかわらず、船社各社は年間で約200億ドル規模の利益を確保するペースを維持していました。

その背景にあったのが、皮肉にも地政学的な混乱です。

一つは、トランプ政権による関税強化への警戒感です。

米中摩擦の再燃を懸念した米国の輸入業者は、在庫のフロントローディング、つまり前倒し出荷を進めました。

本来は後半に動くはずだった需要が、前半に集中した形です。

もう一つは、長期化する紅海情勢です。

喜望峰経由の迂回ルートが常態化したことで航海日数が延び、結果として余剰船腹が吸収されていました。

2025年の夏物商戦向け貨物は、例年より約1か月も早く動いていたとされています。

2025年の利益は「実需の強さ」ではなく「異常要因」によって支えられていました。

世界全体では増えても北米が冷える

ここで、別のデータも見てみましょう。

BIMCOの予測では、2026年の世界のコンテナ取扱量は2.5%から3.5%増加すると見られています。

一方、世界の船隊能力は約2.2%増にとどまる見通しです。

一見すると、需給はそれほど悪くないようにも見えます。

しかし、問題は北米航路です。

Moody’sの分析によると、米国の小売業者は依然として消費者心理の不透明感や関税政策の変動を警戒し、在庫を極力抑えています。

その結果、2026年の北米向けコンテナ取扱量は、2025年比で横ばい、もしくは最大で2%減少する可能性があるとされています。

最も収益性の高い航路が冷え込むことで、業界全体の収益構造が大きく崩れる構図です。

スエズ回帰がもたらす本当のリスク

もう一つの重要な転換点は、紅海情勢の行方です。

仮にイスラエルとハマスの停戦が成立し、船社がスエズ運河ルートに戻った場合、短期的には欧州港湾で船の集中、いわゆるVessel Bunchingが発生し、運賃が一時的に上昇する可能性があります。

しかし、それが解消された後には、喜望峰ルートで吸収されていた余剰船腹が一気に市場に戻ります。

結果として、強烈な供給過多となり、運賃市況には大きな下押し圧力がかかることになります。

2026年は船社にとって厳しい年に

総合すると、2026年は在庫調整による需要の弱含みと、供給過剰の顕在化が同時に進む年になる可能性が高いと言えます。

荷主にとっては運賃交渉で有利な局面となりますが、船社のサービス改編や抜港、減便といったリスクにも注意が必要です。

「安い運賃」だけでなく、ネットワークの安定性を見極める視点が、これまで以上に重要になるでしょう。

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