投稿日:2026.01.20 最終更新日:2026.01.20
マースク、スエズ運河へ本格復帰。中東情勢と「品質回復」の賭け
本日はマースクがスエズ運河へ本格復帰する決断と、その裏側にある地政学リスクについて整理します。
紅海危機以降、主要船社が公式にサービス復帰を宣言するのは今回が初めてであり、物流正常化の試金石とも言える動きです。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
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マースクが発表したスエズ本格復帰の概要
大手海運会社のマースクは、中東とインドから米国東岸を結ぶ自社単独サービスMECLについて、従来の喜望峰経由からスエズ運河経由へ戻すと発表しました。
これは単なる航路変更ではなく、紅海情勢悪化以降、主要船社が本格的な復帰を公式に打ち出した初の事例です。
具体的には、西行きは1月15日にジュベルアリを出港したコーネリア・マースク、東行きは1月10日にノースチャールストンを出港したマースク・デトロイトがスエズ経由で運航を計画しています。
紅海危機後の象徴的な一歩として業界内で大きな注目を集めています。
復帰の理由は「サービス品質」と「効率回復」
マースクがこの決断に踏み切った理由は大きく二つあります。
一つ目はサービス品質の回復です。
喜望峰経由では輸送日数が大幅に延び、スケジュールの不安定化が避けられませんでした。
スエズに戻すことでリードタイムを短縮し、顧客にとって最も効率的な輸送品質を提供する狙いがあります。
二つ目は運航効率とコスト削減です。
遠回りをやめることで燃料消費が減り、船の回転率も改善します。
マースクは昨年12月と今年1月に試験通航を行っており、一定の安全確認が取れたと判断したとみられます。
別ソースが示す地政学リスクと懸念
ただし、今回の決断は決して安全が完全に回復したことを意味しません。
現在、イラン国内では反政府抗議活動への強硬弾圧が続き、情勢は極めて不安定です。
米国や欧州諸国はイランへの圧力を強めており、軍事的緊張が再燃する可能性も否定できません。
ここで懸念されるのが、イランを後ろ盾とするフーシ派による紅海での商船攻撃再開です。
- 政治的報復としての攻撃再燃リスク
- 戦争危険保険料の再上昇
- 荷主側の安全懸念の根強さ
世界荷主団体は、今回のスエズ回帰について「時期尚早」とする慎重な見解も示しています。
今後の市況と物流への影響
短期的には、マースクに追随する船社と様子見を続ける船社で二極化が進むと見られます。
スエズ復帰が進めば供給スペースが増え、海上運賃には下押し圧力がかかります。
一方で、紅海航行に伴う保険料は高止まりする可能性が高く、総物流コストが本当に下がるかは不透明です。
スエズ復帰は正常化への一歩ですが、依然として薄氷の上を歩く判断と言えます。
まとめ
今回のマースクの動きは物流正常化への象徴的な第一歩です。
しかし、地政学リスクは依然として高く、荷主は常に喜望峰へ戻るシナリオを想定したリードタイム管理が求められます。
中東とイラン情勢は、今後も物流リスクそのものとして注視が必要です。
