投稿日:2026.01.21 最終更新日:2026.01.21
【2026年海運市況】エジプト・ソフナ港新ターミナル稼働と、スエズ運河回帰の現実
本日は、エジプト・ソフナ港の新コンテナターミナル稼働と、そこから見えてくる海運各社のスエズ運河回帰トレンドについて解説していきます。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
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ソフナ港に誕生した新ハブターミナル
2026年1月15日、エジプトのソフナ港で同国初となる半自動化コンテナターミナル「RSCT(Red Sea Container Terminals)」が稼働を開始しました。
ソフナ港はスエズ運河南側、紅海の入り口に位置する地政学・物流の要衝です。
運営はハチソン・ポーツ、CMAターミナルズ、COSCOシッピング・ポーツのコンソーシアムで、30年間のコンセッション契約を締結しています。
ハチソン・ポーツ単独でもエジプトへの投資額は約18億ドル規模とされています。
ターミナルの処理能力と戦略的価値
RSCTは水深18メートルを確保し、世界最大級のコンテナ船にも対応します。
第1フェーズで年間170万TEU、将来的には350万TEUまで拡張される計画です。
重要なのは、このターミナルが港単体ではなく、鉄道・高速道路と一体で設計されている点です。
スエズ運河回帰の兆候が数字に表れる
2023年後半からの紅海危機により、多くの船社は喜望峰ルートへ迂回していました。
しかしDrewryによると、2026年1月11日までの1週間でスエズ運河通過のコンテナ船は26隻と、直近5週間で最多を記録しています。
- Maerskが一部定期航路をスエズ経由へ復帰
- CMA CGMも段階的に回帰
- Gemini Cooperation(Maersk×Hapag-Lloyd)も採用検討
エジプト国家戦略「SCZone」とランドブリッジ構想
背景にあるのが、エジプト政府主導のスエズ運河経済特区(SCZone)構想です。
ソフナ港は内陸工業地帯と高速道路・鉄道で直結され、さらに紅海と地中海を結ぶ高速電気鉄道が建設中です。
これは実質的に「陸上のスエズ運河」として機能する可能性があります。
なぜ今、船社はスエズに戻り始めたのか
理由は安全面だけではありません。
喜望峰迂回による燃料費増加、ETSなどの環境コストが船社の経営を圧迫しています。
その中で、複線的な代替ルートを持てる安心感が、スエズ回帰を後押ししていると考えられます。
今後の市況への影響
短期的には、スエズ利用船は段階的に増える可能性があります。
その結果、アジア―欧州間のリードタイム短縮と実質キャパシティ増が発生します。
これは海上運賃に対して下押し圧力となる可能性があります。
一方で中東情勢は不透明なため、船社はスエズと喜望峰を切り替えるハイブリッド運用を継続するでしょう。
まとめ
今回のポイントは、「スエズが安全になったか」ではなく「選択肢が増えた」という点です。
ソフナ港を核にした新たな物流網が、今後のサプライチェーン設計に影響を与えていく可能性があります。
