投稿日:2026.02.03 最終更新日:2026.02.03
【決算解説】商船三井、通期経常利益1800億円へ上方修正。自動車・エネルギーが牽引する多角化経営の強さ
本日は、2月2日の海事新聞に掲載された「商船三井、通期経常1800億円に上方修正」というニュースをもとに、同社の最新決算と、その背景にある事業構造の変化について整理していきます。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
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ニュースの概要
まず、今回発表された数字の要点から確認します。
商船三井は1月30日、2026年3月期の連結経常利益予想を、前回予想から280億円上積みし1800億円に修正すると発表しました。
前期(2025年3月期)との比較では57%の減益となりますが、それでも直近予想を明確に上回る着地見通しとなっています。
売上高は1兆8300億円、純利益は2000億円を見込んでいます。
前提条件としては、為替レートを1ドル=150円とし、紅海情勢の不安定化による喜望峰経由の迂回運航は年度末まで継続する想定です。
なぜ上方修正できたのか
では、なぜ今回これだけ大きな上方修正が可能だったのでしょうか。
結論から言うと、自動車船とエネルギー・海洋事業の好調が、コンテナ事業の不透明感を補ったという構図です。
要因は大きく三つあります。
- ① 自動車船事業のコスト抑制と堅調な荷動き
- ② エネルギー・海洋事業の高収益構造
- ③ ドライバルク市況の回復
自動車船:政策延期が利益を押し上げ
まず注目すべきは自動車船事業です。
当初、米国の通商政策変更、特に関税強化などの保護主義的な動きにより、輸送ルートの再構築やコスト増加が懸念されていました。
しかし、政策実施が延期されたことで、従来の効率的な輸送パターンを維持することが可能となりました。
その結果、想定していた運航コストが発生せず、利益を押し上げる形となっています。
荷動き自体も堅調で、通期の輸送台数は289万台を見込んでいます。
エネルギー・海洋:安定収益の柱に成長
二つ目の要因が、エネルギー・オフショア分野です。
原油タンカー市況の改善に加え、特に大きく寄与しているのが海洋事業です。
三井海洋開発(MODEC)が手掛けるFPSO(浮体式石油生産・貯蔵・積み出し設備)は高い稼働率を維持しており、安定的に利益を生み出しています。
海運市況の変動に左右されにくいインフラ型ビジネスが、同社の収益構造を下支えしている点は重要です。
ドライバルク:市況回復が追い風
三つ目はドライバルク事業です。
大型船であるケープサイズ市況が堅調だったことに加え、子会社ギアバルクにおいて、ブラジルから北米向けのパルプ輸送が回復しました。
これが、全体の利益改善に寄与しています。
コンテナ専業との対比
ここで、別のニュースと比較してみましょう。
同時期の報道では、ONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)が2025年10〜12月期に税引き後利益で赤字に転落したことが伝えられています。
商船三井の決算資料でも、コンテナ船事業の経常利益予想は250億円で据え置きとなっており、新造船供給過多による運賃下落圧力が依然として強いことが読み取れます。
コンテナ一本足の事業構造は、いま明確なリスクになりつつある
一方で、商船三井は自動車、エネルギー、海洋、不動産と収益源を分散させたコングロマリット型経営を築いてきました。
今回の上方修正は、その戦略が機能していることを示す結果と言えるでしょう。
今後の展望と注意点
今回の利益押し上げ要因の一つである米国通商政策の延期は、あくまで延期であり、撤回ではありません。
2026年度以降、政策が実行に移されれば、自動車輸送におけるトレードパターン変更によるコスト増が現実化する可能性があります。
一方で、足元では円安基調と紅海迂回による船腹需給の引き締まりが下支えとなり、急激な悪化は想定しにくい状況です。
物流実務者としては、北米向けの関税リスクや荷動きの変化を継続的に注視していく必要があるでしょう。
