投稿日:2026.02.06 最終更新日:2026.02.06
日本郵船、通期経常1,950億円へ上方修正。自動車船が支える一方、物流事業は減速
本日は、2月5日付の海事新聞に掲載された「日本郵船、通期経常1,950億円。上方修正、自動車堅調・入港料延期」および「郵船・物流事業、通期経常予想を下方修正」という2本の記事をもとに、日本郵船の2026年3月期の最新業績見通しと、そこから見えてくる海運・物流市況の現状について解説します。
大手海運3社の決算が出揃う中で、今回は特に自動車船事業と物流事業の明暗に焦点を当てて見ていきます。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
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日本郵船の業績修正の概要
日本郵船は2月4日、2026年3月期の連結業績予想を修正し、経常利益を前回11月予想から50億円引き上げ、1,950億円とする上方修正を発表しました。
前期比では約60%の減益となりますが、直近予想からは上振れした形です。
一方、当期純利益は2,100億円で据え置きとなりました。
これは、船舶売却益の計上時期を後ろ倒ししたことなどにより、特別利益の見通しを見直したためです。
追い風となった自動車船事業
今回の上方修正の最大の要因は、自動車船事業の好調です。
PCTC(自動車専用船)部門の通期経常利益予想は、前回から100億円引き上げられ、980億円となりました。
要因は大きく二つあります。
- 自動車輸送需要が堅調に推移したこと
- 米国で予定されていた追加入港料の徴収が延期されたこと
輸送台数は前回予想から4万台増え、通期で444万台を見込んでいます。
特に注目すべきは、米国の追加入港料問題です。
USTR(米通商代表部)は、米国建造以外の自動車船に対して追加の入港料を課す方針を示していましたが、その開始時期が1年延期、あるいは徴収期間が短縮されました。
これにより、日本郵船が想定していたコスト負担が軽減され、利益を押し上げる結果となりました。
向かい風を受けた物流事業
一方で、物流事業は厳しい状況が続いています。
こちらは40億円の下方修正となり、通期の経常利益予想は80億円に引き下げられました。
郵船ロジスティクスを中心とする物流事業では、2025年10〜12月期にかけて、海上貨物運賃が想定以上に軟化したことが直撃しました。
さらに、米国の関税政策の影響により、消費財を中心とした荷動きが鈍化し、主要顧客の取扱量が減少したことも収益を圧迫しています。
他社比較で見える市況の実態
今回の発表により、日本の大手海運3社の業績見通しが出揃いました。
商船三井も先日、経常利益を280億円上方修正しています。
全体を俯瞰すると、円安効果と実需のばらつきが鮮明です。
下期の為替前提は1ドル147円から154.1円へと大きく円安に振れており、ドル建て収入の多い海運各社にとっては追い風となっています。
しかし為替効果を除いて見ると、自動車船は強く、フォワーディングを含む物流事業は弱いという構図がはっきりしています。
自動車船:需給タイト継続 物流事業:運賃下落と荷動き減速
地政学リスクと今後の注目点
地政学リスクについても確認しておきましょう。
日本郵船は、スエズ運河の航行について「年度末までは再開しない」という前提を維持しています。
紅海情勢は依然として不透明で、喜望峰回りの長距離航路が続く見通しです。
これは船腹需給を引き締め、運賃の下支え要因にはなっていますが、物流事業の収益を押し上げるほどの市況回復には至っていません。
今後の最大の変数は、やはり米国の通商・関税政策です。
自動車船は入港料延期で助かりましたが、物流事業は関税の影響を直接受けています。
2026年度に向けて、米国の政策動向が海運・物流全体にどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視が必要でしょう。
