投稿日:2026.02.17 最終更新日:2026.02.17
トランプ政権が海事再生へ。外国建造船課税で輸送コストはどう変わる
本日は、2026年2月13日付のJOCの記事をもとに、トランプ政権が発表した「アメリカ海事行動計画」と、それがグローバルサプライチェーンに与える影響について整理します。
今回の計画は単なる造船支援策ではなく、米国向け輸送コストの前提を根本から揺さぶる可能性を持つ政策であり、国際物流に携わる企業にとって見過ごせない動きとなっています。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
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外国建造船への普遍的インフラ手数料
今回発表されたアメリカ海事行動計画の中心にあるのは、米国の港に入港するすべての外国建造商船に対し、積載貨物の重量に応じた「インフラ・安全保障手数料」を課すという構想です。
具体的な料率はまだ提案段階にありますが、キログラム当たり1セントであれば10年間で約660億ドル、25セントであれば1.5兆ドル規模に達する可能性があると試算されており、そのインパクトは極めて大きいものとなります。
徴収された資金は新設される海事安全保障信託基金に組み込まれ、米国国内の造船能力の再建や米国船籍商船隊の拡充に充てられる計画です。
海だけでなく陸路にも広がる構想
この政策は海上輸送だけにとどまらず、メキシコやカナダなど陸上国境を経由する輸入品にも商品価値の0.125%を課す「陸上港湾維持税」の導入を含んでおり、既存の港湾維持税を陸上輸送に拡張する内容となっています。
つまり海と陸の双方から米国市場へのアクセスコストを引き上げ、その財源を国内産業振興に回すという構造です。
背景にある造船能力の低下と安全保障懸念
現在米国で400フィート以上の大型船を建造できる造船所はわずか8か所に限られており、長年にわたり日本や韓国、中国といったアジア勢とのコスト競争に押されて商船建造能力が大きく低下してきました。
トランプ政権はこの状況を国家安全保障上の戦略的弱点と位置付け、有事の際に自国で商船を確保できないリスクを是正する必要があると主張しています。
輸送コスト上昇と市場への波及
仮にこの重量ベースの課税が実行されれば、船会社は増加分をサーチャージとして荷主に転嫁せざるを得ず、最終的には輸入品価格に反映される可能性が高まります。
特に低単価で重量のある貨物は影響を受けやすく、建材や原材料、農産物などはコスト増の直撃を受けることが想定されます。
- 建材
- 原材料
- 農産物
その結果、米国内のインフレ圧力が再び強まる懸念も否定できません。
この政策は事実上の関税障壁と受け止められる可能性があり、WTOルールとの整合性や各国の報復措置も今後の論点となります。
議会承認と今後の不確実性
本計画の実行には議会の承認が必要であり、小売業界や製造業界からの強い反発も予想されるため、最終的な料率や適用範囲が修正される可能性も残されています。
とはいえ、米国向け輸送コスト構造が変化するリスクは現実味を帯びており、重量物を輸出している企業にとっては調達戦略や価格戦略を再点検する局面に入ったと言えるでしょう。
