投稿日:2026.02.18 最終更新日:2026.02.19
ハパックロイドがZIM買収へ。業界再編と黄金株の壁
本日は2月18日の海事新聞をもとに、ハパックロイドによるZIM買収合意の概要とそのスキーム、さらに業界再編への影響について整理します。
今回の案件は単なるM&Aではなく、世界コンテナ業界の勢力図を動かす再編劇であり、政治と安全保障が絡む極めて戦略的な取引です。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
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42億ドルの強気な買収価格
ドイツの海運大手ハパックロイドはイスラエルのZIMを総額約42億ドルで買収することで合意し、1株当たり35ドルの現金で全株式を取得する計画を示しました。
この価格は直近株価に対して約58%、買収観測前の水準に対しては約126%ものプレミアムを乗せた水準であり、市場から見てもかなり強気な評価と言えます。
買収後のハパックロイドは約400隻規模の船隊と300万TEU超の船腹量を抱える巨大プレイヤーとなります。
業界ランキングへの影響
現在ハパックロイドは世界5位、日本のONEは6位に位置していますが、今回の統合によって両社の差は大きく広がる見通しです。
アルファライナーのデータによれば、統合後の規模は世界4位のCOSCOに迫る水準となり、ハパックロイドは5位の座をより強固なものにします。
- 船隊規模約400隻
- 船腹量300万TEU超
- 上位集中がさらに進行
コンテナ業界はすでに上位10社で世界船腹量の約85%を占めており、今回の統合はその寡占化傾向を一段と強める動きです。
黄金株という政治的ハードル
ZIMにはイスラエル政府が保有する「黄金株」という特別な権利が存在し、これが外国企業による完全買収の障壁となってきました。
今回ハパックロイドは、事業分割というスキームを用いることでこの問題を乗り越えています。
具体的にはイスラエルの投資ファンドFIMIが新会社を設立し、国家戦略上重要とされる16隻と黄金株、そしてZIMブランドを引き継ぎます。
一方で、残りの商業的機能や大部分の船隊をハパックロイドが吸収する形となり、安全保障と経済合理性の両立を図る構造になっています。
国家安全保障を守りながら輸送力を獲得するというウルトラC的な解決策です。
今後の業界への波及
今回の統合により、荷主企業にとっては選択肢が一つ減ることを意味し、運賃交渉における船会社側のバーゲニングパワーが強まる可能性があります。
またハパックロイドはマースクと新たな協力体制を敷いており、そこにZIMのLNG燃料船やデジタル技術が加わることでサービス品質と効率性が向上する可能性もあります。
一方で規制当局の承認やイスラエル国内の政治的反発といった不確実性も残っており、発表価格と市場株価には乖離が見られます。
再編はさらに加速するか
90年代半ばには20社以上が主要航路で競っていましたが、現在は実質10社程度に集約されています。
今回の買収はその流れをさらに押し進めるものであり、ONEを含む他社の戦略にも影響を与える可能性があります。
コンテナ業界の再編は次の段階に入ったと言えるでしょう。
