投稿日:2026.02.19 最終更新日:2026.02.19
AI開発の加速で変わる物流戦略 ― 荷主は「待つ」が正解か?
本日は、2026年2月12日のJournal of Commerceの「AI開発の急速なペースは、荷主に『忍耐』を促している」という記事をもとに、急速に進むAI開発と、荷主企業が取るべき「あえて待つ」という戦略についてお話をしていきます。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
動画視聴はこちらから
荷主は「待つ」べきか?
さて、先日ラスベガスで開催されたサプライチェーン・テクノロジーのカンファレンス「Manifest(マニフェスト)」でも、話題の中心はやはり「AI」でした。
世界中がAIの真価を見極めようとしている今、荷主企業や物流サービスプロバイダー(いわゆるLSP)は、「今すぐAIにフルコミットすべきか」、それとも「少し様子を見るべきか」という決断を迫られています。
今回のJOCの記事では、非常に興味深い提言がなされています。
それは、「荷主は、最先端のAI導入に関しては、少し我慢強く待つべきではないか」というものです。
理由1:開発サイクルの圧倒的な短縮
なぜ、「待つ」ことが推奨されているのか。
これには大きく分けて3つの理由があります。
まず1つ目は、「開発サイクルの圧倒的な短縮」です。
OpenAIやAnthropicといった企業の開発競争により、コーディングやソフトウェア開発のスピードが劇的に上がっています。
かつては「先行者利益」を得るために早く導入することが正義でしたが、今は状況が違います。
今の最先端技術も、数ヶ月後には「古い技術」になってしまう。
つまり、今、巨額の投資をしてシステムを組んでも、半年後にはより安価で高性能なものが登場し、後発組にあっさり追い抜かれてしまう「リープフロッグ(蛙飛び)現象」が起きやすい環境なんです。
ポイント
・AI技術の進化は数ヶ月単位
・高額投資の回収前に陳腐化リスク
・後発組が有利になる可能性
理由2:荷主と物流企業の役割の違い
2つ目は、「荷主と物流会社の役割の違い」です。
物流会社にとって、AI投資は待ったなしの課題です。
なぜなら、彼らの至上命題は「業務効率化によるコスト削減」と「荷主へのサービス向上」だからです。
利益率の改善に直結するため、リスクを取ってでも投資をする明確な動機があります。
一方で荷主企業には、物流以外にも商品開発やマーケティングなど、投資すべき優先順位が山程あります。
物流管理のAI化だけが全てではありません。
理由3:戦略的な「待ち」の姿勢
そして3つ目、ここが重要なんですが、「情報のアンテナは高く、財布の紐は固く」というスタンスです。
記事内でも指摘されていますが、技術の陳腐化が早い今、ユーザー側である荷主が無理に最先端の「出血を伴う導入(Bleeding edge)」をする必要はありません。
むしろ、そのリスクは物流会社に負ってもらい、荷主は物流会社が実装したAIサービスの恩恵を受ける形、つまり「アウトソーシング」という選択の方が、現時点では賢い選択だと言えます。
- 最先端導入はリスクが高い
- 実装リスクはLSP側が負う
- 荷主は成果を享受する立場に
今後の展望と対策
では、これを受けて今後業界はどうなっていくのか、私なりの推測をお話しします。
まず、「AIエージェントの実装」が物流会社の差別化要因になるでしょう。
単なるチャットボットではなく、複雑な貿易実務や手配を自律的に行うAIエージェントを使いこなせるフォワーダーや物流会社が生き残ります。
そして荷主側は、自社でシステムを構築するのではなく、「AI武装した優秀なパートナーを選ぶ」という選定眼がより重要になります。
「どのシステムを入れるか」ではなく、「どのフォワーダーを使えば、最新のAI恩恵を受けられるか」という視点にシフトしていくはずです。
もちろん、荷主も完全に無視していいわけではありません。
記事にもあるように、プロアクティブに情報は収集し、小規模なテスト導入は続けるべきです。
しかし、大規模な基幹システムの刷新などをAIベースで行うには、今はまだ技術の足場が動きすぎている、というのが現状のようです。
賢い荷主は、物流会社にその「実験」と「実装」の重荷を背負わせつつ、良いとこ取りをする。
そんなドライな戦略が、2026年のトレンドになるのではないでしょうか。
まとめ
・AIは急速進化中
・荷主は焦らず戦略的に待つ
・AI実装済みLSPの選定が鍵
