投稿日:2026.03.04 最終更新日:2026.03.11
ホルムズ海峡封鎖で200万TEUの貨物が立ち往生、中東紛争が世界物流に与える深刻な影響
米国・イスラエル対イランの紛争が激化する中、世界の物流業界が深刻な危機に直面している。ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、約200万TEU相当の貨物が立ち往生し、グローバルサプライチェーンに甚大な影響を与えているのが現状だ。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
ホルムズ海峡封鎖により200万TEUの貨物が影響を受ける
今年のS&P Global TPMイベントの最終セッションで発表された数字によると、現在200万TEU相当の貨物がホルムズ海峡の封鎖により影響を受けている。この規模は世界の海上コンテナ輸送量の約8%に相当し、物流業界にとって極めて深刻な状況といえる。

米国・イスラエル対イランの紛争が5日目に突入し、世界の石油輸送の約20%が通過するホルムズ海峡が事実上封鎖される事態となった。今回はコンテナ船を含む商船全般が通航困難な状況に陥っており、従来の中東・アジア・欧州を結ぶ主要航路が機能停止状態となっている。
この封鎖により、船会社は大幅な航路変更を余儀なくされ、主な選択肢はアフリカ南端の喜望峰回りルートへの迂回となっている。輸送日数は2-3週間延長され、運賃は50-100%の上昇が見込まれる状況だ。
200万TEUが示すグローバルサプライチェーンへの深刻な打撃
200万TEUという数字の深刻さを具体的に捉えると、これは主要港であるシンガポール港の月間取扱量に匹敵する規模である。立ち往生している貨物には以下のような多岐にわたる商品が含まれており、影響の広がりが懸念される。
影響を受ける主要貨物
– 電子部品・半導体関連
– 自動車部品
– 繊維製品
– 化学品
– エネルギー関連製品
これらの貨物の遅延は、製造業のサプライチェーンを直撃し、生産計画の大幅な見直しを迫ることになる。特にJust-in-Time方式で運営されている自動車産業や電子機器産業への影響は深刻で、工場の稼働停止も現実味を帯びてきている。
過去の海運危機との比較で見える今回の深刻度
今回の事態は、2021年のスエズ運河座礁事故や紅海での継続的な海賊問題とは規模と性質が大きく異なる。
主要な海運危機の比較
– スエズ運河座礁事故(2021年): 6日間の封鎖で約400億ドル相当の貨物が影響
– 紅海海賊問題: 限定的な航路での散発的な被害
– 今回のホルムズ海峡封鎖: より長期化する可能性が高く、経済的損失は大幅に上回ると予想

主要海運会社の対応を見ると、状況の深刻さが浮き彫りになる。マースク、MSC、COSCOなどの大手船会社は既に中東航路の運航停止を発表しており、これらの企業の株価は軒並み下落している。
一方で、代替航路を持つアフリカ航路専門の船会社や、内陸輸送を手がけるロジスティクス企業の株価は上昇傾向を示しており、市場は既に新しい物流体制への移行を織り込み始めている。
想定される3つのシナリオと長期的影響
今後の展望として、以下の3つのシナリオが考えられる。
短期的影響:運賃の大幅上昇
喜望峰回りルートの需要急増により、アジア-欧州航路の運賃は現在の2倍以上に達する可能性がある。この運賃上昇は最終的に消費者価格に転嫁され、世界的なインフレ圧力の要因となることが予想される。

中長期的影響:サプライチェーンの構造変化
企業は中東経由に依存した調達・物流戦略の根本的な見直しを迫られることになる。この危機を契機に、より地域分散型のサプライチェーン構築へとシフトする動きが加速するだろう。
予想される構造変化
– 調達先の地域分散化
– 在庫戦略の見直し(安全在庫の増加)
– 代替輸送手段の確保
– リスク管理体制の強化
経済全体への波及効果
この事態が長期化すれば、世界経済全体でインフレ圧力が高まり、各国の金融政策にも影響を与える可能性が高い。特に輸入依存度の高い国々では、物価上昇と景気後退の同時進行というスタグフレーションのリスクも懸念される。

まとめ
ホルムズ海峡封鎖による200万TEUの貨物立ち往生は、単なる物流の混乱を超えて、グローバル経済の構造的な脆弱性を露呈している。短期的な運賃上昇やサプライチェーンの混乱は避けられないが、長期的には企業のリスク管理戦略や国際物流のあり方に根本的な変化をもたらすことになるだろう。
物流業界関係者は、この危機を一時的な困難として捉えるのではなく、より強靭で多様化されたサプライチェーン構築への転換点として活用することが求められている。
