ホルムズ海峡封鎖で海運はどうなる?中東戦争がコンテナ市場へ与える影響

ホルムズ海峡封鎖で海運はどうなる?中東戦争がコンテナ市場へ与える影響 | 物流ニュース・物流ラジオ

本日はジャーナルオブコーマスの『ペルシャ湾封鎖が海運に与える衝撃:パンデミック規模ではないが混乱必至』を参照して、中東戦争による海運業界への影響についてお話しします。

この記事を書いた人
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)

2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!

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中東戦争の現状と海運への直接的影響

中東で発生した戦争により、ペルシャ湾とホルムズ海峡が事実上封鎖される事態となっています。

海運アナリストのラース・イェンセン氏は、カリフォルニア州ロングビーチで開催されたカンファレンスで「これはコンテナ海運にとって問題だが、パンデミック規模の災害ではない」と述べました。

具体的な影響規模として、ホルムズ海峡に向かう予定だったコンテナ貨物のうち約200万TEUが影響を受けるとされています。

これは既に船舶に積載済み、または今後90日以内に湾岸向けに予約された貨物の総量です。

今回影響を受けるコンテナ貨物
約200万TEU(積載済みまたは90日以内の予約貨物)

スエズ運河復帰の見通しが大幅後退

2年前にイエメンのフーシ派武装勢力が紅海での船舶攻撃を開始して以来、アジア・欧州間、アジア・地中海間、アジア・米国東海岸航路のコンテナ船は、アフリカ南端回りの迂回を余儀なくされています。

昨年10月のイスラエル・ハマス間停戦により攻撃は一時停止し、一部の大手海運会社が小規模ながらスエズ運河の利用を再開していました。

しかし今回の中東戦争により、2026年後半にスエズ運河航路が復活するという業界の期待は完全に打ち砕かれました。

イェンセン氏は「今日戦争が終わったとしても、現実的に見て誰かがスエズ運河経由を検討し始めるまで最低6ヶ月はかかる」と述べています。

スエズ運河の現状
紅海攻撃 → 航路迂回継続
中東戦争 → 復帰見通しさらに後退
復帰判断まで最低6ヶ月

燃料サーチャージの急激な上昇

石油価格の上昇により、バンカー燃料価格も連動して値上がりしています。

これを受けて、海運各社は緊急燃料サーチャージを導入すると予想されています。

注目すべきは、これらのサーチャージが湾岸航路だけでなく全航路に適用される点です。

イェンセン氏は「海運会社は可能な限り多くの、そして高額なサーチャージを実施するだろう」と述べています。

また

  • 緊急燃料サーチャージ
  • 緊急紛争サーチャージ
  • 各種追加費用

など、様々な名目で請求が発生する可能性を警告しています。

アジア・太平洋航路への波及効果

直接的に中東と関係のないアジア・米国西海岸航路においても、間接的な影響が避けられません。

アジア地域での港湾混雑が発生し、これが太平洋航路にも波及するためです。

アジアの主要港湾では

  • 湾岸向け貨物の滞留
  • 航路変更による船舶スケジュール混乱
  • 港湾処理能力の低下

といった問題が発生し始めています。

供給需給バランスの変化と運賃への影響

アフリカ回りの迂回航路継続により、実質的な輸送能力が削減されます。

これにより需給バランスが引き締まり、海運会社の価格決定力が強化されます。

その結果

  • 海上運賃の上昇圧力
  • サーチャージ増加
  • 輸送コスト上昇

が発生する可能性があります。

日本への影響と対応策

日本の海運・物流業界にとって、この中東情勢は複数の側面で影響を与えます。

まず、中東からのエネルギー輸入ルートの安全確保が最優先課題となります。

日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、ホルムズ海峡封鎖は直接的な供給リスクとなります。

コンテナ輸送においては、日本・欧州間航路のコスト上昇が避けられません。

製造業の国際競争力に影響を与える可能性があります。

また燃料サーチャージの上昇により、輸出入コストが全般的に押し上げられることも予想されます。

今後6ヶ月の見通しと業界対応

短期的には

  • 石油価格上昇
  • バンカー燃料価格上昇
  • 各種サーチャージ導入

が続く可能性があります。

アジア地域の港湾混雑も当面続くと予想されます。

その結果

スケジュール遅延や追加コストが発生する見込みです。

中期的には戦争の推移によってスエズ運河復帰の時期が左右されます。

しかし現時点では最低6ヶ月の延期が確実視されています。

海運会社は当面アフリカ回りの迂回を前提とした運航体制を維持することになります。

荷主企業はサプライチェーンの再構築を検討する必要があります。

長期的には中東情勢の安定化が実現すれば段階的な正常化が期待されます。

ただし地政学リスクを考慮したサプライチェーンの多様化は、今後も続く可能性が高いと考えられます。

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