2020.08.05
3国間貿易の流れとメリットを解説!スイッチB/Lやインボイス, 原産地証明の記載内容とは?
3国間貿易と聞くと「何か難しそう。。」と思われる人もいるかもしれません。 慣れてしまえばそれ程 難しくありません。業界では通称「3国間」「仲介貿易」などと呼ばれていますが、主要な貿易形態のうちの1つです。 輸入者、輸出者にとっていくつかメリットがある方法なので、貿易に携わっていれば3国間貿易を取り扱うことがよくあります。 ただし、輸入者と輸出者が直接やり取りをするときよりも更にプロセスが必要で仲介する業者やフォワーダーは取扱いに注意しなければなりません。 今回は3国間貿易の全体像と特色を押さえて解説をしていきます。 3国間貿易について動画で解説しました 3国間貿易の流れ 3国間貿易は輸出者、輸入者の他に第3国の仲介業者が間に入って取引を行う貿易形態です。 以下の当事者が発生することになります。 ・輸出者(Shipper): A国 ・仲介業者(Buyer): B国 ・輸入者(Consignee): C国 ※A国、B国、C国は全て別の国となります。 国によって3国間に関する法律は異なりますが、日本では自由に取引できると定められています。その中でいくつか細かいルールや制限は定められています。 代表的なものとして、仕向国が外為法輸出管理令で一定の決まった国・地域の中では経済産業大臣の許可がいることが挙げられます。 契約と支払いについて 3国間貿易では「金額の取引」と「商品の輸送」は流れが少々異なります。 売買契約と支払いは「輸出者 - 仲介業者 - 輸入者」の間でそれぞれ行われています。 輸出者と輸入者の取引実績がなくても、共通して契約している仲介業者があれば貿易ができるということです。 代金の流れ 代金は輸入者から仲介業者に仲介業者のマージン込で支払われます。その後、仲介業者から輸出者へ代金が支払われるという仕組みです。 商品の流れ 商品の流れに関しては輸出者から依頼を受けた輸出国のフォワーダーから、輸入国のフォワーダーへと渡りアレンジを行っています。 基本的にインボイス・パッキングリストなどの船積書類及びB/Lは輸出者から入手しフォワーダー経由で輸入者へ送付されます。 3国間貿易の目的・メリットとは? 3国間貿易では、間に仲介者を挟むことによって輸入者・輸出者双方に生まれるメリットがあります。 まず3国間貿易の取引の特色から、以下のような経済面のメリットがあります。 輸出者・輸入者のメリット 輸出者のメリット ・輸入者との交渉の手間が省け製品販促のための費用が削減できる。 ・取引や販売実績のある仲介業者を間に挟むことで、取引実績の少ない輸入者からの代金回収リスクを防ぐ。 輸入者のメリット ・仲介業者に取りまとめをしてもらうことで、輸出者に販売価格を有利に交渉してもらえる。 ・製品の輸送は輸出国から輸入国へ直接となるので、輸送コスト削減となる。 ・製品が第3国を経由して輸送されないので、その分の消費税がかからない。 例えば、海外に現地法人があるけれども支払いのみ本社で行いたい場合があります。 外国の工場から仕入れたものを直接現地に送り、代金の支払いは本社が取り纏めて行うことが可能となります。 これは本社が法人税率の安い国にあれば、本社で売上を計上することによってトータル的に法人税を抑えられるメリットがあります。 または現地法人のキャッシュフローや代金回収リスクを軽減することが出来ます。 輸出者(仕入れ先)を隠すことができる 3国間貿易は他に、輸入者にとって輸出者=仕入先を分からないように隠すことができます。 代金に関しては、輸入者と仲介業者がやり取りをされ、輸出者から発行されたインボイス(=請求書)は通関用として扱われ現地送付厳禁となります。 スイッチインボイスの使用 そして3国間でConsigneeへのインボイス送付指示があるならば、スイッチインボイスを用いている場合が大半です。 輸出通関上は輸出国から輸入国へ直接製品が輸送されるため、製品の価格に加え輸出国→輸入国への輸送量、保険料などが込み(タームによる)の請求金額が記載されたインボイスを提示して申告することとなります。 通関用のインボイスが誤ってConsigneeの手に渡ってしまえば、仲介業者からの請求金額との差額で、仲介業者がどのくらいマージンを乗せているのか判明してしまうことになります。 これは仲介業者と輸入者との信頼問題に繋がるので、フォワーダーにとってもインボイスの取り扱いは特に注意が必要となるのです。 3国間貿易の例 ここから例を上げて説明をしていきます。日本の会社とアメリカ会社がタイ産のマンゴーの取引をすることになりました。アメリカの会社にはタイの輸出者は知らせないものとします。 この時に登場するインボイスとB/Lについてご説明します。 ①インボイス(輸出通関) ②スイッチインボイス(輸入通関) ③最初のB/L ④スイッチB/L スイッチインボイスの使用 【①輸出通関に使うインボイス】 ※輸入者に送ってはいけない ・Seller:輸出者 - タイ ・Buyer:輸入者 - アメリカ ・Notify:仲介業者(Bill To) - 日本 【②輸入通関用のインボイス(スイッチインボイス)】 ・Seller: 仲介業者 - 日本 ・Buyer: 輸入者 - アメリカ スイッチインボイスは輸出通関用とは別で作成され仲介業者と輸入者の商取引の請求書として使われ、輸入通関にも使われます。 スイッチB/Lの使用 またB/Lも仲介国でスイッチB/Lに切り替えることで、輸入者に輸出者(仕入れ先)を知られずに輸送することができます。 スイッチB/Lでは輸出者の社名に代わって、仲介業者の社名を記載するということが可能になるのです。 スイッチB/Lの流れ ではスイッチB/Lの仕組みをもう少し詳しく見ていきましょう。スイッチB/Lでは、仲介業者の第3国のフォワーダーがB/Lを発行し、Consignee送付用として切り替えを行います。 この場合仕向け地はそのまま輸出国→輸入国となり、製品の輸送もそのまま直で行われますが、B/L上の表記は異なります。 ③【最初のB/L】輸出者→仲介業者へ送付 Shipper:輸出者 - タイ Consignee:仲介業者 - 日本 ④【スイッチB/L】仲介業者→輸入者へ送付 Shipper:仲介業者 - 日本 Consignee:輸入者 - アメリカ 上記のように3国間貿易の中で2種類のB/Lが発行されることとなります。 ④輸入者へ渡るB/L(スイッチB/L)には、Shipperとして仲介業者が記載されることになるので、輸出者(仕入れ先)が判明することはありません。 3国間貿易での原産地証明書 EPA(経済連携協定)を結んでいる国同士の貿易であれば、輸出国で原産地証明書を取得し 輸入国で提示をすると関税が優遇されます。 3国間貿易の場合でも、輸出国と輸入国がEPAを結んでいれば間に業者が入っていても適用は可能となります。 [keni-linkcard url="http://forwarder-university.com/certificate-of-origin/?lang=ja" target="_blank"] その場合、輸出国の特定原産地証明書が必要となります。多くは、第3国発行のインボイス番号の記載が必要となっています。 第3国から仲介業者→輸入者へ送付されたインボイス(スイッチインボイス)の番号で、輸入される製品との一致を取るのです。 また、スイッチB/Lで輸出者(仕入れ先)を隠していても、原産国と輸出者(製造元)が原産地証明書で記載されることとなってしまうので、原産地証明書を申請する場合は輸出者への確認を事前に行うようにしましょう。 原産地証明書で輸出元が判明してしまうリスクを双方が認知していないと、トラブルを生むことになってしまいます。 まとめ 3国間貿易は主に経済的なメリットが強く活用されている機会が多いものですが、実務上書類の取り扱いに注意が必要です。 書類送付ミスで情報漏えいとなった場合、輸出者と仲介業者が 客先(輸入者)からの信用を失ってしまいかねません。 3国間貿易を進める場合は、各関係者と綿密なコミュニケーション、確認を取りながら進めていくようにしていきましょう。
