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貿易コラム

Dグループについて(改訂版) | インコタームズ

Dグループについて(改訂版)

この記事を動画で見る どうもこんにちは、飯野です。 今回は、インコタームズのDグループについて解説していきます。 Dの文字から始まる貿易の取引条件は、現在のインコタームズ2020において、DAP/DPU/DDPの3種類があります。 インコタームズとは まず始めに、インコタームズについて簡単に説明しておきましょう。 インコタームズは貿易取引において、売り手(輸出者)と買い手(輸入者)の間での「費用負担」と「リスク負担」の範囲を取り決めた貿易条件の事です。 DグループのDはDELIVERYの頭文字であり、輸出者の手配によって、輸入国内の配達までが含まれる条件です。 そのため輸入者は貨物を受け取るだけ、または輸入通関するだけなど、輸入者にとっては貿易手配の負担が少ない条件だということを理解しましょう。 DAPについて まずはDAPについて説明します。DAPはDelivered at Placeの略称で仕向地持込渡しと言います。 DAPでは輸出者が輸入先の指定場所にて、荷下ろしする前までの費用とリスクを負担します。 ここでのポイントは「荷下ろしの前まで」と言うところです。輸出側は荷下ろしをする義務はありませんし、荷下ろし中のリスクは輸入者に責任があります。 そして輸入通関の手配や、関税・消費税を含む税金は輸入側の負担となります。 DPUについて 次はDPUです。DPUはDelivered at Place Unloadedの略称で、荷下ろし込み持込渡しです。 DPUの貨物の費用負担とリスク負担は、輸出者が輸入先の指定場所にて「荷下ろしが完了するまで」となります。 輸入通関は買い手の負担になり、輸出側に輸入通関の手配をする義務はありません。DAPとDPUの違いは、荷下ろしの費用と責任のみになります。 DDPについて 最後にDDPです。DDPはDelivery Duty Paidの略称で仕向地持込渡し関税込みです。 DDPは配達が完了するまでの全ての費用とリスクを売り手である輸出者が全て負担する取引条件です。買い手である輸入者からしたら最も楽な取引条件と言えるでしょう。 DAPやDPUでは通関手配は輸入者の負担でしたが、DDPでは通関手配も税金も輸出者が負担することになります。 Dグループの注意点 では、これから実際にDグループを使用する時の注意点を説明していきます。 Dグループでは輸出者が輸入者の指定する届け先まで貨物を手配します。その場合は実際には輸出者がフォワーダーに依頼し、フォワーダーが輸入先までの細かな配送や通関などの手配をしていきます。 ここでのポイントはそのフォワーダーが輸入先の貨物を送る地域まで、物流手配や通関などを問題なく行えるのか?という事です。 フォワーダーがその輸送地域に、支店や代理店がないとDグループでの手配は難しいのです。 もしDDPの条件であれば、輸入時に掛かる関税をフォワーダーが一時的に立替えるケースもあるので、税金の金額によっても対応出来るかどうかは変わってきます。 輸入国での輸送手配や通関について、別の国にいる輸出者の方が得意なケースは稀なため、Dグループの取引はFOBやCIFに比べて少ないと言えるでしょう。 クーリエの使用 しかしクーリエでの輸送の場合は、Dグループの取引条件は一般的です。クーリエを頻繁に使用する場面は、サンプルや少量の貨物ですよね。 DHLなどのクーリエ業者が配達先まで届けてくれるので、費用を輸出者が負担することにすればDグループでの手配が簡単です。 DDUとDATについて これまでDAP/DPU/DDPを確認してきました。この3つの取引条件はインコタームズ2020に記載されているものです。そしてインコタームズは10年ごとに改定が行われます。 現在のインコタームズ2020では、既に廃止されているDグループ条件のDDUとDATは未だに実務で見かけますので、合わせて紹介させて頂きます。 DDUについて DDUはDelivery Duty Unpaid(仕向地持込渡、および輸入通関・関税抜き)です。 DDUはDDPと比較すると非常に分かりやすい条件です。DDPは関税・消費税も輸出者が負担しますが、DDUは関税・消費税のみを輸入者が負担する条件です。 DAPやDPUと違って、通関手配は共に輸出者が対応します。 DATについて DATはDelivery at Terminal(ターミナル持込渡し)です。 輸入ターミナルでの引き渡しとリスク責任転移が行われます。これは指定地での引き渡しのDAPに置き換わっています。 実際のDDU、DATの使用 インコタームズ2020ではICC(国際商業会議所)がDATの代わりにDAPを使いましょうと推奨していますが、あくまで推奨です。 貿易では売り手と買い手での明確な合意があれば、取引で問題などが生じたとしても、話し合いなどで解決することが出来ます。 なので、契約書やInvoiceにDDUやDATと記載して、売り手と買い手でそれに合意をしていたら基本的に問題はありません。 まとめ 今回はインコタームズのDグループについてご説明しました。 Dグループは輸入者にとって負担が少ない条件ですが、ご説明したようにフォワーダーによっては対応が難しい場合もあります。 もしDグループでの輸送を打診された場合には、お取引のあるフォワーダーに事前に相談しておくと良いでしょう。 もし今回の内容がお役に立てましたら、チャンネル登録やいいね!SNSでのシェアをお願いします! ではまた次の動画でお会いしましょう。ありがとうございました! ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

コンテナ船の遅延問題 2023年まで継続!物流DXのススメ!米国Inforの予測について解説。 | 物流ニュース・物流ラジオ

コンテナ船の遅延問題 2023年まで継続!物流DXのススメ!米国Inforの予測について解説。

どうもこんにちは、飯野です。 今日は海事新聞のニュースから、「インフォアが予測、コンテナ船の遅延問題 23年まで継続」についてお話していきたいと思います。 2022年1月13日イーノさんの物流ラジオ 米国Infor、コンテナ船遅延2023年までと予測 アメリカのクラウド、ソフトウェアの大手Inforから、クラウドやソフトウェア会社ならではの面白い予測と提案がありました。 Inforは今年2022年のサプライチェーンに関する予測やトレンドをまとめたリポートを発表し、港湾混雑やコンテナ船の遅延問題は2023年まで続くとしました。 以下、2つのポイントをあげています。 1. 荷主に対しては製品の出荷地からのファーストワンマイルへの技術投資と物流企業との関係重視を提案。 2. 海上・航空貨物輸送コストの上昇傾向の長期化を予測。 ファーストワンマイルを重視 一つの目のポイントですが、まず、ファーストワンマイルについて解説します。 ファーストワンマイルとは、小売業者からピックアップして、倉庫や物流センターへ商品を届ける部分の物流です。 B2Bの国際輸送であれば、企業の在庫管理、キャリアの輸送能力の把握、貨物の引き取り、倉庫までの配送などにあたります。 ここの部分は、まだまだ非効率で透明性に欠けています。 ファーストワンマイルについて調べてみたところ、DHLの情報がありました。 ラストワンマイルで成功したように、多くの企業がファーストワンマイルに注目し、効率化を図り、厳しい競争環境の中でコスト削減をしようとしています。 そのためには、紙文書への依存をなくすことに重点を置き、企業がプロセスの変更を容易に実行できるようにすることが重要であるとしています。 またDHLは、クラウドベースの輸送管理システムの成長で、企業は透明性と収益性を向上させながら、「ファーストワンマイル」から非効率とコスト削減できるようになった、と発表しています。 Inforのシニアディレクター兼ゼネラルマネージャーは、「船舶への積み込みと荷降ろし、港から陸上の倉庫や貨物の集積所への商品の移動は引き続き停滞するだろう」と予測しています。 北米・北欧州の主要港湾の混雑や遅延はグローバルなサプライチェーンネットワークの問題であり、以下に関して課題があるとしています。 ・港湾の労働力 ・トラック運転手の労働力 ・倉庫からの荷降ろしの労働力、 ・空コンテナとコンテナ用シャーシの利用 これらの課題に加え、「歴史上最も高い消費者需要」によるアジアからの出荷量増加が互いに作用し合っているとのことです。 よって、Inforはファーストワンマイルへの技術投資と物流企業との関係重視は、企業のサプライチェーンの回復力を高めるために必須であると言っています。 そもそも、ファーストマイルがダメになると、ラストマイルにも影響していきます。 DX化の必要性 Inforは、企業は輸送中の在庫をリアルタイムで把握し、貨物輸送能力、サプライヤーの仕掛かり品、財務の健全性などを総合的、多次元的に把握しなければならないとし、ITの必要性を説いています。 国内やグローバルな輸送ルートで問題が起きても迅速に対応できるように、エラー監視を強化する必要もあるとしています。 これまでの紙ベースのファーストワンマイルの物流管理ではオンタイムで問題把握はできません。 これが、サプライチェーンのDX化の向かうところではないかと思います。 輸送コストの上昇 2つ目のポイントのInforの予測ですが、2022年以降、長期化するトレンドとして、海上・航空貨物輸送コストの上昇をあげています。 これは現在の混雑と輸送能力の制約が落ち着いても変わらないとし、荷主は貨物輸送能力を確保するため、NVOCCと3PL事業者の利用を拡大すると予測しています。 船社ではなく、トータルロジスティクスを扱う業者が重要視されていくようです。 私たち物流業者が向かうところとしては、IT化をしながら、お客のサプライチェーン全体のサポートをしていくことがこれから重要になっていきます。 非常に面白いと思った記事で、物流業界のDX化をしっかりと理解し、これからを考えていくことが重要だと思います。 概要欄に関連記事のリンクを貼っておきますので、ぜひお読みください。

日本とタイを比較!物流業界のジェンダーギャップの話。日本の少子高齢化、女性管理職。 | 物流ニュース・物流ラジオ

日本とタイを比較!物流業界のジェンダーギャップの話。日本の少子高齢化、女性管理職。

どうもこんにちは、飯野です。 今日は物流業界におけるジェンダーについてお話していきたいと思います。 2022年1月12日イーノさんの物流ラジオ 日本における女性管理職 日本政府は2003年に、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるように」という目標を掲げました。 2022年の現在はどうなっているのでしょうか。 世界経済フォーラムが2021年に発表した「ジェンダーギャップ指数」(国別の男女格差を数値化した調査)というものがあります。 日本は世界 156 ヵ国中120 位、主要先進G7では最下位でした。 総務省が調査した「2020年労働力調査」では、管理職に占める女性の割合は13.3%であり、政府が掲げた目標の30%とはほど遠い結果となっています。 また帝国データバンクの調査によると、運輸・倉庫業界の女性管理職の割合は5.7%で、全体平均の8.9%からも下回っています。 日本ではなぜこんなに女性の割合が低いのかと思います。 タイの場合 弊社の場合、8割女性で、LGBTに対しても普通に受け入れています。 過去にゲイ、レディーボーイやトムボーイなど雇ったこともあり、やることをやってくれるのであれば、関係ないと考えています。レディーボーイはとても明るいので、営業向きだったと思います。 タイの、特に日系企業は女性社員の割合が多く、女性は本当によく働いてくれています。 男性が働かないというわけではありませんが、女性が営業だと柔らかく、お客さんの懐に入って行きやすいのではないかと思います。 また、英語も女性の方が出来る印象です。 2017年3月のTOEICに関する調査結果によると、受験者の平均点は男性が526点に対し、女性は668点とのことです。 日本の少子高齢化、人材不足 経営者の立場として、確かに女性は結婚・出産などあり、一時的に戦力ダウンにはなります。しかし、それはその人の人生にとって幸せなことであり、リスペクトすべきことだと思います。 弊社でも結婚・出産する女性社員はいますが、普通に復職しますし、その間は仕事をうまく振り分けて対応しています。 タイの場合は2−3ヶ月で戻ってくるというのもあるので、一概に日本とは比較はできませんが。 現実問題として、日本では少子高齢化で人材が足りなくなるので、女性がもっと働きやすい環境をつくらないといけないと感じます。 こういうとフェミニストかと揶揄されそうですが、そういう話ではありません。政府も女性管理職30%と目標に掲げており、少子高齢化による人材不足は社会問題です。 私は日本に帰国し、新しく人材紹介の仕事をしますが、この会社では物流業界での女性管理職にも貢献したいと考えています。 女性の管理職を増やしたいと思っている企業様がいらっしゃいましたら、是非お声掛けをして欲しいと思います。

MSCがコンテナ船ランキング首位に!29年ぶりの首位交代から海運業界の変化を考察。 | 物流ニュース・物流ラジオ

MSCがコンテナ船ランキング首位に!29年ぶりの首位交代から海運業界の変化を考察。

どうもこんにちは、飯野です。 今日は海事新聞のニュースから、「MSC、コンテナ船社トップ。29年ぶり首位交代、マースク抜く」についてお話していきたいと思います。 2022年1月11日イーノさんの物流ラジオ MSC、マースクを抜いて首位 スイスの船社MSCが、これまで首位だったデンマークのマースクを抜いて、創業以来初のコンテナ船社首位となりました。 アルファライナーの1月6日付コンテナ船社運航規模ランキングによると MSC:645隻、428万4,728TEU マースク:738隻、428万2,840TEU MSCが2,000TEU弱をわずかに上回り、29年ぶりの首位交代です。 コンテナ船社のランキングでは 1位:MSC 2位:マースク 3位:CMA-CGM 4位:COSCO 5位:Hapag-Lloyd 6位:ONE 昨年1月1日時点での規模は、マースクが413万TEU、MSCが385万TEUで、MSCは2021年通年で規模を11%拡大したと記事に報じられています。 MSCの戦略 MSCは20年から21年にかけて、港湾混雑などでコンテナ船の稼働率が低下していた中で、供給力維持のために中古買船を積極的に購入しました。 2年で100隻以上の船を購入し、新造船も2万TEU型の超大型船 5隻などが竣工しており、さらに昨年末に買収を決めたブラジル船社の約1万5,000TEUがまもなく加わる見通しです。 新造船の発注残はマースクの25万TEUに対してMSCが100万TEU弱であり、当面、MSCが首位の座を維持する可能性が高いと報じられています。 マースクの戦略 一方でマースクは近年、ロジスティクス事業強化し、昨年末に香港物流大手LFロジスティクスの買収を決めています。マースクは投資をロジスティクス分野に集中させており、両社の戦略の違いが、今回の首位交代として現れたようです。 個人的には、この記事を見ると、規模を追いかける時代でもないような気もします。 現在、船会社は好景気で多くの船を持っている方が儲けにつながります。しかし、コロナ前はスペースが余っており、海上運賃が急落したように、船会社にとっては船を持ちすぎるのはリスクでもあります。 よって、マースクは物流全体を抑えるロジスティクスに力を入れているようです。 少し前に、マースクがキューネ・アンド・ナーゲルを外しにかかったというニュースがありました。長期レートで、4,000ドルで仕入れたキューネが、スポットレートで20,000ドルで売っていた、という記事もありました。 物流業界の変化 今の物流業界では、船会社とロジスティクスの会社は別れており、船会社は当たれば儲けは大きいですが、リスクもあります。 一方でロジスティクスの会社は船会社も選べることができ、アセットを持つ必要もありません。アセットを持ったとしても、下請け使って供給量を調整したりなど、リスクコントロールが可能です。 国際物流では国内トラック輸送・通関・海上輸送・倉庫・ラストワンマイルなど、各セクションで会社が分かれていることが多いです。 それが今後、テクノロジーでシームレスになっていく流れがあります。 マースクは莫大な資金でテクノロジーを導入し、トータルロジスティクスを抑えていくという戦略だと思います。 物流業界のトップの動きがこのような形で変化を迎えています。こういった情報から業界の動きを考える、予想することは大切なことだと思います。

物流を志す学生が0%!?サプライチェーン・物流を説明。後方支援の重要性。 | 物流ニュース・物流ラジオ

物流を志す学生が0%!?サプライチェーン・物流を説明。後方支援の重要性。

どうもこんにちは、飯野です。 今日は「物流を志す学生が0%、人材不足が加速する物流の根本課題」というテーマでお話していきたいと思います。 2022年1月10日イーノさんの物流ラジオ 物流を志す学生0% この記事の冒頭に、「物流業界への就職を志す学生は0%」とありました。これは、学習院大学の経営学科の学生にアンケートを取った結果です。 記事にもありますが、おそらく物流に関して無関心なのではないかと思います。 何故かというと、日本では物流を学ぶ機会がはほとんどありません。欧米だと、物流を専攻している人はある程度いらっしゃり、学ぶ機会があるようです。 物流に関して無関心な学生に対し、物流、サプライチェーンの仕事をどのように説明するか、と考えました。 学生へ物流・サプライチェーンを説明すると 例えば、私は日本史が好きなのですが、戦国時代だと武将が注目されたように、現在では営業やマーケティングなど、前線に立った仕事が注目されます。 その中で、物流は後方支援のようなもので、地味なようではありますが、大切な仕事です。 豊臣秀吉が小田原攻めをしたとき、20万人を率いたと言われています。その裏には、この20万人を飢えさせず、戦わせ続けるため、物資の手配をした石田三成などの奉行衆の活躍があります。 他には、長篠の戦では、織田信長は鉄砲を3000丁ほど用いました。この勝てるための物資の調達は、現在のサプライチェーンに繋がります。今でいう半導体のようなものだと思います。 調達の重要性 先日、トヨタがGMを抜いて北米市場で販売一位になりましたが、GMは半導体を確保することができず、販売台数が落ちてしまいました。 一方で、トヨタはサプライチェーンに重きを置いていたため、半導体などの調達が安定していました。 前方だけを見るのではなく、後方支援の調達などの両輪を見ることが大切です。 サプライチェーンの全体でみると、いろいろな物流のセクションがありますが、サプライチェーンの担当として、理解していくことが重要だと思います。 物流だけでなく、お客さんの取り扱っている製品を理解し、どこのマーケットで売れるのか、など興味を持って取り組んでいくと、重要な人材となっていけます。 調達のところで、全体を理解し、そこで販売やマーケティングが決まります。物流のみにフォーカスすると、興味がない方が多いかもしれませんが、後方支援としてはかなり重要な仕事です。 市場がグローバル化しているので、今後グローバルサプライチェーンを理解すると貴重な人材となれます。 学生の皆さんに、もっと物流に対する興味を持っていただけると嬉しいです。

インドネシア石炭輸出禁止!海運市況への影響、中国への影響は? | 物流ニュース・物流ラジオ

インドネシア石炭輸出禁止!海運市況への影響、中国への影響は?

どうもこんにちは、飯野です。 今日は、「インドネシアの石炭輸出禁止が与える海運への影響」というテーマでお話していきたいと思います。 2022年1月7日イーノさんの物流ラジオ インドネシア「石炭禁輸」 今、インドネシアで石炭の輸出禁止が発表されて話題になっていますが、これは1月1日から31日までの約1カ月間の輸出禁止です。 今回の「石炭禁輸」の背景には、インドネシア国内の電力事情がひっ迫しており、深刻な停電が引き起こされかねない状況があります。このため政府は石炭会社に対して、輸出用の石炭を国内に回すことを求め、輸出禁止へとつながりました。 インドネシア大統領は今回の輸出禁止に従わない石炭会社に対しては、事業許可取り消しを含む厳しい強制的措置を取っています。 世界最大石炭輸出国インドネシア、最大輸出相手国は中国 インドネシアは世界最大の石炭輸出国で、年間4億5,000万トンの石炭生産量のうち、2,900万トンを輸出しています。最大の輸出相手国は中国で約32%を輸出、他には、インド、フィリピン、マレーシア、韓国、日本に輸出しています。 インドネシアの石炭会社協会は「事前に業界との協議なしでいきなり決められたもの」とし、「輸出禁止措置の即時撤回」を求めています。 昨日の報道で、生産者団体と政府が1月5日に予定していた会合が延期されたと伝えています。 インドネシアの沖合では、既に石炭を積み込んだ何隻かの船が、輸出禁止措置が解除されるかどうかを待ちながら停泊を続けている状態です。延期の理由や、新たな会合の日時は明らかにされていないと記事にあります。 中国への影響は? 個人的には、この輸出禁止が中国にどう影響を与えるかが注目ポイントかと思います。 今日の海事新聞ではバルカー船の市況が上がっていると報道がありました。 コンテナ船に関して言えば、去年の10月国慶節前に中国の電力不足でスポット運賃が急落。この急落は休み前に製造が追いつけず、事前のキャンセルが続出したため引き起こされました。 この時は中国国内でも石炭の採掘量を絞っていましたが、国内で電力不足が続くと問題ということで、石炭の確保を再開して11月くらいに電力不足は落ち着きました。 しかし今、冬になり、暖房で電力需要が伸びています。 電力不足のため工場を止め、休み前に生産が終わらずにBookingをキャンセルして、海上運賃が急落する可能性もゼロではないと思います。 インドネシアの石炭輸出禁止、それに伴う中国の電力事情は、旧正月前に向けてチェックポイントかと思いますので、引き続き情報を発信していきます。

2021年12月物流ニュース | 物流ニュース・物流ラジオ

2021年12月物流ニュース

この記事を動画で見る どうもこんにちは飯野です。今回は2021年12月の物流ニュースをお届けします。 今回も北米からのニュースが中心で、サプライチェーンの乱れの現状について、より詳しく理解できると思います。 それでは、いってみましょう。 コンテナ運賃、北米西岸 最高値7,300ドル。来年度の運賃相場も高水準か 上海発、北米西岸向けのスポット運賃が、11月末が6,700ドル/40’だったのが、12月10日時点で7,300ドル/40’となり、最高値を更新しました。 通常では12月には落ち着いてくるはずの運賃上昇の勢いが止まりません。 これに伴い2022年度の大手企業向け年間契約の海上運賃相場も上昇しており、西岸向けは6,000~7,000ドルが基準値と言われています。これは今季の倍のレートです。 一般的には年間契約の長期レートよりも、状況によって都度更新されるスポット運賃は高くなります。 その為、船のスペースは高い運賃のスポットレートの荷主を優先することがあり、2022年度も運賃相場は高水準と予想されています。 北米西岸沖待ち実質100隻か。排ガス規制により近海に停泊せず待機 LA,LB港では12月14日コンテナ船の沖待ちは30隻が荷役中、30隻が沖待ち中でした。 ところが、LA、LB港があるサンペドロ湾から離れたところで、なんと71隻が減速運行などで入港待ちしていたのです。 11月からLA,LB港に入港に関する規制が変わりました。 排ガスの環境悪化を懸念して両港から40マイル(約64km)を安全・大気品質エリアとして、船の停泊を減らすルールが影響しています。 その為、入港待ちの船は港から150マイル(約240km)離れる必要があり、中にはメキシコ近くに待機している船もありました。 北米、倉庫費用上昇。更なるインフレを懸念 不動産会社CBREグループが発表したレポートによると、B2B用倉庫の賃貸料は5年前に比べ平均25%上昇しています。 また、LA,LBの主要な拠点では特にスペースが逼迫しており、今年の第3四半期の賃貸料は、前年同期比で10.4%増加。2016年のリースの料金より60%以上高くなっています。 商品流通の乱れは倉庫の保管率を上げ、賃貸料の値上がりを引き起こす要因となります。またサプライチェーンの乱れによる物流費の上昇は顧客に転嫁され、現在のインフレを助長する懸念があります。 北米のドレー不足は人的要因と材料不足から 北米西岸のコンテナ滞留の要因として慢性的なドレー不足があげられますが、その原因は人的要因と材料不足が影響していると判明しました。 サプライチェーンの乱れを少しでも解消する為に、ドレーの製造を増やそうというマーケットの思惑にも関わらず、材料や部品が手に入らず、更に生産をする労働者も不足しています。 11月30日時点で、北米のとある企業のドレー生産に関する受注残は23億ドル(約2,500億円)。同企業の2021年の生産台数は25%の減少が見込まれている程です。 また、鉄鋼などの材料費が値上がりしており、ドレーの販売価格は2020年8月に比べ2021年の第三四半期には約4倍となっています。 ドレーの製造不足はサプライチェーンの乱れを更に引き起こし、今後の商品の滞留に大きく影響をしていくでしょう。 北米の小売店、大量発注の傾向。在庫過多に陥る恐れも サプライチェーンの乱れから納期に遅れが生じ、販売時期を逃した商品が流通せずに各社の倉庫に余る可能性が懸念されています。 北米の小売業者は、物流の混乱から予定通りの配送が出来ず、最大の販売機会に向けての必要な在庫確保出来てない状況に備えて、商品の大量発注をしていました。 モルガンスタンレーによる調査によると、2021年の第三四半期で小売業者を含む企業の50%以上が在庫を増やす予定と回答。 このまま物流の乱れが続くと季節商品を扱う小売りは在庫過多がリスクとなり、従来であれば季節性の高い商品は1月に値下げ販売される傾向にあります。 しかし、今期においては物流費・倉庫費用の上昇の影響がある為、顧客に転嫁をしながら、値下げを行わずに販売をする小売も多い模様です。 解説コーナー それでは今回のニュースの解説のコーナーです。 11月の時点では北米向けの沖まちコンテナ船は減少傾向にあるとお伝えしていましたが、実際のところ沖まちコンテナ船は港から離れたところで減速運航や待機をしていました。 その為、まだ100隻近くのコンテナ船が積み下ろしを待っている状態にあります。 こうなると北米に船を送ってもアジアなどに戻ってくるには相当の時間がかかってしまうことから、北米西岸向けへの船は次々とキャンセルされています。 引き続きコンテナ船のスペース問題は続きそうです。 また北米西岸向けの2022年度の大手荷主向け長期レートが、現在のスポットレート価格と同じレベルになるとお伝えしました。 一般的に長期レートはスポットレートに比べて割安になりますので、2022年度の北米向けのスポットレートは更に上がることが予想されます。 更にアジア近海の海上運賃も上がっています。これは先ほどご説明したように 北米に向けた船が帰ってくることが出来ない為、短距離航路の近海でも運賃が上がっているのだと考えられます。 コロナ前は数百ドルだった上海 – 東京間でUSD2,000/40’を超える運賃も確認出来ているくらいです。 北米国内での物流の目詰まりに影響を与えている、倉庫のスペース不足やドレー不足においても、今回のニュースでお伝えしたように解消には時間がかかりそうです。 2021年12月の北米のCPI(消費者物価指数)は6.8%でした。上昇している物流費用は顧客に転嫁されインフレは助長されています。 この高い物価であっても消費者の購買意欲は衰えず、クリスマス商戦に備えていた小売店が商品の大量発注をしていたことが分かりました。 中国から大量のコンテナが北米に送られていた背景にはこのような動向があったのです。 昨年のこの事例を考慮すると、2022年においてもクリスマス商戦に向けた小売は昨年と同様に大量発注をする可能性は十分にあると思います。 まとめ 今回の物流ニュースはいかがだったでしょうか。まだまだサプライチェーンの正常化まではまだまだ時間がかかりそうだと個人的には思ってしまう内容でした。 とはいえ、情報を入手し、出来ることをやっていくしかないと思います。 今回参考にしたニュースのソースは概要欄にリンクを張っておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。 現場からは以上です!ありがとうございました。 ・Twitter で DM を送る https://twitter.com/iino_saan ・LinkedIn でメッセージを送る https://www.linkedin.com/in/shinya-iino/ お問い合わせは「ツイッター」と「LinkedIn」のみで承っております。

中国 寧波でコロナクラスター発生!トラック、ドレーなどの車両制限。サプライチェーンへの影響懸念 | 物流ニュース・物流ラジオ

中国 寧波でコロナクラスター発生!トラック、ドレーなどの車両制限。サプライチェーンへの影響懸念

どうもこんにちは、飯野です。 今日は海事新聞のニュースから、「中国の寧波港で物流機能が低下」についてお話していきたいと思います。 2022年1月6日イーノさんの物流ラジオ 寧波でコロナクラスタ― 寧波で新型コロナウイルス感染者が相次いで確認されています。 船社関係者によると、本船荷役など港のオペレーションは通常稼働しているとのことですが、トラックやドレーなどの車両制限が継続しているようです。 中国のゼロコロナ政策 先週末に、寧波市の縫製工場でコロナのクラスターが発生し、検疫が強化されています。そのため、トラックドライバーは通行許可所の申請が必要となり、通行許可書があっても隔離要請があるケースもあるようです。 中国のゼロコロナ政策は現在とても厳しく、例えば、西安で感染者1,300人程の発生で、ロックダウンされています。 中国政府のコロナを絶対に広げないという厳しい国策が取られています。 今後の物流への影響 2021年8月に寧波のメイシャンターミナルが閉鎖されましたが、そのときの影響は限定的ではありましたが、抜港など行われました。 今回も一部船社は同港の抜港を決めたり、物流関係者は代替港の利用の検討をしたりしています。 トラックドライバー不足になると、コンテナの搬出、搬入ができない、作業に時間がかかる、ということが起きてきます。よってコンテナの回転が悪くなり、コンテナ不足に繋がります。 今はアジア航路の運賃が上がっており、来月には旧正月を控えています。世界第二番目の港の一部が閉鎖されれば、アジア域内での運賃上昇に影響があるかもしれません。 寧波のコロナ状況は注目しておかないといけないと思いますので、引き続き情報を発信していきます。

北米の中小企業の荷主、2022年度に向けてサプライチェーンの価格高騰に対し、戦略を見直し。 | 物流ニュース・物流ラジオ

北米の中小企業の荷主、2022年度に向けてサプライチェーンの価格高騰に対し、戦略を見直し。

どうもこんにちは、飯野です。 今日はウォール・ストリート・ジャーナルの記事から、「北米の中小企業の荷主がサプライチェーンの価格高騰に対して新しい戦略を見直し」というテーマでお話していきたいと思います。 2021年12月28日イーノさんの物流ラジオ 2022年への新戦略 北米のサプライチェーンが乱れている中、中小の荷主が来年に向けて新しい戦略を取り始めています。 ある企業は使っていないトラック・トレーラーに商品を保管したり、また、ある企業は製品や原材料を自国の近く、または自国内(北米)で調達しようとしています。 12月も後半になって季節的な慌ただしさが少しおさまってきている中で、来年も米国の継続的な個人消費は強いとのことです。貨物需要を押し上げ、それが更なるサプライチェーンの逼迫を招き、輸送料金はさらに上昇すると予想されています。 よって、2022年は別の戦術を取らなければならないと記事で報じられています。 新戦略の例 ホーム・デポ社やウォルマート社など大手企業は、船舶のチャーターなどコストがかかる戦術を取ることが出来ますが、中堅・中小企業には活用できる資源が少ないので、各社それぞれの戦略を練っています。 例えば、ペット関連商品を販売するeコマースサイトの企業は商品のほとんどを中国から輸入していましたが、海上輸送費の倍増、航空輸送費の高騰が利益を圧迫したため、宝石や犬のサプリメントなどを米国のサプライヤーから購入するようになったとのことです。 また、メキシコにある金属加工会社と提携し一部の注文を顧客に直接発送することも始めました。 他には物流会社の例で、2万平方フィートの倉庫スペースが手狭になり、使用されていないトラックドックに商品を保管するためのセミトレーラーを探していると報じられています。 輸送に使えるほど状態が良くないもので、修理のための部品が不足しているセミトレーラーを倉庫として使おうとしています。それが出来れば新しい倉庫スペースに「とんでもない値段」を払わずに済むということのようです。 また、カナダに本社を置く会社では、アジアからの40フィートコンテナの輸送コストが2020年初頭から今年の夏にかけておよそ4倍になったとのことです。 顧客向けに値上げを実施すると述べており、他の会社も「値上げは絶対にあり得る。」としています。 この会社は最近、海上コンテナ1個の輸送に追加料金も含めて約3万ドル(340万円)を支払いました。コロナのパンデミック前は約5,000ドル(55万円)であったことと比較すると、恐ろしく高い金額ですよね。 これまでは1年に一回の価格改定でしたが、四半期ごとに行う必要があるとしています。 最後に、アパレルとアクセサリーの卸売業者で、1日に10万個以上の個包装を輸送している企業は、必要に応じて商品を移動できるように「魅力的な荷主になる」ことに注力しています。 魅力的というのは、トラックドライバーを同社の施設に迅速に出入りさせ、トラックを停滞させないことを意味します。トレーラーにあらかじめ荷物を積み込み、待ち時間を最小限に抑え、30分以内にドライバーを道路に戻すことを目指しています。 それほど迅速なサプライチェーンが重要になっています。 2022年、荷主の動きに注目 この記事から、来年北米の国内調達やメキシコからの調達がどれくらい増えるのかがポイントなのかなと思います。もしかしたらメキシコ投資が増えるかもしれません。 資本力のある会社がバルク船を使って卸をしたら、サプライチェーンの乱れは少し落ち着いていくとは思います。バルクチャーターとSOCコンテナが必要となりますが、可能性はゼロではありません。 また、倉庫も足りていないので、メキシコでの倉庫需要も上がっているかもしれません。 北米の荷主がどういう動きをとっていくのかが注目です。今年と同じように経営をしていたら、来年も高い輸送費用を払い続けなければならず、それを避けるため、今年とは別の動きを取っていく荷主が出てくるでしょう。 引き続き北米の動きの情報もチェックしていきたいと思います。

コンテナ船社大手のM&Aから物流市場の流れを考察。非海運分野への投資。 | 物流ニュース・物流ラジオ

コンテナ船社大手のM&Aから物流市場の流れを考察。非海運分野への投資。

どうもこんにちは、飯野です。 今日は海事新聞のニュースから、「コンテナ船社の大手が業績好調でM&A加速」についてお話していきたいと思います。 2021年12月27日イーノさんの物流ラジオ 船社、非海運分野への投資 現在の海運市場では空前の好景気で、コンテナ船社の2021年通期業績は、過去最高となる見通しです。その中で船社による投資が進んでおり、特にロジスティクスや航空機などへの投資を積極化しています。 非海運分野での機能を強化することで、Door to Doorトータルロジスティクスの強化を目指しているとのことです。 船社は環境規制に対応した新燃料船の開発・発注も進めているという話はしましたが、新しい船にだけの投資は供給過多を招き、自分の首を絞める可能性があります。よって他のところへの投資も進めています。 大手4社の投資 世界のコンテナ船のシェア大手4社のそれぞれの投資について説明します。 先ずはマースクについてです。 2019年から2020年にかけて欧米で通関会社など、今年に入り表面化したものだけで物流関連5社を買収しています。注目は、ネット・店舗など複数の販売チャネル、EC関連物流企業への投資をしている点です。 大手荷主だけでなく、中小荷主の輸送需要もターゲットとしており、最終配送までカバーするための機能強化に乗り出しています。 次にCMA―CGMは、年初に航空貨物機部門を設立し、これまでに航空機10機を購入・発注しています。 更に、米IT機器の販売大手の物流事業を買収、同事業に、中小企業向けのECの受注から発送までの一連の業務も行っています。 MSCは、アフリカ全土で輸出入貨物取り扱いや、港湾・貨物鉄道運営を手掛ける会社の買収に踏み出し、アフリカという成長市場での物流網は魅力的としています。 最後に中国海運最大手COSCOですが、中国のエクスプレス最大手、SFエクスプレスのホールディング会社に約180億円を出資しました。 こういったように船会社による船だけでない、分散投資が進んでいます。 マーケットの変化による行動 資本主義が続く以上、安い国やメリットのある国との貿易、国際物流は無くなりません。とはいえ、テクノロジーが入ることによってある程度の淘汰はあると思います。 時代についていけない企業は一定数あると思いますが、フォワーダーや通関業者がすぐになくなることはないでしょう。 しかし、船会社もAPIを解放し始めて荷主の直接Bookingが出来るようになっています。その中で、フォワーダーが海上運賃だけで儲けるのは難しく、記事でもあったようにトータルロジスティクスが重要になってきます。 先ほどお伝えしたように大手マースクはEC物流にまで展開をしています。弊社の場合、規模は小さいですが、物流のHR事業に展開しようとしています。 こういったマーケットの変化に合わせて、自分たちの変化していくことが重要だと強く思います。 単に大手はこんなことやっているんだ、というところで終わってはいけません。 M&Aや新規事業は自分一人でなんとかなるものではなく、役職によるところもあります。しかし、役職がなくても、世の中の流れがどのように動いているのかを理解して、自分はどうすべきなのかを考えた方が良いと思います。 年末年始の時間あるときに、見直していくいい機会になれば嬉しいです。