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【2026年 航空貨物市場】AI需要と越境ECが招くスペース逼迫、その行方は? | 物流ニュース・物流ラジオ

【2026年 航空貨物市場】AI需要と越境ECが招くスペース逼迫、その行方は?

本日は、Journal of Commerce(JOC)が発表した2026年の航空貨物市場予測をベースに、2025年の振り返りと2026年の見通しを整理していきます。 結論から申し上げますと、2026年もアジア発の航空貨物市場は、特定のピーク時期においてスペース逼迫が続く可能性が高いと見られています。 動画視聴はこちらから 2026年の主役はAI需要と越境EC JOCの記事が指摘している最大のポイントは、AI関連需要と越境ECという二つの構造的要因です。 世界各地で建設が進むAIデータセンター向けに、高性能半導体やサーバー関連機器の輸送需要が拡大しています。 これらの製品は高額かつ納期厳守が求められるため、輸送モードとして航空便が選択されやすく、結果として航空スペースを強く圧迫します。 AI需要は一過性ではなく 中長期的に航空貨物のベースロードとなる可能性があります 2025年に起きた越境ECの調整と適応 2025年を振り返ると、中国発越境EC貨物が航空市場を大きく揺さぶりました。 SheinやTemuなどのプラットフォーム貨物が太平洋路線のスペースを占有していましたが、トランプ政権によるデミニミス免税措置の撤廃が大きな転換点となりました。 一時的に中国発航空貨物は急減しましたが、その後は東南アジア発米国向けや、アジア発欧州・中南米向けが増加し、全体として需給は持ち直しました。 2026年の焦点は台湾とベトナム 2026年に向けて注目されるのが、台湾とベトナムです。 台湾は引き続きAI半導体供給の中核であり、ベトナムも製造能力の強化により航空貨物需要を押し上げています。 これらの半導体輸送が、既存の越境EC貨物と重なることで、アジア発主要レーンでは高い積載率が常態化すると予想されます。 量だけでなく質が問われる航空物流 AI関連貨物は単なる数量勝負ではありません。 GPUなどは非常に繊細かつ高価であり、温度管理や衝撃監視、セキュリティを含めた高付加価値輸送が求められます。 物流企業にとっては、スペース確保能力と同時に、品質対応力が競争力の分かれ目となる一年になりそうです。 中長期では供給過剰リスクも 一方で、長期的には市況が緩む可能性も指摘されています。 旅客機のベリースペース回復や新造フレイターの投入が進めば、供給が需要を上回る局面も想定されます。 そのため、2026年は短期的な逼迫と長期的な調整が同時に存在する、非常に難しい年になるでしょう。 まとめると、2026年の航空貨物市場はAI需要と越境ECが牽引し、アジア発を中心にスペース逼迫が続く一方で、将来的な供給増も見据えた柔軟な契約戦略が重要になります。

【海運市況】米国・ベネズエラ軍事衝突!タンカー・ドライ・コンテナ船への影響を徹底解説 | 物流ニュース・物流ラジオ

【海運市況】米国・ベネズエラ軍事衝突!タンカー・ドライ・コンテナ船への影響を徹底解説

本日は、米国によるベネズエラへの軍事行動と、それに伴う海運マーケットへの影響について整理していきます。 地政学的には非常にインパクトの大きいニュースですが、海運市況への影響はどう評価すべきなのか。 結論から言うと、短期的な影響は限定的ですが、中長期ではタンカー市場の構造が変わる可能性があります。 動画視聴はこちらから なぜ「直近の影響は限定的」なのか まず押さえておきたいのは、ベネズエラの原油ビジネスは、すでに長年正規マーケットから切り離されていたという点です。 厳しい経済制裁の影響で、ベネズエラ原油の多くは、いわゆるダークフリート(影の船隊)によって中国などへ輸送されてきました。 つまり、私たちが日常的に見ている正規のタンカー市況には、もともとベネズエラ関連の需要はほとんど織り込まれていなかったのです。 そのため、軍事行動が発生しても、スポット運賃が急変動する構造にはなっていません。 米国の狙いは「軍事」ではなく「資源」 ベネズエラは、確認埋蔵量で世界最大級の原油資源を保有しています。 ただし、設備老朽化と投資不足により、生産能力はピーク時から大きく低下していました。 今回、トランプ大統領が数十億ドル規模の投資に言及している点は非常に重要です。 これは単なる軍事介入ではなく、ベネズエラを西側エネルギー供給網に組み戻す動きと見るべきでしょう。 タンカー市場への中長期インパクト もし制裁が緩和され、オイルメジャーが本格参入すれば、状況は一変します。 これまでダークフリートが担っていた輸送が、正規のVLCC市場に戻ってくる可能性があるからです。 ベネズエラ原油が米国・欧州・アジア向けに正規輸送されれば、トンマイルは確実に増加します。 これはタンカー需給にとって明確なプラス材料です。 ただし、インフラ復旧には時間がかかり、数年単位のシナリオとして見る必要があります。 他船種への影響はどうか ドライバルク船:ベネズエラ発の輸出規模は小さく、影響は限定的。 コンテナ船:主要港は稼働しており、世界市況への影響はほぼなし。 自動車船:輸出台数はすでに激減しており、直接的影響は限定的。 まとめ 今回の米国によるベネズエラ軍事行動は、短期的には海運市況への影響は小さいと言えます。 一方で、中長期的にはタンカー市場の需給構造を押し上げる潜在力を秘めています。 今後は、米国の投資姿勢と現地の治安・政治情勢を継続的に見ていく必要があるでしょう。

【2026年海運市況】船会社、100億ドルの赤字転落か 需給バランス崩壊のシナリオを解説 | 物流ニュース・物流ラジオ

【2026年海運市況】船会社、100億ドルの赤字転落か 需給バランス崩壊のシナリオを解説

本日は、2026年にコンテナ船社が直面すると予測されている巨額赤字シナリオと、その背景にある需給バランスの崩れについて解説します。 新年早々、海運業界にとってはややショッキングな見通しが出てきました。 動画視聴はこちらから Drewry予測 2026年に100億ドル規模の赤字 Journal of Commerceに掲載された記事およびDrewryの最新レポートによると、2026年のコンテナ海運業界は、全体で約100億ドル、日本円にして1兆円を大きく超える規模の赤字に転落する可能性があるとされています。 これまでの5年間、コンテナ船社は歴史的な高収益を享受してきました。 しかし、その好調局面は2026年で終わりを迎える可能性が高いと見られています。 早ければ2026年第1四半期、つまり1月から3月の間にも、赤字に転落する船社が出てくると予測されています。 最大の原因は深刻な需給バランスの崩れ なぜ、ここまで急激に市況が悪化すると見られているのでしょうか。 最大の要因は需給の深刻な不均衡です。 簡単に言えば、荷物の量に対して船のスペースが余りすぎている状態です。 この構造は、2025年の動きを振り返るとよく見えてきます。 2025年は「異常な条件」が利益を支えていた 実は2025年も、第4四半期には荷動きの減速が見られていました。 それにもかかわらず、船社各社は年間で約200億ドル規模の利益を確保するペースを維持していました。 その背景にあったのが、皮肉にも地政学的な混乱です。 一つは、トランプ政権による関税強化への警戒感です。 米中摩擦の再燃を懸念した米国の輸入業者は、在庫のフロントローディング、つまり前倒し出荷を進めました。 本来は後半に動くはずだった需要が、前半に集中した形です。 もう一つは、長期化する紅海情勢です。 喜望峰経由の迂回ルートが常態化したことで航海日数が延び、結果として余剰船腹が吸収されていました。 2025年の夏物商戦向け貨物は、例年より約1か月も早く動いていたとされています。 2025年の利益は「実需の強さ」ではなく「異常要因」によって支えられていました。 世界全体では増えても北米が冷える ここで、別のデータも見てみましょう。 BIMCOの予測では、2026年の世界のコンテナ取扱量は2.5%から3.5%増加すると見られています。 一方、世界の船隊能力は約2.2%増にとどまる見通しです。 一見すると、需給はそれほど悪くないようにも見えます。 しかし、問題は北米航路です。 Moody’sの分析によると、米国の小売業者は依然として消費者心理の不透明感や関税政策の変動を警戒し、在庫を極力抑えています。 その結果、2026年の北米向けコンテナ取扱量は、2025年比で横ばい、もしくは最大で2%減少する可能性があるとされています。 最も収益性の高い航路が冷え込むことで、業界全体の収益構造が大きく崩れる構図です。 スエズ回帰がもたらす本当のリスク もう一つの重要な転換点は、紅海情勢の行方です。 仮にイスラエルとハマスの停戦が成立し、船社がスエズ運河ルートに戻った場合、短期的には欧州港湾で船の集中、いわゆるVessel Bunchingが発生し、運賃が一時的に上昇する可能性があります。 しかし、それが解消された後には、喜望峰ルートで吸収されていた余剰船腹が一気に市場に戻ります。 結果として、強烈な供給過多となり、運賃市況には大きな下押し圧力がかかることになります。 2026年は船社にとって厳しい年に 総合すると、2026年は在庫調整による需要の弱含みと、供給過剰の顕在化が同時に進む年になる可能性が高いと言えます。 荷主にとっては運賃交渉で有利な局面となりますが、船社のサービス改編や抜港、減便といったリスクにも注意が必要です。 「安い運賃」だけでなく、ネットワークの安定性を見極める視点が、これまで以上に重要になるでしょう。

プレミア・アライアンス、2026年新体制でハブ&スポークを加速 寄港地削減で定時性改善へ | 物流ニュース・物流ラジオ

プレミア・アライアンス、2026年新体制でハブ&スポークを加速 寄港地削減で定時性改善へ

本日は、プレミア・アライアンスが発表した2026年の新ネットワークと、そこから見えてくる海運業界全体の構造変化について解説します。 2025年も終盤に差しかかる中、船社各社はすでに来年を見据えたネットワーク再編を本格化させています。 今回注目するのは、ONE、HMM、Yang Mingで構成されるプレミア・アライアンスの動きです。 動画視聴はこちらから 2026年ネットワークの最大の特徴は「寄港地削減」 12月18日付のJournal of Commerceによると、プレミア・アライアンスは2026年の改訂ネットワークにおいて、アジア―欧州航路の寄港地を大幅に削減する方針を明らかにしました。 一部のループでは、寄港地をわずか5港にまで絞るという、非常に大胆な設計が採用されています。 アルファライナーの分析では、この新ネットワークは2026年4月から順次導入される予定とされています。 特に注目されるのは、アジア側でのダイレクト・コールの削減です。 これまで本船が直接寄港していた港の一部は抜港され、韓国の釜山港をハブとしたトランシップ型の運用へと移行します。 釜山ハブ化が前提となる新ネットワーク 新体制では、釜山港を主要ハブとし、そこから高雄、アモイ、そして日本の東京、神戸、名古屋などへフィーダー船で接続する構造が強化されます。 例えば、アジア―北欧州航路のFE1ループでは、レムチャバン、カイメップ、シンガポール、ロッテルダム、ハンブルクの5港のみに寄港する計画です。 また、FE4ループでは、アジア側の寄港地を上海と釜山の2港に限定する構成となっています。 本船の寄港地を極限まで絞り、ハブ港で効率的に積み替えるモデルが鮮明になっています。 狙いは定時性の回復 では、なぜここまで寄港地を削減するのでしょうか。 最大の理由はスケジュールの定時性(信頼性)の回復です。 Xenetaのデータによると、プレミア・アライアンスの定時運航率は2025年第1四半期の36%から、第3四半期には22%まで低下しました。 平均遅延日数も、年初の2.7日から第4四半期には5.2日へと拡大しています。 荷主から見れば、決して満足できる水準とは言えない状況です。 競合はすでに「答え」を出している 一方、競合となるマースクとハパックロイドのジェミニ体制を見てみると状況は対照的です。 彼らは徹底したハブ&スポーク戦略を採用しており、Sea-Intelligenceのデータでは、9月と10月の定時性が88.6%という非常に高い数値を記録しています。 寄港地を減らし、主要ハブに集約することで、遅延リスクを抑え、リカバリーもしやすい体制を構築しているのです。 プレミア・アライアンスとしても、同様の戦略に舵を切らざるを得ない背景があります。 日本の荷主に求められる視点 この変更により、定時性は改善する可能性が高いと考えられます。 一方で、日本の荷主にとっては新たな課題も生じます。 東京や神戸への直接寄港が減少し、釜山経由のフィーダー輸送が増えることで、リードタイム管理や接続リスクへの対応がより重要になります。 今後は、直行便の有無だけでなく、ハブ港の処理能力やフィーダー接続の信頼性まで含めた判断が必要になるでしょう。

【2025年物流市況】香港空港、11月貨物量が過去最高を更新 米国向け減速を補った欧州・インドシフトの実像 | 物流ニュース・物流ラジオ

【2025年物流市況】香港空港、11月貨物量が過去最高を更新 米国向け減速を補った欧州・インドシフトの実像

本日は、香港空港における11月の貨物取扱量が過去最高を更新したというニュースについて解説します。 数字だけを見ると好調そのものですが、詳しく見ていくと、世界の物流構造が大きく変わりつつあることが分かります。 動画視聴はこちらから 香港空港、11月の貨物量は6%増で過去最高 香港空港管理局が発表したデータによると、2025年11月の貨物取扱量は前年同月比6%増の48万6,000トンとなりました。 これは2か月連続の前年超えであり、単月としては過去最高の水準です。 これまでの最高記録は、コロナ禍で航空貨物需要が急増していた2021年11月の47万8,000トンでした。 今回の結果は、それを明確に上回るものです。 内訳を見ると、輸出にあたる積み込みが5%増、輸入にあたる取り降ろしが8%増となっており、輸出入ともに堅調に推移しています。 北米向けは減少、それでも過去最高になった理由 注目すべきは仕向け地の変化です。 従来、主要マーケットであった北米向け貨物は減少しています。 背景にあるのは、2025年以降に強化された米国の関税政策です。 2月には越境ECなど小口輸入品への課税が開始され、5月には中国発貨物を対象とした少額輸入免除制度、いわゆるデミニミスルールが撤廃されました。 これにより、中国系ECプラットフォームを中心とした北米向け航空貨物は大きく減少しています。 欧州・中国本土・インドへのシフトが鮮明に それにもかかわらず、11月に過去最高を更新できた理由は明確です。 北米以外へのシフトが一気に進んだからです。 欧州、中国本土、インド発着の貨物が大きく伸び、北米向け減少分を補って余りある結果となりました。 特に越境EC事業者が、規制の厳しい米国から欧州など別市場へ販売先を切り替えた動きが顕著です。 インド向けについても、製造拠点の分散化や消費市場の拡大が追い風となっています。 香港空港は、北米依存から脱却し、多極化する物流の中核ハブへと進化しています。 航空運賃は引き続き上昇基調 貨物量の増加は、航空運賃にも影響を与えています。 運賃データを見ると、香港発米国向けの航空運賃は9月以降、上昇基調が続いています。 12月中旬には、香港発シカゴ向けがキロあたり6.69ドルと年内最高値を更新しました。 ロサンゼルス向けも同様に高水準で推移しています。 2026年に向けた見通し 短期的には、この活況は2026年春節前まで続く可能性があります。 一方で、中長期的には欧州側での規制強化や、さらなるサプライチェーン再編にも注意が必要です。 総量は増えていても、ルートは大きく変化しています。 特定レーンに依存しない、柔軟な物流戦略がより重要になるでしょう。

【最新】北米コンテナ運賃が20%急騰 船社の供給絞りと欧州12月需要の正体 | 物流ニュース・物流ラジオ

【最新】北米コンテナ運賃が20%急騰 船社の供給絞りと欧州12月需要の正体

本日は、アジア発北米向けコンテナ運賃が、ここにきて一気に急反発した動きについて解説します。 正直、年末にこの数字が出てくるとは思っていなかった方も多いのではないでしょうか。 動画視聴はこちらから 北米向け運賃が1週間で2割上昇 先週まで下落基調が続いていた北米向けのスポット運賃ですが、ここにきて状況が一変しました。 12月18日に発表された世界コンテナ運賃指標によると、上海発のスポット運賃はニューヨーク向けが前週比19%高の3,293ドルとなりました。 ロサンゼルス向けも前週比18%高の2,474ドルまで上昇しています。 わずか1週間で2割近い上昇です。 ただし、冷静に水準を見ると、11月中旬と同程度であり、急騰というより急落からの持ち直しと捉えるのが妥当でしょう。 動画視聴はこちらから 最大の要因は船社の供給調整 では、なぜ需要が特別強くないこの時期に、ここまで運賃が動いたのでしょうか。 最大の要因は、主要船社による供給調整です。 具体的には、ブランクセーリングと呼ばれる欠便の実施です。 ドゥルーリーのデータによると、太平洋航路では来週も10便の欠便が予定されています。 11月で年末商戦向けの出荷は一巡し、荷動き自体は落ち着いています。 それでも、船社が意図的にスペースを絞ることで、運賃の底割れを防ぐことに成功した形です。 需要が弱くても、供給を絞れば市況は動くという典型例です。 欧州航路はさらに堅調 一方で、欧州向けは北米以上に安定した上昇が続いています。 上海発ロッテルダム向けは8%高、ジェノバ向けは10%高となり、こちらは3週連続の上昇です。 運賃水準はすでに8月並みまで戻っています。 欧州で定着する「12月需要」という新常識 ここで興味深いのが、欧州航路における新しい季節パターンです。 従来、旧正月前の駆け込み需要は1月から本格化するのが一般的でした。 しかし近年は、供給不安や紅海情勢の影響を背景に、物流混乱を避けるための前倒し出荷が常態化しています。 その結果、12月に一つの需要ピークが形成される流れが定着しつつあります。 別ソースから見える市況の裏側 上海航運交易所が発表するSCFIを見ても、北米と欧州の双方で底打ち感が鮮明になっています。 業界では、今回の運賃上昇には二つの背景があると見られています。 2026年旧正月を見据えた在庫積み増しの前倒し 船社による戦略的な需給コントロール 特に北米では、関税政策を巡る不透明感が続いており、早めに在庫を確保したいという荷主心理が働いています。 今後の見通し ドゥルーリーは、来週も小幅な上昇が続く可能性があるとしています。 今後の焦点は、この運賃上昇が一時的な供給絞りによるものなのか、それとも実需回復を伴うものなのかという点です。 足元では明らかに船社側のコントロールが効いています。 1月に入れば旧正月前のラストスパートが始まるため、しばらくは底堅い市況を前提にした物流計画が求められそうです。

マースクが紅海通航へ大きな一歩 スエズ回帰と荷主と保険が阻む物流正常化 | 物流ニュース・物流ラジオ

マースクが紅海通航へ大きな一歩 スエズ回帰と荷主と保険が阻む物流正常化

本日は、マースクが紅海およびスエズ運河ルートの通航再開に向けて、象徴的な一歩を踏み出したというニュースについて解説します。 結論から言えば、船社側の準備は進みつつある一方で、物流の正常化にはなお高い壁が残っている状況です。 動画視聴はこちらから マースクが2年ぶりに紅海を通航 今週、業界の注目を集めたのがマースクの試験的な紅海通航です。 シンガポール船籍のマースク・セバロックが、フーシ派の影響下にあるバブ・エル・マンデブ海峡を無事に通過しました。 この船はインドから米国東海岸へ向かうサービスに従事しており、12月18日から19日にかけて紅海の難所を抜け、現在はニューヨーク・ニュージャージー港へと航行しています。 マースクはこれを非常に重要な前進と位置付けています。 ただし同社は、これが全面復旧を意味するものではないと明言しています。 あくまで安全基準が満たされることを前提とした段階的プロセスの第一歩であり、次の航海スケジュールはまだ確定していません。 主要船社で進むスエズ回帰の動き 紅海通航に向けた動きは、マースクだけに限られません。 ここ数週間で、複数の主要船社がスエズ運河回帰を具体化させています。 CMA CGMは、2026年第2四半期までにインド・米国東海岸サービスでスエズ経由を定着させる計画を発表しました。 RCLは、すでに紅海と中国を結ぶサービスを再開しています。 ONEやエバーグリーンも、スロットチャーターを通じて慎重に関与を拡大しています。 これらの背景には、10月初旬に成立したイスラエルとハマスの停戦合意以降、商船への攻撃が止まっているという事実があります。 一部の船社は、海上のセキュリティ環境が許容可能な水準まで改善したと判断し始めています。 下がる戦争保険料と残る大きな壁 セキュリティ状況の改善に伴い、船舶に課される追加戦争保険料も低下しています。 一時は船体価格の0.7%から1.0%に達していた保険料は、現在では約0.2%と、攻撃が始まった2023年末以来の最低水準となりました。 しかし、ここで物流の難しさを象徴する問題が浮かび上がります。 それが荷主の同意が得られないという壁です。 荷主がスエズ回帰に慎重な理由 ドイツのハパックロイドは、インド・米国東海岸サービスをスエズ経由に戻すことについて顧客の意向を確認しました。 その結果、多くの荷主が反対姿勢を示しました。 理由は主に二つあります。 貨物保険の空白として、南部紅海をカバー対象外とする保険が依然として多い点です。 コストの不透明性として、地政学リスク再燃時の追加負担に納得できない点です。 このため、ハパックロイドは60日から90日の移行期間が必要とし、当面はアフリカ迂回を継続する慎重な姿勢を示しています。 船社が動いても、荷主と保険が動かなければ物流ルートは変わらないという現実が浮き彫りになっています。 2026年に向けた物流の分岐点 今回のマースクやCMA CGMの動きは、物流正常化に向けた試金石と言えます。 船社はアフリカ迂回による燃料費や船隊維持費を削減したい一方で、荷主は2年間かけて構築した迂回前提のサプライチェーンを簡単には戻せません。 今後の焦点は、安全に通航できる実績をどれだけ積み上げられるかです。 その実績が保険会社の判断を変え、貨物保険の制限が解除されれば、業界全体の安心感が広がる可能性があります。 2026年前半は、まさにこの安心の証明が問われる重要な局面になりそうです。

物流統括責任者(CLO)義務化まで1年 特定荷主4割が選任意識なしという現実 | 物流ニュース・物流ラジオ

物流統括責任者(CLO)義務化まで1年 特定荷主4割が選任意識なしという現実

本日は、特定荷主におけるCLO(物流統括責任者)の選任状況と、いよいよ目前に迫った法的義務化について整理していきます。 結論から申し上げると、制度の理解と対応が極めて遅れている企業が想像以上に多いという状況です。 特定荷主の4割超が選任予定なしという衝撃 2024年5月に成立した改正物流効率化法により、一定規模以上の貨物を扱う特定荷主には、2026年4月1日からCLOの選任が義務付けられます。 ところが、2025年12月18日に船井総研ロジが公表した最新調査では、深刻な実態が明らかになりました。 CLOが任命されることはないと回答した企業が42% すでに任命済みと回答した企業は15% 今後任命される可能性があるとした企業は28% 施行まで残り1年余りというタイミングにもかかわらず、約4割の企業が選任の意識すら持っていないという結果です。 これは物流が依然として経営課題として認識されていない企業が多いことを示しています。 CLOとは何か 物流部長との決定的な違い ここで改めて、CLOとは何かを整理しておきましょう。 CLOはChief Logistics Officerの略称です。 従来の物流部長との最大の違いは、経営判断への関与度と他部門への強制力にあります。 従来の物流部長は現場改善やコスト削減が主業務であり、営業や製造の要望を受け入れる立場になりがちでした。 CLOは役員級として経営に参画し、物流効率を損なう施策に対して是正を求めたり、大規模な投資判断を行う権限を持ちます。 国がCLO設置を義務化した背景には、現場任せでは解決できない物流課題を経営主導で解決させるという明確な狙いがあります。 特定荷主の定義と見逃せない罰則 国土交通省と経済産業省のガイドラインによると、特定荷主の基準は年間貨物取扱量が9万トン以上とされています。 この基準に該当する企業は、国内でおよそ3,000社から3,200社に上ると見込まれています。 重要なのは、この制度には明確な法的強制力がある点です。 CLOを選任しなかった場合は最大100万円の罰金 選任の届け出を怠った場合は20万円以下の過料 さらに企業が最も警戒すべきなのが、社名公表というレピュテーションリスクです。 法令違反として勧告を受け、社名が公表されれば、投資家や取引先からの信頼に深刻な影響を及ぼします。 国がCLOに求める二つの数値目標 CLOの役割は名義上の配置ではありません。 国は、以下の具体的な数値目標の達成を求めています。 荷待ちおよび荷役時間を1運行あたり1時間以内に短縮すること 積載率を50%以上に引き上げ、輸送能力を約16%向上させること CLOは、これらを達成するための中長期計画を策定し、毎年国へ報告する義務を負います。 これはドライバー不足が深刻化する中で、日本の物流を止めないための待ったなしの施策です。 飯野の視点 CLO設置は守りではなく攻めの経営 今回の調査では、義務の対象外である非特定荷主の中でも、5%がCLO任命を検討しているという前向きな動きが見られました。 物流を単なるコストとして外部に委ねる時代は終わりつつあります。 これからは物流を戦略的に管理できる企業だけが、安定的に商品を届け続けることができます。 物流を制する者が市場を制するという時代に入ったと言えるでしょう。 「任命されることはない」と回答した42%の企業には、この制度が罰金の問題ではなく、経営インフラの再構築であることを改めて認識していただきたいところです。 動画視聴はこちらから

2025年コンテナ荷動きは過去最多へ 米関税と新興国シフトが映す物流構造の変化 | 物流ニュース・物流ラジオ

2025年コンテナ荷動きは過去最多へ 米関税と新興国シフトが映す物流構造の変化

本日は、2025年の世界のコンテナ荷動きが過去最多を更新する見通しであるという最新リポートについて解説します。 世界経済の先行き不透明感が強まる中でも、モノの流れそのものは衰えていません。 その一方で、荷動きの中身を見ると、物流の重心が確実に変化していることが分かります。 2025年のコンテナ荷動きは過去最多を更新 日本郵船の調査グループが公表した「世界のコンテナ輸送と就航状況2025年版」によると、2025年の世界コンテナ荷動きは前年に続き過去最多を更新する見通しです。 2025年1月から10月までの累計取扱量は、前年同期比4%増の約1億5,900万TEUとなりました。 景気減速や地政学リスクが指摘される中でも、世界の物流需要は依然として底堅いことが示されています。 北米の失速と新興国・欧州の台頭 しかし、この成長を地域別に見ると、大きな変化が浮かび上がります。 これまで世界の荷動きを牽引してきた北米向けは減速しています。 アジア発北米向けのコンテナ輸送量は、前年同期比で4%減少しました。 これは、米国による対中関税引き上げを見越した駆け込み需要が春先で一巡し、9月以降は反動減が続いているためです。 一方で、その落ち込みを補って余りある成長を見せているのが欧州と新興国市場です。 欧州向けは前年同期比9%増 中南米 中東 インド亜大陸向けは15%増 アフリカ向けは26%増 特にアフリカ向けの荷動きは、中南米に迫る規模まで拡大しています。 世界の消費と生産は、もはやアメリカ一極集中ではなく、多極化が進んでいます。 関税が変える「世界の工場」の位置 今回のデータで見逃せないのが、関税政策が物流の出発地そのものを変えている点です。 5月の米中関税合意以降、中国発の荷動きは減少傾向にあります。 その一方で、ASEAN発のコンテナ輸送量は10月まで前年を上回る水準で推移しています。 これは、関税回避を目的とした生産拠点の移転や経由地変更が着実に進んでいる証拠です。 喜望峰迂回が支える船腹需要 次に、船の供給サイドを見てみましょう。 2025年末までに、世界のコンテナ船の総船腹量は前年比6%増の約3,235万TEUに達する見込みです。 通常であれば、これだけ船が増えれば供給過剰が懸念されます。 しかし現状では、深刻な船余りは起きていません。 最大の理由は、紅海情勢の悪化による喜望峰迂回の長期化です。 航海距離が延びることで、同じ量の貨物を運ぶのにより多くの船が必要となり、供給増が吸収されています。 さらに港湾混雑の常態化も、船の稼働効率を押し下げ、需給を引き締める要因となっています。 Drewryが見る2026年のリスク ここで、別の視点として、英国の海事コンサルタントであるDrewryの見解も確認しておきましょう。 Drewryは、2025年の荷動き成長については堅調としつつも、2026年以降の供給過剰リスクを警告しています。 現在、新造船の発注残は1,000万TEUを超えています。 もし紅海情勢が沈静化し、船がスエズ運河ルートに戻れば、一気に船腹が余り、運賃市況が崩れる可能性があります。 さらに2026年には米国の中間選挙も控えており、物価対策や補助金政策の行方次第で荷動きの方向性が変わる可能性もあります。 経営層と物流担当者が見るべき視点 2025年の好調な荷動きは、決して安心材料だけではありません。 地政学リスクの解消が需給バランスを一変させる可能性を常に意識する必要があります。 短期の好調に目を奪われるのではなく、中長期で物流網と在庫戦略を見直す視点が求められています。 動画視聴はこちらから

FP1改変の衝撃と、日本の港が突きつけられた4つの課題 | 物流ニュース・物流ラジオ

FP1改変の衝撃と、日本の港が突きつけられた4つの課題

本日のテーマは、ONEが運航する基幹サービスであるFP1の改変についてです。 今回の発表を一言でまとめると、日本発欧州向け直行便の事実上の終了と、釜山トランシップへの完全移行という二つの大きな転換点に集約されます。 この動きは単なる航路改編ではなく、日本の港湾が置かれている現実を浮き彫りにする出来事だと言えるでしょう。 動画視聴はこちらから FP1とはどのような航路だったのか FP1は正式名称をFP1 Pendulum Serviceといい、欧州とアジア、さらに北米西岸を結ぶ超長距離のペンデュラム型航路として運航されてきました。 日本の荷主にとって、この航路は極めて利便性が高く、東京や神戸といった主要港に欧州向けの本船が直接寄港することで、積み替えなしで貨物をヨーロッパまで輸送できる点が大きな強みでした。 リードタイムが安定し、積み替え作業がないことで貨物ダメージのリスクも抑えられるため、日本輸出を支える大動脈のような存在だったのです。 FP1改変によって何が変わったのか しかし今回、ONEはこのペンデュラム配船を分断する決断を下しました。 新しいFP1は欧州とアジア間の往復に縮小され、その寄港地リストから日本の港が外れる形となりました。 これにより、日本発欧州向けの貨物は、原則として釜山港でのトランシップを前提とした輸送へと切り替わります。 日本各港からはフィーダー船で釜山港へ輸送され、そこで欧州向けの大型本船へ積み替えられる流れになります。 ONEが示す表向きの理由 ONEが公式に挙げている理由は、大きく二つあります。 スケジュール定時性の回復 地政学的リスクへの対応 従来の欧州・アジア・北米を結ぶ長大な航路では、どこか一か所で遅延が発生すると、その影響が地球の裏側まで波及する構造的な問題を抱えていました。 航路を分断することで、この遅延の連鎖を断ち切り、定時性を改善したいという狙いがあります。 また、紅海情勢の悪化により喜望峰回りが常態化し、航海日数と必要船腹が増える中で、効率の悪い寄港地を削減せざるを得なくなった点も無視できません。 日本の港が直面する四つの構造的課題 ただし、これだけで今回の決断を説明することはできません。 なぜ日本発着ではなく釜山経由なのか。 なぜ日本の船社であるONEが、日本を抜港する判断を下したのか。 その背景には、日本の港が抱える四つの構造的課題があります。 課題① 荷物量の低下 日本から欧州へ向かう輸出貨物の絶対量は、長期的に見て減少傾向が続いています。 生産拠点の海外移転が進み、かつてのようなボリュームを日本単独で確保することが難しくなっています。 2万TEU級の超大型船にとって、荷物が十分に集まらない港へ寄港するメリットは、年々小さくなっています。 課題② 港の分散 日本の港湾は、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸と広く分散しています。 一方、釜山港は国策として機能を集約し、効率的なスーパーハブとして整備されてきました。 巨大船が日本の複数港を回って貨物を集める運用は、現在の市況では各駅停車のような非効率な形になっています。 課題③ コストと使い勝手 釜山港は24時間稼働を前提とした運用体制を整え、トランシップコストも低く抑えられています。 日本の港も改善は進んでいるものの、グローバル競争の中では依然として差があります。 船社の立場から見れば、日本各港で集荷するよりも、釜山一か所に集めてもらう方が、コスト面でも運用面でも合理的なのです。 課題④ 地理的なロス 日本はアジア航路の最奥に位置しており、欧州側から見れば行き止まりに近い場所にあります。 中国や韓国で折り返せば短縮できる航海日数が、日本まで寄港することでさらに数日延びてしまいます。 特に喜望峰回りが続く現状では、この数日のロスが船社にとって看過できない負担となっています。 FP1改変は、日本の港湾競争力の低下を象徴する出来事だと言えるでしょう。 物流担当者が考えるべき次の一手 今回のFP1改変は、単なる不便さの問題ではありません。 リードタイムの延長や積み替えリスクを前提に、物流戦略そのものを見直す必要があります。 他社欧州サービスとの比較検討 航空便との併用によるリスク分散 海外在庫拠点の活用 2025年以降は、日本パッシングという現実を前提にしたドライで実務的なサプライチェーン再構築が求められます。 物流が変われば、ビジネスの形も変わります。 今回のニュースを、単なる制約ではなく、次の一手を考えるきっかけとして捉えていただければと思います。