投稿日:2026.05.07 最終更新日:2026.05.07
北米SC交渉2026年度|西岸$1,800・東岸$3,200の着地点
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
2026年度・北米SC交渉まとめ|中東情勢が運賃下落を食い止めた
「今年こそ大幅値下がり」と多くの関係者が予測していた2026年度の北米航路サービスコントラクト(SC)交渉。蓋を開けてみると、年初の下げ予測とは異なる着地点となった。北米西岸向け約1,800ドル、東岸向け約3,200ドルという成約水準の背景には、中東情勢という想定外の変数が大きく影響している。本稿では交渉の経緯と実務への影響を整理する。

年初の下げ予測はなぜ生まれたか
2026年度SC交渉の開幕前、市場参加者の多くが運賃下落を見込んでいた。その背景には主に二つの要因がある。
- スエズ運河の通航再開の機運:紅海迂回ルートが解消されれば船腹の実質供給量が増加し、需給が緩む
- 大型船の竣工ラッシュ:2025年末から続く新造船の大量投入が、市場全体の供給過剰感を高めていた
この二重の下方圧力を受け、荷主側は強気の姿勢で交渉に臨むケースが多く見られた。スポット市場でも北米西岸向けは2025年2月末まで40フィートコンテナあたり2,000ドルを一時下回り、下げムードを裏付けるような動きが続いていた。
風向きを変えた中東情勢
交渉の流れが変わったのは、イランの軍事衝突を契機とした地政学リスクの再燃だ。紅海・スエズ運河の通航リスクが再び高まり、船社各社は迂回ルートでの運航継続を余儀なくされた。これにより実質的な船腹供給量が絞られ、年初から続いた下げ圧力に歯止めがかかった。
中東情勢が市場に与えた主な影響:
1. 船社の迂回ルート運航継続による1航海あたりの所要日数増加
2. 稼働船腹の実質的な減少
3. 荷主側の「大幅値下げ期待」の後退
ハパックロイドのオンラインイベントでは「多くのBCOが最終決定を遅らせている」との説明があった一方、日本発に関しては「極端に成約が遅れる例はあまり見られなかった」という船社関係者のコメントも伝えられており、成約タイミングによって水準にばらつきが生じた。

SC水準とスポット市場の乖離
2026年度SC交渉の最終的な成約水準は以下のとおりだ。
| 航路 | SC成約水準(目安) |
|——|——————|
| 北米西岸向け(40ft) | 約1,800ドル |
| 北米東岸向け(40ft) | 約3,200ドル |
一方、4月30日公表のSCFI(上海発運賃指数)では北米西岸向け2,722ドル、東岸向け3,691ドルと、それぞれ前週比136ドル・121ドルの上昇を記録している。西岸向けは3月以降2,000ドル台半ばで推移しており、EFS(緊急燃料サーチャージ)の導入も価格上昇を後押しする形となっている。
SC水準とスポットの差(西岸ベース):約900ドル
この差は荷主にとって極めて大きい。年間契約を締結していない企業はスポット高騰の影響を直接受けており、SC交渉を先送りにしたコストが今まさに顕在化している。

航路再編の動き:ONEとCMA CGM
運賃交渉と並行して、主要船社による航路再編も注目される。
ONE(日本郵船・商船三井・川崎汽船の統合会社):
– 北欧州と北米西岸のサービスを分離
– 北米西岸は日本とのシャトルサービス「PS1」に改編
– 北欧州向けは母船寄港を取りやめ、釜山接続に変更
– 改編に伴い他社へのスロット提供を一部絞り込み
CMA CGM:
– 4月より日本発北欧州向け直航「OCR」を新設
– 5月より北米西岸サービス「EX1」の往航日本寄港を開始
– 日本発北米西岸の直航便は、FP1が事実上PS1へ改編となる一方、EX1の追加により2便体制へ移行

荷主・フォワーダーが今すぐ確認すべきポイント
今回の交渉結果と航路再編を受け、実務上で対応が必要な事項を整理する。
① 使用中サービスの変更確認
– FP1→PS1など、利用サービスが改編されていないか確認
– Transit Timeや経由港が変わっている可能性があるため、出荷スケジュールへの影響を再確認
② SC未締結の場合はコスト再試算を
– 現状のスポット水準(西岸2,700ドル台)とSC水準(1,800ドル)の差は約900ドル
– 年間出荷量を掛け合わせると無視できないコスト差となる。今後のタームでのSC締結も含め試算が必要
③ 中東情勢を注視した運賃戦略の見直し
– 中東リスクが落ち着けば再び下げ圧力が戻る可能性がある
– 2026年後半の更改時期に向け、早めにシナリオを検討しておくことが望ましい
北米航路の運賃戦略やSC交渉の進め方についてお悩みの方は、ぜひHPS CONNECTへご相談ください。最新の市況情報をもとに、貴社の出荷規模や航路に合った最適なアプローチをご提案いたします。
