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2026年5月

コンテナ船社2026年第1四半期決算:運賃下落と中東情勢悪化のダブルパンチ | その他

コンテナ船社2026年第1四半期決算:運賃下落と中東情勢悪化のダブルパンチ

2026年第1四半期のコンテナ船社決算が出揃い、主要船社軒並みが大幅減益という厳しい結果となった。世界最大手のマースクをはじめ、ハパックロイド、CMA CGM、韓国のHMM、台湾船社各社まで、業界全体で収益が前年同期を大きく下回る状況である。運賃下落に加えて中東情勢悪化の影響も重なり、船社経営にとって複合的な打撃となっている。 2026年第1四半期決算の概要 2026年第1四半期のコンテナ船社決算では、ほぼ全ての主要船社で大幅な減益が確認された。世界最大手のマースクはオーシャン事業で積み高を伸ばしたものの、平均運賃の大幅下落により収益は前年同期を大幅に下回った。 ハパックロイドも同様に損益が悪化し、CMA CGMは輸送量・平均運賃ともに前年同期を下回り赤字転落という深刻な状況となった。アジア勢でも韓国のHMMや台湾船社各社が利益水準を大幅に落としており、業界全体での収益悪化が鮮明となっている。 運賃急落の背景と要因 大幅減益の主因は前年同期からの運賃急落にある。2025年第1四半期は紅海迂回と米中相互関税導入前の駆け込み需要で運賃が高騰していたが、2026年はその反動が色濃く出た形となった。 新造船竣工が継続する中、供給増のペースが需要を上回る状況が運賃の上値を抑制している。さらに米関税政策の不透明感も荷主の出荷判断に影を落とし、需給バランスの悪化に拍車をかけている。 - 前年同期の特殊要因:紅海迂回と駆け込み需要による運賃高騰- 供給過剰:新造船竣工継続による船腹供給増- 政策不透明感:米関税政策による荷主の慎重姿勢 中東情勢悪化の複合的影響 2026年3月の米・イスラエルによるイラン攻撃後、ペルシャ湾岸や中東向け貨物において異例の対応が必要となった。運航停止、抜港、迂回、積み替え、代替港転送など、通常では考えられない運航変更が相次いでいる。 ただし、第1四半期決算に反映されるのは3月分のみのため、中東情勢の真の影響は見えづらい状況である。本格的な影響は第2四半期以降の決算で明らかになると予想される。 燃油価格急騰とコスト圧迫 中東情勢悪化に伴い燃油価格が急騰している。迂回航行により航行距離が延長され燃料消費量が増加し、さらに燃油価格上昇で燃料費負担が急拡大している状況だ。 アジア-欧州航路では喜望峰回りでスエズ運河経由より約40%航行距離が延長されるため、燃料費負担の増加は深刻な問題となっている。 各社の対応策とサーチャージ戦略 各船社は4月以降、緊急燃油サーチャージや各種追加サーチャージの導入・引き上げでコスト回収を急いでいる。燃油サーチャージについては原油価格の変動に連動した仕組みの見直しも検討されている状況だ。 しかし、運賃市況が軟調な中でのサーチャージ転嫁には限界もあり、船社の収益圧迫要因となっている。 市況転換の兆しと今後の展望 足元では中東情勢の不透明感とピークシーズン貨物の前倒し出荷観測を背景に、主要航路で運賃上昇が進んでいる。ただし、供給過剰構造が根本的に解決していない中での上昇は地政学リスクプレミアムの性格が強い。 このため、情勢安定化とともに再び運賃が下落する可能性も指摘されており、持続的な回復には時間を要すると考えられる。 日本企業への影響 運賃上昇とサーチャージ増により輸入コストが上昇している。日本の商社や製造業では以下の対応策が加速している: - サプライチェーンの多様化- 東南アジア経由での調達拡大 - 在庫戦略の見直し- 輸送ルートの再編 4-6月期以降の本格的影響 4-6月期以降、燃油高と輸送混乱対応の追加コストが本格的に船社業績を圧迫する見込みである。中東情勢の長期化でサーチャージによるコスト転嫁が進めば、荷主の輸送コスト負担が急増し、最終的には消費者価格にも影響が及ぶ可能性が高い。 船社各社は短期的なコスト増への対応に追われる一方で、中長期的な航路網の再編や効率化投資も迫られており、業界再編の動きも加速する可能性がある。地政学リスクの常態化を前提とした新たなビジネスモデルの構築が、各社に求められている状況と言えるだろう。

マースク月5億ドルの燃料危機|海運コスト高騰の影響 | 物流ニュース・物流ラジオ

マースク月5億ドルの燃料危機|海運コスト高騰の影響

世界最大のコンテナ船社マースクが、2026年第1四半期に月間5億ドル(約700億円超)の燃料追加コストに直面していることが明らかになった。 中東情勢の悪化を発端とする航路変更・燃料高騰・供給過剰という三重苦は、日本の輸出入ビジネスにも直接波及しうる構造的な問題だ。本稿では、マースクCEOの発言を軸に業界の現状と今後の方向性を整理する。 インテグレーター戦略が赤字の穴を埋める——2026年Q1決算の実態 マースクが発表した2026年1〜3月期決算では、コンテナ海運事業のEBIT(利払い・税引き前損益)が赤字となった。しかし、物流・サービス事業とターミナル事業の成長がその穴を埋め、グループ全体としての収益は補われている。 CEOのヴィンセント・クラーク氏は「過去10年にわたって実施してきたインテグレーター戦略により、マースクは多様で強靭な収益源を確保している」と説明する。海運単体への依存を脱し、複数事業で収益を分散する構造が、荒波の中でも機能していることを示す結果だ。 インテグレーター戦略の三本柱:- コンテナ海運事業:今期は赤字、燃料高騰と航路変更が直撃- 物流・サービス事業:今後も大きな影響は想定していないと判断- ターミナル事業:バーレーンおよびオマーン・サラーラー港に自社拠点を保有 月5億ドルの衝撃——燃料高騰と中東情勢が引き起こすコスト膨張 今回の報告で最も注目されるのが、「現時点で月間5億ドルの追加コストが発生している」というCEO自身の発言だ。年換算60億ドル(約9,000億円)規模の追加負担は、一企業の問題にとどまらない。 中東情勢の悪化により、マースクはホルムズ海峡の通航を一時停止。戦闘開始以降は紅海ルートへの段階的な復帰も取り止めており、すべての船便がアフリカ南端の喜望峰を迂回するルートを余儀なくされている。距離の延伸に伴う燃料消費量の増大と所要日数の増加が、コスト膨張の根本原因だ。 現場への直接的な影響:- 影響を受けている中東諸国にグループで6,000名の従業員が在籍- ペルシャ湾内に自社船・定期用船6隻が閉じ込められている状態- クラークCEOは「全従業員の安全は確認している」と強調 荷主が知るべきコスト転嫁の現実——運賃とサーチャージの動向 月5億ドルものコスト増を船社がすべて自己負担し続けることは現実的ではない。マースクはすでに運賃やサーチャージを通じた価格転嫁を進めており、クラークCEOは「短期運賃の上昇やサーチャージなどを通じて回収できている」と明かす。 荷主にとって具体的に影響が出やすいのは以下の項目だ。 注目すべきサーチャージ項目:- BAF(燃料調整金):燃料価格に連動して変動する基本的な附加料金- EBS(緊急燃料サーチャージ):急激な燃料高騰時に追加される臨時料金- 喜望峰迂回に伴う附加料金:航路変更による追加コストの転嫁 短期的な燃料供給については、船舶搭載分と陸上貯蔵施設の在庫を合わせ、今後1四半期(約3ヵ月)分をすでに確保済みとのことだが、それ以降の燃料油価格が高止まりした場合、サーチャージの上昇圧力は継続する見込みだ。見積もり取得の段階から附加料金の動向を注視する必要がある。 減速航海と紅海再開——二つの出口戦略とその意味 コスト圧力への対応策として、マースクが描く方向性は大きく二つある。 ① 減速航海(スロー・スチーミング)の導入 クラークCEOは「燃料油コストの上昇は、減速運航の新たな波を引き起こすと考えている」と述べている。現在の長距離航路での平均航行速度は約16〜17ノットだが、これを14.5〜15ノット程度に抑えることで燃料消費を大幅に削減できる。「現在の燃料油価格を考えると、かなりプラスの効果がある」とCEO自身が認めるほど、経済合理性は高い。 ただし、減速航海には一つの副作用がある。同じ輸送量をこなすためにより多くの船舶が必要になるため、船腹の配置戦略を同時に再構築しなければならない。 ② 紅海通航の段階的再開 紅海経由に戻れれば喜望峰迂回に比べて燃料消費量が大幅に削減できる。さらに「一部サービスの紅海通航再開によって確保できた船腹量を、減速運航に再投入できる可能性が出てくる」とCEOは述べており、紅海再開×減速航海の組み合わせによる効率化シナリオを描いている。現時点では安全確保が最優先であり、情勢次第での段階的再開が視野に入っている。 350万TEUの供給過剰リスク——中長期的な運賃水準への影響 業界全体を見渡すと、より構造的な問題も浮かび上がる。クラークCEOによると、今年5月時点で150万TEUの供給過剰がすでに生じているという。 さらに深刻なのは、喜望峰迂回航路によって現在は約200万TEU分の船腹量が事実上「吸収」されているという点だ。仮に紅海通航が正常化した場合、この200万TEUが一気に市場に戻り、合計で最大350万TEUの供給過剰となるリスクがある。加えて、来年以降は新造コンテナ船の竣工が再び増加する見通しで、供給圧力はさらに高まる。 業界が描く三つの対応策:- 減速航海の普及:業界全体での実施により100万〜150万TEU相当の供給を吸収できる可能性- 高齢船のスクラップ促進:老朽船を廃船にすることで需給バランスを回復- 規律ある供給管理:各船社が過当競争を避け、市場全体の安定を維持 クラークCEOは「規律を守れば対応可能な規模だと考えている」としているが、業界全体が協調できるかどうかが運賃水準を左右する。荷主の立場からは、スポット運賃と長期契約の組み合わせを慎重に検討する局面が続きそうだ。 --- 燃料高騰・中東情勢・供給過剰という複合的な課題の中で、マースクが描く戦略は業界全体のゆくえを映し出している。これらの動向は、日々の運賃交渉や輸送条件の見直しに直結する問題だ。自社の物流コスト管理や最適な運賃戦略についてお悩みの方は、ぜひHPS CONNECTにご相談ください。最新の市況情報をもとに、貴社に合った輸送プランをご提案いたします。

ピークシーズン消滅|米国輸入急減とイラン戦争の真因 | 物流ニュース・物流ラジオ

ピークシーズン消滅|米国輸入急減とイラン戦争の真因

毎年夏から秋にかけて訪れるはずの「ピークシーズン」が、2026年も事実上消滅するかもしれない——そんな衝撃的な見通しが、業界の専門機関から相次いで示されている。全米小売業協会(NRF)とHackett Associatesが発表した最新のグローバルポートトラッカーは、「従来型のピーク出荷シーズンが今年も気づかれないまま過ぎ去る可能性がある」と明言した。これは昨年に続く2年連続の消滅であり、単なる一時的な落ち込みではなく、市場の構造変化を示唆する事態だ。本稿では、その背景にある複合要因を整理しながら、荷主・フォワーダーが今取るべき視点を考察する。 ピークシーズン消滅の真因|イラン戦争と消費者マインドの崩壊 2026年のピークシーズン不在を語るうえで、最も大きな影響要因として挙げられるのがイランとの戦争だ。すでに開戦から3ヶ月目に突入したこの紛争は、世界経済の不確実性を急速に高めている。 NRFの供給チェーン担当副会長ジョナサン・ゴールド氏は次のように述べている。 > 「イランとの紛争が引き起こす世界経済の不確実性により、インフレが上昇し、消費者信頼感が低下している。輸入の減少傾向は続く見込みだ。」 中東情勢の悪化はホルムズ海峡の通行にも影響しており、船舶への攻撃リスクが顕在化している。こうした状況のなかで、小売業者が積極的に在庫を積み増す判断を下せないのは当然の帰結といえる。 さらに消費者マインドの悪化も深刻だ。5月8日に発表されたミシガン大学の消費者信頼感指数は、過去最低の48.2(4月比▲1.6ポイント)を記録。調査では回答者の約3分の1がガソリン価格を自発的に言及し、約30%が関税について触れた。調査ディレクターのジョアン・スー氏は「中東情勢が解決し、エネルギー価格が下落するまでは、消費者心理が大きく改善する見込みは薄い」と述べており、短期的な回復は期待しにくい状況だ。 今起きていることのポイント:- イランとの戦争が世界経済の不確実性を増幅- 消費者信頼感指数が過去最低の48.2まで低下- 在庫を持つこと自体がリスクになる経営環境が定着 数字の罠に注意|小売売上高と輸入需要は別物 ここで一点、注意が必要なデータがある。米国商務省によれば、3月の米国小売売上高は前月比1.7%増の7,521億ドルと好調に見える。しかしその主な押し上げ要因はガソリン価格の急騰だ。 ガソリン代がいくら上昇しても、それはコンテナで輸入される商品ではない。つまり、小売売上高が増加しているからといって、コンテナ輸入需要が回復していると解釈するのは早計だ。 同様に、NRFが予測する5〜6月の輸入は「前年比でわずかにプラス」とされているが、これは比較対象が弱いことによる見かけ上の好調に過ぎない。2025年の5〜6月は、トランプ政権が広範な関税を導入した直後で輸入が急落していた時期であり、その低い基準値との比較だからプラスに見えているだけだ。 数字を読む際に意識すべき点:- 小売売上高の内訳(ガソリン・サービス vs 輸入商品)を必ず確認する- 前年比は「比較基準の強弱」によって大きく歪む- 表面上の数値より、構造的なトレンドを優先して判断する 7月以降に顕在化する本当の弱さ|NRFの月別予測を読む 見かけのプラスが剥がれる7月以降、市場の実態はどう推移するのか。NRFの月別予測は次の通りだ。 | 月 | 予測TEU | 前年比 || 7月 | 220万TEU | ▲約8% || 8月 | 219万TEU | ▲5.5% || 9月 | 208万TEU | ▲1.3% | 特に注目すべきは9月だ。例年であれば9月はホリデーシーズン向け仕入れが集中する「ピークシーズンの核心」に当たる月だが、今年は2026年の中でも「最も弱い月のひとつ」と位置づけられている。 フォワーダー大手MTSロジスティクスの輸入担当エグゼクティブバイスプレジデント、セルカン・カヴァス氏もこう断言している。 > 「もう従来型のピークシーズンはない。2〜3ヶ月間、前年比でプラスになる月はあるかもしれないが、全体的な期待値は今非常に低い。顧客からも業界全体からも同じ声を聞いている。」 これは悲観論ではなく、市場の構造変化を現場で体感している実務者の証言として重く受け止めるべきだ。 需要低迷なのに能力増強|船社の動きと運賃への影響 ここで注目すべき矛盾がある。需要が低迷しているにもかかわらず、コンテナ船会社はアジア〜米国間の太平洋横断航路への投入能力を積極的に増やしている。 eeSea社のデータによれば:- 5月:約200万TEU(前年比+25%)- 6月:213万TEU- 7月:220万TEU 加えて、計画欠便(ブランクセーリング)も昨年と比較して大幅に少なく、各社がスペースを積極提供している状況だ。 なぜ需要が落ちているのに供給を絞らないのか。主な理由はシェア争いにある。市場が縮小する局面だからこそ、スペースを確保することで荷主を引き留めようとする動機が働く。また、一度減便すると需要回復時の対応が遅れるというリスクへの備えもある。 この能力過剰は運賃への下落圧力を生む。表面上はピークシーズンサーチャージ(PSS)や燃油サーチャージ(BAF)が引き上げられ運賃水準は高く見えるが、スペース調達の実態としては以前より確保しやすい環境になっている局面もある。 荷主・フォワーダーへの示唆:- スペース調達の環境が改善している今を戦略的に活用する- 運賃の「表示額」と「実態」のギャップを見極める- 不確実性が高い時期こそ、早期の条件交渉が有効になり得る 構造変化の時代に求められる「判断力」 2026年の米国輸入市場は、イランとの戦争・消費者信頼感の歴史的低下・関税の影響という三重の逆風を受け、ピークシーズンが事実上消滅する見通しだ。5〜6月の前年比プラスはあくまで比較効果であり、7月以降に本当の弱さが表面化してくる。 一方でコンテナ船各社は能力増強を続けており、スペース面では一定の余裕が生まれている。この環境を「ただスペースが空いている」と捉えるのではなく、市場全体の文脈を踏まえたうえで荷主にとって最適なタイミング・条件を提案できるかどうか——そこにフォワーダーとしての価値の差が生まれる。 不確実な時代こそ、正確な情報と分析が競争優位の源泉となる。今後の物流戦略や輸出入計画についてお悩みの方は、ぜひHPS CONNECTにご相談ください。市場動向を踏まえた実務的なアドバイスをご提供します。

アマゾンが3PL参入|物流版AWSのASCSとは | その他

アマゾンが3PL参入|物流版AWSのASCSとは

2025年5月、アマゾンが自社の物流ネットワークを外部企業に開放する新サービス「Amazon Supply Chain Services(ASCS)」を発表した。これは単なる新機能の追加ではなく、フォワーダーや既存の3PL企業が長年担ってきた市場に、アマゾンが正面から参入することを意味する。AWSがITインフラを外販してクラウド市場を制したように、アマゾンが物流インフラの外販によって業界の構造を塗り替えようとしている。本稿では、ASCSの概要・サービス内容・競合への影響・日本の物流業界への示唆を整理する。 ASCSとは何か|アマゾンが打ち出した物流の外販サービス 2026年5月4日、アマゾンは「Amazon Supply Chain Services(ASCS)」の開始を正式に発表した。同サービスは、アマゾンが自社EC事業を支えるために構築してきた物流ネットワーク——貨物輸送・在庫保管・フルフィルメント・小口輸送——を一体として外部企業に提供するものだ。 最大のポイントは、対象がアマゾンのマーケットプレイス出品者に限らない点である。小売・製造・ヘルスケア・自動車など、あらゆる業種・規模の企業がASCSを利用できる。アマゾンが本格的な第三者向け物流サービス、すなわち3PL事業に参入したことを意味する。 ASCS担当のピーター・ラーセン・バイスプレジデントは次のように明言している。「クラウドコンピューティング分野でAWSが行ってきたように、数十年にわたって実証してきたサプライチェーンサービスのインフラ・知見・規模を世界中の企業に提供していく」。AWSとまったく同じ発想——自社事業のために構築したインフラを外販し、新たな市場を創る——を物流で再現しようとしている。 圧倒的な実績基盤|過去3年で数億個の配送実績 ASCSは突然始まったサービスではない。アマゾンはすでに過去3年間で、数十万の出品者向けに数億個の貨物輸送・保管・配送を手掛けてきた実績を持つ。この巨大なオペレーションをそのまま外部企業向けに開放するのがASCSである。 サービスの対象範囲も大幅に拡大された。 自社ECサイト経由の注文他のECマーケットプレイス(Amazon以外を含む)SNS経由の販売実店舗向けの補充 複数の販売チャネルを持つ企業の物流を、アマゾンのネットワーク一本で一括して引き受ける体制が整った。すでにP&G・3M・ランズエンド・アメリカンイーグルといった大手企業が先行導入しており、製造業から小売業まで幅広い業種で実用化が進んでいる。 サービスの3本柱|貨物輸送・フルフィルメント・小口輸送 ASCSは以下の3分野で構成されている。 1. 貨物輸送(Freight) 鉄道を含む陸・海・空のすべての輸送モードをカバーする。アマゾンが保有・活用する8万台以上のトレーラー・2万4,000基以上のコンテナ・100機以上の航空機のネットワークにアクセスできる。通関手続きの簡素化・輸送可視化・時間厳守輸送といった付加価値オプションも提供される。 2. 配送・フルフィルメント(Distribution and Fulfilment) 海外からの輸入在庫の保管需要地に近接した在庫配置複数販売チャネルへの出荷を単一ネットワークで対応AIを活用した需要予測と在庫配置最適化 複数販路で在庫を分断して持つことによる欠品・過剰在庫のリスクを、アマゾンのネットワークに一元化することで解消できる点が大きな訴求力となる。 3. 小口輸送(Parcel Shipping) 2〜5日の配送リードタイム・週7日配送集荷・持ち込みの両対応ラベル作成から配達完了までの追跡機能・配送完了時の写真証跡 アマゾンプライムで培った配送品質を、自社ECや他のチャネルにも適用できることになる。 荷主企業へのメリットとリスク|一元管理の恩恵と依存リスクの両面 荷主企業の視点から、ASCSのメリットとリスクを整理する。 メリット- 複数の販売チャネルをまたいだ在庫・物流の一元管理- AIによる需要予測で在庫精度が向上- アマゾンの圧倒的な配送ネットワークへのアクセス- これまで複数の3PL・キャリアと個別に締結していた契約を一本化できる リスク- アマゾンへの依存度が高まるほど、料金改定・条件変更への交渉力が低下する- 独自の物流ノウハウが社内に蓄積されにくくなる- AWSと同様、「依存しすぎた」という問題が物流領域でも表面化する可能性がある ASCSを活用しながらも、依存リスクをコントロールするバランス設計が荷主企業には求められる。 日本の物流業界への示唆|フォワーダー・3PLはどう対応するか AWSが登場した当初、多くのIT企業は「自社のインフラが不要になる」とは想定していなかった。しかし現在、AWSは世界最大のクラウドサービスとして確固たる地位を持つ。ASCSはその物流版として、業界の構造的変化の起点となりうる。 既存の3PL企業やフォワーダーにとって重要なのは、アマゾンと正面から戦うのではなく、アマゾンが対応しにくい領域で差別化を図ることだ。 国際輸送・通関・規制対応などの専門性が求められる業務危険物・冷蔵冷凍・特殊貨物など対応難易度の高い品目BtoBの複雑なサプライチェーンにおける細やかなコンサルティング アマゾンが得意とするのは主にBtoCの大量処理型物流だ。専門性・柔軟性・顧客への密着度が問われる領域では、フォワーダーや専門3PLの強みがまだ十分に活きる。どこで差別化するかを今から明確にしておくことが、生き残りへの鍵となる。 ASCSの登場は、物流業界が「インフラのコモディティ化」という新たな局面に入ったことを示している。荷主企業にとっては利便性が高まる一方、物流事業者にとっては専門性の再定義が急務だ。貴社のサプライチェーン戦略や物流パートナー選定についてお悩みの方は、ぜひHPS CONNECTにご相談ください。国際輸送・通関・3PL選定など、貴社の課題に合わせた最適な解決策をご提案します。

ホルムズ海峡危機|米軍護衛作戦が48時間で停止した理由 | 物流ニュース・物流ラジオ

ホルムズ海峡危機|米軍護衛作戦が48時間で停止した理由

2026年5月、世界の原油輸送の約2割が通過するホルムズ海峡が、地政学リスクの最前線となっている。米軍が商船護衛作戦を開始してわずか48時間で停止。イランは新たな通航管理機関を設立して通航料の徴収を始め、その間にタンカーやコンテナ船が次々と攻撃を受けるという、前例のない混迷が続いている。本稿では、この急激な情勢変化が日本の物流・貿易現場に何をもたらすのか、時系列に沿って整理する。 動画視聴はこちら 48時間で停止した米軍護衛作戦「プロジェクト・フリーダム」 トランプ大統領は2026年5月3日、米艦艇がホルムズ海峡通航船を護衛する作戦「プロジェクト・フリーダム」の開始を発表。翌5月4日の現地時間朝に作戦が始まった。イランによる実質的な通航制限に対し、米国が軍事力で航行の自由を保証しようとする試みだった。 しかし約2日後の5月6日、トランプ大統領は「イランとの間で合意に向けた大きな進展があった」として計画を短期間停止すると発表し、合意の最終決定を注視するとした。 この急展開に、国際海運業界はすぐに反応した。国際海運団体BIMCOのヤコブ・ラーセン最高安全責任者は停止直後に声明を発表し、「開始直後の停止に驚いた」 と表明。あわせて「イランとの調整なしの通航には大きなリスクが伴う」と強く警告している。 > 作戦の開始・停止があまりにも唐突で、船主・船社が対応を組み立てようにも判断基準が次々と変わってしまう。これが現場にとって最も困難な状況だ。 イラン「ペルシャ湾海峡局」の設立と船主が直面するジレンマ 米国の計画停止発表直前の5月5日、イラン国営メディアは新機関「ペルシャ湾海峡局」の設立を報じた。この機関を通じ、船主はメールでイラン革命防衛隊に連絡し、航行許可の手続きを行えるとされている。事実上、イランがホルムズ海峡の通航を管理し、通航料を徴収する体制が整った形だ。 この新機関の設立により、船主は以下の深刻なジレンマに直面している。 通航料を支払う場合:米国の制裁対象となるリスクがある支払わない場合:イランによる通航妨害・拿捕のリスクがある どちらを選んでも大きなリスクが伴うこの構造は、荷主にとっても「どちらが安全か」ではなく「どちらのリスクを取るか」という判断を迫るものだ。代替ルートの検討とリスク説明を並行して進めることが、フォワーダー・荷主双方に求められている。 相次ぐ実力行使と船舶への攻撃 情勢の悪化は外交・制度面にとどまらない。軍事的な実力行使と商船への攻撃が相次いで報告されている。 米軍によるイラン船籍VLCCの無力化 米中央軍は5月7日未明、イラン船籍のVLCC(大型原油タンカー)「Hasna」を航行不能にしたと発表した。オマーン湾をイランの港へ向けて航行中だった同船に対し、空母から機関砲を数発放ち舵を破壊。「封鎖措置への違反を複数回警告したが従わなかった」としており、中央軍は「封鎖措置は引き続き完全に有効」と改めて強調した。 UAEタンカーへのドローン攻撃 UAE外務省は5月3日、国営石油会社ADNOC関連のタンカーがイランのドローンにより攻撃を受けたと発表した。ADNOCはUAE最大の国営エネルギー企業であり、産油国の船舶そのものが標的になりうることを示した点で国際社会に強い衝撃を与えた。 CMA CGMコンテナ船への攻撃・乗組員負傷 フランス大手船社CMA CGMは、コンテナ船「CMA CGM SAN ANTONIO」がホルムズ海峡航行中に攻撃を受けたことを公表した。乗組員数人が負傷し、船体にも損傷が生じている。タンカーだけでなく、コンテナ船・一般貨物の輸送にも直接リスクが及んでいることが明確になった。 HMMコンテナ船で爆発・航行不能に 5月4日には、韓国船社HMM運航のコンテナ船「HMM NAMU」の機関室でも爆発が発生。鎮火したものの船は航行不能の状態となった。韓国籍船員6人を含む乗員24名全員の無事は確認されており、外部からの攻撃を受けた可能性が高いとして詳細が調査中だ。 日本の物流・貿易現場への影響 ホルムズ海峡は日本が輸入する原油の約9割が通過する「エネルギーの生命線」だ。この事態が長期化した場合、以下の影響が複合的に発生する可能性がある。 | 影響領域 | 想定されるリスク ||---|---|| エネルギーコスト | 原油・LNGの調達コスト上昇 || リードタイム | 迂回航路によるリードタイム延長 || 保険 | 海上保険料(戦争リスク特約)の急騰 || 運賃・スペース | スペース逼迫と運賃の乱高下 | CMA CGMのような大手船社の船舶が実際に攻撃を受けているという事実は、「我々の荷物は大丈夫か」という荷主からの問い合わせが増加することを意味する。今のうちに保険条件と船社の運航方針を確認しておくことが不可欠だ。 今すぐ取るべき3つの行動 複数の軍事的事案と制度的な管理体制の変化が同時進行するホルムズ海峡情勢は、2024年の紅海フーシ派問題と同様に「いつ正常化するか」を前提とした対応計画が機能しにくい局面だ。正常化の時期を見通すよりも、現状を前提としたリスク対応を優先すべきである。 現時点で取るべき行動を以下の3点に整理する。 1. 船社の運航方針と代替ルートの確認:現在使用中の船社がどのような対応方針をとっているか、代替航路の選択肢を含めて把握する2. 保険条件・戦争リスク特約の見直し:特にホルムズ海峡・ペルシャ湾域を対象とした戦争リスク条項の内容と保険料水準を確認する3. 見積りの有効期限と運賃変動条項の再確認:情勢急変時のサーチャージ発動条件を把握し、顧客との契約条件を整理しておく ホルムズ海峡をはじめとする中東情勢に起因するリスク対応、代替ルートの手配、保険条件の整理など、貿易・物流に関わるご相談は HPS CONNECT までお気軽にお問い合わせください。複雑化するサプライチェーンリスクに対して、実務に即したご支援をいたします。

北米SC交渉2026年度|西岸$1,800・東岸$3,200の着地点 | その他

北米SC交渉2026年度|西岸$1,800・東岸$3,200の着地点

2026年度・北米SC交渉まとめ|中東情勢が運賃下落を食い止めた 「今年こそ大幅値下がり」と多くの関係者が予測していた2026年度の北米航路サービスコントラクト(SC)交渉。蓋を開けてみると、年初の下げ予測とは異なる着地点となった。北米西岸向け約1,800ドル、東岸向け約3,200ドルという成約水準の背景には、中東情勢という想定外の変数が大きく影響している。本稿では交渉の経緯と実務への影響を整理する。 年初の下げ予測はなぜ生まれたか 2026年度SC交渉の開幕前、市場参加者の多くが運賃下落を見込んでいた。その背景には主に二つの要因がある。 スエズ運河の通航再開の機運:紅海迂回ルートが解消されれば船腹の実質供給量が増加し、需給が緩む大型船の竣工ラッシュ:2025年末から続く新造船の大量投入が、市場全体の供給過剰感を高めていた この二重の下方圧力を受け、荷主側は強気の姿勢で交渉に臨むケースが多く見られた。スポット市場でも北米西岸向けは2025年2月末まで40フィートコンテナあたり2,000ドルを一時下回り、下げムードを裏付けるような動きが続いていた。 風向きを変えた中東情勢 交渉の流れが変わったのは、イランの軍事衝突を契機とした地政学リスクの再燃だ。紅海・スエズ運河の通航リスクが再び高まり、船社各社は迂回ルートでの運航継続を余儀なくされた。これにより実質的な船腹供給量が絞られ、年初から続いた下げ圧力に歯止めがかかった。 中東情勢が市場に与えた主な影響: 1. 船社の迂回ルート運航継続による1航海あたりの所要日数増加2. 稼働船腹の実質的な減少3. 荷主側の「大幅値下げ期待」の後退 ハパックロイドのオンラインイベントでは「多くのBCOが最終決定を遅らせている」との説明があった一方、日本発に関しては「極端に成約が遅れる例はあまり見られなかった」という船社関係者のコメントも伝えられており、成約タイミングによって水準にばらつきが生じた。 SC水準とスポット市場の乖離 2026年度SC交渉の最終的な成約水準は以下のとおりだ。 | 航路 | SC成約水準(目安) ||------|------------------|| 北米西岸向け(40ft) | 約1,800ドル || 北米東岸向け(40ft) | 約3,200ドル | 一方、4月30日公表のSCFI(上海発運賃指数)では北米西岸向け2,722ドル、東岸向け3,691ドルと、それぞれ前週比136ドル・121ドルの上昇を記録している。西岸向けは3月以降2,000ドル台半ばで推移しており、EFS(緊急燃料サーチャージ)の導入も価格上昇を後押しする形となっている。 SC水準とスポットの差(西岸ベース):約900ドル この差は荷主にとって極めて大きい。年間契約を締結していない企業はスポット高騰の影響を直接受けており、SC交渉を先送りにしたコストが今まさに顕在化している。 航路再編の動き:ONEとCMA CGM 運賃交渉と並行して、主要船社による航路再編も注目される。 ONE(日本郵船・商船三井・川崎汽船の統合会社):- 北欧州と北米西岸のサービスを分離- 北米西岸は日本とのシャトルサービス「PS1」に改編- 北欧州向けは母船寄港を取りやめ、釜山接続に変更- 改編に伴い他社へのスロット提供を一部絞り込み CMA CGM:- 4月より日本発北欧州向け直航「OCR」を新設- 5月より北米西岸サービス「EX1」の往航日本寄港を開始- 日本発北米西岸の直航便は、FP1が事実上PS1へ改編となる一方、EX1の追加により2便体制へ移行 荷主・フォワーダーが今すぐ確認すべきポイント 今回の交渉結果と航路再編を受け、実務上で対応が必要な事項を整理する。 ① 使用中サービスの変更確認- FP1→PS1など、利用サービスが改編されていないか確認- Transit Timeや経由港が変わっている可能性があるため、出荷スケジュールへの影響を再確認 ② SC未締結の場合はコスト再試算を- 現状のスポット水準(西岸2,700ドル台)とSC水準(1,800ドル)の差は約900ドル- 年間出荷量を掛け合わせると無視できないコスト差となる。今後のタームでのSC締結も含め試算が必要 ③ 中東情勢を注視した運賃戦略の見直し- 中東リスクが落ち着けば再び下げ圧力が戻る可能性がある- 2026年後半の更改時期に向け、早めにシナリオを検討しておくことが望ましい 北米航路の運賃戦略やSC交渉の進め方についてお悩みの方は、ぜひHPS CONNECTへご相談ください。最新の市況情報をもとに、貴社の出荷規模や航路に合った最適なアプローチをご提案いたします。