終戦後も6ヶ月!ホルムズ海峡リスクの長期化を解説

終戦後も6ヶ月!ホルムズ海峡リスクの長期化を解説 | その他

「戦争が終われば、翌月から運賃も航路も元通りになる」——そう考えている荷主・フォワーダーの方は多いかもしれない。しかし、ホルムズ海峡をめぐる最新のレポートは、その期待に冷水を浴びせる内容だ。仮に武力衝突が終結したとしても、海峡の通航が安定して再開されるまでには最大6ヶ月かかる可能性が指摘されている。本記事では、その理由と日本の輸出入実務への影響を整理する。

この記事を書いた人
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)

2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!

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ホルムズ海峡とは何か——なぜ世界が注目するのか

ホルムズ海峡は、イランとオマーンの間に位置する幅約50kmの水路だ。世界の石油輸送量の約20〜30%がここを通過するため、エネルギー安全保障の観点から「世界で最も重要なチョークポイント」と呼ばれている。

中東情勢の緊迫化を受けて、近年は船社が自主的に同海峡の通過を回避するケースが増加している。コンテナ船・タンカー双方に影響が及んでおり、紅海・スエズ運河問題と並ぶ「第二の迂回ルートリスク」として業界の警戒感が高まっている。

ホルムズ海峡の位置と主要航路図(ペルシャ湾〜インド洋〜アジア・欧州)

「終戦=即通常化」ではない——3段階の正常化プロセス

武力衝突が終結しても、海峡通航が即座に再開されない理由は大きく3つある。

第1段階:機雷・爆発物の除去

終戦後すぐに船が通れない最大の障壁が、水中爆発物(機雷)の除去だ。海峡内や周辺海域に敷設された機雷の撤去には専門の掃海作業が必要であり、完了まで数ヶ月単位の時間がかかる。安全宣言が出るまで船社・船長は通航を認可できないのが国際的な慣行であり、この段階だけでも相当な期間を要する。

第2段階:戦争保険の復活

機雷が除去されても、次の壁は保険の問題だ。現在ホルムズ海峡周辺は「ウォーリスク海域」として指定されており、保険料は通常の数十倍に跳ね上がっている。ロイズをはじめとする主要保険市場が安全性を確認し、通常保険の引受を再開するまでには相当な審査期間が生じる。保険が確保できなければ、船社は船を動かすことができない。

第3段階:船社独自のリスク判断

保険が復活した後も、各船社は独自の安全基準で通航可否を判断する。大手船社ほどコンプライアンスや乗組員の安全を重視するため、政府や保険会社の「安全宣言」よりも遅れて動く傾向がある。紅海問題でも、紛争終結後に一部の船社が長期間にわたって迂回ルートを継続したケースがあり、同様のパターンが繰り返される可能性は高い。

正常化3段階のフローチャート(機雷除去→保険復活→船社通航再開)

  • 機雷除去:専門掃海作業が必要、完了まで数ヶ月
  • 戦争保険復活:主要保険市場の安全確認後に引受再開
  • 船社通航再開:独自基準で判断、政府発表より遅れる傾向

輸送コストへの波及——エネルギーから運賃まで

ホルムズ海峡は原油・LNGタンカーの主要通過ルートでもある。通航制限が長期化すれば、エネルギーコストの高止まりが続き、燃油費の上昇はBAF(燃油サーチャージ)に直結する。コンテナ船社の運賃設定にも影響が波及するため、中東関連貨物に限らず、すべての荷主がサーチャージ動向を継続的に注視する必要がある。

さらに、スエズ運河を使わない喜望峰回り、ホルムズ海峡を避けた大回りルートが長期化するにつれ、「迂回が新しいノーマル」になりつつある点も見逃せない。リードタイムの延長にとどまらず、スペース逼迫や傭船料の高止まりも慢性化しており、「余裕のあったスケジュール計算」が通用しなくなっている。

迂回ルート比較図(ホルムズ通常航路 vs 大回り迂回ルート、所要日数・距離の比較)

日本の輸出入業務への具体的影響

日本からの中東・インド・欧州向け貨物は、ホルムズ海峡と紅海の問題を二重に受けるリスクがある。特にペルシャ湾岸(UAEドバイ、サウジアラビア、クウェートなど)向け輸出は、航路設定そのものが変わる可能性がある。中東からの輸入品(化学品・石化製品など)についても供給スケジュールへの影響が出やすく、在庫計画の見直しが必要になるケースは今後も増えるだろう。

一部のメディアでは、正常化は2026年2月以降になるという見通しも示されており、2025年中の完全正常化は楽観的すぎるシナリオかもしれない。

日本発着の主要貿易航路とホルムズ海峡・紅海リスクゾーンの重複マップ

荷主・フォワーダーが今すぐ取るべきアクション

「戦争が終わったから来月から通常運賃に戻る」という期待を、顧客や社内に持たせないことが実務上の最重要ポイントだ。以下のアクションを早急に検討してほしい。

  • 見積有効期限を短く設定する:中東情勢による運賃変動リスクを明示的に条件として盛り込む
  • リードタイム延長を前提にした納期交渉を行う:最低でも従来比2〜4週間の延長を顧客と事前合意しておく
  • スペース確保は早め早めを徹底する:迂回ルートによる船腹逼迫はしばらく続く見通し
  • 在庫計画の見直し:特に中東からの輸入品は供給リスクを織り込んだ安全在庫水準を設定する

「終戦=即通常化」ではない。機雷除去・保険復活・船社判断の3段階を経て初めて正常化するという認識を関係者全員で共有し、最大6ヶ月のバッファーを持った輸送計画を今から立てておくことが求められる。

ホルムズ海峡リスクへの対応策や、中東・欧州航路の輸送計画についてお悩みの方は、ぜひHPS CONNECTにご相談ください。最新の市況情報をもとに、お客様の貿易実務に即した対応をサポートします。

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