投稿日:2026.04.21 最終更新日:2026.07.06
ナフサ不足が日本を直撃?住設まで止まる供給危機
ホルムズ海峡封鎖による影響が、日本の石油化学サプライチェーン全体に広がっています。
「なぜナフサ不足が住宅設備の納期未定につながるのか」
その連鎖の仕組みは、物流・調達に関わる人なら知っておくべき構造です。
この記事では、ナフサ需給の構造的脆弱性から、エチレン減産・中間財値上げ・建材受注停止・住設納期未定までの連鎖を、時系列で整理します。
次に何が起きるかを把握することで、自社の調達・物流計画の見直しに活かせます。
- 日本のナフサ輸入がホルムズ海峡に74%依存している構造的リスク
- エチレン設備の減産から住設大手の納期未定までの連鎖の時系列
- 政府の備蓄放出・代替調達の効果と限界
- 次に詰まりやすい食品トレー・タイヤへの影響と物流への波及
国際情勢は物流コストやサプライチェーンに直接影響します。海運・物流に関するニュースを、メルマガで不定期にお届けしています。
飯野 慎哉(株式会社HPS CONNECT 代表取締役社長)
2016年にHPS Trade Co., Ltdを設立し、経営者として企業の物流課題を解決。 自身の経験を基に物流ノウハウを発信するYouTubeチャンネル「イーノさん」は登録者11万人を突破。 セミナーや講演、ブログを通して物流情報やグローバルでの仕事・挑戦・苦悩を発信。アジア・東南アジアに事業拡大中!
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本日はTOGISTICS TODAYの「ナフサ由来製品の供給制限加速、見えた住設の次」を参照して、ホルムズ海峡封鎖による日本の石油化学サプライチェーンへの深刻な影響についてお話しします。 概要欄に記事のリンクを貼っておりますので、是非そちらもご覧ください。
ナフサ需給の構造的脆弱性
日本のナフサは国内需要の6割を輸入に頼り、そのうち74%がホルムズ海峡を経由します。
エチレン原料の95%はナフサで、国内のナフサ商業在庫は経産省石油統計ベースで2週間分にとどまります。
在庫が薄い上に、ナフサから下流に向かうほどさらに在庫は薄くなり、かつ代替の効かない中間工程が存在します。
どの工程で先に詰まるかが、業種ごとの波及の順番を決める構造になっています。
- 輸入依存(国内需要の6割・ホルムズ経由74%)
- 在庫が薄い(商業在庫は約2週間分)
- 代替困難な中間工程が存在
上流の連鎖:エチレン設備の減産
最初に動いたのは上流でした。 3月5日頃、シンガポールのPCSがエチレン設備で不可抗力を宣言。
国内でも三菱ケミカルグループ、三井化学、出光興産などが3月前半に相次いで減産へ動き、国内エチレン12基のうち半数に当たる6基が減産に入りました。
京葉エチレンは定期修繕後の再稼働を無期延期、東ソー四日市の再稼働も無期限で延期されました。
封鎖開始から2週間で、日本のエチレン生産能力の半分が停止した状態になりました。
中間財の価格急騰:3月下旬の動き
エチレン減産から1週間ほど遅れて、中間財の価格が一斉に動き始めました。
- 塩化ビニル樹脂:30円/kg以上値上げ
- ポリエチレン・ポリプロピレン:90円/kg以上値上げ
- シンナー類:75%値上げ
- CPVC:55円/kg以上値上げ
上流の供給が絞られると、まず在庫の薄い中間財から価格が動くという典型的な動きです。
物流に影響する国際情勢の変化は、速報で追いかけることが大切です。物流・貿易のニュースをメルマガでまとめてお届けしています。
塗料業界:供給制限への転換点
塗料は他業種より先に、値上げから供給制限へ移行しました。
関西ペイントは値上げに加え、出荷量に上限を設ける制限を開始。
背景には、供給不安を見越した先回り発注と出荷抑制があります。
結果として、川中の出荷は前年同月の半分程度まで減少しました。
建材業界への受注停止の波
価格から供給制限へのシフトは、建材業界にも急速に広がりました。
- フクビ化学:供給制限
- 日新工業:受注停止
- 田島ルーフィング:受注停止
封鎖開始から7週間で、建材全体が受注停止状態に入りました。
住設大手が一斉に納期未定へ
建材から数日のうちに、住設大手に波及しました。
TOTO、クリナップ、パナソニック、LIXILなどが相次いで受注停止や納期未定に移行。
出荷時期を約束できない状態が広がっています。
- 石化原料(ナフサ)
- 中間財(ポリエチレン・塩ビ等)
- 塗料
- 建材
- 住設
政府の対応策と備蓄放出の限界
政府は備蓄放出と代替調達を進めています。 国家備蓄原油の放出や、米国産ナフサの輸入拡大が行われています。
しかし、それでも供給制限は住設まで広がりました。 備蓄放出と代替調達には即効性の限界があります。
海峡再開でもすぐ戻らない理由
海峡が再開しても供給はすぐには戻りません。
- 輸送日数(最短30日、迂回含め45日以上)
- 設備再稼働のリードタイム
- 工程の直列構造による下流への遅延
次の標的:食品トレーとタイヤ
次に詰まりやすいのが以下の分野です。
- 食品トレー(PSP)
- タイヤ(SBR・BR)
特にタイヤは物流に直結し、供給不足が輸送能力そのものの制約につながる可能性があります。
まとめ
- 日本のナフサはホルムズ海峡経由が74%を占め、封鎖が直ちに国内製造業を直撃する構造
- 封鎖から2週間でエチレン生産能力の半数が停止、7週間で建材が受注停止に至った
- 備蓄放出・代替調達は即効性に限界があり、海峡再開後も回復まで最短30〜45日以上かかる
- 次はタイヤ(SBR・BR)と食品トレー(PSP)が詰まりやすく、物流能力への直撃が懸念される
建材から住設へと広がった今回の流れは、次に何が起きるかをすでに示しています。
ホルムズ海峡情勢は単なる海運コストの問題にとどまらず、サプライチェーン全体を地政学的視点で見直す契機となっています。
今後の焦点は、供給制限が食品分野まで広がるか、タイヤ不足が物流に直撃するか、その2点です。調達・物流計画の見直しを急ぐタイミングです。
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